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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200580033 審決 特許
無効200680197 審決 特許
無効200680198 審決 特許
無効200680168 審決 特許
無効2007800031 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B60J
審判 全部無効 発明同一  B60J
管理番号 1164345
審判番号 無効2005-80341  
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-11-29 
確定日 2007-08-13 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3434934号「ワイヤレス車両制御システム」の特許無効審判事件についてされた平成18年7月28日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成18年(行ケ)第10404号平成19年4月10日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3434934号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 特許第3434934号の請求項2ないし3に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その3分の2を請求人の負担とし、3分の1を被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3434934号の請求項1?4に係る発明についての出願は、出願日を平成7年6月7日とするものであって、平成15年5月30日にその発明についての特許権の設定登録がされたものである。
その後、平成17年11月29日に本件特許に対して特許無効審判の請求がされ、平成18年2月16日に明細書の訂正が請求され、平成18年7月28日付けで「訂正を認める。本件審判の請求は、成り立たない。」との審決がされ、これに対し、平成18年9月6日に東京高等裁判所に訴えの提起がなされ、平成19年4月10日に、「平成18年7月28日にした審決を取り消す」旨の判決が言渡され、確定したので、さらに上記審判請求について審理する。

第2 被請求人による訂正請求
被請求人は、平成18年2月16日付けで訂正請求書を提出し、明細書について訂正することを請求した。当該訂正の内容は、本件特許発明の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。すなわち、以下のとおりである。

1.(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項1について、「送信装置と、車両内で互いに離れた位置に設けられる受信装置および制御装置とを有するワイヤレス車両制御システムにおいて、
前記送信装置からの変調された制御信号を受信する受信回路と、受信された前記制御信号を復調し出力する復調回路と、
外部信号に応じて前記受信回路および復調回路への給電を開始ないし停止する電源制御回路と
を前記受信装置に設け、
かつ、単一のCPUにより実現され、給電開始を指令する信号を前記電源制御回路へ発した後、前記復調回路から入力する前記制御信号を識別して識別結果に応じた駆動信号を出力し、その後、給電停止を指令する信号を前記電源制御回路へ発する信号識別回路と、
前記駆動信号を入力して所定の車載機器を作動させる駆動回路と、
前記信号識別回路へ電源を常時供給する電源供給回路と
を前記制御装置に設けたことを特徴とするワイヤレス車両制御システム。」とある記載を、「送信装置と、車両内で互いに離れた位置に設けられる受信装置および制御装置とを有するワイヤレス車両制御システムにおいて、
前記送信装置からの変調された制御信号を受信する受信回路と、受信された前記制御信号を復調し出力する復調回路と、
外部信号に応じて前記受信回路および復調回路への給電を開始ないし停止する電源制御回路と
を前記受信装置に設け、
かつ、単一のCPUにより実現され、給電開始を指令する信号を前記電源制御回路へ発した後、前記復調回路から入力する前記制御信号を識別して識別結果に応じた駆動信号を出力し、その後、給電停止を指令する信号を前記電源制御回路へ発する信号識別回路と、
前記駆動信号を入力して所定の車載機器を作動させる駆動回路と、
前記信号識別回路へ電源を常時供給する電源供給回路とを前記制御装置に設け、前記信号識別回路はさらに、マニュアル操作スイッチの操作信号に応じて前記駆動信号を出力するものであり、前記受信装置にはCPUが設けられていないことを特徴とするワイヤレス車両制御システム。」と訂正する。(下線は当審で付与。)
2.(訂正事項2)
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
3.(訂正事項3)
明細書の段落【0011】に、「前記制御装置(2)に設ける。」とある記載を、「前記制御装置(2)に設け、前記信号識別回路(21)はさらに、マニュアル操作スイッチ(61、62)の操作信号に応じて前記駆動信号を出力する。前記受信装置(1)にはCPUが設けられていない。」と訂正する。
4.(訂正事項4)
明細書の段落【0013】に、「請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載のワイヤレス車両制御システムにおいて、前記信号識別回路(21)はさらに、マニュアル操作スイッチ(61、62)の操作信号に応じて前記駆動信号を出力するものである。」とある記載を削除する。
5.(訂正事項5)
明細書の段落【0015】に、「設置することができる。」とある記載の後ろに、「また単一のCPUにより実現される信号識別回路によって、マニュアル操作スイッチによる車載機器の作動が可能である。」との記載を追加する。
6.(訂正事項6)
明細書の段落【0016】に、「請求項4に記載の発明によれば、単一のCPUにより実現される信号識別回路によって、マニュアル操作スイッチによる車載機器の作動が可能である。」とある記載を削除する。

第3 訂正の適否について
1.(訂正事項1)について
上記訂正事項1のうち、「前記信号識別回路はさらに、マニュアル操作スイッチの操作信号に応じて前記駆動信号を出力するもの」との記載を追加する訂正は、信号識別回路について限定を付すものであり、当該記載事項については願書に添付した明細書又は図面(以下「特許明細書等」という。)の請求項4に記載されている。
また、上記訂正事項1のうち、「前記受信装置にはCPUが設けられていない」との記載を追加する訂正は、「受信回路,復調回路及び電源制御回路からなる受信装置の構成を更に限定しようとするものであって,実質上特許請求の範囲を変更するものであるということはできない。」(平成18年(行ケ)第10404号判決(以下「判決」という。)の第18頁第24行?第19頁第1行参照。)
そして、上記訂正事項については、特許明細書の段落【0015】に「受信装置にCPUを設ける必要がないから、受信装置全体が小型となり、インパネ等に容易に設置することができる。」と、また段落【0026】に「受信装置1にはCPUおよびその周辺回路が設けられないから、装置体格が小型化され、インパネ等に容易に設置される。」と記載されている。
さらに請求項2は請求項1を、請求項3は請求項2を、引用するものであるから、同じく信号識別回路及び受信装置について限定を付すものといえる。
そうすると、訂正事項1は特許請求の範囲の減縮を目的とする明細書の訂正に該当する。
また、訂正事項1は特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものと認められる。
さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

2.(訂正事項2)について
請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする明細書の訂正に該当する。
そして、特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものと認められ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3.(訂正事項3?6)について
これらの訂正事項3?6は、新たな請求項1に対応して発明の詳細な説明の記載を整合させるためのものであるから、また、訂正前の請求項4に関する発明の詳細な説明の記載を削除するものであって請求項4の削除に対応して発明の詳細な説明の記載を整合させるためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする明細書の訂正に該当する。
そして、特許明細書等に記載した事項の範囲内でするものと認められ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるものとされる、同法による改正前の特許法第134条第2項ただし書の規定に適合し、特許法第134条の2第5項において準用する特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法による改正前の特許法第126条第2項に規定する要件に適合するので、当該訂正を認める。

第4 請求人の主張
1.「訂正請求」について
平成18年2月16日付けで被請求人が行った訂正請求は認められるべきではなく、該訂正請求に基づく被請求人の主張はその前提を欠くことに帰し失当である。
すなわち、訂正請求により、「受信装置にはCPUが設けられていない」ことが新たな構成要件として付加(所謂「構成要件の外的付加」)され、この訂正事項は、本件特許の出願時における周知技術には該当しないので、あるいは新たな目的を達成することになるので、「実質上特許請求の範囲を変更するもの」となる。
したがって、この訂正事項は、不適法なものであり訂正請求は認められるものではない。
2.無効理由1
(1)請求項1に係る特許発明は、出願前に頒布された甲第1号証(実願平4-32863号(実開平5-91996号)のCD-ROM)に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当して特許を受けることができない。
(2)訂正後の請求項1に係る特許発明は、甲第1号証、甲第4号証(特開平6-229153号公報)及び甲第5号証(特開昭59-80872号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(3)請求項4に係る特許発明は、出願前に頒布された甲第1号証及び甲第2号証(特開昭63-312482号公報)に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
甲第5号証にもみられるように、信号識別回路を構成するCPUにスイッチからの信号を入力し、CPUからその信号に応じた駆動信号を出力することは普通に知られた技術手段である。したがって、甲第2号証に記載された発明は、ドア開/閉検知SW32、ロック/アンロックSW33が入力回路に接続され、これらの信号がCPUに入力され、その後CPUからの出力が出力回路を介してソレノイドに供給されるから、甲第2号証におけるCPUが相当する信号識別回路はさらにマニュアル操作スイッチの操作信号に応じて駆動信号を出力するものであるようにすることは容易である。
受信装置と制御部を離れた位置に設けることは、単に設計事項であるばかりか、受信装置を設置する以上、良好な受信が確保できる位置に設置することは当然の設計事項である。受信装置を構成する部材の一部を受信状況を考慮して所望の位置に配置する一例を挙げれば甲第6号証(特公平3-66478号公報)にループアンテナの配置として示される。

