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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B05C
管理番号 1166555
審判番号 不服2006-14640  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-07-07 
確定日 2007-10-26 
事件の表示 平成 8年特許願第357572号「壁紙糊付機」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 7月28日出願公開、特開平10-192760〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成8年12月30日の出願であって、平成18年1月10日付けで拒絶理由が通知され、平成18年3月17日付けで手続補正がなされると共に意見書が提出され、平成18年6月5日付けで拒絶査定がなされ、平成18年7月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであり、その請求項1に係る発明は、上記手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】 本体内部に配設された複数のロールによりシート状の壁装材を本体部の後部から内部に引き入れるとともに、本体内部の所定経路に沿って移動させ、前記本体部に配設された糊桶内の糊を糊付けロールにより前記壁装材の裏面に連続的に塗布する壁紙糊付機において、
前記複数のロールのうち、前記壁装材の裏面に塗布する糊の糊厚を調整するドクターロールの外形が、該ロールの両端部よりもロールの軸方向の中央部が大径となるクラウン形状とされており、
前記ドクターロールは、前記糊付けロールの周速とほぼ等しい周速で回転されるものであり、
前記糊付けロールは、表面のほぼ全域に約0.10mm以下の均一深さの浅い全周V溝が軸方向にほぼ一様な間隔で設けられていることを特徴とする壁紙糊付機。」(上記下線部に関し、「前記本体部」は「本体部」の誤記とした。)


第2.引用文献記載の発明
2-1.引用文献1
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平8-108116号公報(平成8年4月30日公開。以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

ア.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば屋内の壁面にシート状壁装材を貼付けるに際して長尺の壁装材の裏面に糊を連続的に塗布する壁紙糊付機に関するものである。」(段落【0001】)

イ.「【0002】
【従来の技術】図3は、従来の一般的な壁紙糊付機の概略構成を示す説明図である。図3に示すように、従来の壁紙糊付機は、糊付機本体1を構成する上部構体2及び下部構体3と、前記糊付機本体1を所定の高さで支持する脚部4と、前記糊付機本体1の後面側でロール状に巻かれた壁装材(クロス)7を懸架する台(クロスロール)5と、前記下部構体内に備えられた糊桶6と、前記上部構体2及び下部構体3内にギアを介して配列された複数のロール9?15と、前記複数のロール9?15の駆動を制御するコントロールボックス17とから主に構成されている。尚、糊付機本体1の前面側には、前記上部構体2と下部構体3とを互いに接続するヒンジ21が設けられており、糊付機本体1の後面側には、前記上部構体2と下部構体3とを互いに固定するフック(図示せず)が設けられている。
【0003】前記複数のロール9?15の組み込みは、前記上部構体2内において、クロス7を本体部1内に取り込むための取り込み用のピンチロールを構成する上側ピンチロール13aとクロス7に送り出し張力を付与するためのドライブロール12とが平行に配列され、これらは該上部構体2の側板に穿たれた孔に直接または固体潤滑リングを介して軸受されている。更に、前記上側ピンチロール13aと前記ドライブロール12との間にはクロス7を上から押えて追従回転する押えロール14が平行に配列されている。」(段落【0002】?段落【0003】)

ウ.「【0007】上記のように構成された壁紙糊付機を用いて、糊付け作業に際しては、作業者は先ず、クロス7の基準位置の位置決め及び糊付けの糊ムラを無くすための糊付けロール9の試動を行い、初期設定を行うために、糊付機本体1を開いてクロスロール5からクロス7の先端を引き出し、本体後面側から上下ピンチロール13a,13bの間を通して前面側に垂らし、前記糊付機本体1を閉じてからコントロールボックス17内に内蔵された前記モータを初期設定量だけ駆動させる。
【0008】この結果、ギヤで連結された各ロールが所定の周速比で回転し、これによって糊上げロール15で糊付けロール9に付着した桶内の糊がドクタロール10で調整され、押えロール14による押え効果のもとに糊付けロール9の回転と共に移動するクロス7の裏面に糊付けロール9の表面の糊が塗布される。
【0009】糊付けされたクロス7は次いでドライブロール12と均しロール11とによって適度な張力を与えられた状態で牽引されて本体前面に出てくるが、この際に均しロール11の周速差による糊面の均し作用が与えられる。クロス7が初期設定量だけ前面に出てきたら前記モータを一旦停止させ、先端の不必要なクロスをカッターガイド16に沿ってカッタ-で切断し、初期設定を終了する。」(段落【0007】?段落【0009】)

