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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02B
管理番号 1167047
審判番号 不服2005-22309  
総通号数 96 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-18 
確定日 2007-10-29 
事件の表示 平成 8年特許願第 87301号「水路用コンクリートブロックおよびコンクリートブロック水路」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 9月22日出願公開、特開平 9-250123〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年3月16日の出願であって、平成17年10月7日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成17年11月18日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、平成17年12月19日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年12月19日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成17年12月19日付けの手続補正を却下する。

[理由]

(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「一体成形しまたはL形ブロックを対向して連結し、側壁部を垂直状または外側に傾斜させて断面U形とされたコンクリートブロック部体と該コンクリートブロック部体内に設定されるコンクリート板部体から成り、該コンクリート板部体の表面が前記コンクリートブロック部体に対する設定面に対し所要の傾斜を採り、しかも該表面に大小の異なる大きさの天然石を埋設しまたは擬石や擬岩状模様を形成した粗粒状突出部が配設した水路用コンクリートブロックの複数個をコンクリートブロック部体が階段状あるいは粗石配設傾斜状あるいは粗石傾斜状をなす如く連設し、前記コンクリート板部体の表面を連続した斜面状態としたことを特徴とするコンクリートブロック水路。」と補正された。

上記補正は、特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「水路用コンクリートブロック」に対し、その利用態様を「水路用コンクリートブロックの複数個」を「連設した」水路に限定し、さらに、「コンクリート板部体」の配置を「コンクリート板部体の表面を連続した斜面状態」と限定するものであって、特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用文献に記載された事項
(2-1)これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である、実願平4-84206号(実開平7-25029号)のCD-ROM(以下、「引用文献1」という。)には、図面の図1?図8とともに、次の事項が記載されている。

(ア)「【実用新案登録請求の範囲】【請求項1】圃場水路の落差部に於いて、上流の普通U字構成水路A-1.下流の普通U字構成水路A-2.間に水路落差に応じた複数個の天端傾斜側壁を有する段状流速抑制魚道水路B.と深場エプロン構成魚床付き水路(静水池水路)C.との組合せで全体を構築してなるコンクリート3面張り水路魚道落差工。」

(イ)「【図面の簡単な説明】・・・【図4】は、一方を魚道他を玉石埋設とした製品の概要断面図。」

(ウ)「【0001】【産業上の利用分野】本考案は、落差(段差)を有する圃場に於いて、その水路の流速を抑制し、流水にエアレイション(空気混入)させると共に小魚の遡上をも容易にした水路魚道落差工に関するものである。」

(エ)「【0009】【考案の実施例】・・・。まず、高低差の有る圃場水酪の落差部に於いて、床版2.を介して、両側壁1.1.を有する上流の普通U字構成水路A-1.と下流の普通U字構成水路A-2.と水路通水断面巾を同じくして、【図1】の施工組立断面の如く側壁高低差を直線と成る様に傾斜させた製品とし、低部を落差段状に設ける。
【0010】製品間の落差段状の高低差は、水路の動水勾配にもよるが、20?30cmを限度とし、その間を低版を有する魚道構成切欠5.付き阻水版4.の組合せにより、さらに、落差を分割(普通は図の如く、2m製品で2分割)して設けて魚道部の落差を最終的に10?15cm程度とする。 【0011】この魚道部製品は、その落差が60cmであれば、製品3個、阻水版4.が6個を使用、落差が1mであれば、製品5個、阻水版4.を10個を使用する。」

(オ)「【0018】【考案の作用効果】普通U字水路 A-1.? A-2.、縦仕切壁3.製品は無論の事、魚道水路B.の本体もエプロン水路C.の本体も工場分割製造(標準長2m)するので製造が容易である。」

(カ)一方を魚道他を玉石埋設とした製品の概要断面図を示した図面の図4には、水路の床版2の両端に垂直状の側壁1を有する断面U字構成の水路の床版2の上に、調整コンクリート7を介し玉石13が埋設され突出した態様が示されている。

そして、上記記載事項並びに図面に記載された内容(ア)?(キ)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明1)
「圃場水路の落差部に於いて水路を構築する、工場分割製造されたコンクリート3面張り水路であり、床版2.の両端に垂直状の側壁1.を有する断面U字構成の水路の該床版2.の上に、調整コンクリート7.を介し玉石13.が埋設され突出した製品とし、水路の低部を落差段状とし、製品間の低部の落差段状の高低差が20?30cmを限度となるようにし、その落差が60cmであれば、製品3個とした、コンクリート3面張り水路。」