3.無効理由2
請求項1?3に係る特許発明は、本件出願の日前の他の特許出願であって、その出願後に出願公開された甲第3号証(特開平7-309135号公報)に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件出願の発明者がその出願前の他の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件出願の時において、その出願人が他の特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

第5 被請求人の主張
1.「訂正請求」について
「受信装置にはCPUが設けられていない」という訂正事項は、明細書(段落【0015】及び段落【0026】参照)及び図面(【図1】にはCPUが設けられていない受信装置1が図示されている)に記載されていることが明らかであり、また、前記訂正事項は、特許請求の範囲のもとの請求項1に記載されていた「受信装置」という構成要素に関してその態様を限定し「CPUが設けられていない」という下位概念に限定したものであるから、所謂「内的付加」に相当するものであり、前記訂正事項である「受信装置にはCPUが設けられていない」は、実質上特許請求の範囲を変更するものではない。
2.無効理由1について
(1)に対して
本件特許の請求項1に係る発明は、受信装置はCPUを設けていないのに、甲第1号証に記載された発明では、受信装置に、受信回路及び信号識別回路に相当する、CPUを備えている。
甲第1号証に記載された発明は、本件特許の請求項1に係る発明の、信号識別回路がマニュアル操作スイッチの操作信号に応じて駆動信号を出力するという作用がない。
本件特許の請求項1に係る発明は、受信装置と、信号識別回路が設けられる制御装置は互いに離れた位置に設けられるのに対して、甲第1号証に記載された発明は、受信装置から離れた位置に信号識別回路が設けられる制御装置が設けられていない。
よって、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明ではない。
(2)に対して
ア.甲第1号証には、本件特許の請求項1に係る発明が課題とする受信装置体格の大型化を解決するための記述も示唆もない。
イ.甲第4号証の受信機8は本件特許発明の受信装置に相当し、さらに、受信機8にCPU8cが設けられていると解することができるから、甲第4号証に記載された発明から受信装置にはCPUが設けられていないとすることは容易でない。
ウ.本件特許の請求項1に係る発明は受信装置の体格をコンパクトにしたものあって、その特徴である受信装置と信号識別回路が設けられている制御装置とを車両内で互いに離れた位置に設けることは、受信装置はCPUが設けられていない構成とし、制御信号を識別して識別結果に応じた駆動信号を出力することとマニュアル操作スイッチの操作信号に応じて駆動信号を出力することを同じ信号識別回路にて行うようにする構成とすることと有機的な結びつきがあり、単に受信装置を構成する部材の一部を受信状況を考慮して所定の位置に配置したものではない。
甲第6号証も、単にループ型アンテナの開示があるのみでCPUを設けていない受信装置を信号識別回路を設けた制御装置と車室内で互いに離れた位置に設けることは開示していない。
以上のように、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載から、当業者が想到容易なものではない。
(3)に対して
甲第2号証に記載された発明は、ロック/アンロックSW34から直接ソレノイド30を制御しており、本件特許の請求項1に係る発明のように「信号識別回路がマニュアル操作スイッチの操作信号に応じて駆動信号を出力する」ものではなく、甲第1号証に記載された発明に甲第1号証に記載された発明を適用しても、本件特許の請求項1に係る発明とはならず、本件特許の請求項1に係る発明について、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3.無効理由2について
ア.訂正後の請求項1に係る発明は、請求項4に係る発明を限定しており、請求人も認めるように、甲第3号証には本件特許の請求項4に係る発明は記載されていない。
さらに、甲第3号証に記載された発明は、車載FM受信器(受信装置)に受信モジュール(受信回路、復調回路)及び制御部(信号識別回路)が設けられており、本件特許の請求項1に係る発明の「受信装置と信号識別回路が設けられている制御装置とを車両内で互いに離れた位置に設ける」ことを備えていない。
受信装置と制御装置とを互いに離れた位置に設けることは本件特許発明の課題に関係する特徴点であり、設計事項でない。
以上より、本件特許の請求項1に係る発明は甲第3号証の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一でなく、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないとはいえない。
イ.本件特許の請求項2は請求項1の従属項であり、請求項3は請求項2の従属項であるから、本件特許の請求項1に係る発明が甲第3号証の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一でない以上、本件特許の請求項2及び3に係る発明も甲第3号証の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一ではなく、特許法第29条の2の規定に特許を受けることができないとはいえない。

第6 訂正請求の主張に対する検討
第3で検討したように、訂正請求は適法であるから、請求人の主張は採用できない。

第7 本件特許発明
前述のとおり、平成18年2月16日付けの訂正請求は認められるから、本件特許の請求項1?3に係る発明(以下「本件特許発明1?3」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された次のとおりのものである。
なお、便宜上、構成要件ごとに分説して符号を付して記載する。

(本件特許発明1)
A1 送信装置と、
A2 車両内で互いに離れた位置に設けられる受信装置および制御装置とを有するワイヤレス車両制御システムにおいて、
B1 前記送信装置からの変調された制御信号を受信する受信回路と、
B2 受信された前記制御信号を復調し出力する復調回路と、
B3 外部信号に応じて前記受信回路および復調回路への給電を開始ないし停止する電源制御回路とを前記受信装置に設け、
C1 かつ、単一のCPUにより実現され、
C2 給電開始を指令する信号を前記電源制御回路へ発した後、前記復調回路から入力する前記制御信号を識別して識別結果に応じた駆動信号を出力し、その後、給電停止を指令する信号を前記電源制御回路へ発する信号識別回路と、
D 前記駆動信号を入力して所定の車載機器を作動させる駆動回路と、
E 前記信号識別回路へ電源を常時供給する電源供給回路とを前記制御装置に設け、
I 前記信号識別回路はさらに、マニュアル操作スイッチの操作信号に応じて前記駆動信号を出力するものであり、
J 前記受信装置にはCPUが設けられていない
F ことを特徴とするワイヤレス車両制御システム。

(本件特許発明2)
G1 受信状態を検出する受信状態検出回路を前記受信装置にさらに設け、
G2 前記信号識別回路は、検出された受信状態が悪い場合には、即座に前記給電停止を指令する信号を発するものであることを特徴とする請求項1に記載のワイヤレス車両制御システム。

(本件特許発明3)
H 前記受信状態検出回路で検出された受信状態が悪い場合に、前記復調回路からの制御信号の出力を禁止する信号出力禁止回路を前記受信装置にさらに設けたことを特徴とする請求項2に記載のワイヤレス車両制御システム。

