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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A47J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47J
管理番号 1163804
審判番号 不服2005-25043  
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-27 
確定日 2007-09-05 
事件の表示 特願2003-355770「コーヒー/ティーバッグ抽出具」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月12日出願公開、特開2005-118239〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年10月16日の出願であって、平成17年12月1日付け(発送日:同月5日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月27日に審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年12月27日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成17年12月27日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)本件補正による補正
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された。

「被抽出物が収容される、上端が開放した袋状のフィルター部と、上端及び下端が開放した筒状に広げられる通気部とを備え、前記フィルター部の前記上端に前記通気部の下端が接合されており、前記通気部を筒状にし易くするため、前記通気部に長さ方向に延びた折り曲げ線が設けられており、前記通気部が、抽出時に通気口のみならず持ち手としても用いられており、前記通気部を持って、湯に浸した前記フィルター部を上下左右に攪拌浮遊させることにより、前記湯を前記フィルター部内に浸透させ循環させて、前記被抽出物より抽出させるように構成されていることを特徴とするコーヒー/ティーバッグ抽出具。」

上記補正は、「前記通気部を持って、湯に浸した前記フィルター部を上下左右に攪拌浮遊させることにより、前記湯を前記フィルター部内に浸透させ循環させて、前記被抽出物より抽出させるように構成されている」との限定を付加するものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
ア.原査定の拒絶の理由に引用した特開2001-137118号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の記載がある。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コーヒーバッグ、ティーバッグ、さらには破砕した鰹節や鯖節などを入れて用いるだしパックなどに応用可能な抽出用バッグに関する。」

・「【0010】コーヒーバッグ1は、図3に示すように全体扁平で縦長形状のバッグ本体3をその内部に備えてなり、バッグ本体3は例えば不織布ろ紙(クラレあるいは東燃化学が製造の「メルトブロー」)からなるろ紙材にて形成され、周部を閉じられ、内部(実際には内部下方)にコーヒー挽豆4(被抽出物)を充填・収容してなる。
【0011】バッグ本体3の上部は、全体紙製の把持部5で、その上方周部並びに上縁部を被包され、把持部5の内面とバッグ本体3の上部をヒートシールしてなる。すなわち、紙製の把持部5は図3に示す展開状態から、矢印Aに示すように把持部5の間にバッグ本体3の上部を挟み込み、バッグ本体3の上部を封筒状に被包してヒートシールするようにしている。このため紙製の把持部5の内表面並びにバッグ本体3上部の外表面には予めポリエチレンを一体にコーティング加工している。
【0012】こうして、バッグ本体3の上部を被包した把持部5の上方部位には、ミシン目からなる切り取り線6が形成され、該切り取り線6の両端部には、切り取り口7が形成される。
【0013】このようにして形成されるコーヒーバッグ1は、いずれか一方の切り取り口7から切り取り線6に沿って把持部5の上方部分が切除され、これにより図3の2点鎖線に対応する切り取り線6の部分に対応する、予め袋状に綴じられたバッグ本体6の上方部分も同時に切除されることとなる。こうして把持部5の上方が切除されたら、該把持部5を図4の矢印D方向に変形させ、把持部5の上方を丸筒状にして開口8を形成する。この状態で把持部5を把持し、図5に示すように湯9が入れられたコーヒーカップ10の中にバッグ本体3の下方部分を浸漬すると、バッグ本体3の内部に収容されたコーヒー挽豆4から湯9にコーヒーが抽出されることとなる。この際、コーヒー挽豆4から発生する空気はバッグ本体3の内部を上昇して開口8より排気されることとなり、開口8が通気状態にあるため、円滑な排気ができ、バッグ本体3がコーヒーカップ10の内部で浮き上がることもない。また、把持部5が丸筒状に変形されるのに伴い、バッグ本体3の上方部も丸筒状となるため、ろ紙材を浸透する湯9がゆっくりとバッグ本体3の内部に浸入し、円滑な抽出が可能となる。」

また、把持部の上方部分を切り取り線に沿って切除し、該把持部を図4の矢印D方向に変形させると、バッグ本体は、上端が開放した袋状になり、把持部は、上端及び下端が開放した筒状に広げられる。

したがって、引用例1には、特に図4、5を参照すると、次の発明が記載されているものと認められる(以下、「引用例1発明」という。)。

「被抽出物が収容される、上端が開放した袋状のバッグ本体と、上端及び下端が開放した筒状に広げられる把持部とを備え、前記バッグ本体の上部に前記把持部が接合されており、前記把持部が、抽出時に持ち手としてのみならず通気口としても用いられるコーヒーバッグ抽出具。」

