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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1163565
審判番号 不服2004-23461  
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-11-17 
確定日 2007-08-29 
事件の表示 特願2001-270759「健康情報管理システム、及び健康情報管理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月20日出願公開、特開2003- 85290〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成13年9月6日の出願であって、平成16年10月6日付け(発送日:10月19日)で拒絶査定がされ、これに対して、同年11月17日に拒絶査定不服審判が請求されると共に同年12月15日付けで手続補正がされたものである。

【2】平成16年12月15日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
明細書についての平成16年12月15日付手続補正を却下する。

[補正却下の決定の理由]
上記平成16年12月15日付け手続補正(以下、「本件手続補正」という)により、特許請求の範囲における請求項1ないし請求項4の発明は、補正前の、

「【請求項1】
企業及び学校を含む特定の集団において定期的或いは不定期的に複数回に亘って継続して実施される健康診断を受診した受診者の健康に関する情報を健康管理コンピュータで管理する健康情報管理システムであって、
前記健康管理コンピュータは、
前記受診者毎の健康情報を作成し、健康情報データベースに記憶する記憶手段と、
健康イベントに参加する前記受診者を前記健康情報に基づいて抽出する抽出手段と、
前記健康イベントの実行履歴情報を受付ける実行情報受付手段と、
前記健康情報データベースを更新する更新手段と、
医療機関での受診勧奨を行なう要検査者を抽出する要検査者抽出手段と、
前記要検査者からの受診情報を受付ける受診情報受付手段と、
前記健康情報データベースを更新する第二更新手段と、
更新された前記健康データベースを更新前と比較する比較評価手段と、
報告書を作成し、出力する報告書作成手段とを具備し、
前記健康診断の診断結果及び前記受診者の生活習慣に関する生活習慣調査結果に基づいて作成された前記受診者毎の前記健康情報を前記記憶手段によって前記健康情報データベースに記憶するステップ、
前記健康診断と次回の健康診断の間に行なわれる生活習慣を改善するための、医師を含む健康関連スタッフから前記診断結果に関する説明及び指導が行なわれる健康説明会、郵便または電子メールを含む通信手段を利用して、前記受診者に対して生活改善指導を行なう健康通信指導、前記受診者を召集し、前記受診者同士の体験談の発表を含む集団教育を行なう健康セミナーの少なくともいずれか一つを含み、互いの前記健康診断の間に種類、実施順、実施頻度、及び実施回数をそれぞれ組合わせて設定された実施スケジュールに基づいて実施される健康イベントに参加する前記受診者を前記健康情報データベースの前記健康情報に基づいて前記抽出手段によって抽出するステップ、
抽出された前記受診者が参加した、前記健康イベントの種類、実施順、実施頻度、及び実施回数をそれぞれ組合せて設定された前記実施スケジュールに基づいて実施される前記健康イベントの参加履歴、及び体験履歴を含む前記実行履歴情報を前記実行情報受付手段によって受付けるステップ、
受付けた前記実行履歴情報と新たに実施された前記健康診断の診断結果及び前記生活習慣調査結果との少なくともいずれか一方を前記受診者の前記健康情報に追加し、前記健康情報データベースを前記更新手段によって更新するステップ、
前記診断結果に基づいて、前記医療機関での精密検査などが必要な前記要検査者を前記要検査者抽出手段によって抽出するステップ、
抽出された前記要検査者から前記医療機関での前記精密検査の結果、通院している途中の受診状況、または事情による受診ができない旨を示す不受診理由を含む前記受診情報を前記受診情報受付手段によって受付けるステップ、
