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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47C
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A47C
管理番号 1170148
審判番号 不服2005-15696  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-07-21 
確定日 2008-01-04 
事件の表示 特願2003-381057号「ジェル状クッション」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月 9日出願公開、特開2005-143552号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年11月11日の出願であって、平成17年6月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年8月22日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年8月22日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年8月22日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
平成17年8月22日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】
ジェル状樹脂製の連続した格子壁により複数の多角形の集合体であるハニカム形状構造とし、少なくとも上方が開放されたジェル状格子体を形成し、前記ジェル状格子体の上下方向の圧縮性、屈曲性及び座屈性を異なるように設定し、前記ジェル状格子体を構成するハニカム形状構造体の多角形内にその底部から格子壁の高さより低い高さの平面形状が×又は+形状のジェル状樹脂製のリブの両端を格子壁の内壁に一体に形成したことを特徴とするジェル状クッション。
【請求項2】
前記ジェル状格子体を構成するハニカム形状構造体の多角形の断面大きさを上下方向で異なるように一体成形したことを特徴とする請求項1に記載のジェル状クッション。
【請求項3】
前記ジェル状格子体を構成するハニカム形状構造体の多角形の断面大きさが大きいハニカム形状構造体と多角形の断面大きさが小さいハニカム形状構造体をその周囲のみを固定して積層したことを特徴とする請求項1に記載のジェル状クッション。」
と補正された。
本件補正により、補正後の請求項2は、「ジェル状格子体を構成するハニカム形状構造体の多角形の断面大きさを上下方向で異なるように一体成形」するという事項(以下「特定事項A」という。)と、請求項2が引用する請求項1の「ジェル状格子体を構成するハニカム形状構造体の多角形内にその底部から格子壁の高さより低い高さの平面形状が×又は+形状のジェル状樹脂製のリブの両端を格子壁の内壁に一体に形成」するという事項(以下「特定事項B」という。)とを備えることとなるが、願書に最初に添付した特許明細書、特許請求の範囲又は図面には、特定事項Aと特定事項Bの両方を備えることは何等記載されておらず、特定事項Aと特定事項Bの両方を備えることが願書に最初に添付した特許明細書、特許請求の範囲又は図面の記載から自明な事項であるとも認められない。
なお、補正後の請求項2において、例えば多角形が正方形や長方形であり、上のジェル状格子体の断面大きさが下のジェル状格子体の断面大きさの4倍である場合には、下のジェル状格子体の格子壁が特定事項Bの「+形状のジェル状樹脂製のリブ」に相当すると考えられるため、特定事項Aと特定事項Bの両方を備えているといえる場合があるかもしれないが、補正後の請求項2では、多角形の形状が正方形や長方形等に限定されておらず、多角形断面の大きさも特に限定されていないので、特定事項Aと特定事項Bの両方を備えていない場合が含まれていることは明らかである。
したがって、本件補正は願書に最初に添付した特許明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。

同様に、本件補正により、補正後の請求項3は、「ジェル状格子体を構成するハニカム形状構造体の多角形の断面大きさが大きいハニカム形状構造体と多角形の断面大きさが小さいハニカム形状構造体をその周囲のみを固定して積層」するという事項(以下「特定事項C」という。)と、請求項3が引用する請求項1の特定事項Bとを備えることとなるが、願書に最初に添付した特許明細書、特許請求の範囲又は図面には、特定事項Cと特定事項Bの両方を備えることは何等記載されておらず、特定事項Cと特定事項Bの両方を備えることが願書に最初に添付した特許明細書、特許請求の範囲又は図面の記載から自明な事項であるとも認められない。
したがって、本件補正は願書に最初に添付した特許明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