エ.「【0017】本発明は、上記課題を鑑みて成されたものであり、壁装材の裏面に塗布する糊の糊厚をほぼ均一にすることができる壁紙糊付機を得ることを目的とする。」(段落【0017】)

オ.「【0021】
【実施例】図1は、本発明の一実施例に係る壁紙糊付機の本体部1内部を示す概略側面図である。図2は、ドクターロールの外形を示す概略構成図であり、(a)は本実施例に係るドクターロール30の外形を示す説明図であり、(b)は従来のドクターロール10の外形を示す説明図である。本実施例と従来例との相違点は、図2からも分かるように、ドクターロール30の外形が、ロールの両端部30bよりもロールの中央部30aの方が大径となるクラウン形状とされている点である。
【0022】即ち、本実施例に係るドクターロール30の両端部30bの径は29.9mmであり、中央部30aの径は30mmである。これに対して、従来のドクターロール10では、ロールの両端部10bとロールの中央部10aとが同一径になっている。即ち、ロールの両端部10b及びロールの中央部10aの径は全て30mmとなっている。以下、本実施例について更に詳述する。尚、従来例と同一部分については同一符号を付し説明を省略する。」(段落【0021】?段落【0022】)

カ.「【0026】このように、本実施例では、ドクターロール30の中央部30aが両端部30bよりも大径としたことにより、ドクターロール10が糊の負荷によって撓んでも、ロールの軸方向の中央部がロールの両端部よりも突出しているため、ドクターロールの撓み量と前記中央部の突出量とが相まって、結果として、糊付けロールとドクターロールとの相対間隔(ギャップ)を全面ほぼ一定に保つことができ、クロス7に付着される糊の糊付け量を該クロス7の裏面全面でほぼ均一にすることができる。
【0027】また、図2(c)は、本発明の別の実施例に係るドクターロール31の外形を示す概略構成図である。図2(a)において示したドクターロール30との相違点は、中央部31aから両端部31bに向かって細径となる直線テーパ形状とした点であり、図2(c)に示すような形状としても、図2(a)と同様の効果を得ることができる。但し、ドクターロール31を中央部31aから両端部31bに向かって細径となる直線テーパ形状としたままでは、中央部31aに角が形成されるので、この中央部31aを滑らかな曲線を描くように加工して、結果的として、ドクターロール31全体がクラウン形状となるようにすることが好ましい。」(段落【0026】?段落【0027】)

キ.「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る壁紙糊付機の本体部内部を示す概略側面図である。
【図2】ドクターロールの外形を示す説明図である。
【図3】従来の一般的な壁紙糊付機の全体構成を示す斜視図である。」(【図面の簡単な説明】)

(2)ここで、上記記載事項ア.ないしキ.及び第1ないし第3図から、次のことが分かる。

上記ア.、キ.及び第1図ないし第3図の記載から、シート状壁装材を貼付けるに際して長尺の壁装材の裏面に糊を連続的に塗布する壁紙糊付機に関するものであることが分かる。

上記エ.及びカ.の記載から、壁装材の裏面に塗布する糊の糊厚をほぼ均一にすることを目的としていることが分かる。

上記イ.、ウ.、キ.及び第1図ないし第3図の記載から、壁紙糊付機が回転駆動する複数のロール9?15,30,31を有しており、これら複数のロール9?15,30,31によりシート状の壁装材を糊付機本体1の後部から内部に引き入れるとともに、糊付機本体1内部の所定経路に沿って移動させ、前記本体1に配設された糊桶6内の糊を糊付けロール9により前記壁装材の裏面に連続的に塗布していることが分かる。また、上記ウ.の記載から、糊付けロール9とドクターロール10,(30,31)が所定の周速比で回転していることが分かる。

