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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1170028 |
審判番号 | 不服2005-1220 |
総通号数 | 98 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-02-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-01-20 |
確定日 | 2007-12-28 |
事件の表示 | 特願2001-348273「薄膜トランジスタ、薄膜トランジスタの製造方法及び薄膜トランジスタを用いた画像入力装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月 2日出願公開、特開2002-217206〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成13年11月14日の出願(国内優先権主張日 平成12年11月20日)であって、平成16年12月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成17年1月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、その後当審において、平成18年3月7日付けで審尋がなされ、その後同年5月15日に回答書が提出されたものである。 2.平成17年1月20日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について [補正却下の決定の結論] 平成17年1月20日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)本件補正の内容 本件補正は、補正前の請求項2、請求項5、請求項8、請求項10、請求項12、請求項13、請求項16及び請求項17を削除するとともに、補正前の請求項1、請求項3、請求項4、請求項6、請求項7、請求項9、請求項11、請求項14及び請求項15を補正後の請求項1ないし請求項9と補正するものであり、補正後の請求項1、請求項2、請求項4、請求項6及び請求項7に係る発明は以下のとおりである。 「【請求項1】 ガラス基板(1)と、 エネルギー400?900mJ/cm^(2)のレーザラインビーム照射によりシリコンの溶融点に近い温度の該レーザラインビームの両端においてランダムに発生したシリコン種結晶を起点として前記レーザラインビームの中央に向かって結晶粒が一方向に伸長して前記絶縁基板上に形成された前記レーザラインビームの幅の約1/2の長さの結晶粒を有する2つの結晶領域よりなる厚さ約60?80nmのポリシリコン層(3’)をパターン化して形成されたポリシリコンアイランド(3’)と、 該ポリシリコンアイランド内に前記方向に平行に配列形成されたソース領域(S)、チャネル領域(C)及びドレイン領域(D)と を具備する薄膜トランジスタ。 【請求項2】 ガラス基板(1)上に厚さ約60?80nmのアモルファスシリコン層(3)を形成する工程と、 前記アモルファスシリコン層に第1の方向に沿ってエネルギー400?900mJ/cm^(2)のレーザラインビームを照射し、該レーザラインビームに照射された前記アモルファスシリコン層の部分を前記レーザラインビームの照射によりシリコンの溶融点に近い温度の該レーザラインビームの両端においてランダムに発生したシリコン種結晶を起点として前記レーザラインビームの中央に向かって結晶粒が一方向に伸長して前記絶縁基板上に形成された前記レーザラインビームの幅の約1/2の長さを有する2つの結晶領域よりなるポリシリコン層(3’)に変換する工程と、 前記ポリシリコン層をポリシリコンアイランド(3’)にパターン化する工程と、 前記ポリシリコンアイランド内に薄膜トランジスタのソース領域(S)、チャネル領域(C)及びドレイン領域(D)を前記第1の方向に垂直な第2の方向に沿って形成する工程と を具備する薄膜トランジスタの製造方法。」 「【請求項4】 ガラス基板(1)上に厚さ約60?80nmのアモルファスシリコン層(3)を形成する工程と、 前記アモルファスシリコン層に第1の方向に沿ってエネルギー400?900mJ/cm^(2)の複数のレーザラインビームを照射し、該レーザビームに照射された前記アモルファスシリコン層の部分を 前記各レーザラインビームの照射によりシリコンの溶融点に近い温度の該各レーザラインビームの両端においてランダムに発生したシリコン種結晶を起点として前記各レーザラインビームの中央に向かって結晶粒が一方向に伸長して形成された前記各レーザラインビームの幅の約1/2の長さを有する2つの結晶領域よりなる複数のポリシリコン層(3’,3’)に変換する工程と、 前記各ポリシリコン層を複数のポリシリコンアイランド(3’,3’)にパターン化する工程と、 前記複数のポリシリコン層の1つに属するポリシリコンアイランド内にPチャネル型薄膜トランジスタのソース領域(S)、チャネル領域(C)及びドレイン(D)を前記第1の方向に垂直な第2の方向に沿って形成すると共に、前記複数のポリシリコン層の他の1つに属するポリシリコンアイランド内にNチャネル型薄膜トランジスタのソース領域(S)、チャネル領域(C)及びドレイン領域(D)を前記第2の方向に沿って形成する工程と を具備し、前記Pチャネル薄膜トランジスタ及び前記Nチャネル薄膜トランジスタによりCMOSインバータを製造するCMOSインバータの製造方法。」 「【請求項6】 ガラス基板(1)上に厚さ約60?80nmのアモルファスシリコン層(3)を形成する工程と、 前記アモルファスシリコン層に第1の方向に沿ってエネルギー400?900mJ/cm^(2)の複数のレーザラインビームを照射し、前記各レーザラインビームの照射によりシリコンの溶融点に近い温度の該各レーザラインビームの両端においてランダムに発生したシリコン種結晶を起点として前記各レーザラインビームの中央に向かって結晶粒が一方向に伸長して形成された前記各レーザラインビームの幅の約1/2の長さを有する2つの結晶領域よりなる複数のポリシリコン層(3’,3’)に変換する工程と、 前記各ポリシリコン層の2つの結晶領域毎にポリシリコンアイランド(3’)にパターン化する工程と、 前記複数のポリシリコン層の1つに属する前記ポリシリコンアイランドの2つの領域の一方にPチャネル型薄膜トランジスタのソース領域(S)、チャネル領域(C)及びドレイン領域(D)を前記第1の方向に垂直な第2の方向に沿って形成すると共に、前記複数のポリシリコン層の他の1つに属する前記ポリシリコンアイランドの2つの領域の一方にNチャネル型薄膜トランジスタのソース領域(S)、チャネル領域(C)及びドレイン領域(D)を前記第2の方向に沿って配置して形成する工程と を具備し、前Pチャネル薄膜トランジスタ及び前記Nチャネル薄膜トランジスタによりCMOSインバータを製造するCMOSインバータの製造方法。 