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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E04G
管理番号 1172212
審判番号 不服2006-1827  
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-01 
確定日 2008-02-04 
事件の表示 特願2000-271537「住宅の再利用方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月22日出願公開、特開2002- 81214〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年9月7日の出願であって、平成17年8月19日付けの拒絶理由通知に対して、同年12月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年2月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成18年2月1日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年2月1日付けの手続補正を却下する。
[理由]

(1)補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を次のように補正することを含むものである。
「【請求項1】 ユニット工法で建てられた既築家屋を分解する現場解体工程と、
前記既築家屋を分解して得た各ユニットを建築場所へ輸送する輸送工程と、
前記建築場所で前記各ユニットを据え付けて接合することで家屋を建築する据付工程と、
前記据付工程により建築された家屋に内装及び外装を施す仕上工程とからなり、
前記現場解体工程では、まず仮設足場工程で既築家屋の周囲に仮設足場を設け、ついで洗浄工程で既築家屋を洗浄し、そして解体工程で洗浄後の家屋を輸送可能な大きさの各ユニットに分解することを特徴とする住宅の再利用方法。」

上記補正は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「住宅の再利用方法における洗浄工程と解体工程」に関して、「既築の家屋を洗浄する洗浄工程と、洗浄後の家屋を輸送可能な大きさの各ユニットに分解する解体工程と、・・・からなる」から「ユニット工法で建てられた既築家屋を分解する現場解体工程と、・・・からなり、前記現場解体工程では、まず仮設足場工程で既築家屋の周囲に仮設足場を設け、ついで洗浄工程で既築家屋を洗浄し、そして解体工程で洗浄後の家屋を輸送可能な大きさの各ユニットに分解する」へと一部限定を付して言い換えるものであるから、平成18年改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2000-234389号公報(以下、「引用例」という。)には、次の(イ)ないし(ヨ)の事項が記載されている。
(イ)「略ボックス状に結合された金属製のフレーム枠体の側面部に、予め壁面部材が、装着されると共に、屋根部材を上面部に装着した建物ユニットの前記壁面部材の一部に、規定寸法の開口部を予め形成すると共に、該開口部には、開閉塞可能な壁ユニットを着脱可能に配設することを特徴とする建物ユニット。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)
(ロ)「略ボックス状に結合された金属製のフレーム枠体の側面部に、予め壁面部材が、装着されると共に、屋根部材を上面部に装着した建物ユニットの前記壁面部材の一部に、他の建物又は他の建物ユニットの壁面部に形成された開口部と対向する開口部を予め形成する建物ユニットを有し、該他の建物又は他の建物ユニットの壁面部と、前記開口部が形成された壁面部材と並設した状態で、水密接続する連結通路を設けたことを特徴とするユニット建物。」(【特許請求の範囲】【請求項2】)
(ハ)「【発明の属する技術分野】本発明は、再利用可能な建物ユニット及びユニット建物で、特に、搬送時の養生が容易な建物ユニット及びユニット建物に関するものである。」(段落【0001】)
(ニ)「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来のユニット建物1では、内側に位置する建物ユニット2,2の連結部分では、対向する開口部6,6の両周縁部間が拝合接続されるように構成されているので、トラック等による搬送時には、この建物ユニット2に予め設けられる内部諸設備を風雨に晒さないように、フレーム枠3,3間全幅に渡る開口部6,6を、ビニールシート等で閉塞する等の養生を行わなければならなかった。」(段落【0012】)
(ホ)「又、現場での接合作業及び接合部の防水処理も大掛かりなものにならざるを得なかった。」(段落【0013】)
(ヘ)「本発明は、上記従来技術の問題を解決するためになされたものであって、搬送時の養生が容易で、接続作業も容易な建物ユニット及びユニット建物を提供することを目的とするものである。」(段落【0014】)
(ト)「搬送時、前記屋根部材によって上面部の雨仕舞いが、また、前記壁部材によって側面部の雨仕舞いが略完了しているので、前記開口部が容易に養生可能な大きさに設定されることにより、搬送時の養生が容易で、接合作業も容易な建物ユニットを提供できる。」(段落【0017】)
(チ)「また、請求項2に記載されたものでは、略ボックス状に結合された金属製のフレーム枠体の側面部に、予め壁面部材が、装着されると共に、屋根部材を上面部に装着した建物ユニットの前記壁面部材の一部に、他の建物又は他の建物ユニットの壁面部に形成された開口部と対向する開口部を予め形成する建物ユニットを有し、該他の建物又は他の建物ユニットの壁面部と、前記開口部が形成された壁面部材とを並設した状態で、水密接続する連結通路を設けたユニット建物を特徴としている。」(段落【0018】)
(リ)「このように構成された請求項2記載のものでは、前記建物ユニットのうち、前記開口部を形成する壁面部材を、他の建物又は他の建物ユニットの壁面部に対して並設させると、両開口部間が、前記連結通路によって、水密接続される。」(段落【0019】)
(ヌ)「該連結通路の断面積は、壁面部の全面積に拘束されること無く、前記開口部が容易に養生可能な大きさに設定されることにより、搬送時の養生が容易で、接合作業も容易なユニット建物を提供することが出来る。」(段落【0020】)
(ル)「 この開口部27には、開閉塞可能な壁ユニットとして、図1に示す通常の外壁部材22を有する通常壁ユニット28等が、着脱自在となるように装着されている。」(段落【0030】)
(ヲ)「更に、この実施の形態1では、これらの建物ユニット10,11が、基礎50上に、立設されたボルト51…を用いて着脱自在となるように載置される。そして、これらのボルト51…を用いた締結を解除することにより、これらの建物ユニット10,11を前記基礎50上から取り外して撤去することができると共に、他の基礎50上に移設して載置することにより再利用できるように構成されている。」(段落【0036】)
(ワ)「・・・トラックによる工場から施工現場までの搬送時、前記傾斜屋根部25或いは折版平板屋根部26によって上面部の雨仕舞いが、また、前記壁面部材21によって側面部の雨仕舞いが略完了している。」(段落【0057】)
(カ)「他の施工現場に搬送された場合、他の基礎50上に移設されて載置され・・・、直ちに、再利用される。」(段落【0080】)
(ヨ)「また、工場に搬送された各建物ユニット10,11では、不要となったドア付き壁ユニット30等、或いは、消耗された部品が交換される。前記床根太17a及び天井小梁14a等の交換不要な部品は、取り外されずにそのまま再使用される。そして、床板材、内壁内装材等の汚れが目立つ部品も交換される。」(段落【0081】)
これらの記載から、引用例1には、「ユニット建物を分解して、各建物ユニットを他の施工現場に搬送し、他の基礎50上に移設して載置する建物ユニットの再利用方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の、「ユニット建物」、「各建物ユニットを他の施工現場に搬送し」、「他の基礎50上に移設して載置する」、「建物ユニットの再利用方法」は、本願補正発明の「ユニット工法で建てられた既築家屋」、「前記既築家屋を分解して得た各ユニットを建築場所へ輸送する」、「前記建築場所で前記各ユニットを据え付けて接合する」、「住宅の再利用方法」に相当ないし対応する。
また、引用発明の分解、搬送、載置などの各作業は、本願補正発明の現場解体工程、輸送工程、据付工程などの各工程に対応するものである。
よって両発明は、「ユニット工法で建てられた既築家屋を分解する現場解体工程と、前記既築家屋を分解して得た各ユニットを建築場所へ輸送する輸送工程と、前記建築場所で前記各ユニットを据え付けて接合することで家屋を建築する据付工程とからなる住宅の再利用方法。」である点で一致し、以下の点で相違している。
〈相違点1〉
本願補正発明は、「据付工程により建築された家屋に内装及び外装を施す仕上工程」を含むのに対して、引用発明は、そのような工程を含むかどうか不明な点。
〈相違点2〉
本願補正発明では、現場解体工程では、まず仮設足場工程で既築家屋の周囲に仮設足場を設け、ついで洗浄工程で既築家屋を洗浄し、そして解体工程で洗浄後の家屋を輸送可能な大きさの各ユニットに分解するのに対して、引用発明では、現場解体工程がそのような各工程を含むかどうか不明な点。

