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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする  H01L
審判 査定不服 2項進歩性 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする  H01L
管理番号 1172359
審判番号 不服2006-26505  
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-11-24 
確定日 2008-02-26 
事件の表示 平成10年特許願第 85502号「基板熱処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年10月15日出願公開、特開平11-283896、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成10年3月31日の出願であって、平成16年12月16日付けで拒絶理由通知がなされ、平成17年2月18日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成18年5月9日付けで最後の拒絶理由通知がなされ、それに対して平成18年7月14日付けで意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成18年10月16日付けで、平成18年7月14日付けの手続補正は却下すべきものであるとの決定がなされるとともに、補正前の請求項1?4に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとして同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成18年11月24日に審判請求がなされたものである。

そして、請求人は、請求の理由において前記平成18年7月14日付けの手続補正は却下されるべきではない旨を主張している。

II.補正却下の決定の当否
1.補正却下の決定の理由の概要
平成18年10月16日付けでなされた補正却下の決定の理由の概要は、補正後の請求項1及び2に係る発明は、平成18年5月9日付けで通知された拒絶理由に引用された下記の引用文献2に記載された発明と引用文献1,3に記載された発明とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないから、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で読み替えて準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第53条第1項の規定により補正の却下をするというものである。

[引用文献]
引用文献1:特開平9-289152号公報
引用文献2:特開平6-349722号公報
引用文献3:実願昭63-6258号(実開平1-110430号)のマイクロフイルム

2.当審における検討
(1)補正後の本願発明
前記平成18年7月14日付け手続補正により、特許請求の範囲の請求項1及び2は、

「【請求項1】 加熱された基板載置プレート上に基板を載置または近接載置した状態で基板の熱処理を行う基板熱処理装置において、
前記基板載置プレート内に設けられ、所定温度で蒸発する作動液を収容するとともに、前記作動液の蒸気を滞留させる蒸気空間を有する流体収容室と、
前記基板載置プレートの下方に設けられ、前記流体収容室内の作動液を加熱する加熱手段と、
前記基板載置プレートの下方に、前記加熱手段と重ならないように設けられ、前記基板載置プレートの一部分を液または気体により直接に冷却する冷却手段と
を備えたことを特徴とする基板熱処理装置。
【請求項2】 請求項1に記載の基板熱処理装置において、
前記基板載置プレートと前記加熱手段との間に、前記基板載置プレートと前記加熱手段との間の熱交換を行うペルチェ素子を介在させた基板熱処理装置。」
と補正された。

前記補正は、補正前の請求項1に記載した発明における「前記基板載置プレートの一部分を直接に冷却する冷却手段」について、「前記基板載置プレートの下方に、前記加熱手段と重ならないように設けられ、前記基板載置プレートの一部分を液または気体により直接に冷却する冷却手段」との限定を付加するものであり、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、前記補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

(2)引用文献に記載された発明
前記引用文献1?3には、以下の技術的事項が記載されている。

引用文献1:
ア.【特許請求の範囲】【請求項1】
「基板を加熱、冷却するための基板熱処理装置であって、
基板を支持する基板支持台と、
ペルチェ素子を含み、前記基板支持台の裏面側に配置されて前記基板支持台に支持された基板を加熱又は冷却するための補助加熱冷却部と、
前記補助加熱冷却部を挟んで前記基板支持台と対向する側に配置され、前記基板支持台に支持された基板を加熱する主加熱部と、
を備えた基板熱処理装置。」

イ.【0017】、【0018】
「【0017】〔ホットプレートの構成〕次に、基板熱処理装置としてのホットプレート16の構成を図2にもとづいて説明する。
【0018】ホットプレート16は、上部に基板Wを支持する基板支持プレート30と、基板支持プレート30の裏面に設けられたペルチェ素子によって構成される補助加熱冷却部31とを有している。また、補助加熱冷却部31の下部には、この補助加熱冷却部31に接するように配置された中間プレート32と、中間プレート32の下面に接するように設けられたヒータ部33と、ヒータ部33の下面に接するように配置された放熱プレート34とを有している。なお、中間プレート32、ヒータ部33及び放熱プレート34により、主加熱部35が構成されている。」

ウ.〔他の実施形態〕の項中、【0030】?【0032】
「【0030】(b)図7に示すように、基板支持プレート30の周囲に、エアギャップ(隙間)55を介して断熱部材56を配置しても良い。他の構成は前記図1の実施形態と同様である。
【0031】・・・・・・
【0032】・・・・・・
(c)図8に示す実施形態は、図7で示す実施形態に加えて、放熱プレート34の下面にさらに放熱フィン60を設けたものである。ここでは、放熱効率が向上し、冷却速度が速くなる。さらに、ファンで冷却してもよい。」