第8 無効理由の検討
1.甲各号証
(1)甲第1号証
(構成要件A1)に関して
段落【0016】(1?2行)「図示しない携帯型送信機」
(構成要件A2)に関して
段落【0016】(1行目)「受信回路としての高周波ユニット15」
段落【0017】(1?2行)「制御回路としてのCPU17」
段落【0013】(3行目)「自動車用負荷制御装置」
段落【0023】「この動作制御ルーチンS10では、・・・ドライバ18を通じてドアロック機構16の解錠動作を実行し、・・・ドライバ18を通じてドアロック機構16の施錠動作を実行する。」
段落【0017】(1?2行)「常時において車載バッテリ11からヒューズ11aを介して給電される制御回路としてのCPU17は、」
したがって、甲第1号証には、「受信回路としての高周波ユニット15及び制御回路としてのCPU17とドライバ18とその周辺回路を有する自動車用負荷制御装置」が記載されている。
(構成要件B1)に関して
段落【0016】(1?7行)「受信回路としての高周波ユニット15は、・・・携帯型送信機から送信されてくる・・・高周波電波信号を・・・受信できるように構成されており、・・・電波信号は、・・・自動車用ドアロック機構16の解錠を指令する第1の遠隔操作信号と、施錠を指令する第2の遠隔操作信号とを送信可能となっており」
(構成要件B2)に関して
段落【0016】(4?5行)「電波信号を受信したときには、その電波信号を検波して検波信号Sdを出力する。」
(構成要件B3)に関して
段落【0017】(6?9行)「そのウェークアップ状態では、検波信号Sdの内容及び予め設定されたプログラムに基づいて、ドライバ18を介したドアロック機構16の動作制御並びにインバータ19を介したトランジスタ13のオンオフ制御を行うようになっている。」
段落【0020】(3?6行)「この保持信号Shは、インバータ19によりローレベル信号に反転されてトランジスタ13のベースに与えられるものであり、これに応じてトランジスタ13がオンされて高周波ユニット15に給電された状態となる。」
段落【0021】「上記時間τ内に検波信号Sdが入力されなかった場合には、・・・自身をホルトモードに切換えるステップS7を実行して動作停止する。」
段落【0024】(4?6行)「ドアロック機構16の動作制御が行われたときには、その制御動作の終了に応じた保持信号Shの出力停止により、トランジスタ13がオフされて受信回路15への給電が停止されるものであり、」
(構成要件C1)に関して
図1には「単一のCPU」が記載されている。
(構成要件C2)に関して
段落【0020】(2?6行)「ハイレベル信号より成る保持信号Shを出力開始する(ステップS3)。この保持信号Shは、インバータ19によりローレベル信号に反転されてトランジスタ13のベースに与えられるものであり、これに応じてトランジスタ13がオンされて高周波ユニット15に給電された状態となる。」
段落【0022】「時間τ内に検波信号Sdが入力された場合(ステップS4で「YES」)には、その検波信号Sdを解読するルーチンS8を実行した後に、その解読検波信号Sd中に前記第1及び第2の遠隔操作信号が有するシリアル暗号コードが含まれているか否かを判断する(ステップS9)。・・・「YES」と判断した場合には動作制御ルーチンS10を実行する。」
段落【0023】「この動作制御ルーチンS10では、検波信号Sd中に第1の遠隔操作信号が含まれていた場合に、ドライバ18を通じてドアロック機構16の解錠動作を実行し、第2の遠隔操作信号が含まれていた場合に、ドライバ18を通じてドアロック機構16の施錠動作を実行する。」
段落【0024】(4?6行)「ドアロック機構16の動作制御が行われたときには、その制御動作の終了に応じた保持信号Shの出力停止により、トランジスタ13がオフされて受信回路15への給電が停止されるものであり、」
(構成要件D)に関して
段落【0023】「この動作制御ルーチンS10では、検波信号Sd中に第1の遠隔操作信号が含まれていた場合に、ドライバ18を通じてドアロック機構16の解錠動作を実行し、第2の遠隔操作信号が含まれていた場合に、ドライバ18を通じてドアロック機構16の施錠動作を実行する。」
(構成要件E)に関して
段落【0017】(1?2行)「常時において車載バッテリ11からヒューズ11aを介して給電される制御回路としてのCPU17は、」
(構成要件F)に関して
段落【0002】(2?3行)「自動車用ドアロック機構の解錠及び施錠動作を、運転者が携帯した端末装置からの遠隔操作用電波信号により行い得るようにしたシステム」

(2)甲第4号証
「(ア) 甲4には,次の記載がある。
『ドアロック制御装置100には,固有の識別情報を含む空中伝播信号を取り入れる受信アンテナ6が設けられ,受信アンテナ6から取り入れた識別情報に基づき,ドアロックの駆動を行う駆動機構7を制御する受信機8が設けられた構成となっている。そして,この受信機8は,受信部8a,メモリー部8b,CPU8cから構成されている。受信部8aは,受信アンテナ2から取り入れた識別情報の受信と復調を行う部分である。・・・さらにCPU8cは,受信部8aおよびメモリー部8b,キーシリンダー状態スイッチ2,ドア状態スイッチ3,ドアロック状態スイッチ4,イグニッション状態スイッチ5からのそれぞれの情報を取り入れ,それぞれの情報に基づいて所定の処理を行う部分である。』(段落【0016】)
『上記構成のドアロック制御装置100において,通常,送信機1によってドアの施錠,解錠する場合には,送信機1から送出された識別情報は受信アンテナ6を通じて受信機8に取り入れられる。取り入れられた識別情報は,受信機8に設けられた受信部8aにおいて,受信,復調された後,CPU8cに伝達され,CPU8cは伝達された識別情報を取り入れる。そして,CPU8cは予め所定の識別情報が記憶されているメモリー部8bの識別情報と送信機1から送出された識別情報とを比較し,両者が一致していれば,駆動機構7にドアロックのロック,アンロックを行うように信号を送る。』(段落【0017】)
『通常,CPU8cは,送信機1がキーシリンダーに差し込まれると受信機8をオフ状態にさせ,差し込まれていなければオンの状態とする。』(段落【0025】)
図2には,実施例に基づくドアロック制御装置100を表す構成図が示されている。
(イ) 上記(ア)の記載によれば,CPU8cは,単一のものであって,ドアロック(すなわち,所定の車載機器)の駆動を行う駆動機構7を制御する機能(キーシリンダー状態スイッチ2,ドア状態スイッチ3,ドアロック状態スイッチ4,イグニッション状態スイッチ5等のいわゆるマニュアル操作スイッチに係る操作信号に基づく制御や送信機1からの識別情報に応じた制御が行われる。),受信及び復調を行う受信機8のオンオフ(すなわち,電源)を制御する機能を奏するものであると認められる。そして,これらの制御は,車両制御システムにおいて特定された必要な制御のためのCPUの機能といえるから,本件特許発明のCPUの機能と格別相違するものではない。」(判決第22頁第11行?第23頁第16行参照)
そして、「甲4のCPU8cは,受信機,すなわち受信装置に設けられたものであ」(判決第23頁第17?18行参照)るといえる。

(3)甲第5号証
「(ア) 甲5には,次の記載がある。
『第3図に車輌側に搭載されるドアロック装置本体の概略構成を示し,第4図に,第3図のキーコード受信器KCRの構成を示す。・・・この実施例ではキーコード受信器KCRは発振器OSC2,局部発振回路OSC3,高周波増幅回路RF2,混合回路MIX,中間周波増幅回路IFA,周波数弁別回路DIS,受波検出回路WDE,低周波増幅回路AFAおよび比較器CP1で構成してある。高周波増幅回路RF2の入力端には,同調回路を介して受信用アンテナAT2を接続してある。・・・キーコード受信器KCRのそれぞれの出力端は,シングルチップマイクロコンピュータCPUの入力ポートP1,P2およびP3に接続してある。』(4頁左下欄17行ないし5頁左上欄4行)
『SW4はマニュアルロック/アンロックスイッチであり,CPUのプルアップされた入力ポートP6およびP7に接続されている。』(5頁右上欄8行ないし11行)
『マニュアルスイッチSW4がロック又はアンロックに操作されると,それぞれロック又はアンロック動作を行なう。』(5頁右下欄8ないし10行)
『キーコード受信器KCRが電波を検出すると,次にキーコード読取処理を行なう。ここで読取つたキーコードを受信キーコードレジスタにストアして,このレジスタの内容と参照キーコードレジスタの内容とを比較する。・・・キーコードが一致すると,次に車速をチェックする。・・・車速が10Km/h以下でしかも受信キーコードと参照キーコードが一致するとドアロックをアンロックにする。すなわちポートP9にHを出力してリレーRL2をオンし,ソレノイドSL2を付勢する。』(6頁左上欄1行ないし右上欄12行)
第3図には,車上電磁ドアロック装置本体の概略構成を示すブロック図が示され,第4図には,キーコード受信器KCRの概略構成を示すブロック図が示されている。
(イ) 上記(ア)の記載によれば,キーコード受信器KCRは,その内部にCPUが設けられていないものであって,キーコード発信器KCGから発せられる電波信号の受信及び復調を行い,また,そして,シングルチップマイクロコンピュータCPUは,CPUが設けられていないキーコード受信器KCRから受け取った検波信号(キーコード)の識別結果やマニュアルロック/アンロックスイッチ(操作スイッチ)の操作信号に応じて,それぞれドアロック/アンロックのための駆動信号を出力し,車載機器であるドアロック装置の駆動制御を行うところ,このキーコード受信器KCRが本件特許発明の受信装置における受信回路及び復調回路に相当する機能を奏し,シングルチップマイクロコンピュータCPUが本件特許発明の制御装置の構成要素である信号識別回路に相当する機能を奏するものと認められる。もっとも,甲5には,キーコード受信器KCRとシングルチップマイクロコンピュータCPUの車両内の配置については明示されていないから,車両内における両者相互の位置(配置)関係は特定されていない。」(判決第23頁第21行?第25頁第6行)

