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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61H
管理番号 1176684
審判番号 不服2006-2414  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-09 
確定日 2008-04-24 
事件の表示 特願2001-548060号「指圧代用刺激具」拒絶査定不服審判事件〔平成13年7月5日国際公開、WO01/47465〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、1999年12月27日を国際出願日とする出願であって、平成17年12月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年2月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年2月28日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

第2.平成18年2月28日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年2月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「硬質又は半硬質の合成樹脂材料からなる柔軟なシート部材を、これに網目を設けることにより細いコード部と網の結び目に当たるノット部とを有する網状に形成し、前記コード部及びノット部の一方の面に、前記コード部の延長方向に沿って筋状をなす多数の突起を一様に形成したことを特徴とする指圧代用刺激具。」(下線部は、補正箇所を示す。)

2.補正の目的の適否
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「柔軟なシート部材」に、「硬質又は半硬質の合成樹脂材料からなる柔軟なシート部材を、これに網目を設けることにより」との限定を付与するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、新規事項を追加するものではなく、特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反しないか)について以下に検討する。

3-1.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平10-328268号公報(以下、「引用例1」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア.「図2は、図1の網付き粘着テープの先端付近を拡大して示した斜視図である。網状体2は、縒糸状に仕上げられた糸状体2aを網状に構成したものである。2bは、糸状体2aの直線状部が交差する部分(以下結び目という)である。糸状体2aが縒糸の場合は、結び目2bの太さは当然ながら糸状体2aの直線状部より太く、この部分に壺があたるようにすれば、効果を一層高めることができる。」(段落【0008】)
イ.「糸状体2aの材質は、本実施形態例のように縒糸状のものは、天然繊維、合成繊維のいずれでもよい。合成樹脂でもよいが、この場合は粘着テープに近い柔軟性と伸縮性のあるものがよく、断面の形状は、円、楕円、多角形などのいずれでもよい。なお、糸状体の直線状部が交差する部分(結び目2bに相当する部分)は、フラットの方が製作費は安いが、直線状部より太い場合に比べ壺に対する刺激が弱く使用効果が低くなる。」(段落【0011】)
ウ.図1、2には、網状体2はシート状であることが図示されている。

上記アの記載、図1及び2から、網状体2は、直線状部と結び目2bとを有する網状のものであり、各結び目2bには突起が設けられていると認められる。

これら記載事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という)が記載されている。

「合成樹脂からなる柔軟性のあるシート状の網状体2は、直線状部と結び目2bとを有する網状のものであり、各結び目2bに突起が設けられている網付き粘着テープ。」

原査定の拒絶の理由に引用された、実公昭58-28589号公報(以下、「引用例2」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。
エ.「本考案は指圧代用器具のような貼り薬の改良に関するもので、さらに詳述すれば、薄肉の円座1の裏面2を平坦に形成すると共に円座1の表面3に円座1の中心より放射状に突脈4を複数本突設し、基部10より稜9へ行く程突脈4の幅が次第に幅狭となるように突脈4の側面11を急傾斜に形成すると共に突脈4の稜9を小円弧状に形成し、感圧性粘着剤5を塗布せる基布シート6に円座1の裏面2を貼着して成る指圧代用器具のような貼り薬に係るものである。」(第1ページ左欄第29行?右欄第1行)
オ.「次ぎに本考案の第2の実施例を第9図乃至第1図に従つて詳述する。・・・(中略)・・・このようにすれば円座1の中心の突脈4部分で痛点いわゆるつぼの中心の皮膚をより強く刺激し、治療効果をより高めることができるものである。また本考案の第3の実施例を第12図乃至第14図に従つて詳述すれば、4本の突脈4が円座1の中心より放射状に突脈4を突設してある。突脈4同志のなす角度は90°である。」(第3ページ左欄第12行?右欄第2行)

3-2.対比
本願補正発明と引用発明1とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明の「合成樹脂」は、本願補正発明の「合成樹脂材料」に相当し、以下同様に、「柔軟性のあるシート状の網状体2」は「柔軟なシート部材」に、「直線状部」は「細いコード部」に、「結び目2b」は「ノット部」に、「各結び目2bに突起が設けられている」は「多数の突起を一様に形成した」に、「網付き粘着テープ」は「指圧代用刺激具」に、それぞれ相当する。
また、引用発明1の「合成樹脂からなる柔軟性のあるシート状の網状体2は、直線状部と結び目2bとを有する網状のものであり」と本願補正発明の「合成樹脂材料からなる柔軟なシート部材を、これに網目を設けることにより細いコード部と網の結び目に当たるノット部とを有する網状に形成し」とは、同義である。

そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「合成樹脂材料からなる柔軟なシート部材を、これに網目を設けることにより細いコード部と網の結び目に当たるノット部とを有する網状に形成し、多数の突起を一様に形成した指圧代用刺激具。」

そして、両者は次の相違点1、2で相違する。
(相違点1)
合成樹脂材料について、本願補正発明は、硬質又は半硬質であるのに対し、引用発明1は、硬さは不明である点。

(相違点2)
一様に形成した多数の突起について、本願補正発明は、コード部及びノット部の一方の面に、前記コード部の延長方向に沿って筋状をなして構成されているのに対し、引用発明1は、結び目2bに突起が構成されている点。

3-3.相違点の判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
引用発明1において、合成樹脂(合成樹脂材料)の硬さは、つぼに対する刺激等を考慮して適宜設定される設計事項にすぎないから、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点2について)
引用例2には、4本の筋状の突脈4が円座1の中心より放射状に突設されており、突脈4同士のなす角度は90°である指圧代用器具のような貼り薬という発明(以下、「引用発明2」という)が記載されていると認められる。
引用発明1、2は、治療等のために人体に貼る物という同一の技術分野に係るものであり、つぼを刺激するという機能も共通し、しかも、引用発明2において、筋状の突脈4の長さは、必要に応じて適宜設定し得るものにすぎず、引用発明1において、直線状部(コード部)や結び目2b(ノット部)を構成する糸状体2aの断面の形状は、上記イの記載より、多角形でもよいものである。
以上より、引用発明1において、結び目2b(ノット部)に設けられた突起を、引用発明2の4本の筋状の突脈4に置き換え、その際、筋状の突脈4の長さを適宜設定して結び目2bから直線状部(コード部)にまたがるようにし、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明による効果も、引用発明1及び2から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-4.むすび
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、拒絶査定時の明細書の、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「細いコード部と網の結び目に当たるノット部とを有する網状に形成した柔軟なシート部材からなり、前記シート部材の前記コード部及びノット部の一方の面に、前記コード部の延長方向に沿って筋状をなす多数の突起を一様に形成したことを特徴とする指圧代用刺激具。」

第4.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記3-1に記載したとおりである。

第5.対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、「柔軟なシート部材」の限定事項である「硬質又は半硬質の合成樹脂材料からなる柔軟なシート部材を、これに網目を設けることにより」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含む本願補正発明が、前記3-3に記載したとおり、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-20 
結審通知日 2008-02-26 
審決日 2008-03-10 
出願番号 特願2001-548060(P2001-548060)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61H)
P 1 8・ 575- Z (A61H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 玲子  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 鏡 宣宏
八木 誠
発明の名称 指圧代用刺激具  
代理人 梅田 明彦  

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