上記オ.、キ.及び第2図(a),(c)の記載から、複数のロール9?15,30,31のうち、壁装材の裏面に塗布する糊の糊厚を調整するドクターロール30,31の外形が、該ロール30,31の両端部30b,31bよりもロールの軸方向の中央部30a,31aが大径となるクラウン形状とされていることが分かる。

(3)引用文献1記載の発明
上記記載事項(1)、(2)より、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。
「糊付機本体1内部に配設された複数のロール9?15,30,31によりシート状の壁装材7を糊付機本体1の後部から内部に引き入れるとともに、糊付機本体1内部の所定経路に沿って移動させ、前記糊付機本体1に配設された糊桶6内の糊を糊付けロール9により前記壁装材7の裏面に連続的に塗布する壁紙糊付機において、
前記複数のロール9?15,30,31のうち、前記壁装材7の裏面に塗布する糊の糊厚を調整するドクターロール30,31の外形が、該ロールの両端部30b,31bよりもロールの軸方向の中央部30a,31aが大径となるクラウン形状とされており、
前記ドクターロール30,31は、前記糊付けロール9の周速と所定の周速比で回転されるものである壁紙糊付機。」(以下、「引用文献1記載の発明」という。)

2-2.引用文献2
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平8-1057号公報(平成8年1月9日公開。以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

ア.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば屋内の壁面にシート状壁装材を貼付するに際して長尺の壁装材の裏面に糊を連続的に塗布する壁紙糊付機に関するものである。」(段落【0001】)

イ.「【0002】
【従来の技術】図2は、従来の一般的な壁紙糊付機の概略構成を示す説明図である。図2に示すように、従来の壁紙糊付機は、糊付機本体1を構成する上部構体2及び下部構体3と、前記糊付機本体1を所定の高さで支持する脚部4と、前記糊付機本体1の後面側でロール状に巻かれた壁装材(クロス)7を懸架する台(クロスロール)5と、前記下部構体内に備えられた糊桶6と、前記上部構体2及び下部構体3内にギアを介して配列された複数のロール9?15と、前記複数のロール9?15の駆動を制御するコントロールボックス17とから主に構成されている。尚、糊付機本体1の前面側には、前記上部構体2と下部構体3とを互いに接続するヒンジ21が設けられており、糊付機本体1の後面側には、前記上部構体2と下部構体3とを互いに固定するフック(図示せず)が設けられている。」(段落【0002】)

ウ.「【0007】上記のように構成された壁紙糊付機を用いて、糊付け作業を行うに際しては、作業者は、先ず、本体部1の両端前面に取り付けられたダイヤル22を操作して、ドクターロール10と糊付けロール9との相対間隔(ギャップ)を変わるようにドクターロール10の位置を変え、前記糊付けロール9によって所望の糊量(糊厚)がクロス7に付着するように調整する。
【0008】その後、クロス7の基準位置の位置決め及び糊付けの糊ムラを無くすための糊付けロール9の試動を行い、初期設定を行うために、糊付機本体1を開いてクロスロール5からクロス7の先端を引き出し、本体後面側から上下ピンチロール13a,13bの間を通して前面側に垂らし、前記糊付機本体1を閉じてからコントロールボックス17内に内蔵された前記モータを初期設定量だけ駆動させる。
【0009】この結果、ギヤで連結された各ロールが所定の周速比で回転し、これによって糊上げロール15で糊付けロール9に付着した桶内の糊がドクタロール10で調整され、押えロール14による押え効果のもとに糊付けロール9の回転と共に移動するクロス7の裏面に糊付けロール9の表面の糊が塗布される。
【0010】糊付けされたクロス7は次いでドライブロール12と均しロール11とによって適度な張力を与えられた状態で牽引されて本体前面に出てくるが、この際に均しロール11の周速差による糊面の均し作用が与えられる。クロス7が初期設定量だけ前面に出てきたら前記モータを一旦停止させ、先端の不必要なクロスをカッターガイド16に沿ってカッタ-で切断し、初期設定を終了する。」(段落【0007】?段落【0010】)

