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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1179722
審判番号 不服2006-2752  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-15 
確定日 2008-06-11 
事件の表示 特願2002-179411「分離可能な多層袋」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月22日出願公開、特開2004- 18081〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年6月20日の出願であって、 平成18年1月6日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年2月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、当審において平成19年12月14日付けで拒絶理由を通知したところ、平成20年2月21日付けの意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成20年2月21日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明は次のとおりである。
「紙製の外袋内にプラスチック製の内袋を有した多層袋であって、該多層袋の一端を開封側、他端を口封側とし、前記開封側はカバーにて覆い密封すると共に前記内袋の開封側端部をヒートシールしてなり、前記口封側はカバーにて覆い密封すると共に前記内袋の口封側端部をヒートシールし、その直後の柔らかい状態の該ヒートシール部に周縁がV字形の円盤を当てて形成した、内袋の開封側端部を掴み引っ張るだけで切断可能な脆弱部を形成して、更に脆弱部より先端の口封側端部を前記外袋に貼着してなり、前記開封側のカバーを開封した後、前記脆弱部を切断して前記内袋の口封側端部及び開封側端部をシールした状態のまま、前記外袋内から前記内袋を分離可能にしたことを特徴とする多層袋。」
(以下、「本願発明」という。)

3.引用刊行物の記載
3-1.当審の拒絶の理由に引用した、特公昭59-26536号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の記載がある。
(a)「本発明のバッグは、ポリエチレンのような熱密封可能なプラスチック材の内部チューブ10と、例えば紙のような非熱密封材料の夫々隣接する4枚のブライ12?15からなる外部チユ-ブ11とを含む。」(第5欄第19-23行)
(b)「第1図ないし第4図を参照し、内部チューブ10の上方端は符号23で示される領域上で外部チューブ11の隣接するプライ15に軽く接着され、前記内部チューブはこの接着部の下で符号24で示されるよう周囲に孔があげられている。代換的に、包装される製品が例えば粉ミルク、小麦粉などの細く粉砕された材料のような場合、有孔部24のラインは第3A図に示されるようにバッグ上方端で接着領域23内に配置され、その点において多数の孔24は接着領域23内に配置される。このことは、細い粉末状の製品が前記有孔部を介して第3A図に符号15bで示されるようなチューブ11と隣接ブライ15との間隙に落ち込むことを防止する。」(第5欄第34行-第6欄第3行)
(c)「また、内部チュ-ブ10は、バッグ下方端Gで第4A図および第6図に符号16で示されるよう該下万端を閉鎖すべく第4A図に示される2つの加熱圧力バー17間で熱密封することによって横断方向に熱密封される。外部チュ-ブllは、その後前壁重合部Hを折り曲げ線18を中心に後壁Bの終端部19および内部チューブ10の熱密封端16と共に折り曲げ、次いで第3図に示されるように内部チューブの熱密封された終端16を越えてバッグの後壁Bに対して重合部Hを密封することによって下方端で閉鎖される。」(第6欄第9-19行)
(d)「外部チュ-ブ11のその後の開放を容易にするため、バッグの閉鎖端即ち下方端で引き裂き用コード20がバックの製作中に第3図に示されるように内部チューブの熱密封終端l6より上の後壁Bと前記重合前壁部Hとの間に介在される。このようにして、外部チューブ11が閉鎖端で引き裂き用コード20によって引き続き開放される時、内部チューブ10は以下更に詳細に説明されるように前記端部で自由に引き出すことができる。
第1図ないし第3に示されるように組み立てられた状態のバックは包装されるべき製品をバッグ上方即ち開放端を介して投入充填するため準備される。この包装される製品とは通常第7図に充填されたバッグ内に符号25aで示される粒状のかさ製品の形態を取っている。バックがこのようにして満されると、該バッグは、符号27で示されるように内部チューブを閉鎖すべく熱密封するため第7図に示されるよう加熱圧力バー26の間に有孔部24のラインよりも下方部分でバッグを握持させることによってそのラインよりも下方部分を閉鎖すべく内部チューブ10を最初に熱密封することによって開放端を封じる。
次に、バッグの開放端での外部チューブl1の閉鎖は、第8図に示されるように熱風30によって加温溶融接着材S1を熱反応させて機能させ、次いで前壁Aに対して折り曲げ線29に沿って外部チューブを折り曲げ、そして密封即ちシールを完全にするため第9図に示されるよう加圧ロール31間を通過されることによって達成される。」(第6欄第26行-第7欄第10行)
(e)「第10図ないし第l2図を参照し、第10図に示されるように充填され且つ完全に閉鎖されたバッグ47は、符号46で示されるよう外部チューブの重合部分Hを引き裂いて開放するため引き裂きコード20の操作によって最初に閉鎖されたバッグ端部Gを開放する。これにより、第4図に示される締結部を手動的にゆるめることによって、内部チューブ10と第11図に示される隣接する外部プライとの間の前記端部で内部チューブ10の上方熱密封端l6を引き出し自由にできる。そこで、内部チューブ10は、第1図および第3図或は第3A図に示されるように有孔部24のラインで内部チューブを切断すべく内部チューブ10を引っぱることによって外部チューブ11から手動的に引き抜く。この結果、内部チューブ10は、第12図に示されるよう包装内容物25aを完全にシールした状態で且つ重合部分Hの引き裂き部46を除いて外部チューブに損傷を与えることなく、外部チューブ11から完全な密封状態で引き出される。」(第7欄第33行-第8欄第8行))
(f)「第10図ないし第12図は夫々内部に包装された製品を密封するため両端を熱密封した際充填されたプラスチック内部チューブを原形のまま外部チューブから手操作により引き出すよう開放すべく引き裂きコードの作用によって最初に閉鎖されたバック端部で外部チューブを開放する斜視図、包装された製品を含む熱密封された内部プライを露出すべく前記引き裂き端部で外部チューブを完全に開放した斜視図、および熱密封された内部チューブが内部チューブの有孔部で引張切断によって外部チューブから手操作で原形のまま引き出した状態を示す斜視図である。」(第10欄第25-37行)
(g)「E・・・・・開放バック端」(第12欄第2行)
そして、第3図には、有孔部24より先端の領域にある接着領域23を外部チューブ11に貼着してなることが示されている。第10図ないし第l2図には、バック下方端Gを開封した後、有孔部24を切断して内部チューブ10の熱密封27及び上方密封端16をシールした状態のまま、外部チューブ11内から内部チューブ10を分離していることが示されている。