(4)判断
〈相違点1について〉
建物の移築の際に、据付工程により建築された家屋に内装及び外装を施す仕上工程を採用することは、建物全体の美観や防水処理などを考慮すれば、当業者ならば、適宜なし得ることであるといえる。
したがって、相違点1に係る事項は、引用発明から当業者ならば容易になし得ることであるといえる。
〈相違点2について〉
建物の維持管理や改修の際に、汚染の除去のために建物外周を洗浄することは、登録実用新案第3068456号、実願平5-49156号(実開平7-9471号)のCD-ROM、特開平5-111445号公報、特開平1-91825号公報などに見られるように周知の事項である。これを引用発明に適用して、建物の解体に先立って、予め汚れの除去を考慮して建物の外周を洗浄することは、当業者ならば、容易に想到し得ることである。また、そのために、建物外周に仮設足場を設けて行うことは、作業の容易性を考慮すれば、当業者ならば当然に考慮すべき事項であり、そして、解体工程で洗浄後の家屋を輸送可能な大きさの各ユニットに分解することも、輸送の効率性を考慮すれば、当業者ならば、適宜、考慮すべき事項であるといえる。
したがって、相違点2に係る事項は、引用発明及び周知の技術から当業者ならば容易になし得ることであるといえる。

そして、本願補正発明の作用効果は全体としても、引用発明及び周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。また、「解体工程での分解作業を清潔な環境で行う」ようにすることも、当業者ならば当然考慮すべき事項に過ぎない。
よって、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下するべきものである。

4.本願発明について
平成18年2月1日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】 既築の家屋を洗浄する洗浄工程と、洗浄後の家屋を輸送可能な大きさの各ユニットに分解する解体工程と、家屋を分解して得た各ユニットを建築場所へ輸送する輸送工程と、前記建築場所で前記各ユニットを据え付けて接合することで家屋を建築する据付工程と、建築された家屋に内装及び外装を施す仕上工程とからなることを特徴とする住宅の再利用方法。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明の「住宅の再利用方法における洗浄工程と解体工程」に関して、「ユニット工法で建てられた既築家屋を分解する現場解体工程と、・・・からなり、前記現場解体工程では、まず仮設足場工程で既築家屋の周囲に仮設足場を設け、ついで洗浄工程で既築家屋を洗浄し、そして解体工程で洗浄後の家屋を輸送可能な大きさの各ユニットに分解する」から、「既築の家屋を洗浄する洗浄工程と、洗浄後の家屋を輸送可能な大きさの各ユニットに分解する解体工程と、・・・からなる」へと、一部限定を省略して言い換えるものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含む本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び引周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-11-28 
結審通知日 2007-12-05 
審決日 2007-12-18 
出願番号 特願2000-271537(P2000-271537)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (E04G)
P 1 8・ 121- Z (E04G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 江成 克己石井 哲  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 砂川 充
小山 清二
発明の名称 住宅の再利用方法  
代理人 九十九 高秋  
代理人 九十九 高秋  

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