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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F21S
管理番号 1176287
審判番号 不服2004-20486  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-10-04 
確定日 2008-04-07 
事件の表示 平成11年特許願第 51687号「蛍光ランプ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年10月15日出願公開、特開平11-283413号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成8年5月29日に出願した特願平8-135546号の一部を平成11年2月26日に新たな特許出願としたものであって、平成16年8月27日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年10月4日に拒絶査定に対する不服の審判請求がなされるとともに、同年11月4日付けで手続補正がなされたものである。そして、前置審査において平成17年5月24日付けで拒絶の理由が通知され、同年7月22日付けで手続補正がなされたものである。その後、当審において、平成19年7月18日付けで、最後の拒絶の理由が通知され、これに対し、同年9月25日付け手続補正書により手続補正がなされたものである。

【2】各請求項に係る発明
この出願の請求項1?3に係る発明は、平成19年9月25日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されたとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、本願発明という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
外径約60mm以下の透光性グローブおよびカバーからなり、口金を含む高さが110mm、直径が60mmの白熱電球の規格寸法内の範囲内となるように形成された外囲器と;
外囲器内の空間を透光性グローブ側と口金側とに仕切るように外囲器内に配設され、一対の挿通孔が形成された平板状の仕切板と;
管径6?12mm、管長200?420mmの螺旋状バルブを有し、このバルブの両端部が仕切板の挿通孔にそれぞれ挿通されており、バルブの両端部に封装された電極が仕切板よりも口金側のカバー内にそれぞれ位置しているとともに内部に水銀および希ガスが封入された蛍光ランプと;
仕切板よりも口金側のカバー内に収容され、蛍光ランプの電極よりも口金側に配置され、装置全体の入力電力が8?20Wの範囲内で蛍光ランプを点灯させる点灯回路と;
を具備していることを特徴とする蛍光ランプ装置。」

【3】当審の拒絶理由の概要
一方、当審において平成19年7月18日付けで通知した、拒絶の理由1の概要は次のとおりである。
[理由1]この出願の請求項1?3に係る発明は、日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物(1)?(5)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(1)実願平1-22624号(実開平2-115206号)のマイクロフィルム(以下、第1引用例という。)
(2)実願昭55-123222号(実開昭57-45762号)のマイクロフィルム(以下、第2引用例という。)
(3)特開昭58-135564号公報(以下、第3引用例という。)
(4)特開平7-130334号公報(以下、第4引用例という。)
(5)実公昭63-42402号公報(以下、第5引用例という。)

