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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B44C
管理番号 1169986
審判番号 不服2005-16800  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-09-01 
確定日 2007-12-27 
事件の表示 平成 7年特許願第250898号「化粧板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 3月31日出願公開、特開平 9- 86096〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年9月28日の出願であって、平成17年7月28日付けで拒絶査定がなされ、審判請求の後に、当審において拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成19年8月30日付けで明細書の補正がなされたものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである
「【請求項1】 厚さ10?50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの上にポリオレフィン系樹脂を厚さ10?40μmの離型層として設けて基体シートとして、該基体シートの離型層上に剥離可能となる、アクリル樹脂をバインダーとするインキによる絵柄層を表面に設けてなることを特徴とする、ベースコート層を有する被転写体に弾性体または塑性体による転写方式で転写する転写シート。」

2.引用刊行物の記載内容
当審における拒絶理由で引用した、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物1(特開平2-29332号公報)には次のような事項が記載されている。
(1a)「1.基材の表面に、離型性を有し且つ該基材より耐熱性の低い熱可塑性樹脂(以下、離型性樹脂と記す)層を積層してなる転写用積層材。
2.基材がポリエチレンテレフタレートフィルムである請求項1記載の積層材。
3.離型性樹脂層がポリプロピレン及び/又はポリ4-メチルペンテン-1からなる請求項1又は2記載の積層材。」(特許請求の範囲第1?3項)
(1b)「〔産業上の利用分野〕
本発明は新規な転写用積層材及びその製造方法に関し、更に詳しくは、適度な保持力と離型性とを備え、且つ立体模様を付与することのできる、ホットスタンピングに代表される転写用の積層材及びその製造方法に関するものである。」(2頁左上欄13?18行)
(1c)「本発明に用いられる基材としては、被転写材料に転写する際の温度に耐える程度の耐熱性を有するものであれば特に制限されず、例えば紙、クロス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリアミド・・・等の合成樹脂シート(フィルム)、金属箔・・・等を挙げることができる。就中、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好適である。」(2頁右下欄10行?3頁左上欄5行)
(1d)「該離型性樹脂層の厚みは特に制限はないが、概ね10?30μm程度で良い。」(3頁左上欄18?19行)
(1e)「実施例1
基材として純白ロール紙(127g/m^(2))を用い、この上にTダイ押出ラミネート機(径115mm、L/D25)により、離型性を有するポリプロピレン(三井石油化学製「LA-221」)を、Tダイ出口樹脂温度290℃、スクリュー回転数130rpm、加工速度150m/min、樹脂厚さ20μmでラミネート加工を行い、無地工程紙を得た。冷却ロールとしてはミラーロールを用いた。尚、基材純白ロール紙のポリプロピレンと接する面に予めコロナ放電処理(30W・min/m^(2))を施した。・・・
実施例2
基材として酢酸ビニル系アンカーコート(セイカダイン570、2液型、1.5g/m^(2)、大日精化工業製)を施した2軸延伸ポリエステルフイルム(50μm)を用い、実施例1と同様に、コロナ放電処理を施した上、ポリプロピレン樹脂(LA-221)をTダイ押出ラミネート機より押出した。一方、所定のパターンをポリエステルフィルム(50μm)に印刷し、この印刷面が上記樹脂と接するように配置させたポリエステル印刷シートを樹脂を中央に挟むようにして、プレスロールにより圧着させ、実施例1と同様の条件でポリサンドラミネート加工を行い、冷却ロールにより冷却後、該ラミネート物(印刷シート/樹脂/基材)を巻取機により、一体として巻き取った。