(2-2)また、同じく原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である、実願平4-8590号(実開平5-57020号)のCD-ROM(以下、「引用文献2」という。)には、図面の図1?図5とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)「【実用新案登録請求の範囲】【請求項1】所定の溝巾を有して相対する直側壁間の天端を、全面橋版又は蓋橋版の嵌設開孔部を有する合梁とで一体となす門型状の本体A.と基礎低版C.より側壁内面をアジャストガイドさせて水路内面縦断勾配を構築出来る床版ブロックB.とによりBOX水路を構成する床版組合せBOX可変。」

(イ)「【図面の簡単な説明】・・・
【図4】床版が落差工魚道の概要断面斜視図。
【図5】【図4】の製品使用状態の断面概要図。」

(ウ)「【産業上の利用分野】本考案は、水路天端を橋梁版としたコンクリートプレキャスト水路の内側壁を直壁としたBOX状水路に関する。」

(エ)「【0011】床版ブロックB.はその両端に各々2個(2筒所)のアジャスト調整手段6.を設けセッテング開孔部7.にコンクリートモルタル又はコンクリートを打ち込み固定するものであるが、・・・。この床版ブロックB.の断面型状は、使用目的に応じ・・・【図4】の様に水路落差を利用して、エアーレイション(水流を乱流空気混入させ溶在酸素を多くする)を起こさすためと、魚道を兼ねた流速抑制製品として区別製造する。」

(オ)「【0012】この様に大きく分けて3分割して本考案製品を工場生産し、その施工方法は、図示してい無いが、地耐力を確保出来る玉石、栗石又は凝結材処理した地盤に基礎低版B.(当審注:基礎低版Cの誤記と思われる。)を水平に縦設する。その上に床版ブロックB.を設計水路縦断勾配に成る様にアジャスト調整手段(普通は【図1】の如く固定ナット8.を設け、ボルト9.で調整セッテングするが・・・)をもって調整し固定する。次に本体A.の側壁低部接地面となす、基礎低版C.に接着防水剤10.を設けて門型状水路本体A.をかぶせて施工する。本体A.が施工されたら低版ブロックB.の目地空隙と端末の固定用開孔部7.より、コンクリート又はコンクリートモルタルを床版ブロックB.の下まで入る様に打ち込み水路床版の天端を仕上げて(・・・)本考案製品の構築は完了する。」

(カ)「【0015】・・・、水路を落差工魚道でエアーレイション水流とする時は【図4】【図5】で理解出来る如くの凹凸11.(凹凸は自然石又は擬石を千鳥状に設けても良い)を有する工場生産の床版ブロックB.のみを段状使用するだけで良く目的変化に容易に対応出来る等の利点を本考案は有している。」

(キ)図面の図5には、図4の製品使用状態の断面概要図として、基礎低版Cが階段状となり、かつ床版ブロックBが略連続した斜面状態をなした態様が示されている。

そして、上記記載事項並びに図面に記載された内容(ア)?(キ)を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明2)
「一体となす門型状の本体A.と、基礎低版C.の上のアジャスト調整手段を有する床版ブロックB.とにより構成されたBOX水路であり、水路を落差工魚道でエアーレイション水流とする時は水平に縦設する基礎低版Cを階段状とし、自然石又は擬石を千鳥状に設けた凹凸11.を有する工場生産の床版ブロックB.を略連続した斜面状態とし、
基礎低版C.の上に床版ブロックB.を設計水路縦断勾配に成る様にアジャスト調整手段をもって調整し固定し、次に本体A.の側壁低部接地面となす、基礎低版C.に接着防水剤10.を設けて門型状水路本体A.をかぶせて施工した、コンクリートプレキャストBOX水路」

(3)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。引用発明1の「側壁1」、「断面U字構成」、「工場分割製造されたコンクリート3面張り水路」、「玉石」、「落差段状」は、本願補正発明の「側壁部」、「断面U形」、「コンクリートブロック部体」、「粗粒状突出部」、「階段状」にそれぞれ相当する。
また、引用発明1の「コンクリート3面張り水路」は、製品間の低部の落差が60cmの場合、製品3個を用いるものであることから、引用発明1の「コンクリート3面張り水路」は、階段状をなすために複数個を連設したものであるといえる。

してみれば、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「側壁部を垂直状にさせて断面U形とされたコンクリートブロック部体とから成り、該コンクリートブロック部体内に粗粒状突出部が配設された水路用コンクリートブロックの複数個を、コンクリートブロック部体が階段状をなす如く連設した、コンクリートブロック水路。」

(相違点)
本願補正発明では、「コンクリートブロック部体」内に、表面に大小の異なる大きさの天然石を埋設しまたは擬石や擬岩状模様を形成した粗粒状突出部が配設された「コンクリート板部体」を設定し、該コンクリート板部体の表面が前記コンクリートブロック部体に対する設定面に対し所要の傾斜を採り、前記コンクリート板部体の表面を連続した斜面状態としているのに対し、引用発明1の、本願補正発明のコンクリートブロック部体に相当する「工場分割製造されたコンクリート3面張り水路」は、その水路内に板部体を有さず、水路の底である床版上に調整コンクリートを介して玉石13が埋設されたものである点。

