• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47L
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A47L
管理番号 1162120
審判番号 不服2004-20037  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-28 
確定日 2007-08-09 
事件の表示 平成 7年特許願第198794号「電気掃除機用集塵袋」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 2月10日出願公開、特開平 9- 38007〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続の経緯
本願は,平成7年8月3日の出願であって,平成16年8月25日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年9月28日に審判請求がなされるとともに,同年10月27日付けで手続補正がなされたものである。

2. 平成16年10月27日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成16年10月27日付け手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1) 本件補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲の請求項1において,本件補正前の「濾材を袋状に形成してなる集塵袋本体」(以下「記載A」という。)を,「濾材を袋状に形成してなる集塵袋本体(ただし,熱可塑性フィラメントを集積したシート状の不織布の中央部分を加熱延伸させて成形した捕集部を有する袋体である場合を除く)」(以下「記載B」という。)とする補正を含むものである。

(2) 本件補正の適否
本件補正について検討すると,記載Bの「(ただし,熱可塑性フィラメントを集積したシート状の不織布の中央部分を加熱延伸させて成形した捕集部を有する袋体である場合を除く)」なる事項は,本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下,「当初明細書等」という。)に記載がなく,また,当初明細書等の記載からみて自明な事項であるともいえない。

したがって,本件補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではなく,特許法第17条の2第3項の規定に違反するから,同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する第53条第1項の規定により,却下されるべきものである。

なお,審判請求人は,本件補正事項の当初明細書等における根拠について,何の説明もしていない。

3. 本願発明について
(1) 本願の請求項1及び2に係る発明
本件補正は前記のとおり却下されたので,本願の請求項1及び2に係る発明は,平成16年4月30日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりの次のものである。

「【請求項1】 塵埃を導入する導入口をほぼ中央部に有する支持体を,濾材を袋状に形成してなる集塵袋本体の開口部に設けてなる集塵袋であって,前記導入口の直径が40?60mmであり,前記支持体が,接着面積が前記支持体下面の面積のうちの,6%以上50%未満になるように,前記集塵袋本体上面の開口部の周囲に接着されており,集塵袋本体を膨らませたとき,集塵袋本体の上面部分の大部分は支持体によって拘束されることなくほぼ球状になるまで膨らませることができることを特徴とする電気掃除機用集塵機。
【請求項2】 前記支持体の導入口周辺の少なくとも一部に折り曲げおよび/または切り離しできる導入口形成ガイドが設けられてなる請求項1記載の電気掃除機用集塵袋。」

(2) 引用例に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用した本願出願前に頒布された刊行物である登録実用新案第3007870号公報(以下,「引用例1」という。)及び実願昭61-171843号(実開昭63-76245号)のマイクロフィルム(以下,「引用例2」という。)には,それぞれ図面と共に以下の記載がある。

[引用例1について]
1a. 「 【産業上の利用分野】
機種によって取り付け部の構造が異なる電気掃除機の,各機種共用タイプの集塵袋として汎用されている,使い捨ての集塵袋に関する。」(段落【0001】)

1b. 「【従来の技術】
従来から使い捨ての集塵袋は,導入口を持つ紙等の繊維質の袋本体Bの表面部に導入口を持つ板紙製の支持体Aが,相互の導入口を一致する状態に貼合したものである。」(段落【0002】前段)

1c. 「 図3に示す通り,従来品(市販品)の集塵袋もその基本構造は,中央部には導入口(1)を,一つの辺の中程に長辺側をその一つの辺に添わせて配した長方形状切り欠き部(2)を,その一つの辺と対向する辺を持つ支持体端部には辺に沿って支持体を分割するガイド線(3)を夫々有した四辺形状をした支持体Aが,導入口を持つ長方形の袋本体Bの表面に,相互の導入口を合わせ,また支持体Aの長方形状切り欠き部(2)のある一つの辺は袋本体Bの長手に直交させ,且つ長方形状切り欠き部(2)のある辺に(右90度)に隣接した辺を持つ支持体端部は,上記袋本体Bの右側縁からはみだした状態に位置させ貼合されてなり,更に袋本体Bの表面には各種電気掃除機への適応の仕方の説明文が配されてある電気掃除機用の集塵袋であることが分かる。」(段落【0004】中段)

1d. 「一般に,支持体Aの裏面と袋本体Bの表面との貼合は,相互の導入口に沿った約1.0?1.5cmのほぼ一定幅のドーナツ状の領域で,接着剤による貼合で行われることが多い。図4の市販品の貼合部もドーナツ状の形状を呈している。これは,一応の接合面積強度が満たされれば,貼合面積が大き過ぎることで生じる障害(例えば袋本体の十分な膨張を過剰な貼合面積が妨げる障害)の発生は阻止したいと考えたものと推察される。」(段落【0025】後段)

[引用例2について]
2a. 「本考案はダニ防除袋に関する。さらに詳しくは,支持部に設けられた鍔部の大きさを調整することによって,種々の機種の電気掃除機の集塵部に容易に装着しうるダニ防除袋に関する。」(3頁2行?5行)