【4】引用例の記載事項
1.第1引用例
(イ)「本考案は、けい光ランプおよび点灯回路部品を備え、ねじ込み形口金を介してソケットに取付けられるけい光ランプ装置に関する。」(第1頁第14行?第16行)
(ロ)「1は外囲器であり、この外囲器1は金属製のカバー2と、ガラスまたは透光性樹脂等よりなる透光性グローブ3とで構成されている。カバー2内には合成樹脂製のシャーシ4が収容されており、またカバー2とグローブ3の間は合成樹脂製の仕切り盤5で区画されている。
シャーシ4には、金属製の安定器支持板6が固定されており、この支持板6には点灯回路部品としての安定器7が取付けられている。」(第4頁第4行?第12行)
(ハ)「シャーシ4の上端には筒状部10が形成され、この筒状部10には口金11が被着されている。」(第5頁第2行?第3行)
(ニ)「仕切り盤5と上記カバー2で囲まれた空間に上記安定器7が収容され、また仕切り盤5と上記グローブ3で囲まれた空間に屈曲形けい光ランプ18が収容されている。……このような屈曲形けい光ランプ18は、両端の封止部が上記仕切り盤5に開設した挿入孔19、19に差込まれて接着剤20により固定されている。
グローブ3は上端部が開口されたほぼ球形をなしており、上記屈曲形けい光ランプ18を覆っている。」(第6頁第19行?第7頁第12行)
よって、図面第1図を参酌すると共に、記載事項(イ)?(ニ)によれば、第1引用例には、「透光性グローブ3およびカバー2からなる外囲器1と;
外囲器1内の空間を透光性グローブ3側と口金11側とに区画するように外囲器1内に配設され、挿入孔19、19が開設された仕切り盤5と;
屈曲形けい光ランプ18を有し、このけい光ランプ18の両端部が仕切り盤5に開設した挿入孔19、19にそれぞれ差込まれておるけい光ランプ18と;
仕切り盤5よりも口金11側のカバー2内に収容され、けい光ランプ18を点灯させる点灯回路部品としての安定器7と;
を具備しているけい光ランプ装置。」を構成とする発明(以下、引用発明という。)が記載されているものと認められる。
2.第2引用例
(ホ)「第2図及び第3図に於いて、(11)は螺旋形けい光ランプである。このランプ(11)はガラスバルブを螺旋形に屈曲させてあること以外は通常のけい光ランプと同様の構造を有している。……(13)は……ほぼ円筒状の容器で、その内部には点灯装置が収納されている。容器(13)の上下端からは点灯装置から螺旋形けい光ランプ(11)の口金(12)へ接続するためのソケット(14)が設けられている。」(第2頁第15行?第3頁第4行)
(ヘ)「管径15mm,電極間距離360mmで水銀及びアルゴンガス3.5Torrを封入した螺旋形けい光ランプを備えた試作ランプに於いて、ねじ口金を含めた全長は105mmとなり、従来の白熱電球とほぼ同等の大きさとなつた。そして、この試作ランプを白熱灯ソケツトに挿入し点灯させると、20Wの消費電力で約650lmの光束が得られた。」(第3頁第13行?第20行)
(ト)「ランプを螺旋形としたため電極間距離が長くとれ従つてランプ効率の高いコンパクトけい光ランプが得られた。」(第4頁第7行?第9行)
3.第3引用例
(チ)「曲管形けい光ランプおよびこのランプに高周波電圧を印加する高周波点灯装置を具備し、上記けい光ランプはバルブ管長を350mm以上450mm以下とし、かつバルブ管径を10mm以上15.5mm以下と……したことを特徴とする曲管形けい光ランプ装置。」(第1頁左下欄第5行?第11行)
4.第4引用例
(リ)「低圧水銀灯(1)は、螺旋状や渦巻き状その他異形(本実施例では直線部を中心にしてその周囲に螺旋部が形成されている。)に曲成されたガラス管(6)と、ガラス管(6)の両端に設けられた水銀灯用ステム(7)と、前記水銀灯用ステム(7)に立設された一対のリード線(10)と、その内側端部間に架設されたフィラメント(8)並びにガラス管(6)の両端に気密的に封着された水銀灯用口金(9)とで構成されている。…ガラス管(6)は、…内部に水銀が数十mg、始動ガスとして希ガス(一般にはアルゴン)が数百Pa封入されている。」(段落【0007】、【0008】)
5.第5引用例
(ヌ)「バルブ12の両端部12b,12bが平板状の仕切盤5の挿通孔をそれぞれ貫通し、バルブ12の両端部12b,12bに封装された電極13,13が平板状の仕切盤5よりも口金4側の中空ベース2側の第1の空間6内(カバー内に相当)にそれぞれ位置している。」(特に、第1図?第3図に記載されている技術事項)

【5】対比・判断
本願発明と引用発明とを対比するに、引用発明の「区画するように外囲器1内に配設され、挿入孔19、19が開設された仕切り盤5」は、本願発明の「仕切るように外囲器内に配設され、一対の挿通孔が形成された仕切板」に相当し、以下同様に、「屈曲形けい光ランプ18」は「バルブ;蛍光ランプ」に、「けい光ランプ18の両端部が仕切り盤5に開設した挿入孔19、19にそれぞれ差込まれ」は「バルブの両端部が仕切板の挿通孔にそれぞれ挿通され」に、「点灯回路部品としての安定器7」は「点灯回路」にそれぞれ相当するから、両者は、
「透光性グローブおよびカバーからなる外囲器と;
外囲器内の空間を透光性グローブ側と口金側とに仕切るように外囲器内に配設され、一対の挿通孔が形成された仕切板と;
バルブを有し、このバルブの両端部が仕切板の挿通孔にそれぞれ挿通されておる蛍光ランプと;
仕切板よりも口金側のカバー内に収容され、蛍光ランプを点灯させる点灯回路と;
を具備している蛍光ランプ装置。」の点で一致し、下記の点で相違する。
(1)透光性グローブおよびカバーからなる外囲器に関し、本願発明では、これらの外径、高さ等を数値でもって及び白熱電球の規格寸法内の範囲内となるよう特定しているのに対し、引用発明では、このことについて言及していない点。
(2)本願発明では、バルブは螺旋状バルブであって、その管径、管長等を数値をもって特定しているのに対し、引用発明では、バルブは屈曲形ではあるが、螺旋状とまではいうことができず、また、管径、管長等の数値について言及していない点。
(3)本願発明では、バルブは、その両端部に封装された電極が仕切板よりも口金側のカバー内にそれぞれ位置しているとともに内部に水銀および希ガスが封入されているのに対し、引用発明では、このことについて言及していない点。
(4)点灯回路は、本願発明では、蛍光ランプの電極よりも口金側に配置され、装置全体の入力電力が8?20Wの範囲内で蛍光ランプを点灯させるものであるのに対し、引用発明では、この配置及び入力電力について言及していない点。
(5)仕切板は、本願発明では、平板状であるに対し、引用発明では、そのような構成になっていない点。

