ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L |
---|---|
管理番号 | 1176737 |
審判番号 | 不服2005-7759 |
総通号数 | 102 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-06-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-04-28 |
確定日 | 2008-04-23 |
事件の表示 | 特願2000-398434「熱処理方法及びその装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月12日出願公開、特開2002-198322〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成12年12月27日の出願であって、平成17年3月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年4月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1ないし8に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)及び請求項2に係る発明(以下、「本願発明2」という。)は、その請求項1及び請求項2に記載されている事項により特定される以下のとおりのものである。 〈本願発明1〉 「【請求項1】 被処理物の一部またはその全体を加熱処理する工程において、被処理物の昇温速度が2×10^(4)?2×10^(6)℃/秒の範囲であることを特徴とする熱処理方法。」 〈本願発明2〉 「【請求項2】 被処理物の一部またはその全体を加熱処理する工程において、予め被処理物を所定温度まで予備加熱する工程と、該被処理物の昇温速度が2×10^(4)?2×10^(6)℃/秒の範囲で昇温する工程と、該予備加熱温度から室温までの温度範囲に降温する工程とを含むことを特徴とする熱処理方法。」 3.刊行物に記載の発明 (1)刊行物記載の発明 刊行物1:特開昭60-258928号公報 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭60-258928号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図9とともに以下の事項が記載されている。 「(3)直径の大きなドウパントインプラント半導体ウエーハを急速に焼きなますため加熱する方法において、 CWランプ手段と集光罐体を使用して、前記ウエーハを比較的均一に等温加熱する段階と、 パルス発光ランプ手段と集光罐体を使用して、前記等温加熱段階で前記半導体材料を昇温した後、前記ウエーハのドウパントインプラント表面区域を比較的均一に熱線束加熱する段階とを有する半導体ウエーハの加熱方法」(第1頁右下欄第5行ないし第14行) 「本発明は半導体ウエーハの加熱装置および方法に関する。」(第2頁左上欄第9行ないし第10行) 「この用途に利用する本発明の方法は、主にイオン-インプラント半導体ウエーハを焼なまして、イオンインプラント処理によつて生じたストレスを取り除き、インプラントドウパント(implant dopants)を完全に活性化し、固相エピタキシャルを再成長させて損傷した結晶格子構造を補修することができる。」(第2頁左上欄第16行ないし同頁右上欄第2行) 「本発明は、均一な等温加熱と熱線加熱との組み合わせにも関係している。例えば、等温加熱は、光学系空所内に配置した連続波(CW)放射源によって行われる。・・・・・・シリコンのウエーハが約800-1100℃の範囲の所定温度に達すると、第2の放射源、すなわち、高出力パルス発光ランプが点燈され、シリコンウエーハの表面温度を1200-1400℃(またはそれ以上)に速やかに昇温する。従って、ウエーハの表面は焼きなまされ欠陥が取り除かれる。」(第5頁左上欄第6行ないし第17行) 「ドウパントインプラント半導体ウエーハを急速に焼きなます第2の方法は、ウエーハの溶融点よりかなり低い所定温度までそうしたウエーハを均一に等温加熱し、その後でウエーハの(ドウパントインプラント処理を加える)上部表面区域を速やかに熱線束加熱し、次いでウエーハを冷却する工程を備えている。熱線束加熱(この用語は、本明細書の冒頭で特定されている)は、半導体材料の溶融点付近で行うことが望ましいが、第9図の中央領域にある立ち上がり部分で示されているように、シリコンの1410℃の溶融点に対しこれと同じ温度まで到達することはない。 