2b. 「本考案のダニ防除袋は,塵埃を導入する導入口を,濾材を袋状に形成してなる防除袋本体の開口部に配してなる防除袋の支持部に,鍔部および該鍔部を複数に分離しうるガイドを設けることによってえられる。
・・・中略・・・
しかし支持部を種々の機種の電気掃除機の集塵部に適合させることができるようにするという観点から,導入口は支持部のほぼ中央に設けられているのが好ましい。
・・・中略・・・
また前記導入口の大きさは,電気掃除機の吸込口の大きさによって異なるが,通常の電気掃除機の吸込口は円形状をなしており,また電気掃除機の吸引ホースの直径よりもやや小さいという点から,前記吸込口よりもやや大きく,すなわちその直径が40?60mmとなるように設定したばあい,種々の電気掃除機に適合させることができるので,前記範囲内で適宜調整されるのが好ましい。」(4頁10行?5頁15行)

(3) 引用例1に記載された発明
ところで,記載事項1bの「紙等の繊維質の袋本体」が,濾材を袋状に形成してなる集塵袋の袋本体であること,また,この袋本体を膨らませたとき,ほぼ球状になるまで膨らむことは,電気掃除機の集塵袋の技術常識からみて明らかである。

さらに,記載事項1dは,支持体を,その導入口に沿った約1.0?1.5cmのほぼ一定幅のドーナツ状の領域で,袋本体上面の導入口部の周囲に接着すると,一応の接着強度が満たされるとともに,袋本体を膨らませたとき,袋本体の上面部分の大部分は支持体によって拘束されることなく膨らませることができる,との意味に解することができる。

したがって,従来品(市販品)についての記載事項1a?1d及び図3,図4から,引用例1には次の発明(以下,「引用例1の発明」という。)が記載されていると認められる。

塵埃を導入する導入口をほぼ中央部に有する支持体を,濾材を袋状に形成してなる袋本体の導入口部に設けてなる集塵袋であって,前記支持体が,その導入口に沿った約1.0?1.5cmのほぼ一定幅のドーナツ状の領域で,前記袋本体上面の導入口部の周囲に接着されており,袋本体を膨らませたとき,袋本体の上面部分の大部分は支持体によって拘束されることなくほぼ球状になるまで膨らませることができる電気掃除機用集塵機。

(4) 対比,一致点・相違点
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)と引用例1の発明を対比すると,引用例1の発明の「袋本体」,及び「袋本体の導入口部」は,それぞれ本願発明の「集塵袋本体」,及び「集塵袋本体の開口部」に相当する。

したがって,両発明は,

塵埃を導入する導入口をほぼ中央部に有する支持体を,濾材を袋状に形成してなる集塵袋本体の開口部に設けてなる集塵袋であって,前記支持体が,前記集塵袋本体上面の開口部の周囲に接着されており,集塵袋本体を膨らませたとき,集塵袋本体の上面部分の大部分は支持体によって拘束されることなくほぼ球状になるまで膨らませることができる電気掃除機用集塵機。

の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
支持体の導入口の直径が,本願発明では40?60mmであるのに対して,引用例1の発明では不明な点。

[相違点2]
支持体を集塵袋本体上面の開口部の周囲に接着するのに,本願発明では,接着面積を支持体下面の面積のうちの,6%以上50%未満になるようにするのに対して,引用例1の発明では,支持体の導入口に沿った約1.0?1.5cmのほぼ一定幅のドーナツ状の領域で接着する点。

(5) 相違点についての検討
[相違点1について]
引用例2には,支持体に相当する支持部のほぼ中央部に設けられる導入口の直径を40?60mmの範囲内で適宜調整することが好ましいと記載されている(記載事項2b参照)。

したがって,引用例1の発明において,支持体の導入口の直径を,本願発明と同様の40?60mmとすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点2について]
引用例1の発明において,集塵袋本体を膨らませたとき,集塵袋本体の上面部分の大部分を支持体によって拘束されることなくほぼ球状になるまで膨らませることができるように,支持体の導入口に沿った約1.0?1.5cmのほぼ一定幅のドーナツ状の領域で接着するのに代えて,接着面積を支持体下面の面積のうちの,6%以上50%未満になるようにすることは,当該数値限定に臨界的意義を認めることはできず、当業者が実験的に適宜設定し得た程度の設計変更にすぎない。

そして,本願発明の効果は,引用例1及び2の発明並びに周知技術から予測し得る程度のものであって,格別なものでない。

(6) むすび
したがって,本願発明は,引用例1及び2の発明並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

よって,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-11 
結審通知日 2007-06-12 
審決日 2007-06-25 
出願番号 特願平7-198794
審決分類 P 1 8・ 561- Z (A47L)
P 1 8・ 121- Z (A47L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武井 健浩中川 隆司  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 長浜 義憲
間中 耕治
発明の名称 電気掃除機用集塵袋  
代理人 朝日奈 宗太  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