エ.「【0015】本発明は、上記課題を鑑みて成されたものであり、壁装材に塗布する糊量(糊厚)を微調整することができる壁紙糊付機を得ることを目的とする。」(段落【0015】)

オ.「【0019】ここで、ドクターロール10の周速が糊付けロール9の周速よりも高速の周速で回転された場合に、従来例と相違する点について説明する。先ず、本発明では、糊付けロールの周速を1とした場合において、ドクターロールの周速を1.10とすれば糊付けロール9とドクターロール10との相対間隔をダイヤル22(図2参照)を操作して所定量ずつ変えた場合、クロス7の裏面に付着される糊量は、約30g/m2ずつ増加する。」(段落【0019】)

カ.「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る壁紙糊付機の本体部内部を示す概略側面図である。
【図2】従来の壁紙糊付機の概略構成説明図である。」(【図面の簡単な説明】)

(2)ここで、上記記載事項ア.ないしカ.及び第1及び第2図から、次のことが分かる。

上記ア.、カ.第1図及び第2図の記載から、シート状壁装材を貼付するに際して長尺の壁装材の裏面に糊を連続的に塗布するための壁紙糊付機に関するものであることが分かる。

上記オ.の記載から、壁装材の裏面に塗布する糊量、糊厚を微調整することを目的としていることが分かる。

上記イ.、ウ.、カ.及び第1及び第2図の記載から、壁紙糊付機が回転駆動する複数のロール9?15を有しており、これら複数のロール9?15によりシート状の壁装材を糊付機本体1の後部から内部に引き入れるとともに、糊付機本体1内部の所定経路に沿って移動させ、前記本体1に配設された糊桶6内の糊を糊付けロール9により前記壁装材の裏面に連続的に塗布していることが分かる。
上記オ.の記載から、実施例においては、糊付けロール9の周速を1とした際、ドクターロール10の周速を1.10とする旨開示されていることから、ドクターロール10は、糊付けロール9の周速とほぼ等しい周速で回転されることが分かる。なお、本願の発明の詳細な説明【0025】には、ドクターロールと糊付けロールの「ほぼ等しい周速」の例として、±10%以内の速度差が例示されていることからも、糊付けロール9の周速を1とした際、ドクターロール10の周速を1.10とする両者の周速関係は「ほぼ等しい」といえる。

(3)引用文献2記載の発明
上記記載事項(1)、(2)より、引用文献2には次の発明が記載されていると認められる。
「糊付機本体1内部に配設された複数のロール9?15によりシート状の壁装材7を糊付機本体1の後部から内部に引き入れるとともに、糊付機本体1内部の所定経路に沿って移動させ、前記糊付機本体1に配設された糊桶6内の糊を糊付けロール9により前記壁装材7の裏面に連続的に塗布する壁紙糊付機において、
前記複数のロール9?15のうち、前記壁装材7の裏面に塗布する糊の糊厚を調整するドクターロール10を備え、
前記ドクターロール10は、前記糊付けロール9の周速とほぼ等しい周速で回転されるものである壁紙糊付機。」(以下、「引用文献2記載の発明」という。)


第3.対比
本願発明と引用文献1記載の発明を対比すると、引用文献1記載の発明の「糊付機本体1」、「複数のロール9?15,30,31」、「壁装材7」、「糊桶6」、「糊付けロール9」、「壁紙糊付機」、「ドクターロール30,31」、「両端部30b,31b」及び「中央部30a,31a」は、それぞれの有する機能に照らして、本願発明の「本体又は本体部」、「複数のロール」、「壁装材」、「糊桶」、「糊付けロール」、「壁紙糊付機」、「ドクターロール」、「両端部」及び「中央部」にそれぞれ相当する。

