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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01M
管理番号 1163108
審判番号 不服2006-4561  
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-10 
確定日 2007-08-22 
事件の表示 平成 8年特許願第283139号「有機電解液二次電池」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 4月28日出願公開、特開平10-112334〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成8年10月3日の出願であって、平成18年2月8日付けでされた拒絶査定に対し、同年3月10日付けで審判請求がされ、平成19年3月29日付けで当審拒絶理由が通知されたものである。

II.本願発明
本願の発明は、平成19年5月28日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?5に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は、次に示すとおりのものである(以下、この発明を「本願発明」という。)。
「正極、負極および有機電解液を主構成要素とする有機電解液二次電池において、上記負極に(002)面の層間距離d002が3.4Å以下であり、かつc軸方向の結晶子サイズLcが250Å以上の黒鉛系炭素材料を用い、上記有機電解液の全電解液溶媒中における鎖状エステルの量が50体積%より多く、誘電率が30以上の環状構造を有するエステルが10体積%以上40体積%以下であり、かつ上記有機電解液にGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)によるポリスチレン換算での重量平均分子量が200以上であるフッ素含有高分子エーテル化合物を上記有機電解液の電解液溶媒100重量部に対して0.1重量部以上10重量部以下含有させたことを特徴とする有機電解液二次電池。」

III.当審拒絶理由の概要
当審の平成19年3月29日付け拒絶理由通知書に記載した理由の概要は、本願の請求項1?3に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物1,2に記載された発明等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
刊行物1:特開平6-290809号公報
刊行物2:特開平8-37024号公報

IV.刊行物の記載事項
(1)刊行物1に記載された事項は以下のとおりである。
(1-ア)「【請求項1】 リチウムイオンを吸蔵・放出できる炭素材からなる負極と、非水電解液と、リチウム含有酸化物からなる正極とを備え、上記非水電解液はその溶媒に、一般式ROCOOR′(ただし、R≠R′、R,R′は炭素数1?4のアルキル基)で示される非対称形鎖状カーボネートと環状カーボネートとの混合溶媒を含むことを特徴とする非水電解液二次電池。
・・・
【請求項3】 電解液の溶媒成分である非対称形鎖状カーボネートの体積/環状カーボネートの体積の比率が1以上9以下であり、この非対称形鎖状カーボネートと環状カーボネートとの体積の合計が全溶媒中の70%以上を占めている請求項1または2に記載の非水電解液二次電池。
・・・
【請求項6】 負極の炭素質材料が石炭コークス、石油コークス、炭素繊維をそれぞれ2000℃以上の温度で熱処理したもの、人造黒鉛、天然黒鉛からなる群より選ばれた単独、もしくは2種以上の混合物であり、かつ電解液の溶媒成分である環状カーボネートがエチレンカーボネートである請求項1?5のいずれかに記載の非水電解液二次電池。
【請求項7】 負極の炭素質材料は、そのX線回折法による002面の面間隔(d002)が3.39Å以下である請求項6に記載の非水電解液二次電池。」(特許請求の範囲の請求項1,3,6,7)
(1-イ)「次に負極の炭素材の結晶性と、最適な環状カーボネートの種類について検討を行った。
負極には気相成長炭素繊維(VGCF)を用い、その焼成温度を1400?2800℃の範囲で変えることによってX線回折法による002面の面間隔(d002)値を変えた5種類の負極について、EC+EMC,PC+EMCの2種類の電解液の適合の良否を検討した。
以下、その実施例2について述べる。
(実施例2)負極材料と、電解液中の溶媒が異なる以外は実施例1と全く同1条件で電池を作成した。電池の試作内容を以下の(表1)に示す。溶媒の混合比はいずれも体積比で20:80とした。
【表1】(注:表1中「DEC」は「EMC」の誤記と認める。電解液が「EC+EMC」で、負極材料のd002値が「3.38Å」、「3.39Å」、「3.40Å」、「3.43Å」、「3.45Å」の電池がそれぞれ「電池a?e」、電解液が「PC+EMC」で同上の負極材料の電池がそれぞれ「電池f?j」である。)」(【0042】?【0045】)
(1-ウ)「また、大きな違いはないが、電池のサイクル寿命は負極のd002値が大きいほど長い傾向がある。これは炭素層間が大きいほど溶媒の分解が起こりにくいためと考えられる。
一方、図9より電池の放電容量は負極のd002値が小さいほど、すなわち負極の結晶性が高いほど大き・・・いことがわかった。
以上の結果から負極の炭素材のX線回折法による002面の面間隔(d002)値が3.39Å以下の場合には電解液の溶媒としての環状カーボネートにECを用い、3.40Å以上の場合はPCを用いることにより、優れたサイクル寿命特性及び容量特性を得ることができる。」(【0048】?【0050】)

