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審決分類 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 A41D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A41D
管理番号 1178456
審判番号 不服2006-1991  
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-03 
確定日 2008-05-22 
事件の表示 特願2000-126198「衣服の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月31日出願公開、特開2001-303337〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1] 手続の経緯
本願は、平成12年4月26日の出願であって、平成17年12月26日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年2月3日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

[2] 平成18年2月3日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年2月3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「生地の厚み方向に蛇腹のように折りぐせを設けて、衣服に伸縮性を備える方法であって、化学繊維の生地を用いて縫製して縫製体を作り、次いで該縫製体の略直交する2方向にそれぞれ複数の糸を通し、次いで平行する糸の間隔を縮めることにより該縫製体を略直交する両方向にしぼり、しぼられた状態で高温の蒸気を吹き付けて折りぐせを付け、その後、前記の糸を抜くことを特徴とする衣服の製造方法。」と補正された。

2.補正の目的、特許請求の範囲の拡張、変更及び新規事項の追加の有無
本件補正は、(イ)特許請求の範囲の請求項1を削除するとともに、(ロ)「請求項1記載の衣服を製造する方法であって」という記載を、「生地の厚み方向に蛇腹のように折りぐせを設けて、衣服に伸縮性を備える方法であって」と補正し、実質的に「前記折りぐせが、前記衣服の生地の厚み方向に波状に形成されると共に、前記衣服の全表面の略直交する2方向に設けられている」という記載を削除するものである。
ここで、上記本件補正の(イ)は、特許請求の範囲の請求項を削除するものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項1号に規定する請求項の削除に該当する。
また、上記本件補正の(ロ)は、特許請求の範囲の請求項1を削除し、請求項2を独立形式にすることによって、請求項1としたものであるが、実質的に、平成17年1月24日付け手続補正書の請求項1における「前記折りぐせが、前記衣服の生地の厚み方向に波状に形成されると共に、前記衣服の全表面の略直交する2方向に設けられている」という記載を削除し、「生地の厚み方向に蛇腹のように折りぐせを設けて、衣服に伸縮性を備える」という記載を追加するものである。
ここで、衣服の折りぐせが、「伸縮性を備える」ことは自明のことであるが、補正後の「蛇腹のように折りぐせを設ける」という記載が、補正前の「折りぐせが、前記衣服の生地の厚み方向に波状に形成されると共に、前記衣服の全表面の略直交する2方向に設け」るという記載を減縮したものであるとは認められない。また、当該補正が、誤記又は誤訳の訂正であるとも、明りょうでない記載の釈明であるとも認められない。
そうすると、この補正は、特許法第17条の2第4項1号から4号の規定のいずれの事項を目的とするものでもない。

3.むすび
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第4項の規定に適合しないので、特許法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により、却下する。

[3] 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1、2に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 化学繊維からなる縫製体の略直交する2方向から糸を通し、前記糸の間隔を縮めることにより折りぐせが設けられる衣服であって、前記折りぐせが、前記衣服の生地の厚み方向に波状に形成されると共に、前記衣服の全表面の略直交する2方向に設けられていることを特徴とする衣服。」(以下、「本願発明1」という。)
「【請求項2】 請求項1記載の衣服を製造する方法であって、化学繊維の生地を用いて縫製して縫製体を作り、次いで該縫製体の略直交する2方向にそれぞれ複数の糸を通し、次いで平行する糸の間隔を縮めることにより該縫製体を略直交する両方向にしぼり、しぼられた状態で高温の蒸気を吹き付けて折りぐせを付け、その後、前記の糸を抜くことを特徴とする衣服の製造方法。」(以下、「本願発明2」という。)