受付けた前記受診情報を前記健康情報に追加し、前記健康情報データベースを前記第二更新手段によって更新するステップ、
前記受診者別または前記集団別の少なくともいずれか一方の前記健康イベントに参加したことに伴う健康の改善度を前記比較評価手段によって比較し、評価するステップ、
比較された健康改善評価の結果を基にして前記報告書作成手段によってグラフ化した前記報告書を作成し、出力するステップを含むことを特徴とする健康情報管理システム。
【請求項2】
前記健康管理コンピュータは、
前記受診者の前記健康情報を修正する修正手段をさらに備え、
前記健康説明会において前記医師と前記受診者が個別に面談し、前記診断結果の修正が前記医師によって判定された際に前記医師により作成される前記修正情報に基づいて前記健康情報を前記修正手段によって修正するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の健康情報管理システム。
【請求項3】
受診者毎の健康情報を作成し、健康情報データベースに記憶する記憶手段、健康イベントに参加する前記受診者を前記健康情報に基づいて抽出する抽出手段、
前記健康イベントの実行履歴情報を受付ける実行情報受付手段、前記健康情報データベースを更新する更新手段、医療機関での受診勧奨を行なう要検査者を抽出する要検査者抽出手段、
前記要検査者からの受診情報を受付ける受診情報受付手段、前記健康情報データベースを更新する第二更新手段、更新された前記健康データベースを更新前と比較する比較評価手段、及び報告書を作成し、出力する報告書作成手段を具備し、
前記健康診断の診断結果及び前記受診者の生活習慣に関する生活習慣調査結果に基づいて作成された前記受診者毎の前記健康情報を前記記憶手段によって前記健康情報データベースに記憶するステップ、
前記健康診断と次回の健康診断の間に行なわれる生活習慣を改善するための、医師を含む健康関連スタッフから前記診断結果に関する説明及び指導が行なわれる健康説明会、郵便または電子メールを含む通信手段を利用して、前記受診者に対して生活改善指導を行なう健康通信指導、前記受診者を召集し、前記受診者同士の体験談の発表を含む集団教育を行なう健康セミナーの少なくともいずれか一つを含み、互いの前記健康診断の間に種類、実施順、実施頻度、及び実施回数をそれぞれ組合わせて設定された実施スケジュールに基づいて実施される健康イベントに参加する前記受診者を前記健康情報データベースの前記健康情報に基づいて前記抽出手段によって抽出するステップ、
抽出された前記受診者が参加した、前記健康イベントの種類、実施順、実施頻度、及び実施回数をそれぞれ組合せて設定された前記実施スケジュールに基づいて実施される前記健康イベントの参加履歴、及び体験履歴を含む前記実行履歴情報を前記実行情報受付手段によって受付けるステップ、
受付けた前記実行履歴情報と新たに実施された前記健康診断の診断結果及び前記生活習慣調査結果との少なくともいずれか一方を前記受診者の前記健康情報に追加し、前記健康情報データベースを前記更新手段によって更新するステップ、前記診断結果に基づいて、前記医療機関での精密検査などが必要な前記要検査者を前記要検査者抽出手段によって抽出するステップ、
抽出された前記要検査者から前記医療機関での前記精密検査の結果、通院している途中の受診状況、または事情による受診ができない旨を示す不受診理由を含む前記受診情報を前記受診情報受付手段によって受付けるステップ、受付けた前記受診情報を前記健康情報に追加し、前記健康情報データベースを前記第二更新手段によって更新するステップ、
前記受診者別または前記集団別の少なくともいずれか一方の前記健康イベントに参加したことに伴う健康の改善度を前記比較評価手段によって比較し、評価するステップ、比較された健康改善評価の結果を基にして前記報告書作成手段によってグラフ化した前記報告書を作成し、出力するステップを含み、健康管理コンピュータを機能させることを特徴とする健康情報管理プログラム。
【請求項4】
前記受診者の前記健康情報を修正する修正手段をさらに備え、
前記健康説明会において前記医師と前記受診者が個別に面談し、前記診断結果の修正が前記医師によって判定された際に前記医師により作成される前記修正情報に基づいて前記健康情報を前記修正手段によって修正するステップをさらに含み、前記健康管理コンピュータをさらに機能させることを特徴とする請求項3に記載の健康情報管理プログラム。」

