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審決分類 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1176539
審判番号 不服2005-16790  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-09-01 
確定日 2008-04-17 
事件の表示 特願2002-166869「白濁剤として用いられる造粒物及びその製造方法並びに該造粒物を含有する浴用剤組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成16年1月15日出願公開、特開2004-10543〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願(以下、「本願」という。)は、平成14年6月7日の出願であって、平成17年2月18日付け拒絶理由通知に対し平成17年4月22日付けで意見書とともに手続補正書が提出されたが、平成17年7月29日付けで拒絶査定がなされ(謄本送達は平成17年8月2日)、平成17年9月1日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成17年10月3日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年10月3日付け手続補正について
平成17年10月3日付け手続補正は、補正前の(平成17年4月22日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の)請求項1を削除するとともに、同補正前の請求項2?6を新たな請求項1?5とするために形式的な補正をするものであるから、平成18年改正前の特許法第17条の2第4項第1号に規定する請求項の削除を目的とする補正に該当する。

3.本願発明
本願請求項1?5に係る発明は、上記平成17年10月3日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?5に記載されたとおりのものと認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「アナターゼ型酸化チタンと、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子を含有し、かつ、界面活性剤を実質的に含有しない造粒物であって、水溶性高分子に対するアナターゼ型酸化チタンの重量比X(アナターゼ型酸化チタン/水溶性高分子)が4≧X≧1である造粒物。」

4.引用例の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用された、本願出願前に頒布されたことが明らかな刊行物である、特開平7-25747号公報(原査定の引用文献7。以下、「引用例」という。)には、以下の各事項が記載されている。

<摘記事項1>
「【請求項1】水溶性高分子物質10?80部と水不溶性物質20?90部からなる混合物を2本ロールを用い高剪断力作用下にて水不溶性物質を分散をすることを特徴とする入浴剤用組成物。
【請求項2】水不溶性物質が顔料であることを特徴とする請求項1記載の入浴剤用組成物。」(【請求項1】?【請求項2】)

<摘記事項2>
「この様な懸濁性入浴剤に関する技術として、白色乳濁状の入浴剤が開発され実用化されている(特開昭63-57516号公報,特開平1-149714号公報)が、共通する問題点としては、浴湯中に投入した場合、懸濁物質が時間の経過と共に浴槽の底に沈澱してしまい、逆に不快感を与えたり或いは懸濁物質やその分散安定剤として用いている成分などが浴壁に付着し、浴槽洗浄性を損なうなどの問題がある。
上記の問題を解決すべく研究を重ねた結果、2本ロールを用い強力な剪断力作用の下に水不溶性物質を水溶性高分子物質中に混練分散することにより水に溶解しやすく、かつ水系での分散安定性に優れる組成物を開発し、当該組成物を配合した懸濁入浴剤組成物が浴湯中に投入された場合、水に速やかに溶解し安定な懸濁色調が得られることを見い出し、懸濁安定性に極めて優れる入浴剤を見いだした。」(段落【0002】?【0003】)

<摘記事項3>
「水不溶性物質としては、酸化チタン,…………などの白色系無機顔料を例示することができる。…………。水溶性高分子物質としては、セルロース系高分子物質であるメチルセルロース,…………,カルボキシメチルセルロース、この他水溶性デンプン,…………などの多糖類系高分子物質、ポリアクリル酸ソーダやポリビニルアルコールなどの合成高分子物質を用いることができる。」(段落【0005】)

<摘記事項4>
「本発明によれば、従来水不溶性物質を浴湯中で安定に分散させておくために使用していた界面活性剤などの分散安定剤を使用せずに懸濁入浴剤組成物を製造することができるため、従来分散安定剤に起因する香料成分の失活や刺激性に関する問題もなく、配合処方上の制約が低減され、幅広い製品設計が可能となった。」(段落【0010】)

<摘記事項5>
「また、水不溶性物質を細粒化し水溶性高分子物質をその粒子表面に強制的に被覆吸着させる製造方法をとるため、浴湯に投入した後の希薄懸濁系においても被覆された水溶性高分子物質は保護コロイド的な作用を発揮し、安定な分散性が維持できているものと推定され、従来の懸濁性入浴剤にない沈澱性の向上が得られている。」(段落【0011】)

<摘記事項6>
「実施例1
平均粒径0.25μmの二酸化チタン400部に平均分子量17,000のカルボキシメチルセルロース100部を加え、常温で10分間撹拌混合し均一な混合物を作った。この混合物を撹拌しながら水80部を徐々に添加し、均一な含水粉体を調製した。
次いでこの含水粉体を80℃に加温した2本ロール上に乗せ、粉体をシート状にした。シートは繰り返し2本ロールで処理し、硬いシート状になるまで混練した。このシートを2本ロールから取り出し、常温まで冷却後、ハンマーミル型粉砕機で最大粒径6mmに粉砕した。次いでジェットミル型粉砕機で粉砕し、200メッシュパスの組成物を得た。次いで、この組成物を5重量部に無水硫酸ナトリウム80重量部,炭酸水素ナトリウム14重量部,香料1重量部をV型混合機に入れ、10分間撹拌して白濁性入浴剤1Kgを作った。この入浴剤20gを40℃の浴湯200lに投入しかき混ぜたところ、即座に乳白濁色を示した。この浴湯に入浴した24時間後、浴湯の上層部をくみ取り、入浴剤投入直後の浴湯と濁度を比較した結果、白濁度は同等であった。又、浴槽の底に沈澱物はなく、白濁剤である酸化チタンは安定に分散していた。」(段落【0012】?【0013】)