【請求項7】 ガラス基板(1)と、 エネルギー400?900mJ/cm^(2)のレーザビーム照射によりシリコンの溶融点に近い温度の該レーザビームの両端においてランダムに発生したシリコン種結晶を起点として前記レーザビームの中央に向かって結晶粒が一方向に伸長して前記絶縁基板に形成された前記レーザビームの幅の約1/2の長さの結晶粒を有する2つの結晶領域よりなる厚さ約60?80nmのポリシリコン層(3’)をパターン化して形成された複数のポリシリコンアイランド(3’)と、 薄膜トランジスタ(Q1, Q2, Q3)及び該薄膜トランジスタ上に形成されたフォトダイオード(PD)を含む複数の画素と を具備し、前記各薄膜トランジスタが前記複数のポリシリコンアイランドの1つに形成されたソース領域(S)、チャネル領域(C)及びドレイン領域(D)を有し、前記各薄膜トランジスタのソース領域(S)、チャネル領域(C)及びドレイン領域(D)が前記方向に平行に形成された画像入力装置。」 (2)補正事項の整理 [補正事項1] 補正前の請求項1についての補正は、補正前の請求項1の「絶縁基板」を、補正後の請求項1の「ガラス基板」と補正し(補正事項1-1)、補正前の請求項1の「レーザラインビーム照射」を、補正後の請求項1の「エネルギー400?900mJ/cm^(2)のレーザラインビーム照射」と補正し(補正事項1-2)、補正前の請求項1の「ポリシリコン層(3’)」を、補正後の請求項1の「厚さ約60?80nmのポリシリコン層(3’)」と補正(補正事項1-3)するものである。 [補正事項2] 補正前の請求項3についての補正は、補正前の請求項3を補正後の請求項2に項番を繰り上げるとともに、補正前の請求項3の「絶縁基板」を、補正後の請求項2の「ガラス基板」と補正し(補正事項2-1)、補正前の請求項3の「アモルファスシリコン層(3)」を、補正後の請求項2の「厚さ約60?80nmのアモルファスシリコン層(3)」と補正し(補正事項2-2)、補正前の請求項3の「レーザラインビーム照射」を、補正後の請求項2の「エネルギー400?900mJ/cm^(2)のレーザラインビーム照射」と補正(補正事項2-3)するものである。 [補正事項3] 補正前の請求項6についての補正は、補正前の請求項6を補正後の請求項4に項番を繰り上げるとともに、補正前の請求項6の「絶縁基板」を、補正後の請求項4の「ガラス基板」と補正し(補正事項3-1)、補正前の請求項6の「アモルファスシリコン層(3)」を、補正後の請求項4の「厚さ約60?80nmのアモルファスシリコン層(3)」と補正し(補正事項3-2)、補正前の請求項6の「レーザラインビーム照射」を、補正後の請求項4の「エネルギー400?900mJ/cm^(2)のレーザラインビーム照射」と補正(補正事項3-3)するものである。 [補正事項4] 補正前の請求項9についての補正は、補正前の請求項9を補正後の請求項6に項番を繰り上げるとともに、補正前の請求項9の「絶縁基板」を、補正後の請求項6の「ガラス基板」と補正し(補正事項4-1)、補正前の請求項9の「アモルファスシリコン層(3)」を、補正後の請求項6の「厚さ約60?80nmのアモルファスシリコン層(3)」と補正し(補正事項4-2)、補正前の請求項9の「レーザラインビーム照射」を、補正後の請求項6の「エネルギー400?900mJ/cm^(2)のレーザラインビーム照射」と補正(補正事項4-3)するものである。 [補正事項5] 補正前の請求項11についての補正は、補正前の請求項11を補正後の請求項7に項番を繰り上げるとともに、補正前の請求項11の「絶縁基板」を、補正後の請求項7の「ガラス基板」と補正し(補正事項5-1)、補正前の請求項11の「レーザラインビーム照射」を、補正後の請求項7の「エネルギー400?900mJ/cm^(2)のレーザラインビーム照射」と補正し(補正事項5-2)、補正前の請求項11の「ポリシリコン層(3’)」を、補正後の請求項7の「厚さ約60?80nmのポリシリコン層(3’)」と補正(補正事項5-3)するものである。 [補正事項6] 補正前の請求項2,請求項5、請求項8、請求項10、請求項12、請求項13、請求項16及び請求項17を削除し、補正前の請求項4、請求項7、請求項14及び請求項15を、補正後の請求項3,請求項5、請求項8及び請求項9と補正するものである。 (3)本件補正についての検討 (3-1)補正の目的の適否及び新規事項の追加について [補正事項1について] 補正前の請求項1についての補正は、補正前の請求項1の「絶縁基板」を、補正後請求項1の「ガラス基板」と補正し、補正前の請求項1の「レーザラインビーム照射」を、補正後請求項1の「エネルギー400?900mJ/cm^(2)のレーザラインビーム照射」と補正し、補正前の請求項1の「ポリシリコン層(3’)」を、補正後請求項1の「厚さ約60?80nmのポリシリコン層(3’)」と補正するものであって、補正前の請求項1の「絶縁基板」の材質、「レーザラインビーム照射」のエネルギー密度、「ポリシリコン層(3’)」の厚さを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、補正前の請求項1についての補正は、「基板カバー層2上に、約60?80nm厚さのアモルファスシリコン層3を、温度約500℃でジシランガスを用いたLPCVD法により形成する。」(0027段落)及び「レーザラインビームのエネルギーはたとえば400?900mJ/cm^(2)と比較的高く」(0028段落)等の記載に基づいて、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものである。 [補正事項2について]ないし[補正事項5について] 補正前の請求項3、請求項6、請求項9及び請求項11についての補正は、[補正事項1について]において検討したと同様な理由により、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、補正前の請求項3、請求項6、請求項9及び請求項11についての補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものである。 さらに、請求項の項番を繰り上げる補正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 [補正事項6について] 補正事項6についての補正は、請求項の削除又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 したがって、本件補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当するから、特許法第17条の2第4項に掲げる目的に該当し、また、本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。 以下において、更に、本件補正が、独立特許要件を満たすか否か(特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項に規定する要件に適合するか否か)について検討する。 (3-2)独立特許要件について[その1] 本件補正後の請求項に係る発明の独立特許要件について検討する。 (3-2-1)補正後の請求項1に係る発明について[特許法第36条第6項について] 本件補正後の請求項1に係る発明は、以下のとおりである。 「【請求項1】 ガラス基板(1)と、 エネルギー400?900mJ/cm^(2)のレーザラインビーム照射によりシリコンの溶融点に近い温度の該レーザラインビームの両端においてランダムに発生したシリコン種結晶を起点として前記レーザラインビームの中央に向かって結晶粒が一方向に伸長して前記絶縁基板上に形成された前記レーザラインビームの幅の約1/2の長さの結晶粒を有する2つの結晶領域よりなる厚さ約60?80nmのポリシリコン層(3’)をパターン化して形成されたポリシリコンアイランド(3’)と、 該ポリシリコンアイランド内に前記方向に平行に配列形成されたソース領域(S)、チャネル領域(C)及びドレイン領域(D)と を具備する薄膜トランジスタ。」 