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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 E04B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04B
管理番号 1170035
審判番号 不服2006-1425  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-20 
確定日 2007-12-28 
事件の表示 平成11年特許願第141753号「建物生産方法,及びこの建物生産方法における建物接合構造,建物ユニット及び屋根ユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月28日出願公開,特開2000-328658〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成11年5月21日の出願であって,平成17年12月16日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成18年1月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同年2月15日付けで手続補正がなされたものである。

2 平成18年2月15日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成18年2月15日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1)補正後の本願発明
本件補正は,特許請求の範囲の請求項1を次のように補正することを含むものである。

「下部構造体と、この下部構造体の上部に載置される上部構造体とを備えたユニット建物を形成する建物生産方法であって、
前記下部構造体は、複数の箱型建物ユニットからなるユニット建物の本体部であり、
前記上部構造体は、上記複数の箱型建物ユニットのうちの一つの上面とほぼ同等の下面を有する上部建物ユニットを有し、
施工現場において各上部建物ユニットを形成した後に、この施工現場で形成された上部建物ユニットをあらかじめ形成した下部構造体の上方に据え付けることで前記ユニット建物を形成することを特徴とする建物生産方法。」

上記補正は,補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「下部構造体」に関して,「複数の箱型建物ユニットからなるユニット建物の本体部であり」との限定を付加するとともに,「上部構造体」に関して,「上記複数の箱型建物ユニットのうちの一つの上面とほぼ同等の下面を有する上部建物ユニットを有し」との限定を付加するものであり,願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり,平成18年改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると認められる。
そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて,以下に検討する。

2)記載要件(特許法第36条第6項第2号)について
請求項1に記載されている「前記上部構造体は、・・・上記複数の箱型建物ユニットのうちの一つの上面とほぼ同等の下面を有する上部建物ユニットを有し、・・・各上部建物ユニットを形成した後に」の記載では,「複数の上部建物ユニット」と明記されておらず,「各」が誤記であるとも解されるから,「上部構造体」が単一の「上部建物ユニット」から構成されるのか,複数の「上部建物ユニット」から構成されるのか,不明であって,本願補正発明が明確であるとはいえない。
したがって,本願補正発明は,特許法36条第6項第2号の要件を満足せず,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3)進歩性(特許法第29条第2項)について
上記「2)記載要件(特許法第36条第6項第2号)について」にて述べたように,本願補正発明は,「上部構造体」が単一の「上部建物ユニット」から構成されるのか,複数の「上部建物ユニット」から構成されるのかの点が明りょうでない。仮に,「上部構造体」が複数の「上部建物ユニット」から構成されることを意味し,本願補正発明は明りょうであるとして,以下,本願補正発明が進歩性を有するか否かについて検討する。

(1)引用文献およびその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-131595号公報(平成11年5月18日公開,以下,「引用文献」という。)には,以下の記載がある。
「【0003】また、従来のユニット建物は、一棟の建物を予めいくつかの建物ユニットに分けて工場生産し、これらを建築現場で施工、組み立てする方式のものである。例えば、特公平7-109113号公報記載のユニット建物は、複数の部屋ユニットと、建物の屋根部分を構成する寄棟屋根ユニットとからなり、この寄棟屋根ユニットは、部屋ユニットに合わせて分割されると共に、棟側と軒先側とに分割されている。」(2頁2欄3?10行)

上記記載事項および本願出願時の技術常識を総合すると,引用文献には,次の発明が記載されていると認められる。
「一棟の建物を予めいくつかの建物ユニットに分けて工場生産し,これらを建築現場で施工,組み立てする建物生産方法であって,
ユニット建物は,複数の部屋ユニットと,建物の屋根部分を構成する寄棟屋根ユニットとからなり,前記寄棟屋根ユニットは,前記部屋ユニットに合わせて分割されると共に,棟側と軒先側とに分割される建物生産方法。」(以下,「引用発明」という。)

(2)本願補正発明と引用発明との対比
引用発明の「複数の部屋ユニット」,「部屋ユニット」,「寄棟屋根ユニット」および「棟側と軒先側屋根ユニット」は,その機能および構造からみて,それぞれ,本願補正発明の「下部構造体」,「箱型建物ユニット」,「上部構造体」および「上部建物ユニット」に相当することは明らかである。そして,引用発明の「前記寄棟屋根ユニットは,前記部屋ユニットに合わせて分割されると共に,棟側と軒先側とに分割され」は,本願補正発明の「上記複数の箱型建物ユニットのうちの一つの上面とほぼ同等の下面を有する上部建物ユニットを有し」と技術的に同じ意味であるといえる。
また、引用文献の上記記載事項において引用されている特公平7-109113号公報の(従来の技術)欄に「組立は、まず、部屋ユニットを基礎に据え付けて相互に連結し、次に、据え付けられた各部屋ユニットの上部に屋根ユニットを据え付け、それらの屋根ユニットを相互に連結して行われる。」と記載されていることからみて,引用発明において「建築現場での組立は,まず,部屋ユニットを基礎に据え付けて相互に連結し,次に,据え付けられた各部屋ユニットの上部に棟側と軒先側屋根ユニットを据え付け,それらの棟側と軒先側屋根ユニットを相互に連結して行われる」といえる。

