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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1177481
審判番号 不服2006-9461  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-11 
確定日 2008-05-07 
事件の表示 平成 8年特許願第198358号「具材入り容器の製造方法および具材入り容器」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 1月27日出願公開、特開平10- 24962〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続の経緯
本件は、平成8年7月8日の出願であって、平成18年4月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月8日付けで手続補正がなされたものである。

2. 補正の適否
平成18年6月8日付け手続補正は、補正前の請求項1を削除するものである。したがって、当該補正は平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。

3. 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成18年2月20日付け及び平成18年6月8日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】 予め具材を封入し一部開封して流動物を注入し再封可能とした容器であって、該容器を容器本体と該容器本体の上縁部に嵌合する成形品の蓋とで構成され、前記蓋の一部に一部不連続な環状切れ目により形成する開口部が設けられるとともに、前記蓋上面の前記開口部を覆う位置に容易に引き剥がし可能かつ再封可能なようにラベルが接着され、前記蓋と前記容器本体が蓋嵌合部にて前記ラベルの部分を残してシュリンクフィルムにより収縮包装されて固定されていて、前記シュリンクフィルムを外さずに前記ラベルを剥がして流動物を注入し再封可能であることを特徴とする具材入り容器。」

4. 刊行物の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平8-40470号公報(以下「刊行物」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

(a)【特許請求の範囲】
【請求項1】 発砲スチロール等にて形成された容器本体にカバーを蓋装し、該容器本体内にインスタントラーメン及びスープや具を充填した袋体等を収容して該カバーにて被蔽した食品収容器において、該カバーの中央部位をU字状等に切り込んで該カバーに対して開閉自在な開閉片を形成し、該開閉片の上面及び前記カバーの該開閉片周縁部に反覆して接着できる接着剤にてシールを接着し、該シールにて開閉自在な開閉片を被蔽したことを特徴とする食品収容器。
(b)【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、食品収容器に関するものであり、特に、インスタントラーメン等の食品収容器の蓋体に関するものである。
(c)【0007】
【作用】この発明は、例えば、インスタントラーメンを食せんとするときには、先ず、シールの一側部を上方へ引き上げる。このときは、該シールがカバーより剥離され、該シールに接着されている開閉片が該シールに連動する。従って、前記カバーが開放され、該開放部より湯を注入する。
(d)【0008】そして、再びシールにてカバーを被蔽して接着すれば、該シールの接着剤が反覆して接着可能であるため、隙間が生じることがなく確実にインスタントラーメン等を温めることができると共に、容易に、この蓋の開閉操作をなすことができる。
(e)【0009】
【実施例】以下、この発明の一実施例を図1乃至図4に従って説明する。図において、10は食品収容器であり、該食品収容器10は、容器本体11内にインスタントラーメン12を収容してある。該容器本体11上面にはカバー13が強力な接着剤にて接着されている。
(f)【0010】また、該カバー13の中心部にはU字状に切り込んで開閉片14が形成されている。該開閉片14は一側部をカバー13に連結されて開閉自在に形成されている。即ち、該連結部を支点に回動自在に形成するごとく開閉片14は開閉する。また、該開閉片14の上面及び該開閉片14の周縁部位上面にシール15を接着して開閉片14を被蔽してある。該シール15は反覆して接着できる接着剤16にて接着されている。更に、前記シール15の一側部には把片17を突設してある。
(g)【0011】尚、前記切り込みや開閉片14及びシール15の形状はこれに限定せられるべきではなく、円形等の他の形状にて形成することができるのは当然である。一方、容器本体11の底面には凹設部18が形成され、更に、該凹設部18にはスープや具を被蔽した袋体19,19を収容してある。そして、蓋体20にて該凹設部18を被蔽して袋体19,19を収容している。該蓋体20は剥離可能な接着剤にて周縁部を容器本体11底面の周縁部に接着されている。
(h)【0012】而して、食品収容器10のインスタントラーメン12を調理する際には、先ず、容器本体11の底面に接着された蓋体20を剥離する。このときは、容器本体11の底面に収容されていた袋体19,19が露出されて容易に該袋体19,19を取り出すことができる。また、該袋体19,19はインスタントラーメン12と接触することはないので、油等が該袋体19,19に付着することはない。
(i)【0013】そして、該袋体19,19を切開すると共に、シール15の把片17を把持して該シール15の一側部を上方へ剥離する。このときは、前記開閉片14がシール15に接着されているため、該開閉14はカバー13との連結部位を回動支点として上方へ回動し、該カバー13に解放部がら形成される。そこで、該開放部よりスープや具を投下した後、該解放部から湯を注ぎ、再び、シール15をカバー13に接着する。このときは、容器本体11は完全に密封され、食品の保温が促進される。
(j)【0015】
【発明の効果】この発明は上記一実施例に詳述したように、インスタントラーメン等の食品を食する際に、カバー上に接着されたシールを剥離して開閉片を開放し、該開放部より湯を注入する。そして、該シールを再びカバーに接着して該開閉片を被蔽することができるので、隙間が生じて放熱することを防止して確実に食品を温めることができる。

