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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 F23G
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 F23G
管理番号 1162153
審判番号 不服2006-5098  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-17 
確定日 2007-08-09 
事件の表示 特願2002-248147「熱分解処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月18日出願公開、特開2004- 85118〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成14年8月28日の出願であって、平成15年12月17日付けで手続補正(以下、「手続補正1」という。)がなされ、平成17年4月4日付け拒絶理由(発送日:同月12日)に対して平成17年6月6日付けで手続補正(以下、「手続補正2」という。)がなされ、平成17年6月23日付けで手続補正2についての手続補正指令(発送日:同月28日)がなされたが、この手続補正指令に対して手続補正がなかったため、平成17年12月5日付けで、手続補正2を却下する手続却下の処分(発送日:同月13日)がなされ、その後、平成18年2月13日付けで拒絶査定(発送日:同月21日)がなされ、これに対し、平成18年3月17日付けで審判請求がなされ、平成18年4月14日付けで手続補正(以下、「手続補正3」という。)がなされたものである。

2.手続補正3についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
手続補正3を却下する。

[理由]
(1)手続補正3の内容
手続補正3により、特許請求の範囲は、

「【請求項1】
一対の一次炉と各一次炉に直結する連通手段により連通するニ次炉とにより構成された熱分解処理炉であり、前記一次炉は、多数の自動車古タイヤ等廃棄物を無作為に投入するようにした上部に設けた開口と、該上部開口を閉鎖する投入口蓋と、該投入口蓋の一端を保持して水平に回動すると共に一次炉内面に向かい該投入口蓋を押圧する該上部開口近傍の炉背壁外側に設けた開閉押圧手段と、該一次炉の下部側面に設けプロパン着火手段により所定時間該廃棄物に着火し該廃棄物の焼却により発生する生成ガスを該一次炉の下部でニ次炉との連通部位においてニ次炉に誘引しながら焼却させる燃焼エアーバーナ及びブロア手段有する連通口と、該一次炉の下部周辺をめぐり形成されたジャケット状の冷却水槽部と、該一次炉の下部に形成され複数の空気孔を有する底面板と、その下部の空気噴射手段を格納した底面部とよりなり、前記ニ次炉は、該ニ次炉の下部周辺をめぐり形成されたジャケット状の冷却水槽部と、前記冷却水槽部の内部で前記連通口を通じて流入される前記生成ガスを焼却処理室で渦流状態で1000℃程度の高熱焼却処理する焼却処理室と、該焼却処理室の上方に連続して設けられたセラミックスよりなる対高熱部材の中空錘体部と、該中空錘体部の上方に突出する所定高さの高熱焼却された排出ガスが排出される排気筒によりなり、構成される前記熱分解処理炉と、該熱分解処理炉より排出される排出ガスを前記熱分解処理炉の前記排気筒に連続した流路に直列に設けられた前記排気筒から排出する1000℃程度の排気ガスを250℃?500℃の所定温度に急速冷却する水噴霧等の急速冷却手段を有する水冷式熱交換器と空冷式熱交換器とより構成されると共に、該冷却された排水ガスを消石灰投入手段の脱塵及び酸性ガスの吸着手段を有するバグフィルタ手段を介して150℃?200℃程度の温度のクリーンガスとして煙突より排出する手段を設けて構成したことを特徴とするダイオキシン類の発生抑制を具備した熱分解処理装置。」

と補正された。

(2)手続補正3の適否の判断
手続補正3による補正後の請求項1には、「該投入口蓋の一端を保持して水平に回動すると共に一次炉内面に向かい該投入口蓋を押圧する該上部開口近傍の炉背壁外側に設けた開閉押圧手段」、「該一次炉の下部周辺をめぐり形成されたジャケット状の冷却水槽部」、「該一次炉の下部に形成され複数の空気孔を有する底面板と、その下部の空気噴射手段を格納した底面部」、「渦流状態」、「セラミックスよりなる対高熱部材の中空錘体部」、及び「150℃?200℃程度の温度のクリーンガス」といった事項が記載されている。

一方、願書に最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)又は図面(以下、「当初図面」という。)には、以下のような記載がみられる。

