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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1177214
審判番号 不服2005-2803  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-17 
確定日 2008-05-08 
事件の表示 平成 5年特許願第197326号「α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオン酸/カイニン酸型レセプター応答調節剤及び脳虚血保護剤」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 2月28日出願公開、特開平 7- 53367〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成5年8月9日の出願であって、平成17年1月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年2月17日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。そして、本願の請求項4、5に係る発明は、平成16年8月18日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項4、5に記載された次のとおりのものと認める。

「【請求項4】ドコサヘキサエン酸、又はリン脂質、トリグリセリド、塩、アミド及びエステルから選ばれるドコサヘキサエン酸の誘導体のうち少なくとも一種以上を有効成分として含有する、脳虚血後の細胞死を防護するための脳虚血保護剤。」(以下、「本願発明1」という。)

「【請求項5】ドコサヘキサエン酸、又はリン脂質、トリグリセリド、塩、アミド及びエステルから選ばれるドコサヘキサエン酸の誘導体のうち少なくとも一種以上を有効成分として含有する、脳梗塞後の後遺症を軽減するための脳虚血保護剤。」(以下、「本願発明2」という。)

2.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願日前に頒布された、特開昭57-35512号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。

(ア)「(all-Z)-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸並びに該酸の薬理的に許容される塩、エステル、及びアミドから選ばれた少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とする血栓症予防及び治療剤」(第1頁左下欄第4?8行特許請求の範囲)

(イ)「血栓症とは、生体の心臓又は血管内において血小板が凝集し血液が凝固して生じる凝塊即ち血栓が形成される病的現象であり、この血栓の形成は、血管腔の狭窄、閉塞をきたし、心臓、脳、肺等の主要臓器に虚血性病変や梗塞を生じ、之等臓器の機能障害を招来して、臨床的に重大な疾患を惹起する。」(第1頁左下欄第11行?右下欄第2行)

(ウ)「本発明の血栓症予防及び治療剤は、上記特定の高度不飽和脂肪酸及びその誘導体を有効成分として用いることに基づいて、深部静脈血栓症、四肢動脈血栓、塞栓症、肺塞栓症、網膜静脈血栓症、冠動脈血栓症、脳血栓症等の各種血栓症及び之等に起因する心筋梗塞、急性心不全、卒中発作等の予防及び治療に優れた効果を奏し得る。」(第2頁左下欄第7?13行)

(エ)「実験例5
この実験はホルンストラ・・・の方法・・・に準じて行った。・・・
ウイスター系ラット・・・腹部大動脈に循環路を作成し・・・その体外循環路にフィルター・・・を取り付ける。・・・フィルター前部よりADP1μg/ml生理食塩水溶液を約10秒を要して投与して、血小板凝集を生じさせる。フィルター前後の圧力を測定し、その差を算出して凝集度の指標とする。ADPを30分毎に3回投与後上記圧差を算出しコントロールの凝集度を求め、引き続き、供試化合物として実験例1で用いたと同じ(all-Z)-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸のアラビアゴム懸濁液を有効成分量100mg/kgで経口投与する。この経口投与の1時間後に再度フィルター前後の圧差を調べ凝集度を求め、これを上記コントロールの凝集度と比較して、供試化合物のADP誘発血小板凝集に対する抑制率を求める。その結果上記本発明化合物は、コントロールに対し平均20%血小板凝集を抑制することが判った。」(第6頁左下欄第2行?右下欄下から第2行)

(オ)「本発明の血栓症予防及び治療剤は、その使用に際し特に制限はなく各種形態に応じた方法で投与される。例えば、錠剤・・・の場合には経口投与され、注射剤の場合は・・・静脈内投与され、製剤の投与量は、投与方法、患者の症状等に応じて適宜に選択され、一般的には有効成分化合物を遊離酸換算重量で10?50mg/kg・day程度・・・これは通常1日に3?4回に分けて投与される。」(第4頁右上欄第6行?左下欄第4行)