巻き取られたラミネート物の樹脂面から印刷シートを剥がすと、印刷パターンが正確にポリプロピレン樹脂表面に写されたパターン付き工程紙が得られた。
このパターン付き工程紙のポリプロピレン面に実施例1と同様にしてホットスタンピングホイルに常用されるインクを用いた着色層、アルミニウム蒸着層を設け、ホットスタンピングホイルに常用の感熱性接着剤を塗布し、立体模様付き転写可能なホットスタンピングホイル(第2図)を得た。
得られたホットスタンピングホイルの接着剤層側を厚さ1mmの硬質塩化ビニル樹脂シートと重ね合わせ、フィルム基材側から170℃×1sec×10kg/cm^(2)(ゲージ圧)のプレス圧を印加することにより、着色層及び蒸着層が精巧に、且つ立体模様パターンをもって転写された金属調の硬質塩化ビニル樹脂シートが得られた。」(4頁右上欄16行?5頁左上欄13行)

同じく刊行物2(特開昭63-126799号公報)には次のような事項が記載されている。
(2a)「鋼板の表面に熱硬化型樹脂からなるベースコート層を塗布後、加熱により半硬化状態にし、基材フィルムに分解温度が150℃以上?200℃以下である発泡剤を含むインキで、一部または全部の絵柄形成された絵柄層を設けた転写箔を、絵柄層が前記ベースコート層に接する様に圧着し、絵柄層をベースコート層上に転写後、基材フィルムを剥離し、熱硬化型樹脂を主成分とするトップコート層を塗布形成後、基板の温度を200℃以上にし、トップコート層を硬化すると同時に発泡剤を含む絵柄層を発泡させる化粧鋼板の製造方法。」(特許請求の範囲)
(2b)「この発泡剤を含むインキは、前記の発泡剤を含み、これにアクリル樹脂、塩ビー酢ビ共重合体樹脂、セルロース系樹脂に代表されるバインダー樹脂を目的品質に応じて選択して加えてなり、さらに分解温度を低下させるための助剤を併用してもよい。」(2頁右上欄6?11行)
(2c)「一方、基板である鋼板の表面に設けるベースコート層としては、熱硬化型のポリエステル、特に、直鎖状ポリエステル樹脂が適当で、このベースコート層は、転写箔による絵柄層の転写前は、半硬化状態としておき、絵柄層の転写時の熱で絵柄層の転移を可能とする。」(2頁右上欄13?18行)
(2d)「〔実施例〕
厚さ25μのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材フィルムにアミノアルキッド系樹脂からなる離型ニスを塗布、焼付乾燥し、離型層を形成し、該離型層上に、アゾジカルボンアミドを0.5重量%含む塩ビー酢ビ共重合体樹脂のインキによりグラビア印刷法で布目柄の絵柄層を形成して転写箔とした。
一方、ポリエステル系樹脂からなるプライマ一層を設けた厚さ0.5mmの表面処理した鋼板からなる基板の前記プライマ一層上にポリエステル系熱硬化型樹脂を主成分としたベースコート層を塗布、加熱して、ベースコート層を半硬化状態とした。
そして、基板上のベースコート層上に絵柄層が接するように転写箔を重ね、圧着し、絵柄層を転移後、基材フィルムを剥離し、絵柄層上にオイルフリーポリエステル樹脂系トップコート剤を固型分で8g/m^(2)塗布し、トップコート層を設けた。
次に、全体を250℃の雰囲気中で90秒間加熱して、トップコート層を硬化させ、化粧鋼板を得た。
得られた化粧鋼板は、絵柄層に相当する部分のトップコート層表面には微小な凹凸状態となり、この凹凸状態の部分が絵柄層と一致し、立体的な感じのする意匠性に富むものであった。」(2頁左下欄17行?右下欄20行)

同じく刊行物3(特開平3-243398号公報)には次のような事項が記載されている。
(3a)「〈実施例〉
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
この実施例は工場生産の場合を示す。
基材(1)はセメント製成形板、コンクリートパネル、金属板、耐熱性樹脂製成形板等であり、その表裏どちらか一方の表面(1a)には下地層(2)を積層する。
下地層(2)はエポキシ樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料エナメルのいずれかをスプレー塗り等により第2図に示す如く基材(1)の表面(1a)全体に塗布し、常温で約16時以上かけて自然乾燥させるか或いは60?80度で約30分間強制乾燥させて硬化せしめ、硬化後にその表面(2a)を研磨紙等により研磨して埃を除去してから転写マーク(3)を貼り付ける。
転写マーク(3)はみかげ石や大理石等のような天然石、木の肌や木目又は織物等の見本模様をカラー撮影して得られるカラーフィルムをもとに色分解して熱硬化性樹脂と顔料を混ぜた複数色のインキにより薄い樹脂カラーフィルム(3a)を作成し、該樹脂カラーフィルム(3a)の表面に押え透明フィルム(3b)を、裏面に台紙(図示せず)を夫々貼着して挾み込んだ従来周知構造のものである。