から、補正後の

「【請求項1】
企業及び学校を含む特定の集団において定期的或いは不定期的に複数回に亘って継続して実施される健康診断を受診した受診者の健康に関する情報を健康管理コンピュータで管理する健康情報管理システムであって、
前記健康管理コンピュータは、
前記健康診断の各検査項目毎の測定値が判定分類された診断結果及び生活習慣に関する生活習慣調査結果を含む前記受診者毎の健康情報を健康情報データベースに記憶する記憶手段と、
前記測定値が標準値の範囲から逸脱した前記健康情報を抽出する抽出手段と、
抽出された前記健康情報に対応する前記受診者の参加した健康イベントの参加履歴及び指導履歴を示す実行履歴情報の入力を受付ける実行情報受付手段と、
受付けた前記実行履歴情報及び新たに実施された健康診断の前記診断結果及び前記生活習慣調査結果を前記受診者の前記健康情報に追加し、前記健康情報データベースを更新する更新手段と、
前記測定値が前記標準値の範囲から逸脱し、医療機関での再検査が必要な要検査者の前記健康情報を抽出する要検査者抽出手段と、
抽出された前記健康情報に対応する前記要検査者の前記医療機関での受診状況を示す受診情報の受付有無を判断し、受付けが有る場合に受付ける受診情報受付手段と、
受付けた前記受診情報に基づいて前記健康情報データベースを更新する第二更新手段と、
更新された前記健康情報データベースの前記健康情報及び更新前の前記健康情報データベースに蓄積された過去データを比較し、前記健康イベントへの参加状況と前記検査項目における前記診断結果の変化を、前記受診者別または前記集団別に数値化またはグラフ化して示す比較評価手段とを具備し、
前記健康イベントは、前記健康診断と次回の健康診断の間に行なわれる生活習慣を改善するための、医師を含む健康関連スタッフから前記診断結果に関する説明及び指導が行なわれる健康説明会、郵便または電子メールを含む通信手段を利用して、前記受診者に対して生活改善指導を行なう健康通信指導、前記受診者を召集し、前記受診者同士の体験談の発表を含む集団教育を行なう健康セミナーの少なくともいずれか一つを含み、互いの前記健康診断の間に種類、実施順、実施頻度、及び実施回数をそれぞれ組合わせて設定された実施スケジュールに基づいて実施され、
前記実行履歴情報は、抽出された前記受診者が参加した、前記健康イベントの種類、実施順、実施頻度、及び実施回数をそれぞれ組合せて設定された前記実施スケジュールに基づいて実施される前記健康イベントの参加履歴、及び体験履歴を含み、
前記受診情報は、抽出された前記要検査者から前記医療機関での前記再検査の結果、通院している途中の受診状況、または事情による受診ができない旨を示す不受診理由を含むことを特徴とする健康情報管理システム。
【請求項2】
前記健康管理コンピュータは、
前記健康説明会において前記医師と前記受診者が個別に面談し、前記診断結果の修正が必要と前記医師によって判断され、前記実行履歴情報に付された修正情報の入力を受付け、前記健康情報データベースの前記健康情報の前記診断結果を修正する修正手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の健康情報管理システム。