さらに詳しく説明すると、第2の製法は、CW放射源によりドウパントインプラント半導体ウエーハを等温加熱する工程を備えている。・・・・・・シリコンウエーハが、800-1100℃のプログラム温度に到達すると、次にパルスランプの列へ大電力が供給され、ウエーハのドウパントインプラント表面の温度を1200-1400℃まで急速に高める。従って、ウエーハの表面域を焼きなまし、欠陥を取り除くことができる。・・・・・・ パルスランプ列のパルス発光時間は、5マイクロ秒から1000マイクロ秒にすることができる。」(第9頁左下欄12行ないし第10頁左上欄第8行) (ア)刊行物1において「次にパルスランプの列へ大電力が供給され、ウエーハのドウパントインプラント表面の温度を1200-1400℃まで急速に高める」際に、「パルスランプ列」が点燈することは明らかである。 (イ)刊行物1において「1200-1400℃まで急速に高め」られる「ウエーハのドウパントインプラント表面」が、「ドウパントインプラント半導体ウエーハの上部表面区域」のことであることは明らかである。 したがって、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物発明1」という。)が記載されている。 「ドウパントインプラント半導体ウエーハの上部表面区域を焼きなます工程を備えた加熱する方法において、前記焼きなます工程は、前記ドウパントインプラント半導体ウエーハの上部表面区域を、5マイクロ秒から1000マイクロ秒のパルス発光時間でパルスランプ列を点燈させ、800-1100℃から1200-1400℃まで温度を高める工程であることを特徴とする、加熱する方法。」 (ウ)また、図9より「パルスランプ列」を点灯させた後、「ドウパントインプラント半導体ウエーハ」の温度が、等温加熱によって加熱された温度よりも低い温度に降温されることは明らかである。 したがって、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物発明2」という。)も記載されている。 「ドウパントインプラント半導体ウエーハの上部表面区域を焼きなます工程を備えた加熱する方法において、前記焼きなます工程は、予め前記ドウパントインプラント半導体ウエーハを800-1100℃まで等温加熱する工程と、前記ドウパントインプラント半導体ウエーハの上部表面区域を、5マイクロ秒から1000マイクロ秒のパルス発光時間でパルスランプ列を点燈させ、800-1100℃から1200-1400℃まで温度を高める工程と、等温加熱によって加熱された温度よりも低い温度に降温する工程とを含むことを特徴とする加熱する方法。」 4.対比・判断 4-1.本願発明1について 4-1-1.対比 本願発明1と刊行物発明1とを対比する。 (ア)「焼きなます工程」において熱が加えられることは明らかであり、また、刊行物1の第2頁左上欄第16行ないし同頁右上欄第2行に記載されているように、「焼きなます」ことによって「イオンインプラント処理によつて生じたストレスを取り除き、インプラントドウパント(implant dopants)を完全に活性化し、固相エピタキシャルを再成長させて損傷した結晶格子構造を補修する」作用が生じるから、刊行物発明1の「焼きなます工程」及び「加熱する方法」は、本願発明1の「加熱処理する工程」及び「熱処理方法」に相当する。また、刊行物発明1の「ドウパントインプラント半導体ウエーハの上部表面区域」は本願発明1の「被処理物の一部」に相当するから、刊行物発明1の「ドウパントインプラント半導体ウエーハの上部表面区域を焼きなます工程」は、本願発明1の「被処理物の一部を加熱処理する工程」に相当する。 よって、本願発明1と刊行物発明1とは、 「被処理物の一部を加熱処理する工程を備えた熱処理方法。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 〈相違点1〉 本願発明1は「被処理物の一部またはその全体を加熱処理する工程」を備えるのに対し、刊行物発明1は「ドウパントインプラント半導体ウエーハの上部表面区域を焼きなます工程」を備える点。 〈相違点2〉 本願発明1は「被処理物の昇温速度が2×10^(4)?2×10^(6)℃/秒の範囲である」のに対し、刊行物発明1は「前記ドウパントインプラント半導体ウエーハの上部表面区域を、5マイクロ秒から1000マイクロ秒のパルス発光時間でパルスランプ列を点燈させ、800-1100℃から1200-1400℃まで温度を高める」ものであり、「パルスランプ列」の「パルス発光時間」及び「温度」の変化は特定されているものの、昇温速度について特定されていない点。 4-1-2.相違点の検討 以下、各相違点について検討する。 