してみると、両者は、
「本体内部に配設された複数のロールによりシート状の壁装材を本体部の後部から内部に引き入れるとともに、本体内部の所定経路に沿って移動させ、前記本体部に配設された糊桶内の糊を糊付けロールにより前記壁装材の裏面に連続的に塗布する壁紙糊付機において、
前記複数のロールのうち、前記壁装材の裏面に塗布する糊の糊厚を調整するドクターロールの外形が、該ロールの両端部よりもロールの軸方向の中央部が大径となるクラウン形状とされてなる壁紙糊付機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
「ドクターロール」及び「糊付けロール」に関して、本願発明においては、両者が「ほぼ等しい周速で回転される」のに対し、引用文献1記載の発明においては、両者が所定の周速比で回転される点。

[相違点2]
「糊付ロール」に関して、本願発明においては、「表面のほぼ全域に約0.10mm以下の均一深さの浅い全周V溝が軸方向にほぼ一様な間隔で設けられている」のに対し、引用文献1記載の発明においては、そのような溝が設けられていない点。


第4.当審の判断

上記[相違点1]について検討する。
本願発明と引用文献2記載の発明とを対比すると、引用文献2記載の発明の「糊付機本体1」、「複数のロール9?15」、「壁装材7」、「糊桶6」、「糊付けロール9」、「壁紙糊付機」及び「ドクターロール10」は、それぞれの有する機能に照らして、本願発明の「本体又は本体部」、「複数のロール」、「壁装材」、「糊桶」、「糊付けロール」、「壁紙糊付機」及び「ドクターロール」にそれぞれ相当することから、引用文献2には、
「本体内部に配設された複数のロールによりシート状の壁装材を本体部の後部から内部に引き入れるとともに、本体内部の所定経路に沿って移動させ、前記本体部に配設された糊桶内の糊を糊付けロールにより前記壁装材の裏面に連続的に塗布する壁紙糊付機において、
前記複数のロールのうち、前記壁装材の裏面に塗布する糊の糊厚を調整するドクターロールを備え、
前記ドクターロールは、前記糊付けロールの周速とほぼ等しい周速で回転されるものである壁紙糊付機。」なる技術事項(以下、「引用文献2記載の技術事項」という。)が記載されている。

ここで、引用文献1記載の発明と引用文献2記載の技術事項とは、両者共に、壁紙糊付機に関する技術である点で共通しており、また、糊厚の均一化の向上を図っている点でも軌を一にしている。

したがって、引用文献1記載の発明における壁紙糊付機において、引用文献2記載の技術事項を適用し、上記[相違点1]に係る本願発明の構成とすることは、当業者が格別困難なく想到し得るものである。

次に、上記[相違点2]について検討する。
「糊付けロール」の軸方向にほぼ一様な間隔で全周溝を設けることは、従来周知の技術(必要ならば、実公昭59-39482号公報の上下塗布ロール1,2に刻設された溝7、実願昭54-84970号(実開昭56-2977号)のマイクロフィルムに記載された溝5a等参照されたい。)にすぎない。
また、溝の形状並びに深さを如何に設定するかは、塗布する糊厚を加味して当業者が適宜設定し得る事項である。なお、溝の深さに関する「0.10mm」の数値には、その数値の内と外とで格別の臨界的意義があるとは認められない。

したがって、引用文献1記載の発明における壁紙糊付機に、上記従来周知の技術を適用して、上記[相違点2]に係る本願発明の構成とすることは、当業者が格別困難なく想到し得るものである。

また、本願発明を全体として検討しても、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術事項及び上記従来周知の技術から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。

第5.むすび
したがって、本願発明は、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術事項及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-27 
結審通知日 2007-08-29 
審決日 2007-09-11 
出願番号 特願平8-357572
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B05C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 寺川 ゆりか  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 飯塚 直樹
西本 浩司
発明の名称 壁紙糊付機  
代理人 佐藤 正年  
代理人 花村 太  
代理人 佐藤 年哉  

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