【請求項3】
前記健康診断の各検査項目毎の測定値が判定分類された診断結果及び生活習慣に関する生活習慣調査結果を含む前記受診者毎の健康情報を健康情報データベースに記憶する記憶手段、前記測定値が標準値の範囲から逸脱した前記健康情報を抽出する抽出手段、
抽出された前記健康情報に対応する前記受診者の参加した健康イベントの参加履歴及び指導履歴を示す実行履歴情報の入力を受付ける実行情報受付手段、受付けた前記実行履歴情報及び新たに実施された健康診断の前記診断結果及び前記生活習慣調査結果を前記受診者の前記健康情報に追加し、前記健康情報データベースを更新する更新手段、
前記測定値が前記標準値の範囲から逸脱し、医療機関での再検査が必要な要検査者の前記健康情報を抽出する要検査者抽出手段、抽出された前記健康情報に対応する前記要検査者の前記医療機関での受診状況を示す受診情報の受付有無を判断し、受付が有る場合に受付ける受診情報受付手段、
受付けた前記受診情報に基づいて前記健康情報データベースを更新する第二更新手段、
及び更新された前記健康情報データベースの前記健康情報及び更新前の前記健康情報データベースに蓄積された過去データを比較し、前記健康イベントへの参加状況と前記検査項目における前記診断結果の変化を、前記受診者別または前記集団別に数値化またはグラフ化して示す比較評価手段を具備し、
前記健康イベントは、前記健康診断と次回の健康診断の間に行なわれる生活習慣を改善するための、医師を含む健康関連スタッフから前記診断結果に関する説明及び指導が行なわれる健康説明会、郵便または電子メールを含む通信手段を利用して、前記受診者に対して生活改善指導を行なう健康通信指導、前記受診者を召集し、前記受診者同士の体験談の発表を含む集団教育を行なう健康セミナーの少なくともいずれか一つを含み、互いの前記健康診断の間に種類、実施順、実施頻度、及び実施回数をそれぞれ組合わせて設定された実施スケジュールに基づいて実施され、前記実行履歴情報は、抽出された前記受診者が参加した、前記健康イベントの種類、実施順、実施頻度、及び実施回数をそれぞれ組合せて設定された前記実施スケジュールに基づいて実施される前記健康イベントの参加履歴、及び体験履歴を含み、
前記受診情報は、抽出された前記要検査者から前記医療機関での前記再検査の結果、通院している途中の受診状況、または事情による受診ができない旨を示す不受診理由を含み、健康管理コンピュータを機能させることを特徴とする健康情報管理プログラム。
【請求項4】 前記健康説明会において前記医師と前記受診者が個別に面談し、前記診断結果の修正が必要と前記医師によって判断され、前記実行履歴情報に付された修正情報の入力を受付け、前記健康情報データベースの前記健康情報の前記診断結果を修正する修正手段として、前記健康管理コンピュータをさらに機能させることを特徴とする請求項3に記載の健康情報管理プログラム。」