(4)甲第3号証
(ア) 甲第3号証には,次の記載がある。
「車載受信器60は、リモコン信号の受信アンテナ61と、リモコン信号を受信し、リモコン信号の電界強度検出信号SQと前記データ信号を制御部に供給する受信モジュール62と、車の各部の状態を監視して異常時にアラームを発生させ、同時に、前記データ信号に応答して車のキーの開閉を制御する制御部63と、受信モジュール62の電源を入切する電源開閉部64と、電源電圧を調整する電圧調整部65とからなる。」(段落【0005】)
「始めに、車のセキュリテイに対する動作については、車の不使用状態のとき、車載受信器60をセキュリテイモードに設定すると、制御部63は、車載受信器60の電力消費を最小に抑えるため、図5(a)に示されるように、高速モードで各部の監視制御を行う制御動作状態と、サブシステムクロックモードで何等の監視制御機能を行わない待機状態とに一定周期で交互に切換えられる。」(段落【0009】)
「次に、車のドアのキーを開閉操作する動作については、前記制御動作状態に切換えられているとき、制御部63は、前記各状態の監視を行うと同時に、制御信号VTCONTを電源開閉部64に供給し、制御信号VTCONTが供給された期間に、電源開閉部64は電源電圧調整部65で得られた電源電圧を受信モジュール62に供給し、図5(b)に示されるように、受信モジュール62はリモコン信号の受信可能状態に設定される。そして、この受信モジュール62におけるリモコン信号の受信可能状態の設定時に、携帯用送信器50側において、・・・(中略)・・・データ信号は送信部53でリモコン信号に変換された後、送信アンテナ54から送信される。一方、車載受信器60側において、送信されたリモコン信号が受信アンテナ61を介して受信モジュール62に供給されると、リモコン信号の受信可能状態にある受信モジュール62は、受信したリモコン信号を処理し、リモコン信号の電界を表す電界検出信号SQと復調されたデータ信号DATAを制御部63に供給する。制御部63は、電界検出信号SQが供給されると、それまでの周期的な制御動作状態から連続した制御動作状態に切換わり、同時に連続した制御信号VTCONTを電源開閉部64に供給し、同様に受信モジュール62を連続したリモコン信号の受信可能状態に設定する。このため、受信モジュール62は、以後、相次いで供給されるリモコン信号の受信が可能になり、制御部63は、受信モジュール62から供給されるデータ信号DATAの情報内容に対応してドアロック装置71を駆動させ、それによって車のドアのキーを閉じたりまたはキーを開いたりする。」(段落【0010】)
「次に、図6は、図4に図示された既知のキーレス/セキュリテイシステムにおける車載受信器60の詳細な構成を示すブロック構成図である。
図6において、80は信号受信部、81は高周波用バンドパスフィルタ、82は高周波増幅部、83は周波数混合回路部、84は局部発振部、85は中間周波用バンドパスフィルタ、86は中間周波増幅部、87は復調部、90は信号処理部、91はローパスフィルタ、92は比較回路部、95は電界検出部、96はバンドパスフィルタ、97は電界強度検出部、98は比較回路部であり、その他、図4(b)に示された構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付けている。」(段落【0011】?【0012】)
「車載FM受信器10は、受信アンテナ11と、受信モジュール12と、制御部13と、電源開閉部14と、電源電圧調整部15とからなり、受信モジュール12の入力は受信アンテナ11に接続され、受信モジュール12の出力は制御部13に接続される。受信モジュール12の電源は電源開閉部14を介して電源電圧調整部15の出力に接続され、電源電圧調整部15の入力は電源端子B+に接続される。さらに、制御部13は、電源開閉部14と、ドアロック装置21と、ドアセンサ22と、モーションセンサ23と、ショックセンサ24と、ガラスセンサ25と、サイレン駆動回路26と、ヘッドランプ点滅回路27にそれぞれ接続される。・・・(中略)・・・
図2において、30は信号受信部、31は高周波用バンドパスフィルタ、32は高周波増幅部、33は周波数混合回路部、34は局部発振部、35は中間周波用バンドパスフィルタ、36は中間周波増幅部、37は復調部、40は信号処理部、41はローパスフィルタ、42は比較回路部、45は電界検出部、46はバンドパスフィルタ、47は電界強度検出部、48は比較回路部であり、その他、図1(b)に示された構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付けている。」(段落【0023】?【0025】)
「まず、制御部13に受信モジュール12から電界検出信号SQが供給される以前の動作について、本実施例のキーレス/セキュリテイシステム(以下、これを本システムという)における制御部13及び受信モジュール12の状態と、図5(a)、(b)に図示された既知のキーレス/セキュリテイシステム(以下、これを既知のシステムという)における制御部63及び受信モジュール62の状態とを比較すると、本システムの制御部13と既知のシステムの制御部63は、いずれも周期T毎に制御動作状態に設定される点で共通しているものの、本システムの受信モジュール12は制御部13の前記周期Tの略4倍に等しい周期4Tで動作状態に設定されるのに対し、既知のシステムの受信モジュール62は制御部63の前記周期Tに等しい周期Tで動作状態に設定される点で異なっている。」(段落【0030】)
「続いて、車のドアのキーを開閉操作する場合の動作は、既知のキーレス/セキュリテイシステムにおける前記車のドアのキーを開閉操作する場合の動作とほぼ同じである。即ち、制御部13は、周期T毎に制御動作状態に切換えられて車の各部の制御監視を行い、また、制御動作状態に4回切換えられる毎に、制御信号VTCONTを電源開閉部14に供給し、その制御信号VTCONTが供給されている期間、電源開閉部14は電源電圧調整部15で得られた電源電圧を受信モジュール12に供給し、受信モジュール12を動作状態、即ち、FMリモコン信号の受信可能状態に設定する。そして、受信モジュール12がFMリモコン信号の受信可能状態に設定されたとき、携帯用送信器1側において、・・・(中略)・・・データ情報は、送信部4においてFMリモコン信号に変換された後、送信アンテナ5から車側に向けて送信される。一方、車載FM受信器10側において、送信されたFMリモコン信号が受信アンテナ11を介してリモコン信号の受信可能状態にある受信モジュール12に供給されると、信号受信部30は、前述の既知の受信モジュール62における信号受信部80で行われる信号処理と同様に、このFMリモコン信号を、順次、高周波増幅、周波数変換、中間周波増幅、復調して、復調信号を発生させる。次いで、信号処理部40は、前記既知の受信モジュール62の信号処理部90で行われる信号処理と同様に、この復調信号を波形整形して、データ信号DATAを発生させ、このデータ信号DATAを制御部13に供給するとともに、電界検出部45は、前記既知の受信モジュール62の電界検出部95で行われる電界検出と同様に、前記復調信号から電界検出信号SQを作成し、この電界検出信号SQを制御部13に供給する。制御部13は、電界検出信号SQが入力されると、それまでの周期的な制御動作状態から連続した制御動作状態に切換わり、同時に、連続した制御信号VTCONTを電源開閉部14に供給し、同様に受信モジュール12を連続したFMリモコン信号の受信可能状態に設定する。このとき、受信モジュール12は、携帯用送信器1側から順次送信されるFMリモコン信号の受信が可能になり、このFMリモコン信号中のデータ信号DATAが順次信号受信部30及び信号処理部40を介して制御部13に入力されるので、制御部13は、入力されるデータ信号DATAの情報内容に応じてドアロック装置21を駆動させ、車のドアのキーを閉じたりまたはキーを開いたりする。」(段落【0032】)
図1及び図4には携帯用送信機1,50、車載FM受信機10,60及びドアロック装置21,71とその他の車載機器からなるブロック構成図が図示され、図2及び図6にはFM受信モジュール12,62の構成が図示される。
(イ) 上記(ア)の記載によれば、
「A1 携帯用送信機1,50と
A2 受信モジュール12,62および制御部13,63とを設けた車載FM受信機10,60を有するキーレス/セキュリテイシステムにおいて、
B1 携帯用送信機1,50からの変換されたリモコン信号を受信する、受信モジュール12,62の信号受信部30,80と、
B2 復調して、データ信号DATAを制御部13,63に供給する受信モジュール12,62の信号処理部40,90と、
G1 リモコン信号の電界強度検出信号SQを制御部13,63に供給する受信モジュール12,62の電界検出部45,95と、
B3 制御信号VTCONTが供給された期間に、電源電圧を受信モジュール12,62に供給する電源開閉部14,64とを車載FM受信機10,60に設け、
C2 制御信号VTCONTを供給して、その期間に、電界検出部45,95から電界強度検出信号SQが入力すると連続した制御動作状態に切換わり、同時に連続した制御信号VTCONTを電源開閉部14,64に供給し、
信号処理部40,90から入力するデータ信号DATAの情報内容に対応してドアロック装置21,71を駆動させ、それによって車のドアのキーを閉じたりまたはキーを開いたりする制御部13,63と、
E セキュリテイモードに設定時、各部の監視制御を行う制御動作状態と、サブシステムクロックモードで待機状態とに一定周期で交互に切換えられるよう制御部13,63が構成され、
G2 制御信号VTCONTが供給された期間に電界強度検出信号SQがなければ、制御部13,63は各部の監視制御を行った後に待機状態となる
F キーレス/セキュリテイシステム。」
が記載されていると認められる。
そして、制御部13,63は待機状態時サブシステムクロックモードで動作するものの、それだけではサブシステムクロックを有する論理回路という限りであって、単一のCPUにより実現されるものか否か不明である。
また、受信モジュール12,62および制御部13,63は車両内で離れた位置に設けられるものか否か不明であって、かえって、これらが車載FM受信機10,60を構成するとしている。
また、制御部13,63は、電界強度検出信号SQが入力すると、連続した制御動作状態に切換わり、同時に連続した制御信号VTCONTを電源開閉部64に供給し、信号処理部40,90から入力するデータ信号DATAの情報内容に対応してドアロック装置21,71を駆動させ、それによって車のドアのキーを閉じたりまたはキーを開いたりするものであるが、その後、制御信号VTCONTはどうなるのか不明である。
また、受信モジュール12,62はブロック構成図により各部が示されているが、これがCPUを用いないで構成されるものか否か不明である。