ここで、補正後の請求項1には、「前記絶縁基板」とあるが、「絶縁基板」は「前記」されておらず、「前記絶縁基板」より前に記載されているのは、「ガラス基板」であり、「前記絶縁基板」がどのような構成を意味するか明確でないから、補正後の請求項1に係る発明は不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 また、補正後の請求項2に係る発明及び請求項7に係る発明も、補正後の請求項1に係る発明と同様の理由により、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 (3-3)独立特許要件について[その2] (3-3-1)補正後の請求項1に係る発明について[特許法第29条第2項について] 本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正により、補正前の請求項1の「絶縁基板」が「ガラス基板」と補正されている経緯を参酌して、補正後の請求項1に記載される「前記絶縁基板」が「前記ガラス基板」の誤記であると認定し、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 ガラス基板(1)と、 エネルギー400?900mJ/cm^(2)のレーザラインビーム照射によりシリコンの溶融点に近い温度の該レーザラインビームの両端においてランダムに発生したシリコン種結晶を起点として前記レーザラインビームの中央に向かって結晶粒が一方向に伸長して前記ガラス基板上に形成された前記レーザラインビームの幅の約1/2の長さの結晶粒を有する2つの結晶領域よりなる厚さ約60?80nmのポリシリコン層(3’)をパターン化して形成されたポリシリコンアイランド(3’)と、 該ポリシリコンアイランド内に前記方向に平行に配列形成されたソース領域(S)、チャネル領域(C)及びドレイン領域(D)と を具備する薄膜トランジスタ。」 (3-3-2)刊行物に記載された発明 (a)刊行物1:特開平8-288515号公報 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の国内優先権主張日前に日本国内で頒布されたものである特開平8-288515号公報(以下「刊行物1」という。)には、図1ないし図3とともに、以下の事項が記載されている。 「【従来の技術】上述のアクティブマトリクス型液晶ディスプレイの画素スイッチング素子やドライバー素子、あるいはSRAMのメモリセル内の負荷素子等としては、多結晶シリコン膜からなるチャネル領域を有するTFT(Poly-Si TFT)が用いられている。しかし、高性能なTFTを実現する上で、多結晶シリコン膜には以下の2つの問題がある。 【0003】第1の問題は、次のとおりである。多結晶シリコン膜の結晶粒界に存在する欠陥によって生じるポテンシャルバリアが電流障壁として働き、高移動度なTFTを実現する妨げとなる。これを防ぐためには電流経路に対して垂直な方向の結晶粒界の数を低減させなければならない。つまり、多結晶シリコン膜を形成する時に結晶粒界の位置を制御する必要があることである。 【0004】第2の問題は、TFT特性のバラツキを低減するためには、結晶粒界の位置を制御すると共に、個々の結晶粒においてTFTの電流経路方向の配向性を揃えることが必要であることである。」(0002段落ないし0004段落) 「【発明が解決しようとする課題】上述のように、高性能なTFTを実現するためには、結晶粒界の位置を制御すると共に個々の結晶粒の配向性を揃えて、TFTの電流経路に結晶粒界が殆ど存在しない多結晶シリコン膜を得る必要がある。しかし、上述の第1?第5の方法では、以下のような問題がある。」(0029段落) 「【作用】段差が形成された絶縁性基板上に第1の非晶質シリコン膜を形成し、これを熱処理により固相結晶化させると、段差を起点として段差側面に対して垂直な方向に配向性の揃った第1の多結晶シリコン膜が得られる。この第1の多結晶シリコン膜は、基板上に多結晶シリコン膜を堆積した場合(約0.05μm)に比べて大粒径(約3μm)にすることができる。 【0040】この第1の多結晶シリコン膜を、配向性の揃った領域(段差部およびその周辺領域、もしくは側壁部)を残してパターニングする。その上に第2の非晶質シリコン膜を形成して熱処理すると、第1の多結晶シリコン膜の側面をシードとして第2の非晶質シリコン膜が横方向にエピタキシャル成長する。よって、大粒径の多結晶シリコン膜を、配向性と結晶粒界の位置とを制御して得ることができる。 【0041】段差の側面に対して垂直な方向が電流経路となるように、第2の多結晶シリコン膜からチャネル領域を形成すると、電流経路とエピタキシャル成長方向(横方向)とが一致するので、電流経路の方向に結晶粒界が殆ど無く、個々の結晶粒の配向性の揃ったチャネル領域とすることができる。」(0039段落ないし0041段落) 「(実施例1)図1(i)に、本実施例で得られるTFTの断面図を示す。・・・ 【0045】多結晶シリコン膜9は、図2(a)および(b)に示すように、段差2の側面に対して垂直な方向に配向性が揃った状態で結晶成長されている。チャネル領域12iは、段差の側面2に対して垂直な方向が電流経路となるように形成されているので、電流経路の方向には結晶粒界が殆ど無い。 【0046】これらのTFTは、以下のようにして作製することができる。 【0047】まず、図1(a)に示すように、ガラスや石英等からなる絶縁性基板1をエッチングすることにより段差2を形成する。この段差2の深さは、後述する第1の非晶質シリコン膜3の膜厚および第2の非晶質シリコン膜8の膜厚と同程度であるのが望ましい。このように段差2と第1の非晶質シリコン膜3の膜厚および第2の非晶質シリコン膜8の膜厚とがほぼ同じであると、段差部における横方向の結晶配向性を最も揃えることができる。これは、段差の側面を起点として第1の非晶質シリコン膜3の多結晶化が起こり、第1の多結晶シリコン膜4のパターニングされた側面をシードとして第2の非晶質シリコン膜8の多結晶化が起こるからである。また、段差2の深さは50?500nm程度であるのが望ましい。これは、膜厚が500nmを超える多結晶シリコン膜をTFTのチャネル領域12iとして用いるとリーク電流が増加し、膜厚が50nm未満であると非晶質シリコン膜を多結晶化する時にグレインがあまり大きく成長しないからである。この実施例では、段差2の深さを100nmに形成した。 【0048】次に、図1(b)に示すように、LPCVD法により段差2の深さと同程度の膜厚の第1の非晶質シリコン膜3を堆積する。非晶質シリコン膜を堆積する時、Si_(2)H_(6)ガスを原料ガスとすると、SiH_(4)ガスを原料ガスとした場合に比べて固相結晶化グレインが大きく成長でき、本発明の製造方法によれば?3μm以上のグレイン成長が期待できる。堆積温度は400?550℃が望ましい。温度が低すぎると反応が起こらず、高すぎると多結晶化が起こって非晶質シリコン膜が得られない。この実施例では、原料ガスとしてSi_(2)H_(6)ガスを用い、温度500℃、圧力25Paで厚み100nmの非晶質シリコン膜を堆積した。 【0049】この第1の非晶質シリコン膜3をN_(2)雰囲気下、固相結晶化法によりアニールして、第1の多結晶シリコン膜4とする。