(ア)「前記課題を解決するため、本発明を請求項1において、一対の一次炉の夫々に自動車等古タイヤ等の廃棄物を無作為に投入し、該投入口蓋を閉鎖して、投入物を所定時間燃焼する手段を有する一次炉と夫々の一次炉の所定の部位に直結された連通手段に、燃焼エアーバーナとブロア手段と予熱手段とを設けたニ次炉とにより構成され、該一次炉の投入物の燃焼により発生された生成ガスを前記燃焼エアーバーナ及びブロア手段により、該予熱手段で予熱された二次炉の焼却室で前記生成ガスを誘引しながら高温焼却して排出ガスが排出される特許第2683852号の熱分解処理炉と、該熱分解処理炉よりの1000℃程度の高温の排出ガスを250℃?500℃に急速冷却する前記熱分解処理炉と直列に設けた夫々の公知の水冷式熱交換器と空冷式熱交換器と該排出ガスを脱塵及び酸性ガスの吸着手段を有するバグフィルタ手段を介して煙突より排出する手段とを設けて構成したことを特徴とする熱分解処理装置を構成した。」(第0004段落)

(イ)「図1は本発明の一実施例の一部断面を示した熱分解処理装置の構成を示した説明図である。
図1において、301は特許第2683852号の熱分解処理炉であって、11は熱分解炉、12は連通手段、13は燃焼室である。 熱分解処理炉1以外のものは公知のものである。 302は水冷式熱交換器、303は空冷式熱交換器、304はバグフィルター、305は煙突部分である。
・・・
空冷式熱交換器303には冷却用空気手段が設けられている。
空冷式熱交換器303より流路82から消石灰投入手段85を有するバグフィルター手段304に流入し、150℃?230℃程度のクリーンガスとなって煙突19より排出され、かくしてダイオキシンその他の公害物質が除去され、公害防止等が達成される。」(第0007段落)

(ウ)「図2、図3は、本発明の熱分解炉の一部断面を示した正面図と平面図であり、前記の通り特許第2683852号の焼却炉を用いている11,12は一次炉であり一対設けられ、夫々古タイヤ等焼却室であり、必要に応じ、11又は12を休止できる手段が設けてある。
一次炉の夫々に該炉の上部の投入口の開口3から自動車等古タイヤ等廃棄物22を無作為に投入し、閉鎖手段により該投入口蓋体4を閉鎖して、該一次炉に設けた着火及び残灰取り出し口に設けたプロパン着火手段6により、投入物22を所定時間燃焼して、所定時間後は着火手段を消火し、投入物22自体の燃焼により燃焼を続け、燃焼による生成ガスは、一次炉と二次炉の間に連通して設けられている連通手段12に、設けられたエアーバーナー及びブロア手段8より予熱された二次炉13の焼却処理室16に前記生成ガスを誘引しながら高熱焼却して1000℃程度の高温排出ガスを排出する。
なお、図2,3における符号の説明は、特許第2683852号の符号をそのまま使用したので細部符号の説明は省略する。」(第0008段落)

以上の記載から、当初明細書に「特許第2683852号の熱分解処理炉」という記載はあるものの、熱分解処理炉の具体的構成である「投入口蓋の一端を保持して水平に回動すると共に一次炉内面に向かい該投入口蓋を押圧する該上部開口近傍の炉背壁外側に設けた開閉押圧手段」を設けること、「一次炉の下部周辺をめぐり形成されたジャケット状の冷却水槽部」を設けること、及び「一次炉の下部に形成され複数の空気孔を有する底面板と、その下部の空気噴射手段を格納した底面部」を設けることは、当初明細書に記載されておらず、また、当初図面を参酌するも、上記事項のような具体的構成が当初図面に記載されているとは認められない。

また、生成ガスを焼却処理室で「渦流状態」で高熱焼却処理することについては、当初明細書に「二次炉13の焼却処理室16に前記生成ガスを誘引しながら高熱焼却して」との記載はある(上記「(ウ)」参照。)が、「渦流状態」で高熱焼却処理することは、当初明細書又は図面に何ら記載されていない。

また、「セラミックスよりなる対高熱部材の中空錘体部」を設けることについては、当初図面の図2の符号17で示される部材の説明に関して、「なお、図2,3における符号の説明は、特許第2683852号の符号をそのまま使用したので細部符号の説明は省略する。」との記載があるのみ(上記「(ウ)」参照。)で、「セラミックス」よりなる対高熱部材の中空錘体部は、当初明細書又は図面に何ら記載されていない。

また、クリーンガスの温度に関して、当初明細書に「150℃?230℃程度」との記載があり(上記「(イ)」参照。)、また、当初図面の図4の符号105で示された集塵装置の上方に 「150℃?230℃」との記載はあるものの、上限を「200℃」とした、「150℃?200℃程度」の温度のクリーンガスは、当初明細書又は図面に何ら記載されていない。

そして、「特許第2683852号の熱分解処理炉」が周知の技術であるとしても、上記それぞれの事項が、当初明細書又は図面の記載からみて自明な事項とも認められない。

そうすると、手続補正3は、当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反する。

(3)むすび
以上のとおり、手続補正3は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
手続補正3は、上記のとおり却下され、また、手続補正2は、平成17年12月5日付けで却下されているので、本願発明は、手続補正1により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認められる。

