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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01S
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01S
管理番号 1179986
審判番号 不服2006-7903  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-25 
確定日 2008-06-19 
事件の表示 特願2001-20191「GPS端末」拒絶査定不服審判事件〔平成14年8月14日出願公開、特開2002-228739〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件は、平成13年1月29日にされた特許出願につき、平成18年3月27日付けで拒絶査定(同年4月4日発送)がされたところ、これに対し、同月25日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「平成18年4月25日付けの手続補正」又は「本件補正」という。)が提出されたものである。

2 平成18年4月25日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年4月25日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
平成18年4月25日付けの手続補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載を、
補正前の「【請求項1】GPS衛星によって送信されるGPS信号を地上において基地局が受信すると、少なくとも、前記基地局が受信したGPS信号の航法メッセージ中にあるアルマナックデータを含む補助情報を送信局が電波信号によって所定エリアに送信し、電源が投入されると、前記送信局によって送信される前記補助情報を受信した上で、GPS衛星によって送信されるGPS信号の受信を開始し、前記補助情報の受信が不能である場合は、直ちにGPS衛星によって送信されるGPS信号の受信を開始することを特徴とするGPS端末。」から、
補正後の「【請求項1】電源が投入されると、FM多重放送局によって送信される、GPS信号の航法メッセージ中にあるアルマナックデータを含む補助情報の受信を試行し、前記補助情報が受信できた場合は、前記アルマナックデータに基づきGPS衛星によって送信されるGPS信号の受信を開始し、前記試行の結果、前記補助情報の受信が不能である場合は、直ちに前記GPS信号の受信を開始することを特徴とするGPS端末。」
に補正する補正事項を含むものである。

本件補正は、補正前の請求項1の「送信局」、「前記補助情報を受信した上で、GPS衛星によって送信されるGPS信号の受信を開始し」という記載をそれぞれ「FM多重放送局」、「前記補助情報が受信できた場合は、前記アルマナックデータに基づきGPS衛星によって送信されるGPS信号の受信を開始し」とすることで「送信局」及び、「補助情報」と「GPS信号の受信」との関係について、さらに限定するものであるから、平成18年改正前特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(2)引用例及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前の平成9年3月28日に頒布された刊行物である特開平9-80145号公報(以下「引用例」という。)には、図面とともに次の記載がある。

ア 「【0014】【発明の実施の形態】図1は本発明の車載用GPS装置を用いたナビゲーション装置の一実施例のブロック図を示す。同図中、GPSナビゲーションシステムを構成するGPSアンテナ10、GPS受信部12、車速センサ、車輪速センサ、地磁気センサ等の各種の自律走行用センサ部14と、制御部としてのECU(電子制御回路)16が備えられている。GPS受信手段としてのGPS受信部12ではGPSアンテナ10を介してGPS衛星からの信号を受信し解読する。
【0015】ここで、GPS衛星から送信される信号のGPS航法メッセージは図2に示すフレーム構成である。同図中、1フレーム1.5kビットは300ビット毎にサブフレームを構成している。第1サブフレームは時刻情報が入る。第2及び第3サブフレームには現在位置標定計算に使用する自衛星の詳細軌道情報が入る。次の第4及び第5サブフレームには他の1つの衛星の概略軌道情報が入り、25フレーム分のGPS航法メッセージの第4,第5サブフレームによって全衛星の概略軌道情報が得られる。
【0016】位置標定手段としてのECU16はGPS受信部12で受信及び解読された少なくとも4個のGPS衛星の信号夫々の第1?第3サブフレームの時刻情報及び詳細軌道情報を用いて、各GPS衛星の位置と、各GPS衛星からGPS受信部12までの距離とを算出し、三角測量の原理によってGPS受信部12の緯度経度及び高度を標定する。また、受信信号の第4?第5サブフレームから得た全衛星の概略軌道情報を保持手段としてのメモリ部18に格納する。なお、ECU16はGPS受信開始時にはメモリ部18の格納情報から、どのGPS衛星の送信信号を受信するかをGPS受信部12に指示する。」(【0014】?【0016】)

イ 「【0019】…。インタフェース部26は図1の車載用ナビゲーション装置のカードスロットにPCカードが装着されたとき、PCカードのインタフェース部と接続されてデータの授受を行う。」(【0019】)

ウ 「【0026】接続判定部40は図1のFM文字多重放送受信装置が車載用ナビゲーション装置に接続されたか否かを判別するもので、接続時には所定のピンが接地され、非接続時には所定のピンが一定電圧(+4.0V)以上となることにより判別を行っている。インタフェース部41は車載のナビゲーション装置のインタフェース部26と接続されて、マイクロコンピュータ34とECU16との間でデータ転送を行う。
【0027】図4はFM文字多重放送受信装置が単体のとき、マイクロコンピュータ34が実行する受信処理のフローチャートを示す。同図中、ステップS10ではFM多重デコーダ部33から文字コードデータを取り込み、ステップS32でその識別コードから一般情報のうちのGPS衛星情報のセグメントか否かを判別する。
【0028】ここで、GPS衛星情報のセグメントでなければステップS10に進み、GPS衛星情報のセグメントであればステップS14に進んで、GPS衛星情報をRAM37の所定領域に格納し、この後ステップS10に進んで上記の処理を繰り返す。」(【0026】?【0028】)