(4)当審の判断
上記の相違点について検討する。

上記引用発明2の、「床版ブロックB」、「擬石を千鳥状に設けた凹凸」、「本体A.」、「コンクリートプレキャストBOX水路」は本願補正発明の「板部体」、「擬石」を形成した「粗粒状突出部」、「コンクリートブロック部体」、「コンクリートブロック水路」にそれぞれ相当するものであるといえる。

一方、本願補正発明における「設定面」とは、如何なる面を指しているのか定かではないことから、「設定面」につき本願明細書を参照すると、その段落【0014】には、「コンクリートブロック部体10に対する設定面(即ち底面)」と記載されている。この点をふまえると、本願補正発明の「設定面に対し所要の傾斜」とは、「底面に対する所要の傾斜」を意味したものと理解することができる。
してみれば、引用発明2の「水平」な「基礎低版C.」の上にて調整される「設計水路縦断勾配」は、本願補正発明の「設定面」に対する「所要の傾斜」に相当するといえる。

そうすると、引用発明2により、水路内に、表面に粗粒状突出部が配設されたコンクリート板部体を設定し、水路をなすコンクリートブロック部体が階段状をなす如く連設し、コンクリート板部体の表面が設定面に対し所要の傾斜を採るようにし、板部体の表面を略連続した斜面状態とすることは、本願出願前に公知の技術であったということができる。

そして、引用発明1と引用発明2は、ともにコンクリートの水路である点で共通していることから、引用発明1の、底に位置する床版上の「玉石13」及び「調整コンクリート7」に代えて、水路内底版に、表面に粗粒状突出部が配設された板部体を設定し、水路をなすコンクリートブロック部体が階段状をなす如く連設し、板部体の表面が前記コンクリートブロック部体に対する設定面に対し所要の傾斜を採るようにし、板部体の表面を略連続した斜面状態とすることは、当業者が容易に想到することである。
また、引用発明1がコンクリートの水路であるところ、その底版上に板部体を設定しようとする際に、その板部体もコンクリートで構成しようとすることは、当業者であれば適宜なし得る設計的事項といえる。

なお、引用発明2の傾斜した床版ブロックB.は、略連続した設定とされているが、仮に引用発明2の傾斜した「床版ブロックB.」それぞれについて、その「表面が連続」した状態とはいえないとしても、コンクリートブロックの水路において、コンクリートブロックを階段状に連続させ、その底部を水路勾配に合わせて連続的に形成することが、たとえば実公昭56-51113号公報等にもみられるように従来周知であることを考慮すれば、引用発明1の水路を階段状に連設し、そこに引用発明2の「床版ブロックB」を所要の傾斜で設置しようとする際には、その表面をできるだけ段差なく「連続」した斜面状態に設定することも、当業者であれば適宜なし得る設計的事項といわざるを得ない。

そして、本願補正発明が奏する作用・効果を検討してみても、引用発明1、2並びに周知技術から、当業者が予測しうる範囲のものであって、格別なものとみることはできない。

したがって、本願補正発明は、引用文献1及び2に記載された発明並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、同法159条第1項において準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。


3.本願発明について
平成17年12月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、平成9年1月13日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「一体成形しまたはL形ブロックを対向して連結し、側壁部を垂直状または外側に傾斜させて断面U形とされたコンクリートブロック部体と該コンクリートブロック部体内に設定されるコンクリート板部体から成り、該コンクリート板部体の表面が前記コンクリートブロック部体に対する設定面に対し所要の傾斜を採り、しかも該表面に大小の異なる大きさの天然石を埋設しまたは擬石や擬岩状模様を形成した粗粒状突出部が配設されたことを特徴とする水路用コンクリートブロック。」

(1)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献に記載された事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.にて検討した本願補正発明の「水路用コンクリートブロック」に関し、水路としての利用態様である「水路用コンクリートブロックの複数個」を「連設した」との限定を削除し、さらに、「コンクリート板部体」の配置を「コンクリート板部体の表面を連続した斜面状態」との限定を削除したものである。

そうすると、本願発明を特定する事項をすべて含み、さらに他に発明を特定する事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用発明1及び2並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明1及び2並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
したがって、本願発明は、引用文献1及び2に記載された発明並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-21 
結審通知日 2007-05-29 
審決日 2007-06-13 
出願番号 特願平8-87301
審決分類 P 1 8・ 575- Z (E02B)
P 1 8・ 121- Z (E02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西田 秀彦深田 高義  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 砂川 充
石井 哲
発明の名称 水路用コンクリートブロックおよびコンクリートブロック水路  
代理人 白川 一一  

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