この転写マーク(3)を水に濡らして台紙から樹脂カラーフィルム(3a)を剥がしその裏面を第3図に示す如く上記下地層(2)の表面(2a)全体に貼付けて、これら両者(3a)(2a)間から水と空気を完全に除去してから、常温で約30分以上かけて自然乾燥させるか或いは80度で約15分間強制乾燥させて硬化せしめ、硬化後に押え透明フィルム(3b)を取り去ることにより樹脂カラーフィルム(3a)が下地層(2)の表面に密着した状態で残る。
そして、この転写マーク(3)の樹脂カラーフィルム(3a)の表面には透明被膜層(4)を積層する。
透明被膜層(4)はアクリル樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、シリコンアクリル樹脂塗料、フッ素樹脂塗料等の各クリヤーの中から選択してスプレー塗り等により第1図に示す如く転写マーク(3)の樹脂カラーフィルム(3a)の表面全体に塗布し、常温で約24時間以上かけて自然乾燥させるか或いは60?80度で約30分間強制乾燥させるか又は150度で約20分間焼付乾燥させて硬化せしめる。
次に建築現場において生産する場合には作業性に優れたポリウレタン樹脂エナメルをスプレー塗りし常温で16時間以上自然乾燥することにより硬化させて下地層(2)を形成し、この下地層(2)の表面(2a)全体に常温硬化型樹脂と顔料を混ぜた複数のインキで作成した転写マーク(3)の薄い樹脂カラーフィルム(3a)を密着し、常温で24時間以上自然乾燥させることにより硬化せしめ、該樹脂カラーフィルム(3)の表面全体に屋外曝露における長期耐久性に優れたフッ素樹脂のクリヤーか或いはシリコンアクリル樹脂、ポリウエタン樹脂のクリアの中から選択してスプレー塗りし、常温で24時間以上自然乾燥することにより硬化させて透明被膜層(4)を形成する。」(2頁右上欄2行?3頁左上欄2行)

同じく刊行物4(特開平7-96699号公報)には次のような事項が記載されている。
(4a)「【請求項1】表面にエンボス形状を有する無機系化粧板基材の表面に転写シートを載せ、所望の手段により前記熱圧エンボス形状に追従するように熱圧着し、転写シートの基体フィルムを剥離後、さらに前記無機系化粧板基材上に転写した転写シートの絵柄層を所望の手段により前記エンボス形状に追従するように熱圧着することを特徴とする無機系化粧板の製造方法。
【請求項2】熱圧着をロール状の弾性体により行なうことを特徴とする請求項1記載の無機系化粧板の製造方法。」
(4b)「【0004】
【課題を解決するための手段】本発明はこの課題を解決するため、表面にエンボス形状を有する無機系化粧板基材の表面に転写シートを載せ、所望の手段により前記エンボス形状に追従するように熱圧着し、転写シートの基体フィルムを剥離後、さらに前記無機系化粧板基材上に転写した転写シートの絵柄層を所望の手段により前記エンボス形状に追従するように熱圧着することを特徴とする無機系化粧板の製造方法を提供する。また、前記熱圧着をロール状の弾性体により行なうか、平型の弾性体を介して行なうことを特徴とする無機系化粧板の製造方法を提供する。」
(4c)「【0005】以下、本発明を詳細に説明する。図1に本発明で用いる転写シートの断面の構成の一例を示す。基体フィルム1の表面に剥離ニス層2、絵柄層3、接着層4を順次設けた構成となっている。
【0006】基体フィルムとしては、弾性体による転写時の熱圧着の熱により無機系化粧板基材に表面エンボス形状に追従することが可能な熱可塑性樹脂フィルムを用いる。具体的には塩化ビニル、ポリレチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、等が挙げられる。
【0007】基体フィルムの種類、厚み等は、表面のエンボスの程度、転写温度とのかねあいで選択すれば良い。例えば、150℃?180℃の転写温度では、厚み100μm以下の塩化ビニル樹脂フィルムで最も良好な結果が得られる。
【0008】剥離ニス層としては、基材フィルムの種類により適宣選択すれば良いが、塩化ビニルを基体フィルムに用いた場合、ポリビニルブチラールで良好な結果が得られた。
【0009】絵柄層は、通常のグラビア印刷、スクリーン印刷等で印刷することができる。インキのバインダーは、加熱時の伸び、最終製品の耐久性等を考慮して決定される。
【0010】接着層としては、ポリビニルアルコール、アクリル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリエステル、ポリアミド等が用いられる。また基材上に予め接着剤を塗布する工程を想定した場合は、接着剤は必ずしも必要ではない。」