2.対比、判断
(1)無効理由1(2)
まず、無効理由1(2)について検討する。
本件特許発明1と甲第1号証に記載の発明とを対比する。
(構成要件A1)に関して
甲第1号証に記載された「図示しない携帯型送信機」は、本件特許発明1のワイヤレス車両制御システムを構成する「送信装置」に相当するので、構成要件A1は、甲第1号証に記載されている。
(構成要件A2)に関して
甲第1号証に記載された「受信回路としての高周波ユニット」及び「自動車用負荷制御装置」は、その機能において、本件特許発明1の「受信装置」及び「ワイヤレス車両制御システム」に相当し、甲第1号証に記載された「制御回路としてのCPU17とドライバ18とその周辺回路」は、その機能において、本件特許発明1の「制御装置」に相当するので、構成要件A2の各構成要素が、甲第1号証に記載されている。
(構成要件B1)に関して
甲第1号証に記載された「受信回路としての高周波ユニット15」は第1,第2遠隔操作信号を受信するものであるから、本件特許発明1を構成する「制御信号を受信する受信回路」と称されるべき回路が存在するといえ、この点で、構成要件B1は、甲第1号証に記載されている。
(構成要件B2)に関して
甲第1号証に記載された「検波信号Sd」は電波信号を検波したものであって、制御回路であるCPUに入力されるのであるから、本件特許発明と同様に復調されているといえ、「受信回路としての高周波ユニット15」は復調回路と称されるべき回路が存在するといえる。したがって、構成要件B2は、甲第1号証に記載されている。
(構成要件B3)に関して
甲第1号証に記載された発明において、保持信号Shによりトランジスタ13が、オンされて高周波ユニット15に給電され、オフされて受信回路15への給電が停止されるのであるから、受信回路及び復調回路の機能を有する高周波ユニット15への給電を開始ないし停止する電源制御回路が、高周波ユニット15に関連して設けられているといえる。そうすると、構成要件B3が、甲第1号証に実質的に記載されている。
(構成要件C1)に関して
甲第1号証の「制御回路としてのCPU17」は「単一のCPU」であることが図1に記載さているので、構成要件C1も甲第1号証に記載されている。
(構成要件C2)に関して
甲第1号証の制御回路としてのCPU17は、保持信号Shを出力開始し、トランジスタ13をオンして給電を開始した後、高周波ユニット15からの検波信号Sdを識別・判断し、これに応じてドライバ18を通じてドアロック機構16の解錠・施錠動作を実行し、その制御動作の終了に応じた保持信号Shの出力停止により、トランジスタ13がオフされて受信回路15への給電が停止されるものであるから、本件特許発明1の信号識別回路に相当し、構成要件C2は、甲第1号証に記載されている。
(構成要件D)に関して
甲第1号証に記載された発明において、制御回路としてのCPU17は、ドライバ18を通じてドアロック機構を動作させるのであるから、ドライバ18は本件特許発明の駆動回路であり、構成要件Dも甲第1号証に記載されている。
(構成要件E)に関して
甲第1号証に記載された「制御回路(CPU17)」は、常時において車載バッテリ11から給電されているのであるから、構成要件Eも甲第1号証に記載されている。
(構成要件F)に関して
甲第1号証に記載されたドアロック機構の解錠・施錠を遠隔操作用電波信号により作動制御するものであるから、構成要件Fは、甲第1号証に記載されている。

以上の対比から、両者は、前記構成要件A1,B1,B2,B3,C1,C2,D,E及びFを備えた発明である点で一致し、以下の点で相違しているものと認められる。

<相違点1>
本件特許発明1が、「信号識別回路はさらに、マニュアル操作スイッチの操作信号に応じて前記駆動信号を出力するもの」(構成要件I)であるのに対して、甲第1号証に記載の発明では、そのような構成を備えていない点。
<相違点2>
本件特許発明1の「受信装置および制御装置」は「車両内で互いに離れた位置に設けられる」(構成要件A2)とともに、「受信装置にはCPUが設けられていない」(構成要件J)のに対して、「甲1には,受信装置とCPU17との物理的な関係を特定する記載はなく,また,受信装置と制御装置との配置位置やその相互関係を特定する記載もない。
そうであれば,甲1記載の発明において,本件特許発明〔当審決の『本件特許発明1』〕の「受信装置」に相当する構成がCPUを有しているか否かは明らかでないといわなければならない」(判決第21頁第22?24行参照。)ことから、甲第1号証に記載の発明は、受信装置および制御装置の配置位置やその相互関係が不明であるとともに、受信装置(高周波ユニット)がCPUを有しているか否か不明である点。

