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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1176688
審判番号 不服2006-5345  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-23 
確定日 2008-04-24 
事件の表示 平成11年特許願第215366号「画像入出力装置及び画像入出力方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 2月16日出願公開、特開2001- 45191〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年7月29日の出願であって、平成18年2月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月23日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.特許請求の範囲の記載
本願の特許請求の範囲の記載は、平成18年3月23日付けで補正されたとおりであり、その請求項1の記載は次のとおりである。

「画像データを入力する少なくとも一つの画像入力手段と、
前記入力された画像データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された画像データを出力する画像出力手段と、を有する画像入出力装置であって、
前記画像入力手段から前記記憶手段に画像転送する画像入力ジョブを制御し、且つ、前記記憶手段から画像出力手段に画像転送する画像出力ジョブを制御する制御手段と、前記記憶手段のメモリフルを判断する検知手段と、を有し、
前記制御手段は、
前記記憶手段のメモリフルが発生したら、現在入力中のジョブの入力を中断し、
更に、前記制御手段は、
前記メモリフル発生時点で、前記画像出力手段による出力が中断状態のジョブが存在しない場合に、前記記憶手段の画像データを画像出力手段により出力することで前記記憶手段の空き領域を確保させるか、前記記憶手段の画像データを画像出力手段により出力せずに破棄することで前記記憶手段の空き領域を確保させ、
且つ、前記制御手段は、
前記メモリフル発生時点で、既に前記記憶手段への入力は完了し且つ前記画像出力手段による出力が中断状態のジョブが存在する場合に、前記記憶手段の画像データを画像出力手段により出力することで前記記憶手段の空き領域を確保させることを特徴とする画像入出力装置。」

3.原審の拒絶理由
拒絶査定の理由となった、平成17年7月5日付けの拒絶理由は次のとおりである。

「この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていない。


請求項1-4には、「第1の制御モード」、「第2の制御モード」、「第3の制御モード」が記載されているが、これらがどのようなモードであるのか、請求項の記載からは明確に理解できない。また、発明の詳細な説明を参酌しても、実施例のどの部分がこれらの制御モードに相当するものなのか、さらに、3つの制御モードを、データ入力が完了し出力を行っているジョブがあるか否かの判断結果に基づいて選択することは実施例のどの部分に対応するものなのか全く不明である。
よって、請求項1-4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでなく、また、明確でない。」

4.本願の明細書の記載
本願の明細書の発明の詳細な説明には、ディスクフル発生後の処理として以下の記載がなされている。

4-1.「【0117】
次に図13を用いて、図6のステップS615でストレージ部5のハードディスク6に画像データを記憶する際に、記憶領域が一つも確保できなかった場合(ディスクフル)の説明を行う。図13はディスクフル発生後の処理を示したフローチャートである。なお、図中のS1301?S1306は各ステップを示す。
【0118】
図13において、ステップS1301では、現在入力中のジョブに関して、ひとまず画像の入力を中断する処理を行う。
【0119】
次にステップS1302で記憶領域に余裕が有るか無いか確認を行い、余裕が有る場合は、ステップS1307で入力を中断したジョブの再開を行う。一方ステップS1302で記憶領域に余裕が無いと確認された場合は、ステップS1303で、現在出力中のジョブが有るか否かを判断し、無い場合はステップS1306へ分岐する。ステップS1303で出力中のジョブが有ると確認された場合は、ステップS1304にて、出力中のジョブで入力を完了したジョブが有るか無いかを判断し、有る場合には、ステップS1302へ分岐する。無い場合には、ステップS1305に分岐して、出力中のジョブで、何らかの原因で出力中断状態のジョブが有るか否かを判断する。出力中断状態のジョブが有ると判断された場合とは、例えば、出力中に画像を形成するための用紙が無くなり出力中断しているジョブや、ジャムや、トナー切れなどの要因で、画像形成が出来ない状態で出力が中断しているジョブなどである。このようなジョブが有る場合、それらの中断要因を解除することで、出力が再開され、メモリの空き領域が増える可能性が有るので、ステップS1305、ステップS1302、ステップS1303、ステップS1304でループを形成して、出力が再開されるのを待つ。ステップS1305において出力中のジョブで、出力が中断状態になっているジョブが無いと判断された場合、ステップS1306へ分岐する。ステップS1306は、図10の に処理を移す。」

