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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B66B
管理番号 1170183
審判番号 不服2006-594  
総通号数 98 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-02-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-10 
確定日 2007-12-19 
事件の表示 平成 7年特許願第518363号「階段昇降機の水平装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 7月13日国際公開、WO95/18763、平成 9年 7月22日国内公表、特表平 9-507201〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は、平成7年1月5日(パリ条約による優先権主張1994年1月5日、英国)に出願したものであって、平成8年7月5日に手続補正書が提出され、平成16年4月20日付けで拒絶理由が通知され、平成16年10月29日に意見書が提出され、平成17年9月29日付けで拒絶査定がなされ、平成18年1月10日に同拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成18年12月4日付けで当審において拒絶理由が通知され、平成19年6月5日に意見書及び手続補正書が提出されたものであって、その請求項1ないし6に係る発明は、平成19年6月5日に提出された上記手続補正書によって補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
固定されたレールに沿って移動する台車と、前記台車を移動させる駆動モータと、前記台車に回転可能に取り付けられたシートと、前記シートをその台車に関して回転させる電動モータと、前記台車の前記レールに沿った様々な位置における所望のシート対台車の角度を表すデータでプログラムされた電子メモリと、前記駆動モータの回転に関する計数値から決定される前記台車の前記レールに沿った実際の位置と前記電子メモリに記憶された前記データとに応答して、前記シートが実質的に水平に維持されるように前記電動モータを制御する電子制御手段とからなることを特徴とする階段昇降機。」

2.当審において平成18年12月4日付けで通知した拒絶理由の概要

「 〔理由1〕(第29条第2項)
本件出願の請求項1ないし7に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1ないし3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開平5-116868号公報
2.特開昭59-217571号公報
3.欧州特許出願公開第0539242号明細書(特開平6-191746号公報参照)

・請求項1?4
・引用文献1及び2
・備考
引用文献1には、「固定された昇降案内用レール3に沿って移動する昇降駆動体5と、前記昇降駆動体5に回転可能に取り付けられた載置部材6と、前記載置部材6をその昇降駆動体5に関して回転させる電動モータM2と、前記昇降駆動体5の前記昇降案内用レール3に沿った様々な位置における角度を検出する検出センサS、Sと、前記検出センサS、Sの検出結果に基いて、前記載置部材6が実質的に水平に維持されるように前記電動モータM2を制御する制御装置17とからなる載置搬送装置。」が記載されている。
引用文献2には、「固定されたガイドレール22に沿って移動する台車28と、前記台車28に回転可能に取り付けられたかご23と、前記かご23をその台車28に関して回転させる電気式パワーシリンダ34からなるかご水平調節機構29と、前記台車28の前記ガイドレール22に沿った様々な位置における前記かご23と台車28との所望の角度を出力する関数発生器42と、前記台車28のそのガイドレール22に沿った位置及び前記関数発生器42から出力される制御出力に応答して、前記かご23が実質的に水平に維持されるように前記かご水平調節機構29を制御する制御手段とからなる斜行エレベータ。」点が記載されている。 」