これらの相違点について検討する。
<相違点1>について
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第5号証には、「マニュアルロック/アンロックスイッチSW4からの信号をマイクロコンピュータCPUに入力し、該CPUの出力によりロック又はアンロック動作を行う車上電磁ドアロック装置」に関する技術事項が記載されており、すなわち、このことは本件特許発明1の「信号識別回路は、マニュアル操作スイッチの操作信号に応じて駆動信号を出力するもの」と同じことであるから、この技術を甲第1号証記載の発明に採用することによって前記相違点1でいう本件特許発明1の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点2>について
甲第4号証の記載のものについて、前記したように「甲4のCPU8cは,受信機,すなわち受信装置に設けられたものであり,本件特許発明〔当審決の『本件特許発明1』〕の『受信装置にはCPUが設けられていない』(構成要件J)点と明らかに相違するものである。」(判決第23頁第17?19行参照。)
一方、甲第5号証についてみると、その記載内容は、上記1.(3)のとおりである。
ところで、受信装置と制御装置とを互いに離れた位置に設けることは、本件特許の出願時において周知であり(特開平7-46681号公報,特公平6-74692号公報(第31図及び5欄12?31行)及び実開平5-77474号のCD-ROM(図1),特開平5-231057号公報(図2),特開昭62-258073号公報(図1)等参照)、しかも「受信装置と制御装置とを互いに離れた位置に設けることが本件特許発明の特許出願時において周知であることは,当事者間に争いがないから,甲5に記載の発明において,受信装置に相当するキーコード受信器KCRと制御装置の構成要素に相当するシングルチップコンピュータCPUとを互いに離れた位置に設けることは,適宜に採用することができる設計的事項であり,それを排除する要因は見当たらない。」(判決第25頁第7?12行)
「そして,CPUを設けていない受信装置が,それを設けている受信装置と比べて,小型化が図られ,その結果,受信装置の設置が可能となる対象個所が拡大されることは,自明な効果として当然に想定されることであり,インパネが,受信装置の設置個所の対象となり得ることも容易に認識し得ることである。
また,甲1には,『CPU17は,常時おいて消費電流が小さくて済むホルトモードで待機し,高周波ユニット15は,CPU17が周期的にウェークアップされるタイミングにおいて所定の割合で給電されることになるから,全体の平均消費電流を低く抑制できるようになる。』(段落【0034】)との記載があり,これによれば,『システムスタンバイ状態での消費電流は大きく低減される』との効果は,甲1に記載の発明においても達成されるものである。
さらに,上記イ〔当審決の1.(3)〕のとおり,シングルチップマイクロコンピュータCPUは,マニュアルロック/アンロックスイッチ(操作スイッチ)の操作信号に応じて,それぞれドアロック/アンロックのための駆動信号を出力し,車載機器であるドアロック装置の駆動制御を行うものであるから,『単一のCPUにより実現される信号識別回路によって,マニュアル操作スイッチによる車載機器の作動が可能である』との効果は,甲5に記載の発明において達成されるものである。
エ そうであれば,甲1に記載の発明に甲4及び甲5に記載された発明を適用して,本件特許発明のように,受信装置をCPUが設けられていない構成とし,この受信装置と制御装置としての機能を奏するCPUとを離れた位置に設けることは,当業者が容易に想到することができるものであって,しかも,それによる効果も格別なものということはできないから,本件特許発明〔当審決の『本件特許発明1』〕が,甲1記載の発明,甲4記載の発明及び甲5記載の発明から容易に想到することができるものである。」(判決第25頁第13行?第26頁第8行)

(2)無効理由2
次に、本件特許発明2及び3に関し、無効理由2について検討する。
(2-1)本件特許発明2について
本件特許発明2について検討する。
請求項2は請求項1を引用するものであるから、本件特許発明2は本件特許発明1のすべての構成を備え、さらに限定を付加したものである。
そこで、本件特許発明2と甲第3号証に記載の発明とを対比すると、少なくとも、以下の点で相違している。
(ア)本件特許発明2は、車両内で互いに離れた位置に設けられる受信装置および制御装置とを有するのに対して、甲第3号証に記載の発明は、車載FM受信機10,60の受信モジュール12,62および制御部13,63、電源開閉部14,64が、どのような配置位置、相互関係であるのか不明である点。
(イ)本件特許発明2は信号識別回路が単一のCPUにより実現され、受信装置にはCPUが設けられていないものであるのに対して、甲第3号証に記載の発明は、制御部13,63が単一のCPUにより実現されるものか、受信モジュール12,62はブロック構成図により各部が示されているが、これがCPUを用いないで構成されるものか、不明である点。
(ウ)本件特許発明2は、信号識別回路とは別に、駆動信号を入力して所定の車載機器を作動させる駆動回路を制御装置に設けているのに対して、甲第3号証に記載の発明は、そのような回路を有していない点。
(エ)本件特許発明2は、信号識別回路が、マニュアル操作スイッチの操作信号に応じて前記駆動信号を出力するものであるのに対して、甲第3号証に記載の発明は、制御部13,63がそのようなものではない点。

これらの相違点についてさらに検討する。
ア 相違点(ア)について
甲第3号証に記載の発明の、受信モジュール12,62および制御部13,63は、電源開閉部14,64と共に車載FM受信機10,60に設けられるものであり、さらに図1及び4では車載FM受信機10,60として破線で囲われていて、一塊の受信機であることを想起させるものである。
本件特許発明2における受信装置および制御装置は、異なる場所に配置される、異なる装置である。
そうすると、例え、2.(1)の<相違点2>についてで検討したように、ワイヤレス車両制御システムにおいて、受信装置と制御装置とを互いに離れた位置に設けることが周知であるとしても、甲第3号証に記載の発明の受信モジュール12,62および制御部13,63が別の装置であって車両内で互いに離れた位置に設けられるものであるとはいえず、このことを示唆する記載もない。

イ 相違点(イ)?(エ)について
甲第3号証に記載の発明が、これら相違点に係る構成を有しているとする記載は、甲第3号証になく、示唆もない。

エ まとめ
以上のように、本件特許発明2が、甲第3号証に記載された発明と同一であるとはいえない。

(2-2)本件特許発明3について
本件特許発明3について検討すると、請求項3は請求項2を引用するものであるから、本件特許発明3は本件特許発明2のすべての構成を備え、さらに限定を付加したものである。
そして、(2-1)で検討したとおり、本件特許発明2は甲第3号証に記載された発明と同一であるとはいえないのであるから、本件特許発明3についても甲第3号証に記載された発明と同一であるとはいえない。

(3)請求人が提示した他の証拠についての検討
請求人が提示した甲第2号証及び甲第6号証には、それぞれ概略以下のことが記載されている。

ア 甲第2号証
車両用のワイヤレス・ドアロック制御装置であって、3頁左上欄17?20行に「出力回路23の出力はソレノイド30の制御に用いられるが、同様のことはマニュアル式のロック/アンロックSW34によっても行うことができる。」と記載されている。すなわち、ロック/アンロックSW34から直接ソレノイド30を制御しており、「信号識別回路がマニュアル操作スイッチの操作信号に応じて駆動信号を出力する」ことはしていない。
したがって、甲第2号証は、(2-1)における相違点(エ)を開示するものではなく、示唆するものでもない。

イ 甲第6号証
甲第6号証も、ループアンテナ10,41a?41dの開示があるのみで、「受信装置」と「信号識別回路を設けた制御装置」とを車両内で互いに離れた位置に設けるものではない。
したがって、甲第6号証は、(2-1)における相違点(ア)を開示するものではなく、示唆するものでもない。