(2)刊行物2に記載された事項は以下のとおりである。
(2-ア)「正極、負極及び有機電解液を基本構成とする二次電池であって、該有機電解液が、含フッ素エーテルを含有することを特徴とする非水電解液二次電池。」(【請求項1】)
(2-イ)「二次電池における重要な特性として充電、放電を繰り返したときの容量変化が少ないこと(サイクル安定性)が要求されるが、現状では十分なものではない。この原因として、・・・有機電解液の溶媒や電解質が分解や変質し、初期の特性を維持できなくなる、などが指摘されている。これらのうち有機電解液の溶媒に関しては、・・・などが提案されている。しかしながら、これらの方法を用いても、用いる溶媒の安定性が十分ではなく、従ってサイクル安定性は十分ではないという問題点があった。
本発明は、これらの問題を解決してサイクル安定性に優れた新規な二次電池を提供するものである。」(【0002】?【0003】)
(2-ウ)「・・・含フッ素鎖状エーテルの具体例として・・・
CH3〔OCH(CF3)CH2〕nOCH3(n=1?7)(L29)
が挙げられる。」(【0010】)
(2-エ)「・・・本発明の含フッ素エーテルを添加することによりサイクル安定性が向上する理由は明かではないが、充放電により添加した含フッ素エーテルが反応あるいは分解し負極上に堆積して負極表面を変性し、負極と電解液や電解質との反応を抑制する為ではないかと推定している。このときフッ素原子を含むエーテル化合物はより効果的に負極との反応を抑制すると推定している。」(【0026】)
(2-オ)「本発明の含フッ素エーテルを添加する効果は、広範な種類の電解液に対して用いることができるが、特に環状炭酸エステル、非環状炭酸エステル、環状エステル、鎖状エステル、環状エーテル、鎖状エーテルを電解液として用いたとき、後述の効果に関して、良好な結果が得られ、さらにこれらから選ばれる複数の混合溶媒を溶媒として用いたとき特に良好な結果が得られる。ここでいう環状炭酸エステルとしては、具体的にはエチレンカーボネート・・・非環状炭酸エステルとしては、具体的には例えば・・・メチルエチルカーボネート・・・などが挙げられる。・・・」(【0027】?【0030】)
(2-カ)「・・・本発明の含フッ素エーテルは、上記の電解液に対して0.1体積%ないし30体積%の範囲で添加したとき効果が大きく、0.5体積%以上20体積%の範囲の添加が更に好ましく、0.5体積%ないし15体積%の範囲の添加が特に好ましい。0.1体積%以下ではサイクル安定性改善の効果が小さく、30体積%以上ではサイクル安定性は向上するものの、容量が小さくなる。・・・」(【0033】)
(2-キ)「本発明における正極、負極は特に限定されるものではないが、・・・負極として炭素質材料を用いた場合、特に顕著な効果が見いだされる。」(【0034】)

V.当審の判断
(1)刊行物1発明
刊行物1の(1-ア)の記載によると、刊行物1には、「リチウムイオンを吸蔵・放出できる炭素材からなる負極と、非水電解液と、・・・正極とを備え、上記非水電解液はその溶媒に、・・・非対称形鎖状カーボネートと環状カーボネートとの混合溶媒を含むことを特徴とする非水電解液二次電池」であって、その溶媒が「非対称形鎖状カーボネートの体積/環状カーボネートの体積の比率が1以上9以下であり、この非対称形鎖状カーボネートと環状カーボネートとの体積の合計が全溶媒中の70%以上を占めて」おり、その負極の炭素質材料が「X線回折法による002面の面間隔(d002)が3.39Å以下である」ものが記載されている。
そして、(1-イ)には、実施例2の電池a,bとして、溶媒が環状カーボネートであるエチルメチルカーボネート(EMC)と非対称鎖状カーボネートであるエチレンカーボネート(EC)との体積比80:20のものであり、負極の炭素質材料が(d002)が3.38Å、3.39Åの気相成長炭素繊維である非水電解液二次電池が記載されているから、この電池a,bは(1-ア)記載の電池の具体例であるといえる。
以上によれば、刊行物1には、「正極、負極および有機電解液を主構成要素とする有機電解液二次電池において、上記負極に(002)面の層間距離d002が3.39Å以下の気相成長炭素繊維を用い、上記有機電解液の全電解液溶媒中におけるエチルメチルカーボネート(EMC)の量が80体積%であり、エチレンカーボネート(EC)が20体積%である有機電解液二次電池」の発明が記載されているといえる(以下、この発明を「刊行物1発明」といい、「エチルメチルカーボネート」を「EMC」と、「エチレンカーボネート」を「EC」と表記する。)。