してみると,両発明は,
「下部構造体と,この下部構造体の上部に載置される上部構造体とを備えたユニット建物を形成する建物生産方法であって,
前記下部構造体は,複数の箱型建物ユニットからなるユニット建物の本体部であり,
前記上部構造体は,上記複数の箱型建物ユニットのうちの一つの上面とほぼ同等の下面を有する上部建物ユニットを有し,
各上部建物ユニットをあらかじめ形成した下部構造体の上方に据え付けることで前記ユニット建物を形成することを特徴とする建物生産方法。」
である点で一致し,以下の点で相違している。

相違点:各上部建物ユニット(棟側と軒先側屋根ユニット)が,本願補正発明では「施工現場において形成」するのに対して,引用発明では「工場生産」される点。

(3)判断
そこで,相違点について検討する。
そもそも,輸送効率を考慮して,「屋根ユニットを施工現場において形成する」ことは,本願出願前周知の技術事項である。
例えば,特開平8-189198号公報の段落【0002】には,「【背景技術】図8は、ユニット式建物の屋根1を構成している各ユニットを示す。屋根1は、小屋裏または小屋裏居室を形成する床ユニット2,3と、床ユニット2,3の上部にかぶせられる両流れ屋根ユニット4,5と、床ユニット2,3の両側に配置される片流れ屋根ユニット6?9とを含んで構成される。これらのユニットは居室を形成する建物ユニットと共に工場で生産され、そしてユニット式建物の建設現場にトラックで輸送され、組合わせられることによりユニット式建物が建てられる。従来、床ユニット2,3をトラック輸送するとき、これらの床ユニット2,3はトラックの荷台に前後方向に並べられて積まれ、建設現場に運ばれていた。」と記載されている。また,特開平5-255970号公報の段落【0006】には,「本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ユニット建物の屋上テラス用屋根ユニットを建設現場に輸送する場合に一回当たりの輸送個数を増やすことにより、輸送コストの低減を図ることが可能な屋上テラス用屋根ユニットを提供することを目的とする。」および同【0013】には,「図1に示すように、本実施例に係る屋上テラス用屋根ユニット10は、床パネル13を中心に壁パネル14及び屋根パネル16を建設現場にて順次組み立てることにより形成される。組み立て後の屋上テラス用屋根ユニット10は、桁側の居室用ユニット18上に配置され、図2に示すようにユニット建物の桁側の屋根を構成する。」と記載されている。
してみると,引用発明の「棟側と軒先側屋根ユニット」と本願補正発明の「各上部建物ユニット」が上記周知の技術事項の「屋根ユニット」に相当することは,明らかであるから,引用発明の「棟側と軒先側屋根ユニット」に上記周知の技術事項を適用して,相違点の本願補正発明のように「施工現場において形成」することは,当業者ならば適宜なし得る設計的事項に過ぎないといわざるを得ない。

そして,本願補正発明の作用効果も,引用発明および上記周知の技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって,本願補正発明は,引用文献に記載された発明および周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4)むすび
以上,前記「2)」ないし「3)」にて述べたように,本件補正は,平成18年改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり,特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下するべきものである。

3 本願発明について
平成18年2月15日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなるので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成17年3月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。なお,平成17年10月7日付け手続補正は,却下されている。

「施工現場において上部構造体を形成し、該上部構造体をあらかじめ形成した下部構造体の上方に据え付けることでユニット建物を形成することを特徴とする建物生産方法。」

1)引用文献およびその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献の記載事項は,前記「2 3)(1)引用文献およびその記載事項」に記載したとおりである。

2)対比・判断
本願発明は,本願補正発明から,「下部構造体」に関して「複数の箱型建物ユニットからなるユニット建物の本体部であり」との限定を省くとともに,「上部構造体」に関して「上記複数の箱型建物ユニットのうちの一つの上面とほぼ同等の下面を有する上部建物ユニットを有し」との限定を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件を全て含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記「2 3)(3)判断」に記載したとおり,引用文献に記載された発明および周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,本願発明も同様の理由により引用文献に記載された発明および周知の技術事項に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。

3)むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-25 
結審通知日 2007-10-31 
審決日 2007-11-13 
出願番号 特願平11-141753
審決分類 P 1 8・ 575- Z (E04B)
P 1 8・ 121- Z (E04B)
P 1 8・ 537- Z (E04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 萩田 裕介長谷部 善太郎  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 小山 清二
砂川 充
発明の名称 建物生産方法,及びこの建物生産方法における建物接合構造,建物ユニット及び屋根ユニット  

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