このN_(2)アニールは600?700℃で行うのが望ましい。結晶化温度が低すぎると結晶化が起こらず、高すぎると結晶化速度は速くなるがグレインサイズがあまり大きくならない。結晶化時間は6h(h:時間)以上であればよいが、十分に結晶化するためには18?24hが望ましい。この実施例では、600℃で24hのアニールを行った。多結晶化の際のアニール法としては、エキシマレーザー、Arイオンレーザー等を用いたレーザーアニールやハロゲンランプの加熱による短時間アニール等を用いてもよい。このアニールにより、段差部とその周辺領域では、段差を起点として段差の側面に対して垂直な方向に配向性の揃った第1の多結晶シリコン膜4が成長する。 【0050】続いて、図1(c)に示すように、第1の多結晶シリコン膜4上に絶縁膜5を堆積し、図1(d)に示すように、第1の多結晶シリコン膜4と絶縁膜5とを、段差部とその周辺を残してパターニングする。ここで、第1の多結晶シリコン膜4は、段差から3μm程度、配向性が揃った状態で成長するので、シードとして残す段差部とその周辺は、段差の片側で2?4程度、両側で4?8程度残すのが望ましい。この実施例では、片側で2μm、両側で4μm残してパターニングを行った。・・・この実施例では、厚み40nm程度以上のSiO_(2)からなる絶縁膜5をCVD法により堆積した。 【0051】その後、図1(e)に示すように、第2の非晶質シリコン膜8を堆積する。堆積条件は第1の非晶質シリコン膜3と同様の範囲が望ましい。この実施例では、第1の非晶質シリコン膜3と同じ条件で厚み100nmの非晶質シリコン膜を堆積した。 【0052】次に、図1(f)に示すように、段差2を含む領域の第2の非晶質シリコン膜8をエッチングする。続いて、この第2の非晶質シリコン膜8を、第1の多結晶シリコン膜4の露出した側面をシードとしてN_(2)雰囲気下、固相結晶化法によりアニールして、第2の多結晶シリコン膜9とする。上述のように第2の非晶質シリコン膜8をエッチングするのは以下の通りである。エッチングしない場合は、絶縁膜5の上の第2の非晶質シリコン膜8は、シードの影響を受けず、配向の揃わない第2の多結晶シリコン膜9が成長すると思われ、その成長過程で他の部分にあまり良い影響を与えない。一方、エッチングした場合は、絶縁膜5の上の第2の非晶質シリコン膜8の結晶化が、下地の第1の多結晶シリコン膜4の影響を受けることなく、段差2の側面からのエピタキシャル成長のみが起こり、横方向の配向性が良好となるからである。このアニール条件は第1の非晶質シリコン膜3と同様の範囲が望ましい。この実施例では、600℃で24hのアニールを行った。多結晶化の際のアニール法としては、エキシマレーザー、Arイオンレーザー等を用いたレーザーアニールやハロゲンランプの加熱による短時間アニール等を用いてもよい。このアニールにより、第2の非晶質シリコン膜8は、第1の多結晶シリコン膜4の露出した側面(シード)と同じ配向性を持って横方向にエピタキシャル成長する。つまり、図2(a)および図2(b)に示すように、電流経路の方向(段差2の側面に対して垂直な方向)に結晶粒界が存在しない大粒径(?10μm以上)の第2の多結晶シリコン膜9が得られる。 ・・・ 【0056】(実施例2)図3(j)に、本実施例で得られるTFTの断面図を示す。これらのTFTは、段差17が形成された絶縁性基板16の凹部に、チャネル領域26iとリンがドープされたソース領域26Nとドレイン領域26Nとを有する第2の多結晶シリコン膜22、およびチャネル領域27iとボロンがドープされたソース領域27Pとドレイン領域27Pとを有する第2の多結晶シリコン膜22が形成され、その上にゲート絶縁膜24が形成されている。ゲート絶縁膜24の上には、チャネル領域26i、27iと対向するようにゲート電極25が形成され、その上を覆って層間絶縁膜28が形成されている。さらにその上にソース電極29およびドレイン電極29が形成され、ゲート絶縁膜25および層間絶縁膜28に形成されたコンタクトホール部30においてソース領域26N、27Pおよびドレイン領域26N、27Pと電気的に接続されている。 【0057】多結晶シリコン膜22は、図3(f)および図3(g)に示すように、段差17の側面に対して垂直な方向に配向性が揃った状態で結晶成長されている。チャネル領域26iおよび27iは、段差17の側面に対して垂直な方向が電流経路となるように形成されているので、電流経路の方向には結晶粒界が殆ど無い。 【0058】これらのTFTは、以下のようにして作製することができる。 【0059】まず、図3(a)に示すように、石英等からなる絶縁性基板16をエッチングすることにより上面から見たサイズが30μm×100μmの凹部を形成して100nmの段差17を設ける。この段差17の深さは、実施例1と同様に後述する第1の非晶質シリコン膜18および第2の非晶質シリコン膜21の膜厚と同程度であるのが望ましく、具体的には50nm?500nmであるのが望ましい。 【0060】次に、図3(b)に示すように、Si_(2)H_(6)ガスを原料ガスとしてLPCVD法により温度500℃、圧力25Paで厚み50nmの第1の非晶質シリコン膜18を堆積し、N_(2)雰囲気下、固相結晶化法により600℃で24hアニールして、第1の多結晶シリコン膜を形成する。この時の堆積条件およびアニール条件は実施例1と同様の範囲であるのが望ましい。また、多結晶化の際のアニール法としては、エキシマレーザー、Arイオンレーザー等を用いたレーザーアニールやハロゲンランプの加熱による短時間アニール等を用いてもよい。 【0061】続いて、図3(c)に示すように、第1の多結晶シリコン膜を段差の側壁部のみを残してエッチングし、サイドウォール20を形成する。このエッチングには異方性のドライエッチング法を用いる。このサイドウォール20の多結晶シリコンの結晶配向性は、段差17の側面に対して垂直な方向、つまり絶縁性基板16に対して平行に〈111〉の配向性を有する。サイドウォール20の段差17の側面からの厚みは、段差の1/2以下であるのが好ましい。・・・ 【0062】その後、図3(d)に示すように、Si_(2)H_(6)ガスを原料ガスとしてLPCVD法により温度500℃、圧力25Paで厚み100nmの第2の非晶質シリコン膜21を堆積し、図3(e)に示すように、サイドウォール20をシードとしてN_(2)雰囲気下、固相結晶化法により600℃で24hアニールして、第2の多結晶シリコン膜22とする。この時の堆積条件およびアニール条件は第1の非晶質シリコン膜18と同様の範囲が望ましい。多結晶化の際のアニール法としては、エキシマレーザー、Arイオンレーザー等を用いたレーザーアニールやハロゲンランプの加熱による短時間アニール等を用いてもよい。このアニールにより、第2の非晶質シリコン膜21は、サイドウォール20と同じ配向性を持って、つまり絶縁性基板16に対して平行に〈111〉の配向性を有して成長する。この時、図3(f)および図3(g)に示すように、凹部のそれぞれの段差17から成長してきた結晶同士が段差の中間でぶつかって結晶粒界23が形成されるので、この結晶粒界23を含まないように、TFTのチャネル領域を形成するパターニングを行うのが望ましい。図3(g)は図3(f)におけるa-a'線の断面図である。 【0063】続いて、図3(h)に示すように、第2の多結晶シリコン膜22を島状にパターニングする。その後は、実施例1と同様にして図3(i)に示すようなTFTを作製する。」(0044段落ないし0063段落) よって、刊行物1には、以下の発明が記載されている。 