[4] 引用例の記載事項
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の前である平成10年6月23日に頒布された特開平10-168747号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
a.「熱収縮性を有するシートに、熱可塑性を有する生地、あるいは熱可塑性を有する生地より構成される、製品の製造過程における半製品を重ね合わせた積層体を得る工程と、該積層体を、水溶性の糸により所望のパターンに縫製する工程と、この縫製がなされた積層体を加熱する工程と、湯浴を行い、上記水溶性の糸を溶解し、熱収縮性を有するシートと生地、あるいは半製品とを剥離する工程と、乾燥工程とを順次行うことを特徴とするグラフィックプリーツの作製方法。」(2頁1欄【特許請求の範囲】【請求項1】)
b.「【0001】
【発明の属する分野】本発明は、布地に所望のパターンを浮き上がらせたり、沈ませたりすることによりソフトな凹凸模様のプリーツを形成するようにした新規なグラフィックプリーツの作成方法に係わる。
【0002】
【従来の技術】一般に、衣服におけるプリーツの形成は、製品あるいは半製品に加工する前の生地の状態において、プリーツの形成がされるのが通常である。…」(2頁1欄段落【0001】?【0002】)
c.「【0003】従来における生地にプリーツを形成する方法を、図10を参照して以下に示す。図10に示すように、従来においては、第1の紙11と、第2の紙12との間に生地13を挟み、全体として、これらが3重に重なった生地重ね20を形成する。
【0004】次に、180℃?200℃程度に加熱され、例えば櫛状の刃14が軸方向に沿って配置された加熱ローラー15の押引運動により、上記生地重ね20を、最終的に得られるプリーツの形状に従って、櫛状の刃14を押引運動させ、生地重ね20を折り込む。このとき、折り込むピッチ、折り込み量を変化させることにより、同一ピッチ、同一折り込み量の繰り返しによる単純な形状のプリーツが作製される。
【0005】上述のようにして、生地重ね20を折り込んだ後、これをロール状に巻き取り、170℃?200℃の蒸気により加熱する。その後、真空加熱を行い、さらに蒸気加熱を行う。この作業を数回繰り返す。
【0006】上述のようにすることにより、生地に、所定の形状のプリーツを定着させることができ、その後、第1の紙11と、第2の紙12と、生地13とを剥離することにより、最終的に得られるプリーツの形成がなされた生地を得ることができる。」(2頁2欄段落【0003】?【0006】)
d.「【0008】また、上述の方法による場合、半製品もしくは製品の状態でプリーツ加工を行うことは、半製品もしくは製品に縫い代が存在していたり、ダーツ等がある場合には、プリーツ加工は困難であり、また、半製品や製品に型崩れを招くという加工上の問題点がある。」(段落【0008】)
e.「【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、熱収縮性を有するシートに、熱可塑性を有する生地、あるいは熱可塑性を有する生地より構成される、製品の製造過程における半製品を重ね合わせた積層体を得、この積層体を、水溶性の糸により所望のパターンに縫製し、縫製がなされた積層体を加熱し、湯浴を行い、水溶性の糸を溶解し、熱収縮性を有するシートと生地、あるいは半製品とを剥離し、乾燥させることにより、生地の浮き沈みにより種々の模様を形成した、グラフィックプリーツを作製する。」(2頁2欄?3頁3欄段落【0010】)