イ.原査定の拒絶の理由に引用した特開2003-102624号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の記載がある。

・「【0001】
【発明が属する技術分野】本願発明は、使い捨てタイプのドリップ式コーヒー抽出具に関する。」

・「【0033】使用にあたっては、まず、上記のように互いに接合された封止用延出部9をミシン目線L′で切断除去し、かつ、折り立て片6の接合部を押し広げて湯受け部材3の上部を開口させる。そして、折り立て片6が形成されたパネル32,34を平面状に広げるとともに各パネル31,32,33,34の境界をなす4つの折り線L1において各隣接するパネルが互いに略直角をなすようにする。これにより、湯受け部材3が、図1に示したように、上部が開口する逆四角錐状の使用状態となる。」

(3)対比
本願補正発明と上記引用例1発明とを比較する。

引用例1発明の「バッグ本体」は本願補正発明の「フィルター部」に相当し、同様に「把持部」は「通気部」に相当する。

したがつて、両者は、

「被抽出物が収容される、上端が開放した袋状のフィルター部と、上端及び下端が開放した筒状に広げられる通気部とを備え、前記フィルター部に前記通気部が接合されており、前記通気部が、抽出時に通気口のみならず持ち手としても用いられるコーヒーバッグ抽出具。」の点で一致し、

次の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明では、フィルター部の上端に通気部の下端が接合されているのに対して、引用例1発明では、フィルター部の上部に通気部が接合されている点。

[相違点2]
本願補正発明では、通気部を筒状にし易くするため、前記通気部に長さ方向に延びた折り曲げ線が設けられているのに対して、引用例1発明では、そのような折り曲げ線が設けられていない点。

[相違点3]
本願補正発明では、通気部を持って、湯に浸したフィルター部を上下左右に攪拌浮遊させることにより、前記湯を前記フィルター部内に浸透させ循環させて、被抽出物より抽出させるように構成されているのに対して、引用例1発明では、そのように構成されているとの事項を有さない点。

(4)判断
相違点1について
引用例1発明において、フィルター部に通気部を接合するに際して、フィルター部の上端に通気部の下端を接合することは、当業者が適宜なし得たことである。

相違点2について
引用例2には、ドリップ式コーヒー抽出具において、湯受け部材を使用状態である逆四角錐の筒状にし易くするために、折り線を設けた点が記載されている。

そして、引用例1発明の通気部は、摘示した引用例1の前記0013段落に記載されるように、フィルター部内の空気を外部に排出する空間を形成するとともに、フィルター部の上部を開口させるものであるのに対して、引用例2の湯受け部材は、ドリップ式コーヒー抽出具において、湯を注ぎ入れる空間を形成するものであるが、両者とも、筒状に維持する必要のある点で共通している。

したがって、引用例1発明において、通気部を筒状にし易くし、かつその筒状を維持するために、該通気部に長さ方向に延びた折り曲げ線を設けることは、当業者が容易に想到し得たことである。

相違点3について
引用例1発明において、通気部を持って、湯に浸したフィルター部を上下左右に攪拌浮遊させることにより、前記湯を前記フィルター部内に浸透させ循環させて、被抽出物より抽出させるようにすることは、このコーヒーバッグ抽出具の使用者が普通に行い得ることであり、引用例1発明もこのように構成されているといえる。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用例1、2に記載された事項から当業者が予測できた範囲内のものである。

したがって、本願補正発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成17年12月27日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年10月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものである。

「被抽出物が収容される、上端が開放した袋状のフィルター部と、上端及び下端が開放した筒状に広げられる通気部とを備え、前記フィルター部の前記上端に前記通気部の下端が接合されており、前記通気部を筒状にし易くするため、前記通気部に長さ方向に延びた折り曲げ線が設けられており、前記通気部が、抽出時に通気口のみならず持ち手としても用いられることを特徴とするコーヒー/ティーバッグ抽出具。」

(2)引用例
引用例、及びその記載事項は前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から「前記通気部を持って、湯に浸した前記フィルター部を上下左右に攪拌浮遊させることにより、前記湯を前記フィルター部内に浸透させ循環させて、前記被抽出物より抽出させるように構成されている」との構成を省いたものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.」に記載したとおり、引用例1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-11 
結審通知日 2007-06-15 
審決日 2007-06-29 
出願番号 特願2003-355770(P2003-355770)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A47J)
P 1 8・ 121- Z (A47J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松下 聡  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 長浜 義憲
関口 哲生
発明の名称 コーヒー/ティーバッグ抽出具  
代理人 杉山 誠二  

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