引用文献2:
エ.【特許請求の範囲】【請求項1】
「基板との相対昇降により前記基板を載置または近接載置する基板載置プレートを備えた基板加熱装置において、
前記基板載置プレート内に、所定温度で蒸発する作動液を収容した流体収容室を形成し、かつ、その流体収容室に蒸気を滞留する蒸気空間を形成するとともに、前記流体収容室内の作動液を加熱する加熱手段を前記基板載置プレートに付設してあることを特徴とする基板加熱装置。」

オ.【0010】?【0014】
「【0010】
【実施例】次に、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】図1は、本発明に係る基板加熱装置の第1実施例を示す全体縦断面図、図2は要部の一部切欠斜視図であり、・・・・
【0012】・・・・・・
【0013】基板載置プレート2内に流体収容室9が形成されるとともに、その流体収容室9内に、作動液の一例としての水Lが所定の減圧状態で封入され、かつ、流体収容室9の上部空間が蒸気を滞留する蒸気空間Sに形成され、更に、基板載置プレート2の下面に、加熱手段としてのマイカヒータ10が付設されている。
【0014】以上の構成により、マイカヒータ10の加熱により水Lを蒸発させ、その蒸気を蒸気空間S内に滞留させることにより、蒸気発生とほぼ同時的にその蒸気が流体収容室9の天井面に到達して基板載置プレート2の基板載置面を迅速に加熱し、基板載置プレート2上に近接載置された基板Wを加熱するようになっている。このとき、基板載置面で温度の低い部分があれば、それに近い流体収容室9の天井面箇所で集中的に活発に凝縮液化が起こり、その凝縮熱の放熱により集中的に加熱し、基板載置プレート2の基板載置面をその全面にわたって均一に加熱することができる。」

カ.【0015】
「図3は、本発明に係る基板加熱装置の第2実施例を示す全体縦断面図、図4は要部の斜視図であり、第1実施例と異なるところは次の通りである。すなわち、基板載置プレート2および流体収容室9が、縦断面形状において、下向きの凸形状に構成され、その基板載置プレート2の面積が小さい下面にマイカヒータ10が付設されている。」

前記エ.?カ.の記載事項からして、引用文献2には、
「基板との相対昇降により前記基板を載置または近接載置する基板載置プレートを備えた基板加熱装置において、
前記基板載置プレート内に、所定温度で蒸発する作動液を収容した流体収容室を形成し、かつ、その流体収容室に蒸気を滞留する蒸気空間を形成するとともに、前記流体収容室内の作動液を加熱する加熱手段を前記基板載置プレートの下面に付設してある基板加熱装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

引用文献3:
キ.1頁
「[産業上の利用分野]
本考案は、半導体ウエーハ上のホトレジスト等の有機被膜の熱処理を行うホットプレートオーブンの改良に関する。」

ク.3頁?4頁
「[問題点を解決するための手段]
本考案は、ブロツク状の金属プレート内に設けられたヒータと、該ヒータの給電を制御して金属プレートを設定温度に制御する温度調節計とよりなるホツトプレートオーブンにおいて、前記金属プレートを強制冷却する冷却機構とを備えて構成したものである。
[作用]
冷却機構によって、金属プレートが強制冷却されて、金属プレートを速やかに所定の温度まで低下させる。」

ケ.6頁1行?6行
「次に第2実施例を第2図を参照して説明する。
第2実施例は、第1実施例のように金属プレート1を冷却水を用いて冷却するのではなく、外気によって冷却する空冷方式をもちいたもので、・・・。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明(引用文献2に記載された発明)とを対比すると、
「加熱された基板載置プレート上に基板を載置または近接載置した状態で基板の熱処理を行う基板熱処理装置において、
前記基板載置プレート内に設けられ、所定温度で蒸発する作動液を収容するとともに、前記作動液の蒸気を滞留させる蒸気空間を有する流体収容室と、
前記基板載置プレートの下方に設けられ、前記流体収容室内の作動液を加熱する加熱手段と、
を備えたことを特徴とする基板熱処理装置。」
である点で、両者は一致し、次の相違点が存在する。

[相違点]
本願補正発明は、さらに、前記基板載置プレートの下方に、前記加熱手段と重ならないように設けられ、前記基板載置プレートの一部分を液または気体により直接に冷却する冷却手段を備えるのに対して、引用発明は、そのような冷却手段を備えるものではない点。