5.引用例に記載された発明
引用例の「実施例1」において、白濁性入浴剤に配合するために調製されたことが記載されている「200メッシュパスの組成物」は、二酸化チタン(即ち「酸化チタン」)と水溶性高分子であるカルボキシメチルセルロースとを、水とともに混練した後、粉砕して得られたものであり(摘記事項6及び1?3を参照)、細粒化した酸化チタンの粒子表面に水溶性高分子を被覆吸着させたものであるから(摘記事項5を参照)、「造粒物」であることは明らかである。
また、該「200メッシュパスの組成物」は、界面活性剤を実質的に含有しないものであることも明らかである(摘記事項6及び4を参照)。
そして、該「200メッシュパスの組成物」においては、水溶性高分子であるカルボキシメチルセルロースに対する酸化チタンの重量比は、400部/100部、即ち「4」である。

以上によれば、引用例には、
「酸化チタンと、水溶性高分子であるカルボキシメチルセルロースとを含有し、かつ、界面活性剤を実質的に含有しない造粒物であって、水溶性高分子に対する酸化チタンの重量比が4である造粒物。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

6.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、
「酸化チタンと、水溶性高分子を含有し、かつ、界面活性剤を実質的に含有しない造粒物であって、水溶性高分子に対する酸化チタンの重量比が4である造粒物。」
である点で一致し、以下の2点で相違している。

<相違点1>
水溶性高分子が、本願発明では「カルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種」であるのに対して、引用発明では「カルボキシメチルセルロース」である点。

<相違点2>
酸化チタンの結晶型につき、本願発明は「アナターゼ型」に限定するものであるのに対して、引用発明では結晶型が明らかでない点。

7.判断
上記各相違点について、以下に検討する。

(1)相違点1について
「カルボキシメチルセルロースナトリウム」は、「カルボキシメチルセルロース」の単なるナトリウム塩であって、両者は共に懸濁剤等として用いられる周知の水溶性高分子であり(例えば、日本医薬品添加剤協会編、「医薬品添加物事典(第1版)」、1994年1月14日発行、株式会社薬事日報社、第31?32頁、「カルメロース」及び「カルメロースナトリウム」の各項を参照)、浴用剤分野においても、「カルボキシメチルセルロースナトリウム」は酸化チタン等の顔料を被覆する成分として使用されていたものである(例えば、特開平8-225442号公報(原査定の引用文献5)、及び特開2000-34220号公報(原審の拒絶理由通知における引用文献9)を参照)。
したがって、引用発明における水溶性高分子として、「カルボキシメチルセルロース」に代えて「カルボキシメチルセルロースナトリウム」を用いる程度のことは、当業者ならば何ら創意を要さずなし得ることである。

(2)相違点2について
香粧品分野において顔料として一般的に用いられる酸化チタンは、結晶型がルチル型かアナターゼ型のものである(例えば、化粧品原料基準注解編集委員会編、「化粧品原料基準注解(改訂6版)」、昭和53年12月1日発行、株式会社薬事日報社、第119?127頁、「酸化チタン」の項、第121頁第27行?第122頁第1行には、「本品は結晶構造上上述の3種類あるが、実用的に価値があるのは、アナタース形(Anatase type)とルチル形(Rutile type)である。」と記載されている。)。
そして、浴用剤分野においても、ルチル型酸化チタンとアナターゼ型酸化チタンの双方が白濁剤として本願出願前から使用されていた(例えば、特開平2-9811号公報(原査定の引用文献10)、及び特開平3-294220号公報(原審の拒絶理由通知における引用文献1)を参照)。
してみると、引用発明で用いられた酸化チタンは、その結晶型が明らかでないが、上記のように、この分野で使用されているものは、実質的にルチル型かアナターゼ型かといった極めて少ない選択肢に限られるので、これらの限定された選択肢について実際に使用して、浴用剤組成物としての各種性能を比較した結果、何れかを選択することは、当業者ならば何ら困難を伴わずなし得たことであるといえる。

また、本願明細書に記載された本願発明の効果について検討しても、格別顕著な効果が奏されたものとすることはできない。
なお、浴用剤においては、保存安定性や水道水の硬度の影響を受けることなく良好な溶解性と分散性を示すことは、当業者が当然に考慮する基本的な性質に含まれるものであって、浴用剤の処方を検討する際に、これらの性質を確認することは、当業者が当然に行う程度のことであると解されるので、本願明細書に記載された効果を以て格別優れたものとすることはできない。

8.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明、及び、本願出願前の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-12 
結審通知日 2008-02-19 
審決日 2008-03-03 
出願番号 特願2002-166869(P2002-166869)
審決分類 P 1 8・ 571- Z (A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 天野 貴子  
特許庁審判長 星野 紹英
特許庁審判官 井上 典之
弘實 謙二
発明の名称 白濁剤として用いられる造粒物及びその製造方法並びに該造粒物を含有する浴用剤組成物  
代理人 平木 祐輔  
代理人 藤田 節  
代理人 石井 貞次  
代理人 島村 直己  

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