f.「【0012】
【発明の実施の形態】 以下に、本発明の実施例について、図面に基づいて説明する。先ず、図1に示すように、例えば、ポリ塩化ビニル系合成繊維よりなる熱収縮性を有するシート(テビロン:テイジン社製商品名)1上に、熱可塑性を有する繊維よりなる生地もしくは半製品2、例えばポリエステル製布を重ねて積層体100を構成させ、テープ等の固定手段3により固定する。この固定手段3は、テープ等に限定されるものではなく、生地(半製品)2をシート1に縫いつけたり、のりによって接着させたりすることもできる。
【0013】次に、図2に示すように、上記のように生地もしくは半製品2を重ねたシート1、すなわち積層体100を、ミシン台、あるいは刺繍機台4に固定する。
【0014】そして、図3に示すように、上糸と、下糸の両方、あるいはいずれか一方に水溶性の糸5、例えばポリビニルアルコールよりなる糸(ニチビソルブロン:(株)儘田産業社製商品名)を用いて、予めコンピューターで制御された所望の模様(図3においては、チェック模様)にミシンをかけたり、ジャガード刺繍を行ったりして、ミシン加工による積層体6を作製する。
【0015】次に、図4に示すように、上記のようにして作製したミシン加工による積層体6を、例えば不織布による保護布8上に重ね、その後、生地(半製品)2が痛まない程度、例えば170℃?200℃程度に加熱したローラー7aおよび7b間に挟み込むことにより数十秒間加熱する。この加熱時間は、生地(半製品)の性質、厚さによって調節する。
【0016】また、このように加熱を行う場合、ローラー7aおよび7b間に挟み込む方法によらずに、170℃?200℃程度の蒸気により加熱を行う方法によってもよい。
【0017】上述したように、熱収縮性を有するシート1に、熱可塑性を有する生地、あるいは半製品2を重ね合わせて縫い合わせて両者を特定部分で相互に固定し、ミシン加工による積層体6とし、この状態で加熱を行う。このとき熱収縮性を有するシート1に収縮が発生することから、縫い目によって固定されている熱可塑性を有する生地2等にも強制的に収縮が生じ、縫い目を稜線あるいは谷線とする凹凸やシワが転写して固定される。
【0018】次に、図5に示すように、水槽30中に、例えば70℃程度に加熱した湯で満たし、その中に上記熱収縮したミシン加工による積層体6を浸し、充分に湯浴させる。このように、熱収縮したミシン加工による積層体6を湯浴させることにより、シート1と、生地(半製品)2とを互いに固定していた水溶性の糸5を溶解する。そして、シート1と、生地(半製品)2とを剥離する。
【0019】シート1から剥離した生地(半製品)2は、その後、乾燥させ、形を整えることにより、図6に示すように、生地の浮き沈みにより模様を形成した目的とするグラフィックプリーツを得ることができる。」(段落【0012】?【0019】)
g.「【0032】
【発明の効果】本発明によれば、布地に浮き沈みによる模様を形成させることができ、また、ミシンやジャガード刺繍を施した針の穴により、花型、動物型、文字その他の幾何学的など、イレギュラーな曲線、あるいは直線から生まれる多彩な模様を形成させたグラフィックプリーツを作製することができた。」(段落【0032】)
h.図3及び図5には、ミシン加工による積層体に施された水溶性の糸の縫い目が、衣服の全表面の略直交する2方向に設けられた点が開示されている。 また、上記bの記載及び図6を参照すると、折りぐせが、前記衣服の生地の厚み方向に波状に形成されると共に、前記衣服の表面の略直交する2方向に設けられている点が開示されているといえる。