「【請求項1】一対の一次炉と各一次炉に直結する連通手段により連通するニ次炉とにより構成された熱分解処理炉であり、前記一次炉は、多数の自動車古タイヤ等廃棄物を無作為に投入するようにした上部に設けた開口と、該上部開口を閉鎖する投入口蓋と、該投入口蓋の一端を保持して水平に回動すると共に一次炉内面に向かい該投入口蓋を押圧する該上部開口近傍の炉背壁外側に設けた開閉押圧手段と、該一次炉の下部側面に設けプロパン着火手段により所定時間該廃棄物に着火し該廃棄物の焼却により発生する生成ガスを該一次炉の下部でニ次炉との連通部位においてニ次炉に誘引しながら焼却させる燃焼エアーバーナ及びブロア手段有する連通口と、該一次炉の下部周辺をめぐり形成されたジャケット状の冷却水槽部と、該一次炉の下部に形成され複数の空気孔を有する底面板と、その下部の空気噴射手段を格納した底面部とよりなり、前記ニ次炉は、該ニ次炉の下部周辺をめぐり形成されたジャケット状の冷却水槽部と、前記冷却水槽部の内部で前記連通口を通じて流入される前記生成ガスを焼却処理室で渦流状態で1000℃程度の高熱焼却処理する焼却処理室と、該焼却処理室の上方に連続して設けられたセラミックスよりなる対高熱部材の中空錘体部と、該中空錘体部の上方に突出する所定高さの高熱焼却された排出ガスが排出される排気筒によりなり、構成される前記熱分解処理炉と、該熱分解処理炉より排出される排出ガスを前記熱分解処理炉の前記排気筒に連続した流路に直列に設けられた前記排気筒から排出する1000℃程度の排気ガスを250℃?500℃の所定温度に急速冷却する水噴霧等の急速冷却手段を有する水冷式熱交換器と空冷式熱交換器とより構成されると共に、該冷却された排水ガスを消石灰投入手段の脱塵及び酸性ガスの吸着手段を有するバグフィルタ手段を介して150℃?200℃程度の温度のクリーンガスとして煙突より排出する手段を設けて構成したことを特徴とする熱分解処理装置。」

4.原査定の理由
原査定の理由は、原審において平成17年4月4日付け拒絶理由通知に示した次のとおりのものである。

「【拒絶理由A】平成15年12月17日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

平成15年12月17日付けでした手続補正書によって、本願明細書【特許請求の範囲】【請求項1】には、以下の事項が追加された。すなわち、「該投入口蓋の一端を保持して水平に回動する」、「一次炉内面に向かい該投入口蓋を押圧する該上部開口近傍の炉背壁外側に設けた開平押圧手段」、「該一次炉の下部周辺をめぐり形成されたジャケット状の冷却水層部」、「該一次炉の下部に形成され複数の空気孔を有する底面板」、「その下部の空気噴射手段を格納した底面部」、「渦流状態」、「セラミックスよりなる」及び「150℃?200℃程度の温度」が追加された。しかし上記事項は、この出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載されていない。また、本願出願時の願書に最初に添付された明細書又は図面から当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって自明な事項であるとも認められない。」

5.当審の判断
平成17年4月4日付け拒絶理由通知に対してなされた手続補正2、及び審判請求にともなってなされた手続補正3は、いずれも却下されている。

また、上記「2.[理由](2)」に記載したとおり、「該投入口蓋の一端を保持して水平に回動すると共に一次炉内面に向かい該投入口蓋を押圧する該上部開口近傍の炉背壁外側に設けた開閉押圧手段」、「該一次炉の下部周辺をめぐり形成されたジャケット状の冷却水槽部」、「該一次炉の下部に形成され複数の空気孔を有する底面板と、その下部の空気噴射手段を格納した底面部」、「渦流状態」、「セラミックスよりなる対高熱部材の中空錘体部」、及び「150℃?200℃程度の温度のクリーンガス」という事項は、当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものではない。

したがって、平成17年4月4日付け拒絶理由の「【拒絶理由A】」は依然として解消されておらず、手続補正1は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

6.むすび
以上のとおり、手続補正1は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであることから、その余について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-04-24 
結審通知日 2007-05-08 
審決日 2007-06-22 
出願番号 特願2002-248147(P2002-248147)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (F23G)
P 1 8・ 55- Z (F23G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 高弘  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 長浜 義憲
関口 哲生
発明の名称 熱分解処理装置  
代理人 本田 崇  
代理人 高野 昌俊  

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