3.本願発明について
本件補正は上記2.のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年3月7日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「ジェル状樹脂製の連続した格子壁により複数の多角形の集合体であるハニカム形状構造としたジェル状格子体を形成し、前記ジェル状格子体の上下方向の圧縮性、屈曲性及び座屈性を異なるように設定し、前記ジェル状格子体を構成するハニカム形状構造体の多角形内にその底部から格子壁の高さより低い高さの平面形状が×又は+形状のジェル状樹脂製のリブを格子壁の内壁に一体に形成したことを特徴とするジェル状クッション。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特表2001-514912号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「屈曲性を持つクッションとは以下からなる。
クッション構成材は上面、底面、外周面を形成する。クッション構成材とは以下から成る。
一定量のゲルクッション構成材。複数の連続して隣接する空洞コラムをクッション構成材中に持ち合わせ、それらコラムがそれぞれコラム内部、コラム壁、縦軸を持ち合わせている。複数の空洞がクッション構成材中に形成されており、それら空洞は内空間と壁を持ち合わせている。
クッションは、物体によってクッション上に加えられた圧縮力に反応して屈曲する。クッションの屈曲性とは、言及されているクッションが圧縮しやすく、また、コラムがねじれることに起因するものであり、それによってクッション物体の形状に順応するよう変形する。」(【請求項4】)
(イ)「(A)発明分野
この発明はクッション分野についてである。さらに正しく言えば、この発明は、ゼラチン状エラストマー、粘弾性エラストマー、またそれらと同質の成分から成り立ち、空洞コラムの形状で、クッションの役目を果たし、圧力の集中を分散させる目的でねじれ現象を起こす。」(第7頁第3?7行)
(ウ)「図1は101(人間)が、102(椅子)に腰をおろし、この椅子は発明クッション103を備える。この図ではクッション103は単なる椅子の一部として描かれているが、その他の用途として、ソファ、キッチンチェア-、ラブシート、マットレス、家具用カバー、カーシート、劇場用シート、カーペット、隔離部屋の壁、運動用具のパッド、車椅子チェアー用クッション、ベッドマットレス、その他。」(第11頁第2?7行)
(エ)「図7はクッション構成要素701の図である。これはクッション媒体702、コラム703、コラム壁704を含む。図7のコラムは、その縦軸に沿って直角に切り取った四角形の断面図であるが、それと対照的に、図2では六角形の断面図である。」(第12頁第23?26行)
(オ)「図10も発明されたクッション1001の具現図である。クッション1001はゲル1002を持ち、外周1003、そして三角形空洞コラム1005を持つコラム壁1004も兼ね備える。留意点として、様々な形のコラムが描写されているが、それは単に便宜上の実例としてのものであり、実際、コラムの形状は三角形、長方形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形、円形、多角形、などなど、あらゆる形状のものは、それらコラムの縦軸に直角に断面図で示されるが、どんな形状でもありうる。」(第14頁第4?10行)
(カ)「図21は発明されたクッション要素2101の具現描写である。それはクッション媒体2102を持ち、それがコラム壁2103,2104を形成する。コラム壁2103,2104はコラム内部2105を備えている。コラム2106は筒抜けの最上部2107、密閉状態の最下部2108を持つ。具現図によると、コラム2107は最下部2108から固形突起物2109が内部2105に突き出している。突起物2109は楔状、またはトウモロコシ状であるが、他の形状としても、例えば円柱状、立方状が挙げられるが、そうでなければ縦軸と交錯する面をもっているものでよい。
固形突起物2109の目的として、物体によってねじれを起こしているコラムに、二重のサポートを施すためである。この発明コラムがねじれる際、物体が固形突起物を圧縮開始するまで、クッション要素は速やかに屈曲する。その時点で、物体のさらなる深みへの沈下の速度が鈍る、というのは固さを保つためのサポートを持つクッション媒体が圧縮される必要が出てくるし、またそのサポートそれ自体がねじれを起こし、物体をさらにクッション媒体の奥深くへ沈み込ませようとする。」(第20頁第2?16行)
(キ)図21には、空洞コラムにその底部からコラム壁の高さより低い固形突起物をコラム壁の内壁に下方で連結して一体に形成することが図示されている。