4-2.「【0120】
次に、図10を用いて、図13のフローにおいて、記憶容量の領域確保が出来る見込みが無いと判断され、ステップS1306から処理が移された場合のフローを説明する。
【0121】
図中のS1001?S1010は各ステップを示す。
【0122】
ステップS1001では、セッション管理テーブル700を調べることにより、動作中の画像入力ジョブを含む画像入出力セッションを中断し、動作中の画像入力ジョブを含む画像入出力セッションのセッションステータスフィールド704及び画像入力ジョブ管理テーブル710のジョブステータスフィールド714を中断状態として書き込む。
【0123】
ステップS1002では、画像入力ジョブを含む画像入出力セッションが同時に複数存在するか否かを調べる。複数の画像入出力セッションが存在する場合は、ステップS1003に進み、存在する画像入出力セッションが一つの場合はステップS1004に進む。
【0124】
ステップS1003では、ステップS1001で中断された複数の画像入出力セッションの内のどの画像入出力セッションを中止(キャンセル)するかを選択する。
……
【0131】
ステップS1009では、ステップS1001で中断された他の画像入力ジョブを含む画像入出力セッションを再開し、ステップS1010へ進む。
【0132】
ステップS1010では、ステップS1009にて再開した画像出力ジョブが全て終了したかどうかを判断する。終了していない場合はステップS1010へ、終了した場合は、当該画像入出力セッションに関する終了処理をして継続の動作を行う。」

また、図10にハードディスクフル時の制御状況の一例を示すフローチャートが、図13にハードディスクフル時の動作の一例を示すフローチャートが、それぞれ記載されている。

5.当審の判断
請求項1の
「前記制御手段は、
前記メモリフル発生時点で、既に前記記憶手段への入力は完了し且つ前記画像出力手段による出力が中断状態のジョブが存在する場合に、前記記憶手段の画像データを画像出力手段により出力することで前記記憶手段の空き領域を確保させることを特徴とする」
点が、発明の詳細な説明に記載された事項であるか検討する。
上記4-1.及び図13の記載からディスクフル発生後の処理は、以下の場合に分けることができる。

場合1.記憶領域に余裕が有る場合。(ステップS1302「はい」)

場合2.記憶領域に余裕が無い場合で、(ステップS1302「いいえ」)
出力中のジョブが無い場合。(ステップS1303「いいえ」)

場合3.記憶領域に余裕が無い場合で、
出力中のジョブが有る場合で、(ステップS1303「はい」)
出力中のジョブで入力を完了したジョブが有る場合。
(ステップS1304「はい」)

場合4.記憶領域に余裕が無い場合で、
出力中のジョブが有る場合で、
出力中のジョブで入力を完了したジョブが無い場合で、
(ステップS1304「いいえ」)
出力中のジョブで出力中断状態のジョブが有る場合。
(ステップS1305「はい」)

場合5.記憶領域に余裕が無い場合で、
出力中のジョブが有る場合で、
出力中のジョブで入力を完了したジョブが無い場合で、
出力中のジョブで出力中断状態のジョブが無い場合。
(ステップS1305「いいえ」)

「前記メモリフル発生時点で、既に前記記憶手段への入力は完了し且つ前記画像出力手段による出力が中断状態のジョブが存在する場合」は、上記場合1-5のいずれにも該当しないから、どのような処理とするかも特定されていない。

上記4-2.及び図10の記憶容量の領域確保が出来る見込みが無いと判断された場合の処理は、上記場合2又は場合5と判断された場合の処理であり、「前記メモリフル発生時点で、既に前記記憶手段への入力は完了し且つ前記画像出力手段による出力が中断状態のジョブが存在する場合」になされるものではない。

また、発明の詳細な説明及び図面の他の記載においても、「前記メモリフル発生時点で、既に前記記憶手段への入力は完了し且つ前記画像出力手段による出力が中断状態のジョブが存在する場合」を判断すること、及びその場合の処理については、特許請求の範囲と同一の文言が記載された段落【0012】が有るだけで、実質的な記載はない。