に補正された。
上記補正において、補正前の請求項1の「報告書を作成し、出力する報告書作成手段」、「比較された健康改善評価の結果を基にして前記報告書作成手段によってグラフ化した前記報告書を作成し、出力するステップ」は、補正後の請求項1では削除されている。
また、補正前の請求項1の「健康イベントに参加する前記受診者を前記健康情報に基づいて抽出する手段」も補正後の請求項1では削除されている。
さらに、補正前の請求項1の「医療機関での受診勧奨を行う要検査者を抽出する要検査者抽出手段」は、補正後は「医療機関での再検査が必要な要検査者の前記健康情報を抽出する要検査者抽出手段」に変更されている。
さらにまた、請求項3についても請求項1と同様の補正がなされている。

上記補正は、特許請求の範囲を実質的に拡張ないしは変更するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは認められない。
また、誤記の訂正とも明りょうでない記載の釈明であるとも認められない。
したがって、これらの補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

【3】本願の発明について
平成16年12月15日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、本願発明という。)は、平成16年7月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定された次のとおりのものである。

「【請求項1】
企業及び学校を含む特定の集団において定期的或いは不定期的に複数回に亘って継続して実施される健康診断を受診した受診者の健康に関する情報を健康管理コンピュータで管理する健康情報管理システムであって、
前記健康管理コンピュータは、
前記受診者毎の健康情報を作成し、健康情報データベースに記憶する記憶手段と、
健康イベントに参加する前記受診者を前記健康情報に基づいて抽出する抽出手段と、
前記健康イベントの実行履歴情報を受付ける実行情報受付手段と、
前記健康情報データベースを更新する更新手段と、
医療機関での受診勧奨を行なう要検査者を抽出する要検査者抽出手段と、
前記要検査者からの受診情報を受付ける受診情報受付手段と、
前記健康情報データベースを更新する第二更新手段と、
更新された前記健康データベースを更新前と比較する比較評価手段と、
報告書を作成し、出力する報告書作成手段とを具備し、
前記健康診断の診断結果及び前記受診者の生活習慣に関する生活習慣調査結果に基づいて作成された前記受診者毎の前記健康情報を前記記憶手段によって前記健康情報データベースに記憶するステップ、
前記健康診断と次回の健康診断の間に行なわれる生活習慣を改善するための、医師を含む健康関連スタッフから前記診断結果に関する説明及び指導が行なわれる健康説明会、郵便または電子メールを含む通信手段を利用して、前記受診者に対して生活改善指導を行なう健康通信指導、前記受診者を召集し、前記受診者同士の体験談の発表を含む集団教育を行なう健康セミナーの少なくともいずれか一つを含み、互いの前記健康診断の間に種類、実施順、実施頻度、及び実施回数をそれぞれ組合わせて設定された実施スケジュールに基づいて実施される健康イベントに参加する前記受診者を前記健康情報データベースの前記健康情報に基づいて前記抽出手段によって抽出するステップ、
抽出された前記受診者が参加した、前記健康イベントの種類、実施順、実施頻度、及び実施回数をそれぞれ組合せて設定された前記実施スケジュールに基づいて実施される前記健康イベントの参加履歴、及び体験履歴を含む前記実行履歴情報を前記実行情報受付手段によって受付けるステップ、
受付けた前記実行履歴情報と新たに実施された前記健康診断の診断結果及び前記生活習慣調査結果との少なくともいずれか一方を前記受診者の前記健康情報に追加し、前記健康情報データベースを前記更新手段によって更新するステップ、
前記診断結果に基づいて、前記医療機関での精密検査などが必要な前記要検査者を前記要検査者抽出手段によって抽出するステップ、
抽出された前記要検査者から前記医療機関での前記精密検査の結果、通院している途中の受診状況、または事情による受診ができない旨を示す不受診理由を含む前記受診情報を前記受診情報受付手段によって受付けるステップ、
受付けた前記受診情報を前記健康情報に追加し、前記健康情報データベースを前記第二更新手段によって更新するステップ、
前記受診者別または前記集団別の少なくともいずれか一方の前記健康イベントに参加したことに伴う健康の改善度を前記比較評価手段によって比較し、評価するステップ、
比較された健康改善評価の結果を基にして前記報告書作成手段によってグラフ化した前記報告書を作成し、出力するステップを含むことを特徴とする健康情報管理システム。」