3.当審において平成18年12月4日付けで通知した拒絶理由に引用された引用文献
(1)特開平5-116868号公報(以下、「引用文献1」という。)
(A)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、以下の事項が図1?図3とともに記載されている。なお、下線は当審で付与した。
a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 階段(1)に沿って斜め方向に昇降案内用レール(3)を配設するとともに、このレール(3)に沿って案内移動する昇降駆動体(5)を設け、この昇降駆動体(5)に被搬送物を載置する載置部材(6)を支持してある載置昇降装置であって、前記昇降駆動体(5)と前記載置部材(6)とを横軸芯周りで相対回動自在に構成するとともに、前記昇降駆動体(5)の傾斜角度を検出する検出センサ(S)を設け、この検出センサ(S)の検出結果に基いて、前記昇降駆動体(5)と前記載置部材(6)との相対傾斜角度を変更調節する角度調節手段(A)を備えてある載置昇降装置。」(特許請求の範囲の請求項1)
b)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば身体不自由者が階段を昇る場合あるいは工場内の階段に沿って荷物を昇降させるような場合に用いられる載置昇降装置に関し、詳しくは、階段に沿って斜め方向に昇降案内用レールを配設するとともに、このレールに沿って案内移動する昇降駆動体を設け、この昇降駆動体に被搬送物を載置する載置部材を支持してある載置昇降装置に関する。」(発明の詳細な説明【0001】)
c)「【0005】
【作用】前記レールがその途中部において階段の踊り場等に沿って、斜め姿勢から水平姿勢に屈曲しており、レールの沿って移動する昇降駆動体が斜め移動姿勢から水平移動姿勢に傾斜したような場合、第1発明の構成によると、昇降駆動体の姿勢変化の伴う傾斜角度が前記検出センサにより検出され、昇降駆動体と載置部材との相対傾斜角度が変更調節され、載置部材の姿勢が斜め移動の時の姿勢と同じ姿勢に維持されるのである。」(発明の詳細な説明【0005】)
d)「【0007】
【実施例】以下、実施例を図面に基いて説明する。図3に例えば身体不自由者や荷物等を載置して階段に沿って昇降する載置昇降装置を示している。この載置昇降装置は、階段1の横壁2に、階段1に沿って斜め方向に昇降案内用レール3を取付け、このレール3に沿って駆動昇降する移動装置4を設けて構成してある。前記移動装置4は、移動駆動用電動モータM1を内装した昇降駆動体5と、その上部に配設した載置部材6とで成り、載置部材6の載置面6a上に荷物や人等の被搬送物を載置してレール3に沿って昇降移動自在に構成してある。
【0008】詳述すると、前記レール3は、図1、図2に示すように、断面矩形状に形成され、適宜箇所を横側から延出したアーム7により横壁2に固定連結してある。そして、このレール3の下面側中央部には、長手方向ほぼ全長に亘ってラックギア8を形成してあり、このラックギア8に昇降駆動体に備えたピニオンギア9が咬合い、ピニオンギア9を電動モータM1により回転駆動することで昇降するようにしてある。つまり、昇降駆動体5にレール3を覆うフレーム10を設け、このフレーム10に移動方向前後2か所に夫々上下一対のガイドローラ11を支承し、各ガイドローラ11によりレール3を上下方向から挟み込み長手方向に移動自在並びに上下方向に位置規制した状態で昇降駆動体5を支持するよう構成するとともに、前記フレーム10に支持した電動モータM2の出力をウォームギア式減速機構12を介して、前記ラックギア8に咬合う状態で支承したピニオンギア9の駆動支軸13を低速で回転駆動するよう構成してある。
【0009】そして、前記載置部材6と昇降駆動体5とを横軸芯X周りで相対回動自在に枢支連結するとともに、昇降駆動体5の傾斜角度を検出する検出センサSを設け、この検出センサSの検出結果に基いて昇降駆動体5と載置部材6との相対傾斜角度を変更調節する角度調節手段Aを設けてある。詳述すると、昇降駆動体5の移動方向前部及び後部に夫々、下方側の揺動付勢した揺動アーム14とこの揺動アーム14の相対揺動角度を検出する第1ポテンショメータPM1とにより前記検出センサSを構成してある。又、載置部材6側に前記枢支連結点を中心とする円弧状のギア部材15を設けるとともに、昇降駆動体5側にこのギア部材15に咬合う駆動ギア16を設け、この駆動ギア16を電動モータM2により回動駆動するよう構成し、かつ、枢支支点部に昇降駆動体5と載置部材6との相対揺動角度を検出する第2ポテンショメータPM2を設けてある。前記各ポテンショメータPM1,PM2の出力は制御装置17に与えられ、制御装置17は第1ポテンショメータPM1の検出値より、階段1の踊り場1a等でレール3が傾斜状態から水平状態に屈曲している場合、昇降駆動体5の傾斜姿勢が変化したことを検出すると、その検出角度に基いて、昇降駆動体5と載置部材6との相対揺動角度を変更すべく電動モータM2を駆動制御するのである。電動モータM2、制御装置17、ギア機構等により角度調節手段Aを構成する。」(発明の詳細な説明【0007】?【0009】)
e)図1?図3において、載置部材6は背もたれ及びシートを持つ椅子の形に描かれている。

(B)上記(A)及び図1?図3から分かること。
a)上記(A)a)ないしd)及び図3から、昇降案内用レール3は階段1の横壁2に固定されており、そして、昇降駆動体5は移動駆動用電動モータM1によって昇降案内用レール3に沿って移動することが分かる。よって、この載置搬送装置は、階段昇降機とも言いうるものであることが分かる。
b)上記(A)a)、c)、d)及びe)から、載置部材6は、昇降駆動体5に横軸芯X周りで回転可能に取り付けられ、電動モータM2によって昇降駆動体5に関して回転させられるものであり、また、シートと言いうるものであることが分かる。
c)上記(A)a)、c)及びd)から、検出センサS、Sによって、昇降駆動体5の昇降案内用レール3に沿った様々な位置における角度が検出され、その検出結果に基づいて、前記載置部材6が実質的に水平に維持されるように制御手段17によって電動モータM2が制御されることが分かる。