これらの記載事項及び図示事項を総合すると、引用例には、
「一定量のゲルクッション構成材が、上面、底面、外周面を形成し、複数の連続して隣接する断面が四角形や六角形などの空洞コラムがクッション構成材中に形成されており、空洞コラムにその底部からコラム壁の高さより低い固形突起物をコラム壁の内壁に下方で連結して一体に形成し、物体が固形突起物を圧縮開始するまでは速やかに屈曲し、固形突起物を圧縮開始した時点で物体へのさらなる深みへの沈下の速度が鈍るクッション要素。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、後者における「一定量のゲルクッション構成材」が、その機能・構成等からみて前者における「ジェル状樹脂」に相当し、以下同様に、「複数の連続して隣接する断面が四角形や六角形などの空洞コラムがクッション構成材中に形成」が「連続した格子壁により複数の多角形の集合体であるハニカム形状構造としたジェル状格子体を形成」に、「クッション要素」が「ジェル状クッション」に、それぞれ相当する。
また、クッション要素は一定量のゲルクッション構成材から形成されているのであるから「ジェル状樹脂製」であるといえる。
また、後者の「空洞コラムにその底部からコラム壁の高さより低い固形突起物をコラム壁の内壁に下方で連結して一体に形成」したものは、固形突起物がコラム壁の内壁に下方で連結して一体に形成されることにより何らかの補強作用があることは明らかであるから、前者の「ハニカム形状構造体の多角形内にその底部から格子壁の高さより低い高さの平面形状が×又は+形状のジェル状樹脂製のリブを格子壁の内壁に一体に形成」したものとは「ハニカム形状構造体の多角形内にその底部から格子壁の高さより低い高さのジェル状樹脂製の補強部材を格子壁の内壁に一体に形成」した点で共通している。
また、後者の「物体が固形突起物を圧縮開始するまでは速やかに屈曲し、固形突起物を圧縮開始した時点で物体へのさらなる深みへの沈下の速度が鈍る」ということは、物体が固形突起物を圧縮開始するまでの速やかに屈曲する部分と、それ以外の部分とでは、圧縮性、屈曲性、座屈性等が異なっているといえるし、少なくとも後者の固形突起物とコラム壁の内壁とが連結されている部分では、それより上の部分に比べて上下方向の圧縮性、屈曲性及び座屈性が異なることは明らかであるから、後者は、前者の「前記ジェル状格子体の上下方向の圧縮性、屈曲性及び座屈性を異なるように設定」することに相当する発明特定事項を備えているといえる。

したがって、両者は、
「ジェル状樹脂製の連続した格子壁により複数の多角形の集合体であるハニカム形状構造としたジェル状格子体を形成し、前記ジェル状格子体の上下方向の圧縮性、屈曲性及び座屈性を異なるように設定し、前記ジェル状格子体を構成するハニカム形状構造体の多角形内にその底部から格子壁の高さより低い高さのジェル状樹脂製の補強部材を格子壁の内壁に一体に形成したジェル状クッション。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]ジェル状樹脂製の補強部材が、本願発明では、平面形状が×又は+形状のリブであるのに対し、引用発明では、固形突起物であり、その平面形状が不明である点。

そこで上記相違点について検討する。
補強部材であるリブの平面形状が、×又は+形状のものは、例えば、特開平5-8689号公報(図17参照)、特開平10-266313号公報(図22参照)、特開平10-102741号公報(図4参照)等にも記載されているように周知技術であり、これを引用発明の補強部材として採用して上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。

また、本願発明の効果についても、引用発明及び上記周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-23 
結審通知日 2007-10-30 
審決日 2007-11-12 
出願番号 特願2003-381057(P2003-381057)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (A47C)
P 1 8・ 121- Z (A47C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 種子 浩明林 茂樹  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 増沢 誠一
中田 誠二郎
発明の名称 ジェル状クッション  
代理人 安彦 元  

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