【4】引用文献
原査定の拒絶理由(平成16年5月18日付拒絶理由通知書)において引用文献1として引用された、「日立トータルウエルネスシステム HITWELL,株式会社日立製作所,1994年5月1日,第4版,1-77頁」(以下、「引用文献1」という。)には、表・図面と共に次の(ア)?(コ)の事項が記載されている。
(ア)「1 生涯を通じた健康づくりをサポートするトータルシステムです。
(1)健診業務から健康増進(指導)業務まで、健康管理業務を幅広くサポートします。
(中略)
(5)健診・健康増進の種類に関係なく、個人単位で検査データを管理していますので、経年的なデータ管理が容易になります。
2 多様なニーズに容易に対応できるシステムです。
(中略)
(2)検査結果データのグラフ表示ができますので、データを有効活用できます。
(3)検査データ参照画面に過去の検査データを時系列に出力することができますので、面接時の指導等に有効です。
(中略)
4 ワークステーション3050を活用した、分散形システムです。」(第2ページ)
(イ)「図2.1-1 トータルウエルネスの概念
表2.1-1 業務の適用範囲(1/3)?(3/3)」(第4ページ?第7ページ)
(ウ)「表2.4.2-1 検査入力業務の機能一覧(1/2)
項番1 検査データ入力 受信日、区分、入力IDの範囲を指定することにより、検査データ入力対象とする受診者を決定し、データ入力をする検査項目を指定して、検査データを画面入力します。
項番7 検査データベリファイ入力 ・・今回入力検査データで検査データを更新したい場合はPFキーを押します。
表2.4.2-1 検査入力業務の機能一覧(2/2)
項番14 検査データ更新 表示した画面から直接、検査データ(自動計算、自動判定等は除く)の修正を行います。」(第17ページ?第18ページ)
(エ)「表2.6.2-1 帳票出力業務の機能一覧(1/3)
表2.6.2-1 帳票出力業務の機能一覧(2/3)
項番16 要精検者一覧表 日付、区分の範囲を指定し、それに該当し、かつ要精検者抽出条件に該当する受診者の基本情報(氏名、健診者ID等)及び出力検査項目のデータを一覧表として出力します。
表2.6.2-1 帳票出力業務の機能一覧(3/3)」(第26ページ?第28ページ)
(オ)「2.6.4 出力帳票例
図2.6.4-1?図2.6.4-9」(第32ページ?第40ページ)
(カ)「表2.9.2-1 栄養指導業務機能一覧
図2.9.2-1 栄養指導業務の流れ」(第49ページ?第50ページ)
(キ)「表2.10.2-1 問診票入力業務機能一覧
1 問診票入力 問診票に記載されている嗜好品・食習慣・日常生活等の質問事項についての被検者からの回答を行います。」(第53ページ)
(ク)「表2.11.2-1 運動指導業務の機能一覧
項番1 運動指導検査データ入力 運動指導用の検査として測定した各種検査(医学的検査、運動機能検査等)の測定結果の入力を行います。
図2.11.2-1 運動指導業務の流れ
図2.11.3-1 運動指導登録・照会画面」(第57ページ?第59ページ)
(ケ)「表2.12.2-1 生活指導業務の機能一覧
項番1 スクリーニング処理 問診票の回答に対し、事前に準備したスクリーニングパラメタより有疾患の可能性のある被検者の抽出を行い、パラメタに登録されている評価値を設定します。
項番2 ピックアップ者一覧表出力 スクリーニング処理で抽出された被検者の情報を一覧表に出力します。
項番4 生活指導票出力 被検者の生活指導票の出力を行います。
図2.12.2-1 生活指導業務の流れ」(第61ページ?第62ページ)
(コ)「表2.13.2-1 支援業務(健康増進システム)の機能一覧
項番6 運動コードマスタ設定 運動指導登録・照会で被検者に対して指導を行う為の運動情報の登録・更新・削除を行います。」(第65ページ)

上記(ア)?(コ)に記載された表・図面等に記載された事項を纏めると、引用文献1には以下の発明(以下、「引用文献1発明」という。)が記載されていると認められる。
「集団における健診業務から健康増進(指導)業務までの健康管理業務をコンピュータでサポートするシステムであって、
受診者毎の健康診断の検査データ、検査結果および問診票の回答データを入力して管理し、また、データを更新し、
問診票の回答に対し、スクリーニングパラメータより有疾患の可能性がある被検者の抽出を行い、生活指導票を出力して被検者に送り、
二次検査抽出条件に該当する要精検者とその検査情報を一覧表にして出力し、
食事指導、栄養指導、運動指導の履歴、運動指導時の測定結果等のデータをコンピュータに入力して管理し、
検査結果データ、過去の検査データ等を帳票出力するシステム」