(C)引用文献1記載の発明
したがって、引用文献1には次の発明(以下、単に「引用文献1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。
「固定された昇降案内用レール3に沿って移動する昇降駆動体5と、前記昇降駆動体5を移動させる移動駆動用電動モータM1と、前記昇降駆動体5に回転可能に取り付けられた載置部材6と、前記載置部材6をその昇降駆動体5に関して回転させる電動モータM2と、前記昇降駆動体5の前記昇降案内用レール3に沿った様々な位置における角度を検出する検出センサS、Sと、前記検出センサS、Sの検出結果に基いて、前記載置部材6が実質的に水平に維持されるように前記電動モータM2を制御する制御手段17とからなる階段昇降機。」

(2)特開昭59-217571号公報(以下、「引用文献2」という。)
(A)引用文献2に記載された事項
引用文献2には、以下の事項が図面とともに記載されている。なお、下線は当審で付与した。
a)「1.傾斜した昇降路内をかごが走行する斜行エレベータにおいて、
昇降路内におけるかご位置を検出する検出手段と、かごの傾斜を調節し得るかご水平調節機構と、前記検出手段によって検出されたかご位置出力に基づいて当該かご位置における昇降路内の傾斜角を補償するように前記かご水平調節機構を制御する制御装置とを設けたことを特徴とする斜行エレベータ。
2.特許請求の範囲第1項記載の斜行エレベータにおいて、かご水平調節機構として電気式パワーシリンダを用いたことを特徴とする斜行エレベータ。
3.特許請求の範囲第1項記載の斜行エレベータにおいて、前記検出手段として、かごの走行距離に応じた個数のパルスを発生するパルス発生器と、このパルス発生器によって発生されたパルスを走行方向に応じてカウントアップまたはカウントダウンするアップダウンカウンタとを設け、前記制御装置に、前記アップダウンカウンタの計数値を予め記憶された所定の関数に従って昇降路の各位置の傾斜角に対応した制御出力を発生する関数発生器を設けたことを特徴とする斜行エレベータ。」(特許請求の範囲第1?3項)
b)「〔発明の技術的背景とその問題点〕
近年、傾斜地の有効利用という観点から傾斜地に沿って傾斜した昇降路を構成し、その傾斜した昇降路内をかごが走行する斜行エレベータが実現している。第1図はその一例を示すものである。
第1図の装置においては、斜坑状に形成された昇降路1の下面にガイドレール2を敷設し、このガイドレール2に沿ってかご3を昇降させるものである。かご3はロープ4を介して釣合いおもり5と連結され、巻上機6によって昇降駆動される。この斜行エレベータでは、傾斜角θが一定である昇降路1内をかご3が昇降するもので、かご3の出入口と乗場が一致した状態でかご3が停止し、ドアが開閉され、乗客が乗降するように構成されている。」(公報第1頁右下欄下から6行?第2頁左上欄第9行)
c)「〔発明の実施例〕
第3図は本発明の一実施例を示すものである。昇降路21は昇降面27の傾斜に合わせて下半部が相対的小さな傾斜角θ_(3)を持っており、上半部が相対的に大きな傾斜角θ_(4)を持っている。かご23を案内するガイドレール22も昇降路21の下面に平行に、すなわち下半部で傾斜角θ_(3)、上半部で大きな傾斜角θ_(4)をなすように敷設されている。かご23はロープ24を介して巻上機26によりガイドレール22上を昇降駆動される。巻上機26にはガイドレール22に沿って昇降する釣り合いおもり25がかご23とは反対側にロープ24を介して連結されている。ガイドレール22の、傾斜角の変化する部分は、傾斜角が急変しないように滑らかに形成されている。かご23はかご水平調節機構29を介して台車28上に載置されている。昇降路21内には適当な箇所に、少なくとも傾斜角の変わる部分に、ロープ24を案内するロープガイド30a,30bが設けられている。
第4図はかご23の部分の詳細構成を示すものである。かご23は、かご本体31およびかご枠32からなっており、かご水平調節機構29を介して台車28上に載置されている。台車28はローラ33の助けによりガイドレール22上を回転走行する。かご水平調節機構29として、かご枠32の低地側にピン16(「ピン36」の誤記)を介して回動自在に支持されたロッド38と、このロッドを伸縮操作する電気式パワーシンリンダ34とからなる駆動部が設けられ、かご枠32の高地側はピン37を支点としてかご23を傾動させ得る支点部35として構成されている。電気式パワーシリンダ34も台車28に対して枢着支持されている。かくして電気式パワーシリンダ34によってロッド38を伸縮することによりかご23の低地側を、支点部35を支点として上下動させることができ、ロッド38の伸縮度を適当に調節することによりかご床39を水平に保持することができる。なお、電気式パワーシリンダ34は、電動機とギヤ装置との組合わせからなり、電動機の回転運動を直線運動に変換してロッド38を伸縮駆動する。これは例えば油圧式のものにすることもできるが、ここでは電気式のものとして説明をすすめる。
第5図は、かご水平調節機構29を制御する制御回路を示すものである。台車28の走行距離に応じたパルスを発生するパルス発生器40が例えば第4図のローラ33に取付けられ、その発生パルス数がアップダウンカウンタ41により例えば台車28の移動距離10mmごとに上昇方向のときはアップカウントされ、下降方向のときはダウンカウントされる。アップダウンカウンタ41の計数出力は関数発生器42に導かれる。関数発生器42は、アップダウンカウンタ41の計数出力を昇降路21におけるかご23の位置に対応させ、位置に応じたロッド38の伸縮度を得てかご床39を水平にするための制御出力を得るためのものであって、第6図に示すように、位置を表すパルス数nの値に応じてその位置でかご床39を水平にするために電気式パワーシリンダ43が必要とする制御出力vを出力する。」(公報第2頁左下欄第10行?第3頁右上欄第5行)