(2)対比
本願発明1(前者)と、刊行物1発明(後者)とを対比すると、後者の「EMC」、「EC」及び「気相成長炭素繊維」は、それぞれ前者の「鎖状エステル」、「誘電率が30以上の環状構造を有するエステル」及び「炭素材料」に相当するから、両者は「正極、負極および有機電解液を主構成要素とする有機電解液二次電池において、上記負極に(002)面の層間距離d002が3.39Å以下の炭素材料を用い、上記有機電解液の全電解液溶媒中における鎖状エステルの量が80体積%であり、誘電率が30以上の環状構造を有するエステルが20体積%である有機電解液二次電池」である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1:前者は、負極に用いる炭素材料が「c軸方向の結晶子サイズLcが250Å以上の黒鉛系」のものであるのに対して、後者は、c軸方向の結晶子サイズLcが不明な気相成長炭素繊維である点
相違点2:前者は、「有機電解液にGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)によるポリスチレン換算での重量平均分子量が200以上であるフッ素含有高分子エーテル化合物を上記有機電解液の電解液溶媒100重量部に対して0.1重量部以上10重量部以下含有」させるのに対して、後者は、有機電解液にフッ素含有高分子エーテル化合物を含まない点

(3)判断
(i)相違点1について
炭素材料において、炭素網面である(002)面の層間距離d002、及びC軸方向の結晶子サイズLcは、その黒鉛構造に関する具体的な指標であり、d002が小さいほど、及びLcが大きいほど黒鉛構造が発達して黒鉛化度が進んでいることを表す指標であることは、本願出願前周知の事項である(要すれば特開平7-282811号公報【0046】参照)。
一方、刊行物1発明の気相成長炭素繊維は、(1-ウ)の記載によると、d002が3.39Å以下と小さく、結晶性が高いものであるから、上記周知の事項に基づき、黒鉛構造が発達した「黒鉛系」の炭素材料であるといえる。
そして、同記載によると、結晶性が高いほど電池の放電容量は高いのであるから、刊行物1発明の気相成長炭素繊維として、高い放電容量を得るために、黒鉛化度の指標であるLcについても検討し、Lc250Å以上の高い黒鉛化度のものとすることも、当業者が適宜なし得る設計的事項といえる。

(ii)相違点2について
刊行物2には、「正極、負極及び有機電解液を基本構成とする二次電池であって、該有機電解液が、含フッ素エーテルを含有することを特徴とする非水電解液二次電池」(2-ア)に関して、従来は、(2-イ)に記載の「有機電解液の溶媒・・・が分解や変質し、・・・用いる溶媒の安定性が十分ではなく、従ってサイクル安定性は十分ではないという問題点があった」ところ、(2-ウ)に例示される「CH3〔OCH(CF3)CH2〕nOCH3(n=1?7)」等の含フッ素エーテルを、(2-カ)に記載の量で有機電解液に添加することにより、(2-エ)に記載の「充放電により添加した含フッ素エーテルが反応あるいは分解して負極上に堆積して負極表面を変性し、負極と電解液や電解質との反応を抑制する」と推定される作用により「サイクル安定性が向上する」効果を奏し、この効果は、ECやEMCの混合溶媒を用いた電解液を用いた場合(2-オ)、及び負極として炭素質材料を用いた場合に良好である(2-キ)と記載されている。
そして、(「CH3〔OCH(CF3)CH2〕nOCH3(n=1?7)」のうち、少なくともn=6のものは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)によるポリスチレン換算での重量平均分子量が200以上の高分子化合物であると認められるし(そのように認定しないと、本願明細書【0030】の記載と矛盾する。)、刊行物2(2-カ)に含フッ素エーテル化合物の好ましい添加量として記載された「電解液に対して0.1体積%ないし30体積%の範囲」は、重量部割合に換算すると、本願発明1において特定される「電解液溶媒100重量部に対して0.1重量部以上10重量部以下」の範囲と重複する程度と認められる(以下、上記重複する範囲を「適量」という。)。
以上によると、負極に炭素材料を用いる有機電解液二次電池において、ECとEMCの混合溶媒を用いる有機電解液に、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)によるポリスチレン換算での重量平均分子量が200以上の「CH3〔OCH(CF3)CH2〕nOCH3(n=6)」であるフッ素含有高分子エーテル化合物を適量添加すると、負極と溶媒の反応が抑制され、溶媒の分解が抑制されて、サイクル安定性が向上することは、本願出願前公知の事項であるといえる。
一方、刊行物1発明の電池は、(1-ウ)の記載によると、負極に用いる黒鉛系炭素材料のd002が3.39Å以下の結晶性が高いものであるため、放電容量が大きいが、溶媒の分解が起こりやすいという課題を有する電池であるといえる。
そうすると、刊行物1発明において、上記の課題を解決するために、刊行物2に示される公知の事項を適用して、「CH3〔OCH(CF3)CH2〕nOCH3(n=6)」であるフッ素含有高分子エーテル化合物を電解液に適量含有せしめることにより、上記相違点2における本願発明1の特定事項を導出することは、当業者が容易になし得たことといえる。