(4d)「【0011】図2に無機系化粧板基材の上に絵柄を転写している状態を示す。エンボス形状と同調するように転写シートを載せ、加熱されたロール5を用いて表面のエンボス形状に追従するように熱圧着する。その他のエンボス形状に追従するような熱圧着の方法としては、平型の弾性体を介する方法、表面のエンボス形状とオス型とメス型の関係をなす形状の弾性体のロール、平型を用いる方法等がある。」
(4e )「【0016】
【実施例】
<実施例1>転写シートの基体フィルムとして厚さ75μmの半硬質塩化ビニルシートを用い、この表面に剥離ニス層としてポリビニルブチラール樹脂を塗布した後、塩酢ビ樹脂をバインダーとするインキを用いてグラビア印刷法により、後述の無機系化粧板基材のエンボス形状と調和する模様を印刷して絵柄層を設け、さらに、接着層としてポリエステル樹脂を塗布して転写シートを作製した。
【0017】一方、無機系化粧板基材として表面にレンガ状のエンボス形状を有するケイ酸カルシウム板を用意し、除塵し、シーラー処理した。接着剤を塗布、乾燥した後、150℃に加熱された表面硬度が40゜のシリコンで形成されたロールを用いて転写した。転写後、転写シートの基体フィルムを剥離し、更に150℃に加熱された表面硬度が40゜のロールで熱圧着した。
【0018】<実施例2>実施例1同様の転写シートを用い、無機系化粧板基材として表面にレンガ形状を有するケイ酸カルシウム板を用意し、除塵し、シーラー処理した。接着剤を塗布、乾燥した後、150℃に加熱された表面硬度が40゜のシリコンで形成されたロールを用いて、実施例1で使用したのと同様の転写シートを熱圧着し、絵柄層を転写した。転写後、転写シートの基体フィルムを剥離し、更に150℃に加熱された厚さ20mm表面硬度40゜の平型のシリコンで熱圧着した。」

3.対比・判断
刊行物4には、「表面にエンボス形状を有する無機系化粧板基材の表面に転写シートを載せ、熱圧着をロール状の弾性体により前記熱圧エンボス形状に追従するように熱圧着し、転写シートの基体フィルムを剥離後、さらに前記無機系化粧板基材上に転写した転写シートの絵柄層を所望の手段により前記エンボス形状に追従するように熱圧着する無機系化粧板の製造方法」〔請求項2;(4a)〕、
用いる転写シートが「厚さ75μmの半硬質塩化ビニルシートの上にポリビニルブチラール樹脂の剥離ニス層を設け、剥離ニス層上に塩酢ビ樹脂をバインダーとするインキによる絵柄層を設け、さらに、絵柄層上にポリエステル樹脂の接着層を塗布した転写シート」であり、
転写されるのが「表面にエンボス形状を有する、接着剤を塗布した無機系化粧板基材」〔実施例1、2;(4e)〕であることが記載されている。
また、刊行物4には、無機系化粧板基材上に接着剤層を有する場合、転写シートの絵柄層上に接着剤層が必ずしも必要でないこと〔(4c)〕も記載されている。
そうすると、刊行物4には、「厚さ75μmの半硬質塩化ビニルシートの上にポリビニルブチラール樹脂の剥離ニス層を設け、剥離ニス層上に剥離可能となる、塩酢ビ樹脂をバインダーとするインキによる絵柄層を設けてなる転写シートであって、接着剤層を有する無機系化粧板基材にロール状の弾性体による転写方式で転写する転写シート」の発明が記載されているものと認められる。
そこで、本願発明と刊行物4に記載された発明とを対比すると、後者の「剥離ニス層」、「無機系化粧板基材」は、前者の「離型層」、「被転写体」にそれぞれ相当する。
また、後者の「厚さ75μmの半硬質塩化ビニルシート」と前者の「厚さ10?50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム」は「離型層」を担持する「合成樹脂フィルム」である点で共通し、後者の「厚さ75μmの半硬質塩化ビニルシートの上にポリビニルブチラール樹脂の剥離ニス層を設け」たものは、前者の「基体シート」に相当する。
よって、両者は「合成樹脂フィルムの上に離型層を設けて基体シートとして、該基体シートの離型層上に剥離可能となる、インキによる絵柄層を表面に設けてなる、被転写体に弾性体による転写方式で転写する転写シート。」である点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点1:基体シートが、本願発明では、厚さ10?50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの上にポリオレフィン系樹脂を厚さ10?40μmの離型層を設けたものであるのに対して、刊行物4に記載された発明では、厚さ75μmの半硬質塩化ビニルフィルムの上にポリビニルブチラール樹脂の離型層を設けたものである点。
・相違点2:絵柄層のインキバインダーが、本願発明では、アクリル樹脂であるのに対して、刊行物4に記載された発明では、塩酢ビ樹脂である点。