第9 むすび
以上のとおり、本件特許発明1は甲第1号証に記載の発明、甲第4号証に記載の発明及び甲第5号証に記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の無効理由1の(1)及び(3)、並びに無効理由2について検討するまでもなく、本件特許発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
また、本件特許発明2及び3は、甲第3号証に記載された発明と同一であるとはいえないから、本件特許発明2及び3に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであるとはいえず、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明2及び3に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第64条の規定により、請求人がその3分の2を、被請求人がその3分の1を負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ワイヤレス車両制御システム
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】送信装置と、車両内で互いに離れた位置に設けられる受信装置および制御装置とを有するワイヤレス車両制御システムにおいて、
前記送信装置からの変調された制御信号を受信する受信回路と、受信された前記制御信号を復調し出力する復調回路と、
外部信号に応じて前記受信回路および復調回路への給電を開始ないし停止する電源制御回路とを前記受信装置に設け、
かつ、単一のCPUにより実現され、給電開始を指令する信号を前記電源制御回路へ発した後、前記復調回路から入力する前記制御信号を識別して識別結果に応じた駆動信号を出力し、その後、給電停止を指令する信号を前記電源制御回路へ発する信号識別回路と、
前記駆動信号を入力して所定の車載機器を作動させる駆動回路と、
前記信号識別回路へ電源を常時供給する電源供給回路とを前記制御装置に設け、前記信号識別回路はさらに、マニュアル操作スイッチの操作信号に応じて前記駆動信号を出力するものであり、前記受信装置にはCPUが設けられていないことを特徴とするワイヤレス車両制御システム。
【請求項2】受信状態を検出する受信状態検出回路を前記受信装置にさらに設け、前記信号識別回路は、検出された受信状態が悪い場合には、即座に前記給電停止を指令する信号を発するものであることを特徴とする請求項1に記載のワイヤレス車両制御システム。
【請求項3】前記受信状態検出回路で検出された受信状態が悪い場合に、前記復調回路からの制御信号の出力を禁止する信号出力禁止回路を前記受信装置にさらに設けたことを特徴とする請求項2に記載のワイヤレス車両制御システム。
【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】
本発明は、ドアのロック・アンロック制御あるいはエンジン始動制御等をワイヤレスで行うワイヤレス車両制御システムに関し、特にシステムのスタンバイ電流を低減することが可能なワイヤレス車両制御システムに関する。
【従来の技術】
離れた場所から車両ドアのロック・アンロックを行い、あるいは屋内から駐車場に置いた車両のエンジン始動やエアコン制御を行う等の用途に、ワイヤレス車両制御システムが注目されている。図6、図7には、ドアのロック・アンロック制御を行う従来のワイヤレス車両制御システムの構成の一例を示す。図6は乗員が携帯する送信装置3の構成を示すもので、内蔵されたCPU31は、装置パネルに設けた操作スイッチ36、37からロック指令信号3aおよびアンロック指令信号3bを入力する。
CPU31は、ドアロック指令に対して「01」、ドアアンロック指令に対して「10」となる制御コードと、例えば32ビットのビット列を有する送信装置固有の識別コードとを、後述の車両制御装置で認識できる所定長(72ビット)のフレーム内に配列して制御信号3cとして出力する。この制御信号3cは変調回路32で変調され、送信回路33を経てアンテナ34より電波として発信される。なお、CPU31および変調回路32にはバッテリを内蔵した電源供給回路35から作動電源が供給される。
図7には、車両側に設けられる受信装置1と車両制御装置2の構成を示す。受信装置1は、通常、電波環境の良いインストルメントパネル(インパネ)等に設けられ、一方、車両制御装置2は、運転席ドアに近い車両ボデーの空きスペース等に配置される。上記発信装置3から変調送信された制御信号3cは受信装置1のアンテナ14で受信され、受信回路11を経て復調回路12で復調されるとともに、受信電波の電界強度がRSSI検出回路15で検出される。復調された制御信号1aおよびRSSI検出信号1bはCPU17へ入力し、CPU17は十分な電界強度がある場合に制御信号1a中の制御コードを識別して、出力回路19を経てロック信号1cあるいはアンロック信号1dを出力する。
上記CPU17にはまた、入力回路18を経て、イグニションキー差し込み検出スイッチ63とドア開放検出スイッチ64からの各信号63a、64aが入力しており、両信号63a、64aのいずれかがある場合には、CPU17はロック信号1c、アンロック信号1dをいずれも出力しない。上記CPU17と、入力回路18および出力回路19には、安定化電源回路を含む電源供給回路16を介して車載バッテリ4から常時作動電源が供給され、一方、受信回路11、復調回路12、およびRSSI回路15への給電は、一定周期でCPU17から出力される給電開始指令信号1eに基づいて作動する電源制御回路13を介して周期的になされる。
上記ロック信号1cおよびアンロック信号1dは、車両制御装置2の入力回路24を経てCPU21に入力する。このCPU21には、入力回路24を経て前記イグニションキー差し込み検出スイッチ63とドア開放検出スイッチ64からの各信号63a、64aおよびマニュアルドアロックスイッチ61とマニュアルドアアンロックスイッチ62からの各信号61a、62aが入力している。
CPU21は、これに入力する上記ロック信号1cないしアンロック信号1dに応じて、アクチュエータ駆動回路22を介してドアロックモータ5へ駆動信号を出力する。ドアロックモータ5は駆動信号2bにより正転ないし逆転して、車両ドアに設けたロック機構のロックないしアンロックを行う。そして、上記CPU21、入力回路24、およびアクチュエータ駆動回路22には、電源供給回路23を経て車載バッテリ4から作動電源が常時供給されている。
なお、上記CPU21は、マニュアルドアロックスイッチ61とマニュアルドアアンロックスイッチ62からの各信号61a、62aによってもドアロックモータ5の駆動を行う。また、イグニションキー差し込み検出スイッチ63とドア開放検出スイッチ64が設けられている。
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来のワイヤレス車両制御システムでは、受信装置1内にCPU17が設けてあり、このCPU17に常に給電する必要がある。CPU17のの消費電流は他の回路構成に比して大きく、そのため、車両制御装置2内のCPU21への給電と併せてスタンバイ電流が多くなり、エンジン停止中の非充電状態での車載バッテリにとって大きな負担となっていた。
また、受信装置1内にCPU17とその周辺回路を設けているために装置体格が大きくなり、スペースの限られたインパネへの設置に苦慮している。本発明はこのような課題を解決するもので、消費電流の小さい、コンパクトな受信装置を有するワイヤレス車両制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明においては、送信装置(3)と、車両内で互いに離れた位置に設けられる受信装置(1)および制御装置(2)とを有するワイヤレス車両制御システムにおいて、前記送信装置(3)からの変調された制御信号を受信する受信回路(11)と、受信された前記制御信号を復調し出力する復調回路(12)と、外部信号に応じて前記受信回路および復調回路への給電を開始ないし停止する電源制御回路(13)とを前記受信装置(1)に設け、かつ、CPUにより実現され、給電開始を指令する信号を前記電源制御回路へ発した後、前記復調回路から入力する前記制御信号を識別して識別結果に応じた駆動信号を出力し、その後、給電停止を指令する信号を前記電源制御回路へ発する信号識別回路(21)と、前記駆動信号を入力して所定の車載機器を作動させる駆動回路(22)と、前記信号識別回路へ電源を常時供給する電源供給回路(23)とを前記制御装置(2)に設け、前記信号識別回路(21)はさらに、マニュアル操作スイッチ(61、62)の操作信号に応じて前記駆動信号を出力する。前記受信装置(1)にはCPUが設けられていない。
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のワイヤレス車両制御システムにおいて、受信状態を検出する受信状態検出回路(15)を前記受信装置(1)にさらに設け、前記信号識別回路(21)は、検出された受信状態が悪い場合には、即座に前記給電停止を指令する信号を発するものである。請求項3に記載の発明では、請求項2に記載のワイヤレス車両制御システムにおいて、前記受信状態検出回路(15)で検出された受信状態が悪い場合に、前記復調回路(12)からの制御信号の出力を禁止する信号出力禁止回路(17)を前記受信装置にさらに設ける。
なお、上記各手段のカッコ内の符号は、後述する実施例記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の作用効果】