【5】対比
引用文献1発明と本願発明を対比すると、引用文献1発明の「健康管理業務をコンピュータでサポートするシステム」は、本願発明の「健康管理コンピュータ」ないし「健康情報管理システム」に対応することは明らかであり、引用文献1発明の「検査データや検査結果、運動指導等のデータをコンピュータで管理する」ことは、本願発明の「健康情報データベース」を備えることと同じである。
そして、引用文献1発明の「受診者」、「検査結果」、「要精検者」、「問診票の回答データ」、「帳票」は、それぞれ、本願発明の「受診者」、「診断結果」、「要検査者」、「生活習慣調査結果」、「報告書」に相当し、また、本願発明の「健康情報」は、少なくとも「健康診断の診断結果」及び「生活習慣調査結果」からなるものであるから、引用文献1の「検査結果」および「問診票の回答データ」は、本願発明の「健康情報」に含まれるといえる。
さらに、引用文献1発明の「運動指導」、「食事指導」、「栄養指導」等は、本願発明の「健康イベント」と実質的に同じものと認められるから、「食事指導、栄養指導、運動指導の履歴、運動指導時の測定結果等のデータ」は「実行履歴情報」に対応する。
さらにまた、引用文献1発明の「生活指導票」は、「問診票に基づいて抽出された被検者」に送られる健康指導のため健康イベントといえるものであるから、「問診票の回答に対し、スクリーニングパラメータより有疾患の可能性がある被検者の抽出を行い、生活指導票を出力して被検者に送る」ことは、本願発明の「郵便または電子メールを含む通信手段を利用して、受診者に対して生活改善指導を行う健康通信指導を含む健康イベントに参加する受診者を健康情報データベースの健康情報に基づいて抽出手段によって抽出するステップ」に対応する。
以上のことから、両者は、
<一致点>
「企業及び学校を含む特定の集団において定期的或いは不定期的に複数回に亘って継続して実施される健康診断を受診した受診者の健康に関する情報を健康管理コンピュータで管理する健康情報管理システムであって、
前記健康管理コンピュータは、
前記受診者毎の健康情報を作成し、健康情報データベースに記憶する記憶手段と、
健康イベントに参加する前記受診者を前記健康情報に基づいて抽出する抽出手段と、
前記健康イベントの実行履歴情報を受付ける実行情報受付手段と、
前記健康情報データベースを更新する更新手段と、
医療機関での受診勧奨を行なう要検査者を抽出する要検査者抽出手段と、
報告書を作成し、出力する報告書作成手段とを具備し、
前記健康診断の診断結果及び前記受診者の生活習慣に関する生活習慣調査結果に基づいて作成された前記受診者毎の前記健康情報を前記記憶手段によって前記健康情報データベースに記憶するステップ、
前記健康診断と次回の健康診断の間に行なわれる生活習慣を改善するための、郵便または電子メールを含む通信手段を利用して、前記受診者に対して生活改善指導を行なう健康通信指導、を含み、実施される健康イベントに参加する前記受診者を前記健康情報データベースの前記健康情報に基づいて前記抽出手段によって抽出するステップ、
抽出された前記受診者が参加した、実施される前記健康イベントの参加履歴、及び体験履歴を含む前記実行履歴情報を前記実行情報受付手段によって受付けるステップ、
受付けた前記実行履歴情報と新たに実施された前記健康診断の診断結果及び前記生活習慣調査結果との少なくともいずれか一方を前記受診者の前記健康情報に追加し、前記健康情報データベースを前記更新手段によって更新するステップ、
前記診断結果に基づいて、前記医療機関での精密検査などが必要な前記要検査者を前記要検査者抽出手段によって抽出するステップ、
前記報告書作成手段によって前記報告書を作成し、出力するステップを含むことを特徴とする健康情報管理システム。」
である点で一致しており、また、以下の点で相違している。