(B)上記(A)及び図面から分かること。
a)上記(A)c)から、ガイドレール22は、昇降路21の下面に固定されており、台車28はそのガイドレール22に沿って移動することが分かる。
b)上記(A)b)から、かご3は乗客が乗るものであることが分かる。
c)上記(A)c)から、台車28は、巻上機26からロープ24を介して移動させられることが分かる。
d)上記(A)a)及びc)から、かご23は、台車28に高地側のピン37を支点とする支点部35によって台車28に回転可能に取り付けられ、かご23の低地側に設けられた電動機によって伸縮する電気式パワーシリンダ34からなるかご水平調節機構29によって台車28に関して回転されるようになっていることが分かる。なお、電気式パワーシリンダ34と電気式パワーシリンダ43は、同じものであることも分かる。
e)上記(A)a)及びc)から、ガイドレール22上を回転走行するローラ33に取り付けられたパルス発生器40から台車28の走行距離に応じたパルスが発生され、そのパルスをアップダウンカウンタ41により計数し、その計数出力を関数発生器42に導き、関数発生器42はその計数値から予め記憶された所定の関数に従って昇降路の角位置の傾斜角に対応した制御出力vを制御装置に発生し、制御装置はかご23が実質的に水平に維持されるように水平調節機構29の電気式パワーシリンダ34の電動機を制御していることが分かる。

(C)引用文献2記載の発明
したがって、引用文献2には、次の発明(以下、単に「引用文献2記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。
「固定されたガイドレール22に沿って移動する台車28と、前記台車28を移動させる巻上機26と、前記台車28に回転可能に取り付けられたかご23と、前記かご23をその台車28に関して回転させる電動機によって伸縮する電気式パワーシリンダ34からなるかご水平調節機構29と、前記台車28の前記ガイドレール22に沿った様々な位置における所望のかご23対台車28の角度を出力する関数発生器42と、前記巻上機26の回転に関するパルス数から決定される前記台車28の前記ガイドレール22に沿った実際の位置と前記関数発生器42から出力される制御出力に応答して、前記かご23が実質的に水平に維持されるように前記かご水平調節機構29の電気式パワーシリンダ34の電動機を制御する制御装置とからなる斜行エレベータ。」