「ガラス基板16と、 レーザーの照射により非晶質シリコン膜21を固相結晶化法により形成された、多結晶シリコンの一対のサイドウォール20と同じ結晶配向性を持つ多結晶シリコン膜22であって、前記サイドウォール20の側面に対して垂直な方向に向かい、前記一対のサイドウォール20の中間まで成長した前記多結晶シリコン膜22を島状にパターニングした部分と、 前記島状にパターニングした部分内に前記方向と平行に配列して形成されたソース領域(26N、27P)、チャネル領域(26i、27i)及びドレイン領域(26N、27P)とを備えたTFT。」 (b)刊行物2:特表2000-505241号公報 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の国内優先権主張日前に日本国内で頒布されたものである特表2000-505241号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図1、図2、図7ないし図9とともに、以下の事項が記載されている。 「【特許請求の範囲】 1.支持された半導体材料の膜の横方向に延在する部分として多結晶領域を形成するに当たり、 半導体材料中に熱を誘導するパルス状の放射を用いて、後側に位置する放射透過性の基板と、基板上の第1の半導体膜と、第1の半導体膜上の耐熱性の膜と、耐熱性の膜上の第2の半導体膜とを具える構造体の前側及び後側から同時に露光し、前記横方向に延在する部分を含む半導体膜の横方向に延在する領域の全ての半導体材料を溶融し、 同時露光の後、前記領域の境界から横方向に凝固させることにより、多結晶の微細構造体を前記領域に形成する多結晶領域の形成方法。 2.請求項1に記載の方法において、前記領域が平行な縁部により範囲が規定されている方法。 3.請求項2に記載の方法において、前記平行な縁部が、同時に生ずる横方向からの凝固により前記領域の全体が結晶化する距離だけ離間している方法。 4.請求項1に記載の方法において、前記半導体材料がシリコンで構成される方法。 5.請求項1に記載の方法において、前記耐熱層がほぼSiO_(2)で構成されている方法。 6.請求項1に記載の本発明において、前記基板をガラス基板とした方法。」 「14.請求項1に記載の方法において、前記放射がレーザ放射により構成される方法。」 「技術分野 本発明は、半導体集積化デバイス用の半導体材料の処理方法に関するものである。 発明の背景 半導体デバイスは例えば・・・ガラスの基板上のシリコンの層又は膜に形成することができる。この技術は・・・アクティブマトリックス液晶表示装置・・・のデバイスの製造に用いられる。後者の場合、適切に透明な基板上の薄膜トランジスタ(TFT)の規則的なアレイにおいて、各トランジスタは画素コントローラとして作用する。」(第7頁第4ないし12行) 「発明の概要 デバイス特性及びデバイスの不均一性を改善するため、基板上の半導体膜に横方向に凝固させる技術を適用する。この人為的に制御されるスーパラテラル成長・・・と称せられる技術は、例えばレーザビームパルスのような適当な放射パルスにより膜の一部を露光し、膜をその全厚さにわたって局部的に溶融することを含む。溶融した半導体材料が凝固すると、膜の予め定めた完全に溶融しなかった部分から結晶構造が成長する。」(第7頁第25行ないし第8頁第3行) 「第1実施例 図1の投影露光装置は、エキシマレーザ11、ミラー12、ビームスプリッタ13、可変焦点視野レンズ14、パターン化された投影マスク15、2個の素子の結像レンズ16、サンプルステージ17、可変減衰器18、及び収束レンズ19を含んでいる。この投影装置を用いることにより、ステージ17上のサンプル10の前側面及び後側面に同時に放射パルスを供給することができる。 この技術の第1実施例の場合、図2に示すように、透明基板20、第1のアモルファスシリコン膜21、SiO_(2)膜22、及び第2のアモルファスシリコン膜23を含む「二重層」(DL)サンプル構造体を用意した。アモルファスシリコン膜の膜厚は100nmとし、SiO_(2)膜の膜厚は500nmとした。例えば窒化シリコン又は高温ガラスのような別の耐熱性材料を膜22に用いることができる。」(第9頁第19行ないし第10頁第1行) 「サンプルは図1の投影露光装置のステージ17上に配置する。マスク15は、10?100μmの種々の分離距離で50μm幅の簡単な細条のパターンを有する。 マスクパターンは3?6の範囲の種々の縮小倍率でサンプルに投影する。・・・サンプルは308nmの波長の30n秒XeClエキシマレーザを用いて室温で照射され・・・る。・・・ガラス基板の場合、例えば348nmのようなより長い波長が必要である。 ビーム照射は固定された前側エネルギー密度及び種々の後側エネルギー密度で行う。評価した前側エネルギー密度はサンプル面で約1.0J/cm^(2)である。後側エネルギー密度は170?680J/cm^(2)である。 ・・・これらの粒子は細条状領域の2個の側から横方向に成長し、細条の中心線上に良好に規定された粒子境界で2本の粒子列を形成している。」(第10頁第14行ないし第11頁第1行) 「第3実施例 図7の投影露光装置は、エキシマレーザ71、ミラー72、可変焦点視野レンズ74、パターン化された投影マスク75、2素子結像レンズ76、サンプルステージ77、及び可変減衰器78を含んでいる。サンプル70はサンプルステージ77上に配置する。この装置を用いて鮮明なビームを発生させることにより、順次横方向凝集(SLS)プロセスで単一結晶のシリコン領域を段階成長させることができる。或いは、近接マスク又は接触マスクを用いてビーム、成形することができる。 図8のサンプル構造体は、基板80、熱酸化膜81、及びアモルファスシリコン膜82を有する。 以下の説明において、図9A?9F・・・を参照して第3実施例の技術を説明する。 本例において矩形にパターン化されているアモルファスシリコン膜82からスタートし(図9A)、2本の破線により境界されているシリコン膜82の領域91をパルスで露光し、この領域のシリコンを完全に溶融させ(図9B)、次に領域91の溶融シリコンを再凝固させる(図9C)。ここで、領域91は細条状とし、この領域91の露光はマスクされた露光により又は近接マスクを用いて行うことができる。領域91の溶融シリコンの再凝固に際し、2個の粒子列が領域91の破線の境界部から領域91の中央に向けて爆発的に成長する。2本の粒子列の成長は、最終の距離92に至る特有の横方向の成長である。領域91の残りの部分において、微細に粒子化した多結晶領域93が形成される。好ましくは、この細条の幅は、再凝固に際し2本の粒子列が集束することなく互いに近づくように選択する。・・・シリコン膜上に酸化キャップ層を形成し、凝集を遅くすると共にシリコン膜の表面の歪みを低減して表面を円滑にすることができる。」(第14頁第23行ないし第15頁第24行) (3-3-3)対比・判断 補正発明と刊行物1に記載された発明(以下、「刊行物発明」という。)とを対比する。 (a)刊行物発明の「レーザーの照射」、「前記多結晶シリコン膜22を島状にパターニングした部分」、「前記島状にパターニングした部分内に前記方向と平行に配列して形成されたソース領域(26N、27P)、チャネル領域(26i、27i)及びドレイン領域(26N、27P)」及び「TFT」は、それぞれ、補正発明の「レーザ」「ビーム照射」、「ポリシリコン層(3’)をパターン化して形成されたポリシリコンアイランド(3’)」、「該ポリシリコンアイランド内に前記方向に平行に配列形成されたソース領域(S)、チャネル領域(C)及びドレイン領域(D)」、及び「薄膜トランジスタ」に相当する。 (b)刊行物発明において、「非晶質シリコン膜21を固相結晶化法により」「多結晶シリコン膜22」を形成する工程において、「非晶質シリコン膜21」をシリコンの溶融点に近い温度にして「多結晶シリコン膜22」が形成されることは明らかであり、また、刊行物発明において、「非晶質シリコン膜21を固相結晶化法により」、「多結晶シリコンの一対のサイドウォール20と同じ結晶配向性を持つ多結晶シリコン膜22」が形成されることは、「多結晶シリコン膜22」が「一対のサイドウォール20」を種結晶として成長していることも明らかであり、さらに、刊行物発明において、「多結晶シリコン膜22」が「前記サイドウォール20の側面に対して垂直な方向に向かい」、「前記一対のサイドウォール20の中間まで成長」しているから、「多結晶シリコン膜22」の結晶粒が「前記サイドウォール20の側面に対して垂直な方向」言い換えると「一方向」に向かって成長することも明らかであり、さらに、刊行物発明の「多結晶シリコン膜22」は、図3を参照すると、結晶粒界23に区分された2つの領域からなり、「2つの領域」が「前記サイドウォール20の側面に対して垂直な方向」には、結晶粒界23以外には結晶粒界を持たないことも明らかであるから、刊行物発明の「多結晶シリコンの一対のサイドウォール20と同じ結晶配向性を持つ多結晶シリコン膜22であって、前記サイドウォール20の側面に対して垂直な方向に向かい、前記一対のサイドウォール20の中間まで成長した前記多結晶シリコン膜22」は、補正発明の「シリコン種結晶を起点として」「結晶粒が一方向に伸長して前記ガラス基板上に形成された」「幅の約1/2の長さの結晶粒を有する2つの結晶領域よりなる」「ポリシリコン層(3’)」に相当する。 したがって、補正発明と刊行物発明とは、 「ガラス基板(1)と、 レーザビーム照射によりシリコンの溶融点に近い温度においてシリコン種結晶を起点として結晶粒が一方向に伸長して前記ガラス基板上に形成された幅の約1/2の長さの結晶粒を有する2つの結晶領域よりなるポリシリコン層(3’)をパターン化して形成されたポリシリコンアイランド(3’)と、 該ポリシリコンアイランド内に前記方向に平行に配列形成されたソース領域(S)、チャネル領域(C)及びドレイン領域(D)と を具備する薄膜トランジスタ。」である点で一致し、以下の各点で相違する。 [相違点1] 補正発明は、「エネルギー400?900mJ/cm^(2)のレーザラインビーム照射」を行うのに対して、 刊行物発明は、「レーザーの照射」を行うが、レーザーがラインビームであるか否か及びレーザーのエネルギー強度が明らかでない点。 [相違点2] 補正発明は、「レーザラインビーム照射によりシリコンの溶融点に近い温度の該レーザラインビームの両端においてランダムに発生したシリコン種結晶を起点として前記レーザラインビームの中央に向かって結晶粒が一方向に伸長して前記ガラス基板上に形成された前記レーザラインビームの幅の約1/2の長さの結晶粒を有する2つの結晶領域よりなる」「ポリシリコン層(3’)」を備えるのに対して、 刊行物発明は、「レーザーの照射により非晶質シリコン膜21を固相結晶化法により形成された、多結晶シリコンの一対のサイドウォール20と同じ結晶配向性を持つ多結晶シリコン膜22であって、前記サイドウォール20の側面に対して垂直な方向に向かい、前記一対のサイドウォール20の中間まで成長した前記多結晶シリコン膜22」を備える点。 [相違点3] 補正発明は、「厚さ約60?80nmのポリシリコン層(3’)」を備えるのに対して、 刊行物発明は、「多結晶シリコン膜22」を備えるものの、膜の厚さが明らかでない点。 以下、各相違点について検討する。 [相違点1について] (a)刊行物1は、「レーザーの照射により非晶質シリコン膜21を固相結晶化法により」「多結晶シリコン膜22」を形成するものであるが、その際の「レーザーの照射」のエネルギー強度は記載されていない。 (b)本願発明は、エネルギー400?900mJ/cm^(2)の「レーザラインビーム照射により」アモルファスシリコン膜から「ポリシリコン層(3’)」を形成するものであって、言い換えると、「レーザラインビーム」の照射により、アモルファスシリコン膜を溶融し、再結晶化して、形成された「ポリシリコン層(3’)」を備えている。 (c)刊行物2には、膜厚100nmの「アモルファスシリコン膜」をエネルギー密度が170?680J/cm^(2)であるXeClエキシマレーザを照射し、多結晶領域(シリコン)を形成することが記載されている(第10頁第23ないし25行)。 (d)アモルファスシリコン膜を結晶性シリコン膜とするために、レーザ光を照射すること及びレーザ光の形状を長方形とすること、言い換えると、レーザラインビームとすることは、従来周知の技術である。 (e)したがって、上記(a)ないし(d)を勘案すると、刊行物発明において、長方形状のレーザ光をアモルファスシリコン膜に照射して結晶性シリコン膜を形成する従来周知の技術、さらに、アモルファスシリコン膜に照射して結晶性シリコン膜とするために必要なレーザ光のエネルギー強度は、アモルファスシリコン膜の材質・膜厚、アモルファスシリコン膜の形成された基板の放熱性等を考慮して、レーザ光照射後の結晶性シリコン膜の結晶粒が一方向に成長する程度にレーザ光のエネルギー強度を設定すること、及び、レーザ光として、レーザラインビームを用いることにより、補正発明の如く「エネルギー400?900mJ/cm^(2)のレーザラインビーム照射」とすることは、当業者が適宜なし得たものである。 [相違点2について] (a)刊行物2には、「本例において矩形にパターン化されているアモルファスシリコン膜82からスタートし(図9A)、2本の破線により境界されているシリコン膜82の領域91をパルスで露光し、この領域のシリコンを完全に溶融させ(図9B)、次に領域91の溶融シリコンを再凝固させる(図9C)。ここで、領域91は細条状とし、この領域91の露光はマスクされた露光により又は近接マスクを用いて行うことができる。領域91の溶融シリコンの再凝固に際し、2個の粒子列が領域91の破線の境界部から領域91の中央に向けて爆発的に成長する。2本の粒子列の成長は、最終の距離92に至る特有の横方向の成長である。領域91の残りの部分において、微細に粒子化した多結晶領域93が形成される。好ましくは、この細条の幅は、再凝固に際し2本の粒子列が集束することなく互いに近づくように選択する。」(第15頁第8ないし18行)、即ち、「矩形パターン化されているアモルファスシリコン膜82」に「パルスで露光」し、露光した領域の端部である「領域91の破線の境界部」から「領域91の中央に向けて」2本の粒子列を「集束することなく互いに近づくように」成長させて、再凝固した(再結晶化した)シリコン膜を形成することが記載されている。 また、「領域91の溶融シリコンの再凝固に際し、2個の粒子列が領域91の破線の境界部から領域91の中央に向けて爆発的に成長する。」のであるから、再凝固のためのシリコン結晶の元となる微少な種結晶は、露光領域91の境界部でランダムに発生することは明らかである。 (b)刊行物2に記載されるアモルファスリコン膜の再結晶(再凝固)において、再結晶化したシリコン膜の「粒子列」は、「領域91の破線の境界部」から「領域91の中央に向けて」2本の粒子列を「集束することなく互いに近づくように」成長させるから、再結晶化した2本の粒子列は、露光した領域91のほぼ半分の長さであると言える。 (c)刊行物発明においても、レーザ照射により非晶質シリコン膜21から形成された多結晶シリコン膜22は、「前記サイドウォール20の側面に対して垂直な方向に向かい、前記一対のサイドウォール20の中間まで成長」しており、また、刊行物発明の「多結晶シリコン膜22」は、図3を参照すると、結晶粒界23に区分された2つの領域からなり、「2つの領域」が「前記サイドウォール20の側面に対して垂直な方向」には、結晶粒界23以外には結晶粒界を持たないことも明らかであるから、「多結晶シリコン膜22」の結晶粒は、「多結晶シリコン膜22」の「前記サイドウォール20の側面に対して垂直な方向」の長さのほぼ半分の長さと言える。 (d)上記(a)ないし(c)より、刊行物発明の「レーザーの照射により非晶質シリコン膜21を固相結晶化」する方「法」に代えて、刊行物2に記載される、パルス露光によるアモルファスリコン膜の再結晶(再凝固)の方法を用いることにより、補正発明の如く、「レーザラインビーム照射によりシリコンの溶融点に近い温度の該レーザラインビームの両端においてランダムに発生したシリコン種結晶を起点として前記レーザラインビームの中央に向かって結晶粒が一方向に伸長して前記ガラス基板上に形成された前記レーザラインビームの幅の約1/2の長さの結晶粒を有する2つの結晶領域よりなる」「ポリシリコン層(3’)」を備えるものとすることは、当業者が何ら困難性なくなし得たものである。 [相違点3について] (a)刊行物1には、「段差2の深さは50?500nm程度であるのが望ましい。これは、膜厚が500nmを超える多結晶シリコン膜をTFTのチャネル領域12iとして用いるとリーク電流が増加し、膜厚が50nm未満であると非晶質シリコン膜を多結晶化する時にグレインがあまり大きく成長しないからである。この実施例では、段差2の深さを100nmに形成した。」(0047段落)、「図1(b)に示すように、LPCVD法により段差2の深さと同程度の膜厚の第1の非晶質シリコン膜3を堆積する。」(0048段落)及び、「この段差17の深さは、実施例1と同様に後述する第1の非晶質シリコン膜18および第2の非晶質シリコン膜21の膜厚と同程度であるのが望ましく、具体的には50nm?500nmであるのが望ましい。」(0059段落)と記載されている。 (b)刊行物1には、非晶質シリコン膜21の厚さは、50nm?500nmの範囲が望ましいことが記載され、また、非晶質シリコン膜21の厚さは、結晶化後の多結晶化シリコン膜から形成されるTFTの求められる特性を考慮して決められるものである。 (c)TFTトランジスタの多結晶シリコン膜の膜厚として、「60?80nm」は通常用いられる厚さである。 (d)上記(a)ないし(c)から、刊行物発明において、結晶化後の多結晶シリコン膜22の厚さを「約60?80nm」とすることは、当業者が適宜設定し得たものである。 よって、補正発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明及び従来周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 (4)むすび したがって、補正発明を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものであり、適法でない補正を含む本件補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明 平成17年1月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし17に係る発明は、平成15年6月19日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ない17に記載された事項により特定されるものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載されている事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 絶縁基板(1)と、 レーザラインビーム照射によりシリコンの溶融点に近い温度の該レーザラインビームの両端においてランダムに発生したシリコン種結晶を起点として前記レーザラインビームの中央に向かって結晶粒が一方向に伸長して前記絶縁基板上に形成された前記レーザラインビームの幅の約1/2の長さの結晶粒を有する2つの結晶領域よりなるポリシリコン層(3’)をパターン化して形成されたポリシリコンアイランド(3’)と、 該ポリシリコンアイランド内に前記方向に平行に配列形成されたソース領域(S)、チャネル領域(C)及びドレイン領域(D)と を具備する薄膜トランジスタ。」 4.刊行物に記載された発明 刊行物1の特開平8-288515号公報及び刊行物2の特表2000-505241号公報に記載された事項は、「2.(3-3-2)刊行物に記載された発明」に記載されるとおりである。 したがって、刊行物1には、以下の発明が記載されている。 「ガラス基板16と、 レーザーの照射により非晶質シリコン膜21を固相結晶化法により形成された、多結晶シリコンの一対のサイドウォール20と同じ結晶配向性を持つ多結晶シリコン膜22であって、前記サイドウォール20の側面に対して垂直な方向に向かい、前記一対のサイドウォール20の中間まで成長した前記多結晶シリコン膜22を島状にパターニングした部分と、 前記島状にパターニングした部分内に前記方向と平行に配列して形成されたソース領域(26N、27P)、チャネル領域(26i、27i)及びドレイン領域(26N、27P)とを備えたTFT。」 5.対比 本願発明と刊行物1に記載された発明(以下、「刊行物発明」という。)とを対比する。 (a)刊行物発明の「ガラス基板16」、「レーザーの照射」、「前記多結晶シリコン膜22を島状にパターニングした部分」、「前記島状にパターニングした部分内に前記方向と平行に配列して形成されたソース領域(26N、27P)、チャネル領域(26i、27i)及びドレイン領域(26N、27P)」及び「TFT」は、それぞれ、本願発明の「絶縁基板」、「レーザ」「ビーム照射」、「ポリシリコン層(3’)をパターン化して形成されたポリシリコンアイランド(3’)」、「該ポリシリコンアイランド内に前記方向に平行に配列形成されたソース領域(S)、チャネル領域(C)及びドレイン領域(D)」、及び「薄膜トランジスタ」に相当する。 (b)刊行物発明において、「非晶質シリコン膜21を固相結晶化法により」「多結晶シリコン膜22」を形成する工程において、「非晶質シリコン膜21」をシリコンの溶融点に近い温度にして「多結晶シリコン膜22」が形成されることは明らかであり、また、刊行物発明において、「非晶質シリコン膜21を固相結晶化法により」、「多結晶シリコンの一対のサイドウォール20と同じ結晶配向性を持つ多結晶シリコン膜22」が形成されることは、「多結晶シリコン膜22」が「一対のサイドウォール20」を種結晶として成長していることも明らかであり、さらに、刊行物発明において、「多結晶シリコン膜22」が「前記サイドウォール20の側面に対して垂直な方向に向かい」、「前記一対のサイドウォール20の中間まで成長」しているから、「多結晶シリコン膜22」の結晶粒が「前記サイドウォール20の側面に対して垂直な方向」言い換えると「一方向」に向かって成長することも明らかであり、さらに、刊行物発明の「多結晶シリコン膜22」は、図3を参照すると、結晶粒界23に区分された2つの領域からなり、「2つの領域」が「前記サイドウォール20の側面に対して垂直な方向」には、結晶粒界23以外には結晶粒界を持たないことも明らかであるから、刊行物発明の「多結晶シリコンの一対のサイドウォール20と同じ結晶配向性を持つ多結晶シリコン膜22であって、前記サイドウォール20の側面に対して垂直な方向に向かい、前記一対のサイドウォール20の中間まで成長した前記多結晶シリコン膜22」は、本願発明の「シリコン種結晶を起点として」「結晶粒が一方向に伸長して前記ガラス基板上に形成された」「幅の約1/2の長さの結晶粒を有する2つの結晶領域よりなるポリシリコン層(3’)」に相当する。 