(4)請求人の主張に対する補足
ア 請求人は、平成19年5月28日付けの意見書第2頁最終行?第3頁第18行において、以下のように主張している。
「・・・結晶性の高い黒鉛を負極に用い、電解液溶媒に鎖状エステルを50%を超えて使用した場合には、充放電サイクル特性に悪影響がでる・・・事項が公知である下では、結晶性の高い黒鉛を含有する負極と、鎖状エステルを50体積%を超えて含有している混合溶媒を用いた有機電解液とを組み合わせてなる有機電解液二次電池において、更に別の化合物を有機電解液に添加することで、刊行物2で意図している「充放電を繰り返したときの容量変化の低減である『サイクル安定性の向上』(刊行物2の段落[0002])」とは異なる「充放電サイクルの増加に伴う負荷特性低下の抑制」を達成できることは、溶媒種を問わない技術を開示する刊行物2の記載に、刊行物1の記載を組み合わせても、想起することは困難です。よって、本願請求項1の発明は、刊行物1および刊行物2の記載からは予測困難な有利な効果を奏し得ると考えます。しかも、刊行物2には、負極に・・・実施例では、d002が3.44ÅでLcが52Åに過ぎないニードルコークスが用いられているだけですので(段落[0037])、このように面間隔が大きく結晶性が低い炭素材料を用いた場合の効果については刊行物2から把握できても、本願発明や刊行物1の請求項7に記載のように、d002が3.4Å以下(3.39Å以下)の炭素材料を用いた負極と、特定組成の溶媒を有する電解液とを組み合わせたときの、電解液溶媒の反応性や安定性は、刊行物2に記載の結果から容易に予測できるものではなく、刊行物2に記載の「CH3〔OCH(CF3)CH2〕nOCH3(n=1?7)」などの含フッ素エーテルの電解液への添加が、上記の負極と電解液とを組み合わせた電池において、有効であるか否か(特に充放電サイクルの増加に伴う負荷特性低下を抑制するに当たって有効であるか否か)は、到底予測し得ません。」

イ 以上の主張は、要するに、本願発明1は、特定の電解液溶媒と黒鉛質炭素材料負極を有する電池に特定化合物を添加することにより、「充放電サイクルの増加に伴う負荷特性低下の抑制」の効果を奏するのであるから、特定の電解液溶媒と黒鉛質炭素材料負極を有する刊行物1発明に、刊行物2に記載の電解質溶媒が特定されず、黒鉛質炭素負極でない電池における特定化合物の添加技術を組み合わせても、本願発明1の上記効果を想起することは困難である、という点にあると認められる。

ウ しかしながら、刊行物1発明に刊行物2記載の技術を組み合わせて本願発明1の特定事項を導いたことにより、本願発明1が刊行物1や刊行物2に記載のない効果を奏するとしても、その組合せに動機付けがあり、かつ、その組合せにより奏する効果が当業者において予測可能である限り、本願発明1は当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。(知財高判平18.10.4(平17(行ケ)10493「透過型スクリーン」第33頁参照)

エ そこでみるに、刊行物2における特定化合物の添加技術を、「結晶性が高い炭素材料を負極に用いるために、溶媒の分解が起こりやすい」という課題を有する刊行物1発明に、その課題解決手段として、刊行物2記載の特定化合物の添加技術を組み合わせる動機付けが存在することは、前記「V.(3)(ii)」に示すとおりである。
そして、そのような組合せであれば、特定化合物の添加がもたらす負極と電解液との反応を抑制する作用、及び当該作用によるサイクル特性安定性の向上効果は、(2-エ)の記載に基づき当業者が容易に予測し得るものであるところ、本願発明1における「充放電サイクルの増加に伴う負荷特性低下の抑制」の効果は、本願明細書【0005】の記載によれば、負極と電解液の溶媒との反応を抑制して反応生成物が負極に付着することを抑制するという作用によってもたらされるものであって、その作用自体が刊行物1発明に刊行物2記載の特定化合物を組み合わせることにより予測可能なのであるから、その作用によってもたらされる本願発明1の上記の効果も、当業者が予測可能であって、格別のものとはいえない。

オ したがって、請求人の上記主張は当を得たものではない。

VI.むすび
以上のとおり、本願発明1は、刊行物1発明及び刊行物2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-28 
結審通知日 2007-06-29 
審決日 2007-07-11 
出願番号 特願平8-283139
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高木 正博  
特許庁審判長 吉水 純子
特許庁審判官 平塚 義三
井上 猛
発明の名称 有機電解液二次電池  
代理人 三輪 鐵雄  

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