〈相違点1について〉 本願発明1の「被処理物の一部またはその全体を加熱処理する工程」は、「被処理物の一部を加熱処理する工程」と、「被処理物の全体を加熱処理する工程」とを択一的に表現したものであって、刊行物発明1の「ドウパントインプラント半導体ウエーハの上部表面区域を焼きなます工程」は、本願発明1の「被処理物の一部を加熱処理する工程」に相当するから、本願発明1の「被処理物の一部またはその全体を加熱処理する工程」と、刊行物発明1の「ドウパントインプラント半導体ウエーハの上部表面区域を焼きなます工程」とは、実質的に相違しない。 〈相違点2について〉 (ア)本願の発明の詳細な説明の0017段落の「フラッシュランプを使用した場合には予備加熱温度を400℃とし、400℃に到達後、パルスエネルギーを20J/cm^(2)、パルス幅2msecでフラッシュランプを照射した。フラッシュランプ照射後、予備加熱用の白熱ランプを消灯し降温を行った。なお、フラッシュランプのパルス数は1ショットとした。この場合、1000℃まで昇温したので、昇温速度は3×10^(5)℃/secになる。」との記載より、本願発明1の「昇温速度」が、昇温の前後の温度差をランプの照射時間で除して導出した値であることは明らかである。 (イ)一方、刊行物発明1は、「前記ドウパントインプラント半導体ウエーハの上部表面区域を、5マイクロ秒から1000マイクロ秒のパルス発光時間でパルスランプ列を点燈させ、800-1100℃から1200-1400℃まで温度を高める」ものであるから、その昇温の前後の温度差をランプによる照射時間で除した値は、1×10^(5)℃/秒([1200-1100]℃/1000×10^(-6)秒)ないし1.2×10^(8)℃/秒([1400-800]℃/5×10^(-6)秒)の範囲を有し、前記(ア)を参照すると、この範囲が刊行物発明1における「昇温速度」であると認められる。 (ウ)よって、刊行物発明1の「前記ドウパントインプラント半導体ウエーハの上部表面区域を、5マイクロ秒から1000マイクロ秒のパルス発光時間でパルスランプ列を点燈させ、800-1100℃から1200-1400℃まで温度を高める」ことは、「ドウパントインプラント半導体ウエーハの上部表面区域」の昇温速度が1×10^(5)℃/秒ないし1.2×10^(8)℃/秒の範囲であることであるから、刊行物発明1における「ドウパントインプラント半導体ウエーハの上部表面区域」の昇温速度は、本願発明1における「被処理物の昇温速度」と、1×10^(5)℃/秒ないし2×10^(6)℃/秒の範囲で重複する。 したがって、前記相違点2は実質的なものではない。 4-1-3.小むすび したがって、本願発明1は、刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。 4-2.本願発明2について 4-2-1.対比 本願発明2と刊行物発明2とを対比する。 (ア)「焼きなます工程」において熱が加えられることは明らかであり、また、刊行物1の第2頁左上欄第16行ないし同頁右上欄第2行に記載されているように、「焼きなます」ことによって「イオンインプラント処理によつて生じたストレスを取り除き、インプラントドウパント(implant dopants)を完全に活性化し、固相エピタキシャルを再成長させて損傷した結晶格子構造を補修する」作用が生じるから、刊行物発明2の「焼きなます工程」及び「加熱する方法」は、本願発明2の「加熱処理する工程」及び「熱処理方法」に相当する。また、刊行物発明2の「ドウパントインプラント半導体ウエーハの上部表面区域」は本願発明2の「被処理物の一部」に相当するから、刊行物発明2の「ドウパントインプラント半導体ウエーハの上部表面区域を焼きなます工程」は、本願発明2の「被処理物の一部を加熱処理する工程」に相当する。 (イ)刊行物発明2の「予め前記ドウパントインプラント半導体ウエーハを800-1100℃まで等温加熱する工程」は、「パルスランプ列」を点燈させる前に、前記「パルスランプ列」の点燈により高められる前の温度まで「ドウパントインプラント半導体ウエーハ」を加熱する工程であるから、本願発明2の「予め被処理物を所定温度まで予備加熱する工程」に相当する。 (ウ)刊行物発明2の「等温加熱によって加熱された温度よりも低い温度に降温する工程」において、格別な冷却手段を用いない限り、「ドウパントインプラント半導体ウエーハ」が室温より低い温度にならないことは明らかであるから、刊行物発明2の「等温加熱によって加熱された温度よりも低い温度に降温する工程」は、本願発明2の「該予備加熱温度から室温までの温度範囲に降温する工程」に相当する。 