そこで、これらの相違点(1)?(5)について以下に検討する。
相違点(1)について
引用発明も、白熱電球と互換性を有することを前提に、蛍光ランプ装置の改良を狙ったものである(第1引用例の第1頁第17行?第2頁第5行中記載の(従来の技術)を参照のこと。)ことからみると、引用発明と比較して、本願発明が、透光性グローブおよびカバーからなる外囲器の外径、高さ等を従来の白熱電球の寸法に沿うようにしたことに格別なものは認められず、しかも、螺旋形けい光ランプの口金を含む高さ自体を110mmの範囲内の全長105mmとすることによって従来の白熱電球とほぼ同等の大きさとなったする技術事項が第2引用例に記載されている(記載事項(ヘ)を参照)以上、本願発明が、従来の白熱電球とほぼ同等の大きさである、外径約60mm以下の透光性グローブおよびカバーからなり、口金を含む高さが110mm、直径が60mmの白熱電球の規格寸法内の範囲内に形成された外囲器を具備するというように、外径、高さ等を数値をもって及び白熱電球の規格寸法内となるよう特定した点は、当業者が実施するにあたって、これらの数値を、単に、最適化または好適化したに過ぎないし、白熱電球と互換性を有するものである以上、白熱電球の規格寸法内となるようにすることは設計的な事項であると認められる。したがって、この相違点(1)でいう本願発明の構成に格別の創意を見出すことができない。
相違点(2)について
バルブ(蛍光ランプ)を螺旋状バルブとすることは、上記の第2引用例や第4引用例にも記載されているように、従来周知の技術事項であるし、また、バルブ自体の管径、管長等を数値をもって特定した点についてみるも、第3引用例に、バルブ管長を350mm以上450mm以下(管長200?420mmに対応)とし、かつバルブ管径を10mm以上15.5mm以下(管径6?12mmに対応)とする技術事項、及び第2引用例に、電極間距離360mm(管長200?420mmに対応)とする技術事項が記載されていることからみて、数値をもって特定した点に格別なものが認められず、この相違点(2)でいう本願発明の構成は、引用発明に第2?4引用例に記載された技術事項を適用することによって、当業者であれば容易に想到することができたものである。
相違点(3)について
バルブの内部に水銀および希ガスが封入されることは、第2引用例(記載事項(ヘ)を参照)及び第4引用例に記載されているように従来周知の技術事項であり、また、電極に係る事項についてみるも、引用発明は、電極が仕切板よりも口金側のカバー内に位置するということまでは言及していないものの、けい光ランプ18の両端部が仕切り盤5に開設した挿入孔19、19にそれぞれ差込まれていると共に、図面第1図からみて、けい光ランプ18の先端側は仕切り盤5よりも口金11側のカバー2内に位置することからして、この先端側に封装されるべき電極も仕切り盤5よりも口金11側のカバー内に位置していることが窺われるし、しかも、第5引用例において、バルブの両端部に封装された電極が仕切板よりも口金側のカバー内(中空ベース2側の第1の空間6内)にそれぞれ位置することが開示されている以上、この相違点(3)でいう本願発明の構成は、引用発明に第2,4引用例及び第5引用例に記載された技術事項を適用することによって、当業者であれば容易に想到することができたものである。
相違点(4)について
螺旋形けい光ランプにおいて、点灯させると、20Wの消費電力で約650lmの光束が得られた、とする技術事項が第2引用例に記載されている(記載事項(ヘ)を参照)し、その配置についても第1引用例の図面第1図からみて、引用発明において、けい光ランプ18の先端側は仕切り盤5よりも口金11側のカバー2内に位置することからして、この先端側に封装されるべき電極も仕切り盤5よりも口金11側のカバー内に位置しており、安定器7(本願発明の点灯回路に相当する)はけい光ランプ18の電極より口金11側に配置されていることが窺われる以上、この相違点(4)でいう本願発明の構成に格別の創意は見出せない。
相違点(5)について
仕切板が平板状である点は、第5引用例に記載されている(記載事項(ヌ)を参照)以上、平板状にすることによる作用効果をみても何ら格別な差異を認めることができない。よって、この相違点(5)でいう本願発明の構成に格別の創意は見出せない。

そして、上記相違点(1)?(5)併せ備える本願発明の奏する効果をみても、引用発明及び第2?5引用例に記載された技術事項から当業者であれば予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。

【6】 むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)については、引用発明及び第2?5引用例に記載された技術事項から当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-06 
結審通知日 2008-02-07 
審決日 2008-02-22 
出願番号 特願平11-51687
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F21S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柿崎 拓塚本 英隆  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 藤井 俊明
佐藤 正浩
発明の名称 蛍光ランプ装置  
代理人 野木 新治  
代理人 熊谷 昌俊  

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