以上の記載及び第1ないし12図によれば、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる。
「紙のような非熱密封材料の夫々隣接する4枚のブライ12?15からなる外部チユ-ブ11内にポリエチレンのような熱密封可能なプラスチック材の内部チューブ10を有したバッグであって、バッグの一端をバック下方端G、他端を開放バッグ端Eとし、内部チューブ10の上方熱密封端16をシールしてなり、内部チューブ10の熱密封27をシールし、口封側端部に内部チューブ10の熱密封終端16を掴み引っ張るだけで切断可能な有孔部24を形成して、更に有孔部24より先端の接着領域23を外部チューブ11に貼着してなり、バック下方端Gを開封した後、有孔部24を切断して内部チューブ10の熱密封27及び上方密封端16をシールした状態のまま、外部チューブ11内から内部チューブ10を分離可能にしたバッグ。」(以下、「引用発明1」という。)

3-2.同じく、当審の拒絶の理由に引用した、特開2001-233358号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の記載がある。
(h)「【0016】胴貼りを終了した筒状体7は、図4に示すように、その一端の開口部13が一回折り曲げで閉塞され、その上から本発明の封止テープ20が取り付けられる。この封止テープ20は、紙、フィルムおよびこれらの積層シート等のテープ21により構成した上記の積層袋1の開口部13に、これを覆い封をするものであり、図5、6に示すように、テープ21の少なくとも一面21aに補強用線条22を、約1mm巾で所定の間隔を保持し、すなわち、2mmないし3mm間隔で設けられてなる。この補強用線条22の巾寸法、間隔は上記のものが好ましいが、特に制限されるものではない。
【0017】すなわち、この封止テープ20は、そのテープ21として、特に限定がなく、通常多くの場合は紙であり、クラフト紙、耐油紙、耐水紙など目的に応じたものが使用される。あるいはプラスチックフィルムを使用しても良い。稀には金属フィルム、積層シートも使用されることがある。なお、積層シートを使用する場合は薄手で充分柔軟性のあるもののみが使用される。」
(i)「【0021】そして、この封止テープ20には、開口部13に沿ってカットテープ23が接着剤により貼りつけられ、更に、カットテープ23を中心にして、両側に切り込み24、24が入り、剥がし片25となっている。この剥がし片25を掴み引き裂いていけば、カットテープ23により封止テープ20を開口部13に沿って切り裂くことになり、この積層袋1は開口部13全体が容易に開封される。」
(j)「【0023】前記開口部13が閉塞され袋状とされた筒状体7は、物が入れられた後、図9に示すように、その他端の開口部27が一回折り曲げで閉塞され、筒状体7の横方向より長い前記封止テープと同構成の封止テープ28にて包囲されかつ筒状体7の両側端より延出させた状態で接着剤により貼りつけられて密封され(図1参照)、この積層袋1は出荷されることになる。なお、出荷の際、積層袋1は封止テープ20および28の延出端部26および29により持つことが出来るから、極めて移動させ易い。」
(k)「【0025】そして、積層袋1の取扱時フィルム貼合部5の余剰部分となるプラスチックフィルム3の他側端部3bは柔らかいから、ユーザーおよび最終消費者が指先を切ることがなく、封止テープ20の端部にある剥がし片25を持ち引っ張れば、カットテープ23により封止テープ20を開口部13に沿って切り裂くことになり(図10参照)、この積層袋1は開口部13全体が容易に開封され、中身を利用出来る。」