よって、本願発明2と刊行物発明2とは、 「被処理物の一部を加熱処理する工程において、予め被処理物を所定温度まで予備加熱する工程と、昇温する工程と、該予備加熱温度から室温までの温度範囲に降温する工程とを含む熱処理方法。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 〈相違点3〉 本願発明2は「被処理物の一部またはその全体を加熱処理する工程」を備えるのに対し、刊行物発明2は「ドウパントインプラント半導体ウエーハの上部表面区域を焼きなます工程」を備える点。 〈相違点4〉 本願発明2は「該被処理物の昇温速度が2×10^(4)?2×10^(6)℃/秒の範囲で昇温する」のに対し、刊行物発明2は「前記ドウパントインプラント半導体ウエーハの上部表面区域を、5マイクロ秒から1000マイクロ秒のパルス発光時間でパルスランプ列を点燈させ、800-1100℃から1200-1400℃まで温度を高める」ものであり、「パルスランプ列」の「パルス発光時間」及び「温度」の変化は特定されているものの、昇温速度について特定されていない点。 4-2-2.相違点の検討 以下、各相違点について検討する。 〈相違点3について〉 本願発明2の「被処理物の一部またはその全体を加熱処理する工程」は、「被処理物の一部を加熱処理する工程」と、「被処理物の全体を加熱処理する工程」とを択一的に表現したものであって、刊行物発明2の「ドウパントインプラント半導体ウエーハの上部表面区域を焼きなます工程」は、本願発明2の「被処理物の一部を加熱処理する工程」に相当するから、本願発明2の「被処理物の一部またはその全体を加熱処理する工程」と、刊行物発明2の「ドウパントインプラント半導体ウエーハの上部表面区域を焼きなます工程」とは、実質的に相違しない。 〈相違点4について〉 (ア)本願の発明の詳細な説明の0017段落の「フラッシュランプを使用した場合には予備加熱温度を400℃とし、400℃に到達後、パルスエネルギーを20J/cm^(2)、パルス幅2msecでフラッシュランプを照射した。フラッシュランプ照射後、予備加熱用の白熱ランプを消灯し降温を行った。なお、フラッシュランプのパルス数は1ショットとした。この場合、1000℃まで昇温したので、昇温速度は3×10^(5)℃/secになる。」との記載より、本願発明2の「昇温速度」が、昇温の前後の温度差をランプの照射時間で除して導出した値であることは明らかである。 (イ)一方、刊行物発明2は、「前記ドウパントインプラント半導体ウエーハの上部表面区域を、5マイクロ秒から1000マイクロ秒のパルス発光時間でパルスランプ列を点燈させ、800-1100℃から1200-1400℃まで温度を高める」ものであるから、その昇温の前後の温度差をランプによる照射時間で除した値は、1×10^(5)℃/秒([1200-1100]℃/1000×10^(-6)秒)ないし1.2×10^(8)℃/秒([1400-800]℃/5×10^(-6)秒)の範囲を有し、前記(ア)を参照すると、この範囲が刊行物発明2における「昇温速度」であると認められる。 (ウ)よって、刊行物発明2の「前記ドウパントインプラント半導体ウエーハの上部表面区域を、5マイクロ秒から1000マイクロ秒のパルス発光時間でパルスランプ列を点燈させ、800-1100℃から1200-1400℃まで温度を高める」ことは、「ドウパントインプラント半導体ウエーハの上部表面区域」の昇温速度が1×10^(5)℃/秒ないし1.2×10^(8)℃/秒の範囲で昇温することであるから、刊行物発明2における「ドウパントインプラント半導体ウエーハの上部表面区域」の昇温速度は、本願発明2における「被処理物の昇温速度」と、1×10^(5)℃/秒ないし2×10^(6)℃/秒の範囲で重複する。 したがって、前記相違点4は実質的なものではない。 4-2-3.小むすび したがって、本願発明2は、刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願は、請求項3ないし8に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-02-06 |
結審通知日 | 2008-02-12 |
審決日 | 2008-02-28 |
出願番号 | 特願2000-398434(P2000-398434) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(H01L)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮崎 園子 |
特許庁審判長 |
河合 章 |
特許庁審判官 |
齋藤 恭一 棚田 一也 |
発明の名称 | 熱処理方法及びその装置 |
代理人 | 五十畑 勉男 |