以上の記載、及び第1図ないし第5図の記載から、刊行物には次の発明が記載されているものと認められる。
「予めインスタントラーメン12を封入し一部開封して湯を注入し再封可能とした食品収容器であって、該食品収容器を容器本体11とカバー13とで構成され、前記カバー13の一部に一部不連続な切り込みにより形成する開口片14が設けられるとともに、前記カバー13上面の前記開口片14を覆う位置に反覆して接着できる接着剤にてシール16が接着されている食品収容器。」

5. 対比
本願発明と刊行物に記載の発明とを対比すると、刊行物に記載の発明の「インスタントラーメン12」、「湯」、「容器本体11」、「カバー13」、「切り込み」、「開口片14」及び「食品収容器」は、それぞれ本願発明の「具材」、「流動物」、「容器本体」、「蓋」、「切れ目」、「開口部」及び「具材入り容器」に相当する。
また、刊行物に記載の発明の切り込みは、摘示事項(g)に「前記切り込み・・・の形状はこれに限定せられるべきではなく、円形等の他の形状にて形成することができるのは当然である。」と記載されていることから、切り込みの形状は円形の形状を包含するものであり、円形の形状の切り込みは、本願発明の環状の形状の切れ目に相当する。
また、刊行物1に記載の発明の、反覆して接着できる接着剤にてシール16を接着することの技術的意義ないし機能は、刊行物1の摘示事項(d)から「再びシールにてカバーを被蔽して接着すれば、該シールの接着剤が反覆して接着可能であるため、隙間が生じることがなく確実にインスタントラーメン等を温めることができると共に、容易に、この蓋の開閉操作をなすことができる。」ことである。
それに対し、本願発明の容易に引き剥がし可能かつ再封可能なようにラベルを接着することの技術的意義ないし機能は、本願明細書【0008】等に記載の「容器のラベルを剥がすと、蓋は環状切れ目の内側がラベルに付いて持ち上がり、開口部が開く。そして、この開口部を利用してディスペンサーから流動物を注入することができる。・・・また、流動物を注入した後、ラベルを元に戻して押えると、開口部は再び封止される。・・・ラベルで開口部の密封性を十分維持できる。」ことである。
したがって、刊行物1に記載の発明の反覆して接着できる接着剤にてシールを接着することと、本願発明の容易に引き剥がし可能かつ再封可能なようにラベルを接着することとは、その技術的意義ないし機能の点からみて共通するものであり、刊行物1に記載の発明の反覆して接着できる接着剤にてシール16を接着することは、本願発明の容易に引き剥がし可能かつ再封可能なようにラベルを接着することに相当する。
そうすると、両者は、
「予め具材を封入し一部開封して流動物を注入し再封可能とした容器であって、該容器を容器本体と蓋とで構成され、前記蓋の一部に一部不連続な環状切れ目により形成する開口部が設けられるとともに、前記蓋上面の前記開口部を覆う位置に容易に引き剥がし可能かつ再封可能なようにラベルが接着されている具材入り容器。」
である点で一致し、次の2点で相違している。

[相違点1]
本願発明は、容器が容器本体と該容器本体の上縁部に嵌合する成形品の蓋とで構成されているのに対し、刊行物に記載の発明は、容器が容器本体11と該容器本体11の上面に強力な接着剤にて接着されるカバー13とで構成されている点。

[相違点2]
本願発明は、蓋と容器本体が蓋嵌合部にてラベルの部分を残してシュリンクフィルムにより収縮包装されて固定されていて、該シュリンクフィルムを外さずに該ラベルを剥がして流動物を注入し再封可能であるのに対し、刊行物に記載の発明は、そのようなシュリンクフィルムにより収縮包装されることが明記されていない点

6. 当審の判断
上記相違点1,2について検討する。
[相違点1について]
食品を収容する容器の技術分野において、容器本体と蓋の構成については、容器本体と該容器本体の上面に接着剤にて蓋が接着する構成、すなわち、接着形式の蓋が周知の構成であることに加えて、容器本体と該容器本体の上縁部に嵌合する成形品の蓋で構成すること、すなわち、嵌合形式の蓋も、例えば、実願昭57-48282号(実開昭58-151555号)のマイクロフィルムに記載の容器本体4に嵌着する蓋1、特開昭52-101196号公報に記載の容器1に嵌合する蓋体4等にみられるように、この出願前から広く採用されている周知の構成である。
したがって、容器本体と蓋の構成については、接着形式の蓋であっても、嵌合形式の蓋であっても、いずれの態様も当該分野において広く採用されている形式であるから、結局のところ、いずれの態様を採用するかは当業者が設計上適宜採用し得る程度の事項と解するのが相当である。
そうしてみると、刊行物に記載の発明において、接着形式の蓋に代えて、嵌合形式の蓋を採用して、上記相違点1に係る本願発明のように構成することは、通常の設計事項から当業者が容易に想到し得ることである。