これらの記載事項及び図示内容を総合し、本願発明1、2の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、それぞれ次の発明が記載されている(以下、本願発明1に対応する引用例1記載の発明を「引用発明1A」、本願発明2に対応する引用例1記載の発明を「引用発明1Bという。」)。
[引用発明1A]
「化学繊維からなる半製品の略直交する2方向から糸を通し、プリーツが設けられる衣服であって、前記プリーツが、前記衣服の生地の厚み方向に波状に形成されると共に、前記衣服の全表面の略直交する2方向に設けられていることを特徴とする衣服。」
[引用発明1B]
「引用発明1Aの衣服を製造する方法であって、化学繊維の生地を用いて縫製して半製品を作り、次いで該半製品の略直交する2方向にそれぞれ複数の糸を通し、次いで該半製品を略直交する両方向にしぼり、プリーツを付け、その後、前記の糸を抜くことを特徴とする衣服の製造方法。」

(2) 原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願の前である平成12年3月21日に頒布された特開2000-80502号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
a.「【請求項1】 衣服素地の全体に三浦絞り、くも絞り、鹿子絞りによる絞り処理をした後、絞り染め及び縮み加工を行って絞り染め縮み衣服を形成し、この絞り染め縮み衣服のサイズを、大人から子供まで利用可能に大幅に縮ませたことを特徴とする絞り加工を利用した絞り染め縮み衣服。」(特許請求の範囲)
b.「例えば、この絞り加工に基づく伸縮性と、衣服素地の持つ物性とを有効利用することにより、より優れた機能及び商品価値の向上又は利用の分野が開かれることは明白であります。一例としては、伸縮性及び物性を利用して、伸縮性のブラウス等の衣服を製造し、この衣服は、人体のボディにフィットし、かつボディの線をやさしく、しかもしわの発生もなく表現できること(美しく女らしいボディラインを遺憾無く表現できること)、又はブラウスの小寸法を利用してコンパクトに収容でき、旅行、収容等に役立てること、等の利点が考えられる。又は衣服が本来必要とする機能にも利用できる。例えば、袖口の絞り、腹部の絞り等の機能として役立てる。」(段落【0005】)
c.「【発明の実施の形態】(1) 衣服素地(図1参照)の略全体に三浦絞り加工、くも絞り加工、鹿子絞り加工を施す(図2(a)参照)。この絞り加工をした後、浸漬等の従来方法により染着する。この染着された衣服素地に熱処理を行う。例えば、ポリエステル素材の場合には、釜の温度は略110℃?130℃程度、時間は略10分?20分程度で熱処理して縮める。この熱処理後、仕上げ加工を行う(図3、図4参照)。尚、染着、熱処理(縮み)の加工順序、時間等は、同時、個別、順序の変更等は自由であり、各種製品の種類、コスト、工程の簡略化、設備、各種処理の仕方等で選択される。」(段落【0008】)

[5] 対比判断
A.本願発明1について
(1)対比
そこで、本願発明1と引用発明1Aとを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明1Aの「生地」は、本願発明の「生地」に、「プリーツ」は「折りぐせ」に、それぞれ相当する。また両者は、生地として化学繊維を用いる点において共通している。

そこで、本願の発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「化学繊維からなる布地の略直交する2方向から糸を通し、折りぐせが設けられる衣服であって、前記折りぐせが、前記衣服の生地の厚み方向に波状に形成されると共に、前記衣服の全表面の略直交する2方向に設けられていることを特徴とする衣服。」(以下、「本願発明1」という。)

そうすると、本願発明1と引用発明1Aとは、下記の二点で相違する。
(相違点1) 「布地」が、本願発明1では「縫製品」であるのに対し、引用発明1Aでは「半製品」である点。
(相違点2) 本願発明1が糸の間隔を縮めることにより折りぐせを設けるのに対し、引用発明1Aは糸ではなく半製品を縮めることにより折りぐせを設ける点。

そこで、上記相違点について判断する。
(相違点1について)
引用発明1Aには、「半製品」について、「『一般に、衣服におけるプリーツの形成は、製品あるいは半製品に加工する前の生地の状態において、プリーツの形成がされるのが通常であ』(上記[4](1)b)るが、『半製品もしくは製品の状態でプリーツ加工を行うことは、半製品もしくは製品に縫い代が存在していたり、ダーツ等がある場合には、プリーツ加工は困難であり、また、半製品や製品に型崩れを招くという加工上の問題点がある』(上記[4](1)d)。そこで、『本発明は、…半製品を…糸により所望のパターンに縫製し、縫製がなされた…半製品…を、生地の浮き沈みにより種々の模様を形成…する』(上記[4](1)e)」と記載されている。
上記記載より、引用発明1の「半製品」は、製品となる前において、生地に縫製加工等を施されたものであることは明らかである。
一方、本願発明1の縫製体は、「化学繊維の生地を用いて縫製し」(段落【0013】)たものである。
これらの記載より、本願発明1の「縫製体」と引用発明1Aの「半製品」とは同じものということができるから、実質的にこの点は相違点ではない。