4.対比
本願発明と引用文献2記載の発明を対比すると、引用文献2記載の発明の「ガイドレール22」、「台車28」、「巻上機26」、「電動機」及び「制御装置」が、本願発明の「レール」、「台車」、「駆動モータ」、「電動モータ」及び「電子制御手段」にそれぞれ相当するものと認められる。
そして、引用文献2記載の発明における「かご23」は、「昇降台」という限りにおいて、本願発明における「シート」に相当し、また、引用文献2記載の発明における「斜行エレベータ」は、「昇降機」という限りにおいて、本願発明における「階段昇降機」に相当し、さらに、引用文献2記載の発明における「台車28の前記ガイドレール22に沿った様々な位置における所望のかご23対台車28の角度を出力する関数発生器42と、前記巻上機26の回転に関するパルス数から決定される前記台車28の前記ガイドレール22に沿った実際の位置と前記関数発生器42から出力される制御出力に応答して」は、「台車のレールに沿った実際の位置とそれに対応する前記レールの角度とに応答して」という限りにおいて、本願発明における「台車のレールに沿った様々な位置における所望のシート対台車の角度を表すデータでプログラムされた電子メモリと、駆動モータの回転に関する計数値から決定される前記台車の前記レールに沿った実際の位置と前記電子メモリに記憶された前記データとに応答して」に相当するものと認められる。
したがって、本願発明と引用文献2記載の発明は、
「固定されたレールに沿って移動する台車と、前記台車を移動させる駆動モータと、前記台車に回転可能に取り付けられた昇降台と、前記昇降台をその台車に関して回転させる回転駆動手段と、前記台車の前記レールに沿った実際の位置とそれに対応する前記レールの角度とに応答して、前記昇降台が実質的に水平に維持されるように前記電動モータを制御する電子制御手段とからなる昇降機。」
で一致し、次の〔相違点1〕及び〔相違点2〕で相違している。
〔相違点1〕
「台車に回転可能に取り付けられた昇降台」からなる「昇降機」に関し、本願発明が「台車に回転可能に取り付けられたシート」からなる「階段昇降機」であるのに対して、引用文献2記載の発明が「台車28に回転可能に取り付けられたかご23」からなる「斜行エレベータ」である点。
〔相違点2〕
「台車のレールに沿った実際の位置とそれに対応する前記レールの角度とに応答して」に関し、本願発明においては、「台車のレールに沿った様々な位置における所望のシート対台車の角度を表すデータでプログラムされた電子メモリと、駆動モータの回転に関する計数値から決定される前記台車の前記レールに沿った実際の位置と前記電子メモリに記憶された前記データとに応答して」としているのに対して、引用文献2記載の発明においては、「台車28のガイドレール22に沿った様々な位置における所望のかご23対台車28の角度を出力する関数発生器42と、巻上機26の回転に関するパルス数から決定される前記台車28の前記ガイドレール22に沿った実際の位置と前記関数発生器42から出力される制御出力に応答して」としている点。

5.判断
上記〔相違点1〕及び〔相違点2〕について以下に検討する。
〔相違点1〕について
引用文献1記載の発明における「載置部材6」は、本願発明の「シート」に相当することが明らかであるから、本願発明のような「台車に回転可能に取り付けられたシート」からなる「階段昇降機」は、引用文献1記載の発明が備えている。
そして、引用文献2記載の発明に引用文献1記載の発明を適用することにより、上記〔相違点1〕に係わる本願発明の構成を得る程度のことは、当業者が容易に想到することができたものである。
〔相違点2〕について
入力に対する出力を、電子メモリにプログラムしておくようにするか、それとも、関数発生器から出力するようにするかは、共に慣用手段であり、また、適宜選択可能な設計事項にすぎない。
してみれば、「電子制御手段」によって「載置部材が実質的に水平に維持されるように前記電動モータを制御する」ために「台車のレールに沿った実際の位置とそれに対応する前記レールの角度とに応答」するのに、本願発明のように、「台車のレールに沿った様々な位置における所望のシート対台車の角度を表すデータでプログラムされた電子メモリと、駆動モータの回転に関する計数値から決定される前記台車の前記レールに沿った実際の位置と前記電子メモリに記憶された前記データとに応答」させるか、それとも、引用文献2記載の発明のように、「台車28のガイドレール22に沿った様々な位置における所望のかご23対台車28の角度を出力する関数発生器42と、巻上機26の回転に関するパルス数から決定される前記台車28の前記ガイドレール22に沿った実際の位置と前記関数発生器42から出力される制御出力に応答」させるかは、当業者が必要に応じて適宜選択可能な設計事項にすぎないものである。

したがって、引用文献2記載の発明に引用文献1記載の発明を適用することにより、本願発明を得る程度のことは、当業者が容易に想到することができたものである。
また、本願発明を全体として検討しても、引用文献1及び2に記載された発明から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。

6.むすび
以上のように、本願発明は、引用文献1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-07-20 
結審通知日 2007-07-24 
審決日 2007-08-07 
出願番号 特願平7-518363
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B66B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 志水 裕司  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 飯塚 直樹
西本 浩司
発明の名称 階段昇降機の水平装置  
代理人 梅田 明彦  

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