[相違点2について]
食品を収容する容器の分野において、容器が既に開封されたものかどうかを判別可能として、いたずら等の悪用を防止することは、一般的技術課題であり、当該課題に対処するために、容器にシュリンクフィルムの収縮包装を施すことは、この出願前から広く採用されている周知技術である。
また、このようなシュリンクフィルムの収縮包装を採用する際に、容器全体をフィルムで包装することは、普通に考えられることであるが、コストを削減するためにフィルム材料を節約すること等を考慮して、必要とされる部位のみにシュリンクフィルムの収縮包装を試みることも、例えば、実願昭47-110493号(実開昭49-067882号)のマイクロフィルム(以下「周知例1」という。)第5頁1行?同9行に記載の「本願において蓋6をした後熱収縮フィルム11を蓋の周辺のみに接着することは、止着片を押え蓋の糊付してない周辺8を押える目的をもつものであると共に、容器の内面にポリエチレン被膜が形成してあるため、通気が完全に遮断され必要以上の例えば全面密封を必要としないこと、並びに熱収縮フィルムの節減を図ったものであると同時に容器を容器に開くことができるようにした目的をもつものである。」にみられるように、この出願前から広く行われていることである。
容器が既に開封されたものかどうかを判別可能とするには、開封する部分、すなわち、容器本体と蓋の接続部位のみにシュリンク包装することが効率的であることは、ごく自然に考えられることである。
そして、刊行物に記載の発明の容器は、その容器に収容する収容物が食品であることから、いたずら等の悪用を防止するために、容器が開封されたものかどうかを判別可能とすることは当然内在する課題であるといえる。
そうすると、刊行物に記載の発明に、上記周知例1に記載の熱収縮フィルム11を適用することは、刊行物に記載の発明と上記周知例1に記載の技術が共に同一分野に属し、且つ食品収容容器である刊行物に記載の発明における技術課題から当業者が容易に想到し得ることである。
さらに、上記周知例1に記載の熱収縮フィルム11は、第5頁1行?同9行に記載の「本願において蓋6をした後熱収縮フィルム11を蓋の周辺のみに接着すること・・・」に加えて、第5図の図示内容から当該熱収縮フィルム11が、蓋の上面部分には接着されていないことが看取できる。
したがって、刊行物1に記載の発明に、上記周知例1に記載の後熱収縮フィルム11を適用すれば、刊行物1に記載の発明の蓋のシール16部分、すなわち、ラベルを含む上面部分はフィルムによって覆われることはなく、結果的に、フィルムを外さずにラベルを剥がして流動物を注入し再封可能にするという上記相違点2に係る本願発明の構成が導き出されることになる。

また、注湯口を有する蓋からなる具入り容器において、蓋の周縁部分のみを封緘することが、例えば、実公昭39-6486号公報(以下「周知例2」という。)に記載の封緘用環状体5にみられるように、この出願前に周知の技術である。
なお、該封緘用環状体5については、その封緘材がシュリンクフィルムであることを、上記周知例2は特に明示していないが、包装容器の分野においてフィルム材によって容器を封緘させることが技術常識であり、該封緘用環状体5がシュリンクフィルムであることを排除している記載も上記周知例2に特段認められないことから、該封緘用環状体5にシュリンクフィルムを見いだすことは当業者にとって格別困難な事項ではない。
さらに、上記周知例2では、第1図及び第5図の図示内容から、封緘用環状体5が透明皮膜3、すなわち、蓋に相当する部材の上面部分に対して皮膜されていないことが看取できる。
したがって、上記周知例2では、封緘用環状体5を外さずに注湯口6から注湯し、且つ該注湯口6を再封可能としていることが技術的に明らかであり、この技術事項は、シュリンクフィルムを外さずにラベルを剥がして流動物を注入し再封可能とする本願発明の特定事項に相当するものである。
そうすると、刊行物に記載の発明に、上記周知例2に記載の封緘用環状体を適用することは、刊行物に記載の発明と上記周知例2に記載の技術が共に同一分野に属し、且つ食品収容容器である刊行物に記載の発明における技術課題から当業者が容易に想到し得ることであり、適用する際に該封緘用環状体にシュリンクフィルムを選択することも格別創意を要するものではない。

以上のとおりであるから、上記相違点2に係る本願発明の構成は、食品収容容器である刊行物に記載の発明における技術課題、及び当該技術分野における周知例1又は2に記載の周知技術から当業者が容易に想到し得ることである。

そして、本願発明の効果も刊行物に記載の発明及び周知の技術事項から当業者が容易に予測し得たものであり、格別顕著なものとはいえない。

7. むすび
よって、本願発明は、刊行物に記載の発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-05 
結審通知日 2008-03-11 
審決日 2008-03-24 
出願番号 特願平8-198358
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 窪田 治彦  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 田中 玲子
関口 勇
発明の名称 具材入り容器の製造方法および具材入り容器  
代理人 金山 聡  

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