したがって、請求項1に係る特許を受けようとする発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。

なお、請求人は、請求の理由において、
「第3 本願発明が特許されるべき理由
……
(2)本出願人は、……
まず、『前記メモリフル発生時点で、既に前記記憶手段への入力は完了し且つ前記画像出力手段による出力が中断状態のジョブが存在する場合』とは、実施例の図13のS1304の「はい」の場合が該当します。
なぜなら、まず、図13の処理は、HDフル時の処理フローです。且つ、S1303で「はい」になる場合とは「出力中のジョブがある」事を意味しております。そして、その直後のS1304で「はい」になる場合とは、「出力中のジョブで入力を完了したジョブがある」事を意味します。一方、この図13の処理は、処理が中断している状態です。つまり、このS1304の「出力中のジョブ」とは「現在、処理が中断している出力ジョブ」であり、且つ、このS1304で「はい」になるという事は、「現在、処理が中断しているジョブがあり、且つ、入力は完了しているジョブが存在する」事を意味しております。
つまり、図13でHDフル→S1303で「はい」→S1304で「はい」という判断を下すとということは、『前記メモリフル発生時点で、既に前記記憶手段への入力は完了し且つ前記画像出力手段による出力が中断状態のジョブが存在する場合』を意味しております。また、具体例で換言すると、このようなジョブは、[0119]の如く、「出力中に画像を形成する為の用紙がなくなり出力中断しているジョブや、ジャムや、トナー切れなどの要因で、画像形成ができない状態で出力が中断しているジョブ」のことを意味します。
そして、このS1304で「はい」にいくと、S1302へ移行してループを形成します。そして、このループの意味は、[0119]の如く、このような「出力中に画像を形成する為の用紙がなくなり出力中断しているジョブや、ジャムや、トナー切れなどの要因で、画像形成ができない状態で出力が中断しているジョブ」の中断要因が解除されることで印刷が再開される、これにより、空き容量の確保を図るものであります。
これにより、本願請求項1の上記記載の如く『前記記憶手段の画像データを画像出力手段により出力することで前記記憶手段の空き領域を確保させる』となります。 」
と主張している。
段落【0118】及び図13の記載から、ステップS1301では、現在入力中のジョブに関して、画像の入力を中断する処理を行うが、出力中のジョブを中断することについては、何らの特定もない。
そして、図10の処理のように動作中の画像入出力セッションを中断するものであれば、画像入出力セッションに含まれる出力ジョブは処理が中断している出力ジョブといえるが、入力中のジョブに関して中断する処理を行うだけの図13の処理において、S1304の「出力中のジョブ」が「現在、処理が中断している出力ジョブ」ということはできない。
また、段落【0119】には、「出力中断状態のジョブが有ると判断された場合とは、例えば、出力中に画像を形成するための用紙が無くなり出力中断しているジョブや、ジャムや、トナー切れなどの要因で、画像形成が出来ない状態で出力が中断しているジョブなどである。このようなジョブが有る場合、それらの中断要因を解除することで、出力が再開され、メモリの空き領域が増える可能性が有るので、ステップS1305、ステップS1302、ステップS1303、ステップS1304でループを形成して、出力が再開されるのを待つ。」と記載されており、ステップS1305、ステップS1302、ステップS1303、ステップS1304でループを形成するのは、ステップS1304で「いいえ」と、出力中のジョブで入力を完了したジョブが無いと判断した場合であるから、段落【0119】の記載を「そして、このS1304で「はい」にいくと、S1302へ移行してループを形成します。そして、このループの意味は、[0119]の如く、このような「出力中に画像を形成する為の用紙がなくなり出力中断しているジョブや、ジャムや、トナー切れなどの要因で、画像形成ができない状態で出力が中断しているジョブ」の中断要因が解除されることで印刷が再開される、これにより、空き容量の確保を図るものであります。」との主張の根拠とすることもできない。

6.むすび
以上のとおり、本願の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-21 
結審通知日 2008-02-26 
審決日 2008-03-10 
出願番号 特願平11-215366
審決分類 P 1 8・ 537- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千葉 輝久  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 脇岡 剛
加藤 恵一
発明の名称 画像入出力装置及び画像入出力方法  
代理人 吉澤 大輔  
代理人 野口 忠夫  
代理人 丹羽 宏之  

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