(4)当審の判断
前記相違点について引用文献1、3の記載内容を検討する。

引用文献1の、特にウ.の「ファンで冷却する」旨の記載事項からして、引用文献1には、本願補正発明との対比において、「加熱された基板載置プレート上に基板を載置または近接載置した状態で基板の熱処理を行う基板熱処理装置において、前記基板載置プレートの下方に設けられた加熱手段と、前記加熱手段と重なるように設けられ、前記加熱手段全体を気体により冷却する冷却手段とを備えた基板熱処理装置。」について記載されているといえる。

引用文献3には、本願補正発明との対比において、「加熱された基板載置プレート上に基板を載置または近接載置した状態で基板の熱処理を行う基板熱処理装置において、前記基板載置プレート内に設けられた加熱手段と、前記加熱手段と重なるように設けられ、前記加熱手段全体を液または気体により直接に冷却する冷却手段とを備えた基板熱処理装置。」について記載されているといえる。

したがって、引用文献1,3を参照にして、引用発明の基板載置プレートの降温を速やかに行うために、引用発明の基板熱処理装置に液または気体による冷却手段を備えようとした場合、「前記基板載置プレートの下方に設けられ、流体収容室内の作動液を加熱する加熱手段」と重なるように設け、且つ、前記加熱手段全体を冷却するように冷却手段を備えるようにして、作動液自体を冷却しようとするのが、自然の発想である。
引用文献1,3の記載内容を以てしては、引用発明の基板熱処理装置に液または気体による冷却手段を備えようとした場合、本願補正発明のように「前記基板載置プレートの下方に、流体収容室内の作動液を加熱する加熱手段と重ならないように設けられ、且つ、加熱手段全体を冷却するのではなく、前記基板載置プレートの一部分を直接に冷却する冷却手段を備える」ようにすることは、当業者が容易に想起し得ることとは認められない。

本願補正発明は、基板載置プレートが作動液を収容した流体収容室を備える場合、基板載置プレートの一部分を直接に冷却する冷却手段を備えたとしても、作動液の温度均一化の作用により基板載置プレートの温度分布は悪化しないという認識の基に、基板載置プレートの一部分を液または気体により直接に冷却するもので、冷却手段を小さくすることができ、しかも、基板載置面の均一冷却を損なうことなく、冷却効率を向上させることができる優れた効果を奏するものである。(審判請求請求の理由書3頁1行?13行、及び同8頁19行?32行参照。)

したがって、本願補正発明は、引用文献1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

よって、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないとすることはできない。

(5)むすび
以上のとおり、前記補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で読み替えて準用する同法第126条第5項の規定に違反するとすることはできないから、前記補正が特許法第53条第1項の規定により却下すべきものとした前記決定は妥当ではない。

よって、前記補正却下の決定を取り消す。

III.本願発明について
1.本願発明
平成18年10月16日付けでなされた補正却下の決定は、前記のとおり取り消されたので、本願の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、平成17年2月18日付け及び平成18年7月14日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】 加熱された基板載置プレート上に基板を載置または近接載置した状態で基板の熱処理を行う基板熱処理装置において、
前記基板載置プレート内に設けられ、所定温度で蒸発する作動液を収容するとともに、前記作動液の蒸気を滞留させる蒸気空間を有する流体収容室と、
前記基板載置プレートの下方に設けられ、前記流体収容室内の作動液を加熱する加熱手段と、
前記基板載置プレートの下方に、前記加熱手段と重ならないように設けられ、前記基板載置プレートの一部分を液または気体により直接に冷却する冷却手段と
を備えたことを特徴とする基板熱処理装置。
【請求項2】 請求項1に記載の基板熱処理装置において、
前記基板載置プレートと前記加熱手段との間に、前記基板載置プレートと前記加熱手段との間の熱交換を行うペルチェ素子を介在させた基板熱処理装置。」

2.引用文献
原査定の拒絶理由に引用された引用文献1?3に記載された技術的事項は、前記「II.1」及び「II.2.(2)」に記載したとおりである。

3.対比・判断
(1)本願発明1について
本願発明1は、前記本願補正発明1と同じものであるので、前記「II.2.(4)」に記載したとおり、引用文献1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(2)本願発明2について
本願発明2は、本願発明1を引用する発明であって、本願発明1における発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当するものである。そして、本願発明1が、前記(1)に示したとおり、引用文献1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、同様の理由により、本願発明2は、引用文献1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1及び2に係る発明は、引用文献1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2008-02-12 
出願番号 特願平10-85502
審決分類 P 1 8・ 575- WYA (H01L)
P 1 8・ 121- WYA (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 秀樹  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 安田 明央
辻 徹二
発明の名称 基板熱処理装置  
代理人 杉谷 勉  

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