以上の記載及び第1ないし第12図によれば、引用例2には、
「 開口部13は封止テープ20にて覆い密封し、他端の開口部27は封止テープ28にて覆い密封し、開封の際には封止テープ20を開口部13に沿って切り裂くことによって、開口部13を開封する積層袋。」 が記載されているものと認める。

4.対比、判断
そこで、本願発明と引用発明1を対比すると、引用発明1における、「外部チューブ11」、「内部チューブ10」、「バッグ」、「バック下方端G」、「開放バッグ端E」、「上方熱密封端16」及び「熱密封27」は、それぞれ、本願発明における「外袋」、「内袋」、「多層袋」、「開封側端部」、「口封側端部」、「ヒートシール」した「内袋の開封側端部」及び「ヒートシール」した「内袋の口封側端部」に相当する。
また、引用発明1の「有孔部24」は有孔部24が切断されることによって外部チューブ11内から内部チューブ10を分離する機能からみて、本願発明の「脆弱部」に相当する。
したがって、両者は、
「紙製の外袋内にプラスチック製の内袋を有した多層袋であって、該多層袋の一端を開封側、他端を口封側とし、前記内袋の開封側端部をヒートシールしてなり、前記内袋の口封側端部をヒートシールし、口封側端部に内袋の開封側端部を掴み引っ張るだけで切断可能な脆弱部を形成して、更に脆弱部より先端の口封側端部を前記外袋に貼着してなり、前記開封側を開封した後、前記脆弱部を切断して前記内袋の口封側端部及び開封側端部をシールした状態のまま、前記外袋内から前記内袋を分離可能にした多層袋。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1
本願発明では「開封側」及び「口封側」は「カバーにて覆い密封」し、開封の際には、開封側の「カバー」を開封するのに対し、引用発明1ではカバーを有していない点。

相違点2
本願発明の脆弱部は、内袋の口封側端部をヒートシールした直後の柔らかい状態のヒートシール部に周縁がV字形の円盤を当てて形成したのに対し、引用発明1の脆弱部は、内袋の口封側端部に有孔部を形成した点。

そこで、上記相違点について検討する。
相違点1について
引用例2は、上記摘記事項(h)?(k)に、積層袋において、開口部13は封止テープ20にて覆い密封し、他端の開口部27は封止テープ28にて覆い密封し、開封の際には封止テープ20を開口部13に沿って切り裂くことによって、開口部13を開封する技術が記載されている。
そして、引用例2に記載の積層袋における「開口部13」、「他端の開口部27」、「封止テープ20」及び「封止テープ28」は、それぞれ、本願発明の多層袋における「開封側」、「口封側」、「開封側のカバー」及び「口封側のカバー」に対応する。
したがって、引用例2には、本願発明の表記にならえば、多層袋において、開封側及び口封側はカバーにて覆い密封し、開封の際には、開封側のカバーを開封するが点が開示されているといえる。
よって、引用発明1の多層袋において、同一の技術分野に属する引用例2に記載の、袋の開封側及び口封側はカバーにて覆い密封し、開封の際には、開封側のカバーを開封する点を採用し、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到することができたものである。

相違点2について
脆弱部を設けたヒートシール部を有する袋の分野において、ヒートシールした直後の柔らかい状態のヒートシール部に工具を当てて脆弱部を形成した点は、周知の技術である。(例えば、実願平1-144941号(実開平3-84749号)のマイクロフィルムの「加熱加圧部6」及び実願昭63-148401号(実開平2-69843号)のマイクロフィルムの「薄肉部分8」参照)
そして、ヒートシールした直後の柔らかい状態のヒートシール部に工具を当てて脆弱部を形成する場合に、工具の形状によって、脆弱部の形状や強度が変わるから、必要とされる脆弱部の形状や強度に応じた工具を選択することに格別な困難性はない。
したがって、引用発明1において、ヒートシールした直後の柔らかい状態のヒートシール部に工具を当てて脆弱部を形成する場合に、必要とされる脆弱部の形状や強度に応じて工具の形状を選択し、周縁がV字形の円盤の工具を当てて脆弱部を形成することによって、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到することができたものである。

そして、本願発明の効果も引用発明1及び引用例2に記載された技術並びに周知技術から当業者が予測し得る程度のものであり、格別顕著なものとはいえない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用発明1及び引用例2に記載された技術並びに周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項を検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-27 
結審通知日 2008-04-01 
審決日 2008-04-15 
出願番号 特願2002-179411(P2002-179411)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 谷治 和文  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 田中 玲子
関口 勇
発明の名称 分離可能な多層袋  
代理人 庄子 幸男  

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