したがって、本願発明と刊行物発明とは、 「絶縁基板(1)と、 レーザビーム照射によりシリコンの溶融点に近い温度においてシリコン種結晶を起点として結晶粒が一方向に伸長して前記ガラス基板上に形成された幅の約1/2の長さの結晶粒を有する2つの結晶領域よりなるポリシリコン層(3’)をパターン化して形成されたポリシリコンアイランド(3’)と、 該ポリシリコンアイランド内に前記方向に平行に配列形成されたソース領域(S)、チャネル領域(C)及びドレイン領域(D)と を具備する薄膜トランジスタ。」である点で一致し、以下の各点で相違する。 [相違点1] 本願発明は、「レーザラインビーム照射」を行うのに対して、 刊行物発明は、「レーザーの照射」を行うが、レーザーがラインビームであるか否か明らかでない点。 [相違点2] 本願発明は、「レーザラインビーム照射によりシリコンの溶融点に近い温度の該レーザラインビームの両端においてランダムに発生したシリコン種結晶を起点として前記レーザラインビームの中央に向かって結晶粒が一方向に伸長して前記ガラス基板上に形成された前記レーザラインビームの幅の約1/2の長さの結晶粒を有する2つの結晶領域よりなるポリシリコン層(3’)」を備えるのに対して、 刊行物発明は、「レーザーの照射により非晶質シリコン膜21を固相結晶化法により形成された、多結晶シリコンの一対のサイドウォール20と同じ結晶配向性を持つ多結晶シリコン膜22であって、前記サイドウォール20の側面に対して垂直な方向に向かい、前記一対のサイドウォール20の中間まで成長した前記多結晶シリコン膜22」を備える点。 6.当審の判断 以下、各相違点について検討する。 [相違点1について] アモルファスシリコン膜を結晶性シリコン膜とするために、レーザ光を照射すること及びレーザ光の形状を長方形とすること、言い換えると、レーザラインビームとすることは、従来周知の技術である。 したがって、刊行物発明において、レーザ光として、レーザラインビームを用いることは、当業者が適宜なし得たものである。 [相違点2について] (a)刊行物2には、「本例において矩形にパターン化されているアモルファスシリコン膜82からスタートし(図9A)、2本の破線により境界されているシリコン膜82の領域91をパルスで露光し、この領域のシリコンを完全に溶融させ(図9B)、次に領域91の溶融シリコンを再凝固させる(図9C)。ここで、領域91は細条状とし、この領域91の露光はマスクされた露光により又は近接マスクを用いて行うことができる。領域91の溶融シリコンの再凝固に際し、2個の粒子列が領域91の破線の境界部から領域91の中央に向けて爆発的に成長する。2本の粒子列の成長は、最終の距離92に至る特有の横方向の成長である。領域91の残りの部分において、微細に粒子化した多結晶領域93が形成される。好ましくは、この細条の幅は、再凝固に際し2本の粒子列が集束することなく互いに近づくように選択する。」(第15頁第8ないし18行)、即ち、「矩形パターン化されているアモルファスシリコン膜82」に「パルスで露光」し、露光した領域の端部である「領域91の破線の境界部」から「領域91の中央に向けて」2本の粒子列を「集束することなく互いに近づくように」成長させて、再凝固した(再結晶化した)シリコン膜を形成することが記載されている。 また、「領域91の溶融シリコンの再凝固に際し、2個の粒子列が領域91の破線の境界部から領域91の中央に向けて爆発的に成長する。」のであるから、再凝固のためのシリコン結晶の元となる微少な種結晶は、露光領域91の境界部でランダムに発生することは明らかである。 (b)刊行物2に記載されるアモルファスリコン膜の再結晶(再凝固)において、再結晶化したシリコン膜の「粒子列」は、「領域91の破線の境界部」から「領域91の中央に向けて」2本の粒子列を「集束することなく互いに近づくように」成長させるから、再結晶化した2本の粒子列は、露光した領域91のほぼ半分の長さであると言える。 (c)刊行物発明においても、レーザ照射により非晶質シリコン膜21から形成された多結晶シリコン膜22は、「前記サイドウォール20の側面に対して垂直な方向に向かい、前記一対のサイドウォール20の中間まで成長」しており、また、刊行物発明の「多結晶シリコン膜22」は、図3を参照すると、結晶粒界23に区分された2つの領域からなり、「2つの領域」が「前記サイドウォール20の側面に対して垂直な方向」には、結晶粒界23以外には結晶粒界を持たないことも明らかであるから、「多結晶シリコン膜22」の結晶粒は、「多結晶シリコン膜22」の「前記サイドウォール20の側面に対して垂直な方向」の長さのほぼ半分の長さと言える。 (d)上記(a)ないし(c)より、刊行物発明の「レーザーの照射により非晶質シリコン膜21を固相結晶化」する方「法」に代えて、刊行物2に記載される、パルス露光によるアモルファスリコン膜の再結晶(再凝固)の方法を用いることにより、本願発明の如く、「レーザラインビーム照射によりシリコンの溶融点に近い温度の該レーザラインビームの両端においてランダムに発生したシリコン種結晶を起点として前記レーザラインビームの中央に向かって結晶粒が一方向に伸長して前記ガラス基板上に形成された前記レーザラインビームの幅の約1/2の長さの結晶粒を有する2つの結晶領域よりなるポリシリコン層(3’)」を備えるものとすることは、当業者が何ら困難性なくなし得たものである。 よって、本願発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明及び従来周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 7.むすび 以上のとおりであるから、本願は、請求項2ないし17に係る発明について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-10-16 |
結審通知日 | 2007-10-23 |
審決日 | 2007-11-05 |
出願番号 | 特願2001-348273(P2001-348273) |
審決分類 |
P
1
8・
571-
Z
(H01L)
P 1 8・ 537- Z (H01L) P 1 8・ 121- Z (H01L) P 1 8・ 572- Z (H01L) P 1 8・ 575- Z (H01L) P 1 8・ 574- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山本 雄一、河本 充雄、宮崎 園子 |
特許庁審判長 |
河合 章 |
特許庁審判官 |
井原 純 橋本 武 |
発明の名称 | 薄膜トランジスタ、薄膜トランジスタの製造方法及び薄膜トランジスタを用いた画像入力装置 |
代理人 | 五十嵐 省三 |