(相違点2について)
一般に、「縫製体に適宜糸を通し、その間隔を縮めることにより該縫製体をしぼり、折りぐせを付け、糸を抜く」という絞り加工の技術は、衣服の分野において、常套手段である。
例えば、原色染織大辞典(株式会社淡交社、昭和52年6月6日発行)には、「ぬいしぼり(縫絞):絞染技法の一。平縫・折縫・巻縫・合せ縫などの方法で布を縫い、これを引き締め、縮めた状態で染色する。」(801頁)と記載されていることからも明らかである。
本願発明1と引用発明1Aとは、糸の間隔を縮めることによって、布に折りぐせをつけるか、糸の間隔は固定のまま、布を縮めることによって折りぐせをつけるかの違いであるが、本願発明1のような折りぐせをつける技術手段が、上記のとおり衣服の分野において常套手段であることを考慮すると、当該相違点2のようにすることは、当業者が容易になし得る程度の技術的事項であって、格別の困難性があるものとはいえない。また、その作用効果も格別なものではない。

B.本願発明2について
(1)対比
本願発明2と引用発明1Bとを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明1Bの「生地」は、本願発明2の「生地」に相当し、「プリーツ」は「折りぐせ」に、それぞれ相当する。
また、上記A(1)で述べたとおり、引用発明1Bの「半製品」は、本願発明の「縫製体」に相当する。そして、両者は、生地として化学繊維を用いる点において共通している。
なお、引用発明1Bは、糸を溶解させることにより抜くものであるが、糸を抜くという点において、両者は共通する。

そこで、本願の発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「請求項1記載の衣服を製造する方法であって、化学繊維の生地を用いて縫製して縫製体を作り、次いで該縫製体の略直交する2方向にそれぞれ複数の糸を通し、次いで該縫製体を略直交する両方向にしぼり、折りぐせを付け、その後、前記の糸を抜くことを特徴とする衣服の製造方法。」
そして、両者は次の点で互いに相違する。
(相違点1) 本願発明2が糸の間隔を縮めることにより折りぐせを設けるのに対し、引用発明1Bは糸ではなく半製品を縮めることにより折りぐせを設ける点。
(相違点2) 本願発明2は、高温の蒸気を吹き付けて折りぐせを付けるのに対し、引用発明1Bは、加熱を行うことによって折りぐせを付ける点。

(2)相違点の判断
(相違点1について)
この相違点1は、上記(1)で述べた相違点2と同一であり、当該理由により、当業者が容易になし得た程度にすぎない。
(相違点2について)
本願発明2は、「高温の蒸気を吹き付けて加熱する。…ポリエステルなどの合成繊維は加熱により変形し、その状態で冷却されると変形した状態が保持されるようになる。したがって、糸(6)、(7)を抜いた後でも折りぐせ(2)、(3)が残る。」(本願明細書の段落【0028】?【0030】)ものであり、蒸気による加工は、折りぐせを固定するものである。
引用例1にも「加熱を行う場合…蒸気により加熱を行う方法によってもよい。…加熱を行う場合、ローラー7aおよび7b間に挟み込む方法によらずに、170℃?200℃程度の蒸気により加熱を行う方法によってもよい。…加熱を行う。…熱可塑性を有する生地2等にも強制的に収縮が生じ、縫い目を稜線あるいは谷線とする凹凸やシワが転写して固定される。」(上記[4]fの段落【0016】【0017】)と記載されており、折りぐせを付ける加工に蒸気を用いる点において、両者は同じである。
なお、一般に、高温の蒸気を吹き付けて衣服を熱固定することは、クリーニングをはじめ、衣服加工の分野においては、常套手段にすぎないものであるから、引用例1によらずとも、当該相違点2は常套手段にすぎないものである。
そうすると、当該相違点2は、上記常套手段を考慮すると、引用発明1Bに基づいて容易になし得た程度にすぎないものであって、その作用効果も格別のものとはいえない。

[6] むすび
したがって、本願発明1、2は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
それゆえ、本願出願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-24 
結審通知日 2008-03-25 
審決日 2008-04-07 
出願番号 特願2000-126198(P2000-126198)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A41D)
P 1 8・ 571- Z (A41D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 二ッ谷 裕子  
特許庁審判長 松縄 正登
特許庁審判官 中西 一友
田中 玲子
発明の名称 衣服の製造方法  
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所  

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