<相違点1>
本願発明は、「要検査者からの受診情報を受け付ける受診情報受付手段と、前記健康情報データベースを更新する第二更新手段」と「抽出された要検査者から医療機関での精密検査の結果、通院している途中の受診状況、または事情による受診ができない旨を示す不受診理由を含む受診情報を受信情報受付手段によって受付けるステップ」と「受け付けた受診情報を健康情報に追加し、健康情報データベースに第二更新手段によって更新するステップ」を備えるのに対し、引用文献1には、要検査者について、医療機関での受診の状況等を健康情報データベースに追加入力することは記載されていない点。
<相違点2>
本願発明は、「報告書」に関し、「受診者別または集団別の少なくともいずれか一方の健康イベントに参加したことに伴う健康の改善度を比較評価手段によって比較し、評価するステップ」と「比較された健康改善評価の結果を基にしてグラフ化した報告書を作成するステップ」を備えるのに対し、引用文献1には、時系列的な検査結果等を表記した帳票を作成することは記載されているものの、上記のような報告書を作成することは記載されていない点。
<相違点3>
本願発明は、「健康イベント」が、「健康イベントの種類、実施順、実施頻度、及び実施回数をそれぞれ組み合わせて設定された実施スケジュールに基づいて実施される」ものであるのに対し、引用文献1には上記事項は記載されていない点。

【6】判断
上記の相違点について検討する。
<相違点1>について
引用文献1の、データベースに入力される「問診票の回答データ」について検討するに、一般の問診票では、どのような「既往症」があるかとか、どのような病院に通院・入院したか、あるいは現在の通院状態はどうかなど、医療機関での受診状況を含めて回答を求めることは通常行われることであり、問診票の回答データ内に医療機関での受診状況を含ませることは容易に予測できるところである。
しかして、本願発明では「生活習慣調査結果」以外に、別に医療機関での受診状況等のデータを入力しているが、引用文献1の記載から、医療機関での受診状況を入力することが容易に予測できる以上、相違点1に係る事項も容易に想到できると言わざるを得ない。
また、健康診断や検診データ、治療データなど、さまざまな医療データを一括して管理する医用のデータベースは、従来から知られており(例えば、特開平11-85875号公報、特開平6-83880号公報、特開平3-193029号公報などを参照されたい。)、この点からも、要検査者の健康情報に加えて医療機関での受診状況等も入力・管理する程度のことに特段の困難性はないと認められる。
<相違点2>について
健康診断の結果等を受診者に提示する場合、診断結果を、その評価も含めて時系列的にグラフ化して表示することは、よく知られたことである(例えば、特開平6-83880号公報、特開平6-105812号公報、特開平6-20116号公報などを参照されたい。なお、相違点1の欄で示した公報を含めて、これらの公報は、新たな引用文献を示したものでなく、あくまで一般的な周知慣用技術を示したものにすぎない。)。
そして、健康イベントの参加状況も含めて診断結果を時系列的に表示することは、適宜なし得る程度のことと認められるので、相違点2について格別の点を認めることはできない。
<相違点3>について
本願発明の「健康イベントの種類、実施順、実施頻度、及び実施回数をそれぞれ組み合わせて設定された実施スケジュールに基づいて実施される」という事項は、「健康イベント」を特定している事項であると一応認定できるが、本願明細書の記載を勘案しても、その事項に「予め設定されたスケジュールに基いて実施される」という以上の意味は認められない。
そして、引用文献1発明における「運動指導」、「食事指導」、「栄養指導」等をみると、それらの「指導」が、予め定められた実施スケジュールに沿って行われていることは当然に予測できるところである。
したがって、相違点3は当業者が容易に想到できたものと認める。

さらに、本願発明の効果を勘案しても、本願発明が引用文献1に記載された発明及び周知慣用技術から容易に想到できる範囲を超える格別な点を認めることはできない。
以上の通りであるから、上記相違点はいずれも引用文献1発明及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に想到することができたということができる。

【7】むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-21 
結審通知日 2007-06-26 
審決日 2007-07-09 
出願番号 特願2001-270759(P2001-270759)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
P 1 8・ 572- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 智康松田 直也  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 青柳 光代
長 由紀子
発明の名称 健康情報管理システム、及び健康情報管理プログラム  
代理人 前田 勘次  

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