請求項1に記載の発明によれば、受信装置内の受信回路、復調回路、および電源制御回路はいずれもCPUを使用することなく実現され、かつ信号識別回路における識別作動時にのみ当該信号識別回路からの給電開始指令信号で前記受信回路、復調回路への電源供給がなされる。したがって、電源供給回路による常時の給電は実質的に、制御装置内の、CPUで実現される信号識別回路に対してのみ行われる。
これにより、システムスタンバイ状態での消費電流は大きく低減される。また、受信装置にCPUを設ける必要がないから、受信装置全体が小型となり、インパネ等に容易に設置することができる。また単一のCPUにより実現される信号識別回路によって、マニュアル操作スイッチによる車載機器の作動が可能である。請求項2に記載の発明によれば、受信装置における受信状態が悪い場合には、前記信号識別回路は制御信号の識別を行うことなく即座に給電停止信号を発して、受信回路および復調回路への電源供給を停止するから、無駄な電力消費がさらに低減される。
請求項3に記載の発明によれば、受信状態が悪い場合には受信装置からの制御信号の出力が完全に禁止されるから、制御装置の信号識別回路は制御信号の入力の有無により受信状態の良し悪しを判定することができ、受信状態検出信号用の受信装置と制御装置間の信号線が不要となる。
【実施例】
以下、本発明を図に示す実施例について説明する。
(第1実施例)
図1には、受信装置と車両制御装置の構成を示し、送信装置の構成は従来例で既に説明したものと同一である。
送信装置から変調送信された制御信号は受信装置1のアンテナ14で受信され、受信回路11を経て復調回路12で復調されるとともに、受信電波の電界強度がRSSI検出回路15で検出される。復調された制御信号1aおよびRSSI検出信号1bはそのまま車両制御回路2へ送られる。上記受信回路11、RSSI検出回路15、および復調回路12へは電源供給回路16から所定電圧の作動電源が供給され、電源供給回路16からの給電の開始およびその停止は、電源制御回路13により制御される。電源制御回路13は後述する車両制御装置からの給電開始ないし給電停止の信号2aに基づいて電源供給回路16へ制御信号を発する。電源制御回路13は車載バッテリ4に直接接続されて電源の供給を受けているが、その消費電力は後述するCPUと比較して極く小さい。
車両制御装置2にはCPU21が設けられ、入力回路24を経て上記受信装置1から入力する制御信号1aおよびRSSI検出信号1bを取り込む。CPU21は詳細を後述するように、十分な電波強度がある場合に制御信号1a中の制御コードを識別し、識別結果に応じて、アクチュエータ駆動回路22を介してロックないしアンロックの駆動信号2bをドアロックモータ5へ出力する。
また、CPU21は後述するように、出力回路25を介して受信装置1の電源制御回路13へ、本実施例では「H」レベルの給電開始指令信号2aを出力する。当該信号2aは「L」レベルの場合には給電停止指令信号2aとなる。CPU21には、入力回路24を介して、マニュアルドアロックスイッチ61とマニュアルドアアンロックスイッチ62からの各信号61a、62aが入力しており、これら信号61a、62aによってもドアロックモータ5の駆動が行なわれる。
CPU21にはさらに、イグニションキー差し込み検出スイッチ63とドア開放検出スイッチ64からの各信号63a、64aも入力しており、これらの信号63a、64aがある場合にはCPU21によってドアロックモータ5の駆動を行わない制御とすることも可能である。なお、上記CPU21、入力回路24、出力回路25およびアクチュエータ駆動回路22へは、電源供給回路23を介して車載バッテリ4から常に電源が供給されているが、その消費電流はCPU21が圧倒的に多い。
図2、図3には、ワイヤレスでドアのロック・アンロックを行う場合の、上記CPU21の処理手順を示す。図において、CPU21はスリープ状態からウエイクアップすると、ステップ101で受信装置1の電源制御回路13に対して給電開始指令信号2aを出力する。給電開始指令信号2aを受けた電源制御回路13は、電源供給回路16により受信回路11等への給電を開始する。なお、上記ウエイクアップは、図略のハードウエアタイマにより一定周期でなされる。
ステップ102では受信装置1の電源が安定するのを待ち、続くステップ103でRSSI信号1bが一定の規定値以上あること、すなわち、受信電波の電界強度が十分あることを確認する。受信電波強度が十分な場合には、ステップ104で、受信装置1からの制御信号1aデータを1フレーム分取り込み、続いて、制御信号1aデータのフレームが正常であるか確認する(ステップ105)。ステップ106ではデータフレーム中の送信装置識別コードが予め登録されたものと一致するか確認する。
上記識別コードが一致した場合には、ステップ107、109で、データフレーム中の制御コードがドアロックかドアアンロックかを識別し、識別結果に応じてドアロックないしドアアンロックの駆動信号2bを出力する(ステップ108、110)。駆動信号2bを出力した後、ステップ111で受信装置1の電源制御回路13に対して給電停止指令信号2aを出力して、受信回路11等への給電を停止させる。処理を終えたCPU21は、その後、スリープモードに戻る。
なお、上記各ステップ103、105、106の判定が否定的である場合にはステップ111で即座に給電停止指令信号2aが発せられて、CPU21は速やかにスリープモードに戻る。以上のように、車載バッテリ4からの電源が常に供給されるのは、車両制御装置2のCPU21、入力回路24、出力回路25およびアクチュエータ駆動回路22と、受信装置1の電源制御回路13であり、このうち、スタンバイ時の消費電力が圧倒的に大きいCPU21は、車両制御装置2に一台設けられているのみであるから、車載バッテリ4の負担は十分小さくなる。特に本実施例では、CPU21を常時は消費電力の相対的に小さいスリープモードとしているから、スタンバイ時の消費電流はさらに軽減されている。
また、受信装置1にはCPUおよびその周辺回路が設けられないから、装置体格が小型化され、インパネ等に容易に設置される。
(第2実施例)
図4に示すように、受信装置1の復調回路12の後段にANDゲート17を設けて、このゲート17をRSSI検出回路15の出力信号1bで開閉するようにすれば、受信電波の電界強度が小さい場合には制御信号1aが車両制御装置2へ送られず、ドアのロック・アンロック制御はなされない。
本実施例によれば、受信装置1から車両制御装置2への信号線を第1実施例よりも少なくすることができ、ワイヤハーネスが小型となる。なお、上記制御信号1aをCPU21への割り込み信号として使用すれば、電波の電界強度が小さい場合には、CPU21は受信制御以外の制御に専念することができる。
(第3実施例)
図5に示すように、受信装置1のRSSI検出回路を省くこともできる。この場合には、CPU21は制御信号1aデータを常に1フレーム分取り込んで、フレーム正常か否かの判断を行う(図2のステップ104、105)必要があるが、受信装置1の回路構成はさらに簡素化されて、コンパクト化が促進される。
なお、上記各実施例では、ワイヤレス信号の伝達を電波で行ったが、電波に代えて、光や音波等を使用することができ、この場合には簡易な構成の受信装置を変更するだけで迅速に対応することが可能である。また、変調回路の変調方式も、振幅変調、周波数変調、位相変調等の種々の変調方式が採用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の第1実施例に係る、受信装置と車両制御装置のブロック構成図である。
【図2】
本発明の第1実施例に係る、車両制御装置CPUの処理手順を示すフローチャートである。
【図3】
本発明の第1実施例に係る、車両制御装置CPUの処理手順を示すフローチャートである。
【図4】
本発明の第2実施例に係る、受信装置と車両制御装置のブロック構成図である。
【図5】
本発明の第3実施例に係る、受信装置と車両制御装置のブロック構成図である。
【図6】
従来例に係る、送信装置のブロック構成図である。
【図7】
従来例に係る、受信装置と車両制御装置のブロック構成図である。
【符号の説明】
1…受信装置、11…受信回路、12…復調回路、13…電源制御回路、15…RSSI検出回路(受信状態検出回路)、17…ANDゲート(信号出力禁止回路)、2…車両制御装置(制御装置)、21…CPU(信号識別回路)、22…アクチュエータ駆動回路(駆動回路)、23…電源供給回路。61…マニュアルドアロックスイッチ、62…マニュアルドアアンロックスイッチ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2007-06-08 
結審通知日 2006-07-10 
審決日 2007-06-25 
出願番号 特願平7-140211
審決分類 P 1 113・ 161- ZD (B60J)
P 1 113・ 121- ZD (B60J)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 亀井 孝志  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 柴沼 雅樹
平上 悦司
登録日 2003-05-30 
登録番号 特許第3434934号(P3434934)
発明の名称 ワイヤレス車両制御システム  
代理人 碓氷 裕彦  
代理人 三好 秀和  
代理人 中村 友之  
代理人 岩崎 幸邦  
代理人 碓氷 裕彦  
代理人 伊藤 高順  
代理人 伊藤 高順  
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