3.対比・判断
引用例には、「(all-Z)-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸並びに該酸の薬理的に許容される塩、エステル、及びアミドから選ばれた少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とする血栓症予防及び治療剤」(以下、「引用例発明」という。)が記載されている。[上記(ア)]
(1)本願発明1について
本願発明1と引用例発明とを対比すると、引用例に記載された(all-Z)-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸[前記(ア)]は、ドコサヘキサエン酸の不飽和結合の位置及び立体配置が特定されたものであるから、両者は、ドコサヘキサエン酸を含有する薬剤である点で一致し、本願発明1の薬剤が脳虚血後の細胞死を防護するための脳虚血保護剤であるのに対し、引用例発明では、血栓症の予防及び治療剤である点で一応相違する。
そこで、この相違点について、以下に検討する。
引用例には、血栓症とは、生体の血管内において血小板が凝集し血液が凝固して生じる凝塊即ち血栓が形成される病的現象であり、この血栓の形成は、血管腔の狭窄、閉塞をきたし、脳に虚血性病変や梗塞を生じ、機能障害を招来して、臨床的に重大な疾患を惹起するものであること、引用例発明の血栓症の予防及び治療剤は、脳血栓症の予防及び治療に優れた効果を奏し得ること[前記(イ)(ウ)]、そして、実験例5として、ラットに血小板凝集を生じさせた後に、ドコサヘキサエン酸を投与することによって、血小板凝集抑制効果が得られることが記載されている。ここで、血小板凝集を生じさせた後とは、虚血性病変又は梗塞を生じさせた後ということに相当するから、実施例5は、虚血性病変又は梗塞が起こった後の治療のための薬剤の動物実験に相当する。
また、血栓症の予防及び治療剤の投与方法は、経口投与、注射剤など、適宜に選択され[前記(オ)]、投与量は有効成分化合物を遊離酸換算重量で、10?50mg/kg・day程度であるから、60Kg成人1日量として、およそ600?3000mg程度に相当し、これを1日3?4回に分けて投与するというものである。これに対し、本願明細書には、臨床投与量は経口投与の場合、成人に対し、1日量300?1800mgを、1日2?3回に分けて投与することが好ましいと記載されているから、両者間に、投与方法、投与量の点で実質的な違いは認められない。
そして、血栓症が、脳に虚血性病変を生じさせ、そのために細胞死を引き起こすことはよく知られていることであるので、引用例には、「血栓症の予防及び治療剤」と記載されているものの、実質的には、脳虚血後の細胞死を防護するための脳虚血保護剤が記載されていると認められる。
そうすると、発明の一応の相違点とした前記構成は、実質的な相違点ではない。
よって、本願発明1は、引用例に記載された発明と実質的に同一である。

(2)本願発明2について
本願発明2と引用例発明とを対比すると、引用例に記載された(all-Z)-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸[前記(ア)]は、ドコサヘキサエン酸の不飽和結合の位置及び立体配置が特定されたものであるから、両者は、ドコサヘキサエン酸を含有する剤である点で一致し、本願発明2が脳梗塞後の後遺症を軽減するための脳虚血保護剤であるのに対し、引用例発明では、血栓症の予防及び治療剤である点で一応相違する。
そこで、この相違点について、以下に検討する。
引用例には、血栓症とは、生体の血管内において血小板が凝集し血液が凝固して生じる凝塊即ち血栓が形成される病的現象であり、この血栓の形成は、血管腔の狭窄、閉塞をきたし、脳に虚血性病変や梗塞を生じ、機能障害を招来して、臨床的に重大な疾患を惹起するものであること、引用例発明の血栓症の予防及び治療剤は、脳血栓症の予防及び治療に優れた効果を奏し得ること[前記(イ)(ウ)]、そして、実験例5として、ラットに血小板凝集を生じさせた後に、ドコサヘキサエン酸を投与することによって、血小板凝集抑制効果が得られることが記載されている。ここで、血小板凝集を生じさせた後とは、虚血性病変又は梗塞を生じさせた後ということに相当するから、実施例5は、虚血性病変又は梗塞が起こった後の治療のための薬剤の動物実験に相当する。
また、血栓症の予防及び治療剤の投与方法は、経口投与、注射剤など、適宜に選択され[前記(オ)]、投与量は有効成分化合物を遊離酸換算重量で、10?50mg/kg・day程度であるから、60Kg成人1日量として、およそ600?3000mg程度に相当し、これを1日3?4回に分けて投与するというものである。これに対し、本願明細書には、臨床投与量は経口投与の場合、成人に対し、1日量300?1800mgを、1日2?3回に分けて投与することが好ましいと記載されているから、両者間に、投与方法、投与量の点で実質的な違いは認められない。
そして、引用例に記載された、脳の虚血性病変や梗塞によって生じた機能障害は、脳梗塞による後遺症に相当するから、引用例には、血栓症の予防及び治療剤の態様として、脳梗塞による後遺症を軽減するための脳虚血保護剤が実質的に記載されていると認められる。
そうすると、発明の一応の相違点とした前記構成は、実質的な相違点とし得るものではない。
よって、本願発明2は、引用例に記載された発明と実質的に同一である。

4.むすび
したがって、本願請求項4及び請求項5に係る発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-04 
結審通知日 2008-03-11 
審決日 2008-03-24 
出願番号 特願平5-197326
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 明子  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 弘實 謙二
谷口 博
発明の名称 α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオン酸/カイニン酸型レセプター応答調節剤及び脳虚血保護剤  
代理人 石井 貞次  
代理人 島村 直己  
代理人 平木 祐輔  
代理人 藤田 節  

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