・相違点3:本願発明では、ベースコート層を有する被転写体に転写するのに対して、刊行物4に記載された発明では、接着剤層を有する被転写体に転写する点。

上記相違点について検討する。
・相違点1について
刊行物1には、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、厚さ約10?30μmのポリプロピレンの離型層を設けた転写用積層材(基体シート)が適度な保持力と離型性とを備えるものであること〔(1a)?(1d)〕、実施例2として、2軸延伸ポリエステルフイルム(50μm)に、ポリプロピレン樹脂をTダイ押出ラミネート機より押出し、他方、ポリエステルフィルム(50μm)にパターンを印刷したポリエステル印刷シートの印刷面をこのポリプロピレン樹脂を中央に挟んでプレスロールにより圧着することによりポリサンドラミネート加工を行い、巻取機により巻き取って、ラミネート物としてから、ポリエステル印刷シートをラミネート物のポリプロピレン樹脂面から剥がして、印刷パターンが正確にポリプロピレン樹脂表面に写されたパターン付き工程紙を得ること〔(1e)〕が記載されている。
このことは、ポリプロピレン樹脂のようなポリオレフィン系樹脂の離型層上には、印刷したパターンである絵柄層が適度に保持されることを意味している。
そして、本願発明におけるポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さ10?50μmは、刊行物1に記載された実施例2のポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さ50μm〔(1e)〕と重なり、また、ポリオレフィンの離型層の厚さ10?40μmも、離型性樹脂層の厚さ概ね10?30μm程度〔(1d)〕と重なるものである。
また、離型層の厚さを10?40μm程度としたのは、表面凹凸の程度と転写条件との兼ね合いによるものであるから〔本願明細書(【0010】〕、この離型層の厚さの決定において格別の創意を要したとすることはできない。
してみると、刊行物4に記載の転写シートの基体シートとして、刊行物1に記載のような基体シートを用いることは当業者が容易に想到し得たことである。
・相違点2について
刊行物2には、インキに、アクリル樹脂、塩酢ビ樹脂、セルロース系樹脂に代表されるバインダーを目的品質に応じて選択して用いること〔(2b)〕が記載され、また特開昭59-220400号公報、特開昭63-168398号公報、特開平5-32071号公報に記載されるように、転写シートの絵柄層を印刷するインキバインダーとして、アクリル樹脂、塩酢ビ樹脂は共に周知であるので、塩酢ビ樹脂をアクリル樹脂にかえることは当業者が容易に想到し得たことである。
・相違点3について
刊行物2には、鋼板の表面のベースコート層に、転写シートの剥離可能なインキの絵柄層を転写することによって化粧鋼板とすること〔(2a)、(2c)、(2d)〕が記載されており、また、刊行物3にも、ウレタン樹脂エナメルをスプレー塗布した下地層に絵柄層を転写すること〔(3a)〕が記載されているが、この下地層もベースコート層といえるものであるから、絵柄層はベースコート層に接着可能なものであって、被転写体の有するベースコート層に絵柄層を転写することは普通のことといえる。
そうすると、ベースコート層を有する被転写体に弾性体による転写方式で転写することは、刊行物2ないし4に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明が格別顕著な効果を奏したとすることはできない。
したがって、本願発明は、刊行物1ないし4に記載された発明及び周知事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.結論
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、本願出願前に頒布された刊行物1ないし4に記載された発明及び周知事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-16 
結審通知日 2007-10-23 
審決日 2007-11-12 
出願番号 特願平7-250898
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B44C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川村 大輔神尾 寧藤井 勲  
特許庁審判長 岡田 和加子
特許庁審判官 福田 由紀
阿久津 弘
発明の名称 化粧板の製造方法  

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