エ 「【0031】これによって図5に示す如く、FM放送局50からFM多重により送信されたGPS衛星情報つまり全衛星の概略軌道情報がPCカード30のRAM37に格納される。…。」(【0031】)

オ 「【0032】図6は車載用ナビゲーション装置のECU16が電源投入時に実行するGPS衛星サーチ処理のフローチャートを示す。同図中、ステップS20ではインタフェース部26にPCカードのインタフェース部41が接続されているか否かを判別する。ここでPCカードが接続されていればステップS22に進み、ナビゲーション装置のメモリ部18の内容とPCカードのRAM37の内容との新旧比較を行う。ここではメモリ部18の更新日時とRAM37の更新日時とを比較して新旧比較を行う。
【0033】次にステップS24で上記比較結果はPCカードのRAM37の内容の方が新しいかどうかを判別し、PCカードのRAM37の内容が新しい場合にはステップS26でPCカードのRAM37に格納されているGPS衛星情報である全衛星の概略軌道情報を読み出してナビゲーション装置のメモリ部18に格納してメモリ部18の内容を更新し、ステップS28に進む。
【0034】一方、ステップS20でPCカードが接続されてない場合、又はステップS24でPCカードのRAM37の内容がメモリ部18の内容より古い場合は、直接ステップS28に進む。ステップS28では、メモリ部18に格納されている全衛星の概略軌道情報を用いて、現在受信可能なGPS衛星を判定する。次にステップS30で上記判定された受信可能なGPS衛星の信号の受信処理を行う。」(【0032】?【0034】)

したがって、引用例には、「電源投入時に、FM放送局50からFM多重により送信される、GPS衛星から送信される信号のGPS航法メッセージ中にある全衛星の概略軌道情報が格納されたRAM37を有するPCカード30が接続されているか否かを判別し、前記PCカード30が接続されていれば、メモリ部18の内容よりPCカード30のRAM37の内容の方が新しい場合には前記全衛星の概略軌道情報を読み出してメモリ部18の内容を更新し、メモリ部18に格納されている前記全衛星の概略軌道情報を用いてGPS衛星の信号の受信処理を行い、前記判別の結果、前記PCカード30が接続されていない場合は、メモリ部18に格納されている前記全衛星の概略軌道情報を用いてGPS衛星の信号の受信処理を行う車載用ナビゲーション装置」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「電源投入時に」、「FM放送局50からFM多重により送信される」、「GPS衛星から送信される信号のGPS航法メッセージ」は、本願補正発明の「電源が投入されると」、「FM多重放送局によって送信される」、「GPS信号の航法メッセージ」にそれぞれ相当する。

イ 引用発明の「全衛星の概略軌道情報」は、本願補正発明の「アルマナックデータ」及び「アルマナックデータを含む補助情報」に相当する。

ウ 引用発明の「全衛星の概略軌道情報が格納されたRAM37を有するPCカード30が接続されているか否かを判別」することと、本願補正発明の「アルマナックデータを含む補助情報の受信を試行」することとは、「アルマナックデータを含む補助情報を受け取ることができる状態であるか否かを判別」することで共通している。

エ 引用発明の「PCカード30が接続されていれば」と、本願補正発明の「前記補助情報が受信できた場合は」とは、「前記補助情報を受け取ることができる状態である場合は」である点で共通している。

オ 引用発明の「メモリ部18の内容よりPCカード30のRAM37の内容の方が新しい場合には前記全衛星の概略軌道情報を読み出してメモリ部18の内容を更新し、メモリ部18に格納されている前記全衛星の概略軌道情報を用いてGPS衛星の信号の受信処理を行い」と、本願補正発明の「前記アルマナックデータに基づきGPS衛星によって送信されるGPS信号の受信を開始し」とは「アルマナックデータに基づきGPS衛星によって送信されるGPS信号の受信を開始し」ている点で共通している。

カ 引用発明の「前記判別の結果、前記PCカード30が接続されていない場合」と、本願補正発明の「前記試行の結果、前記補助情報の受信が不能である場合」とは、「前記判別の結果、前記補助情報を受け取ることができない状態である場合」である点で共通している。

キ 引用発明の「メモリ部18に格納されている前記全衛星の概略軌道情報を用いてGPS衛星の信号の受信処理を行う」ことは、車載用ナビゲーション装置がアルマナックデータを受け取ることをせずにGPS衛星の信号の受信処理を行って位置標定をしていることを考慮すると、本願補正発明の「直ちに前記GPS信号の受信を開始する」ことに相当する。

ク 引用発明の「車載用ナビゲーション装置」は、本願補正発明の「GPS端末」に相当する。

したがって、上記ア?クの考察から、両者は、

[一致点]
「電源が投入されると、FM多重放送局によって送信される、GPS信号の航法メッセージ中にあるアルマナックデータを含む補助情報を受け取ることができる状態であるか否かを判別し、前記補助情報を受け取ることができる状態である場合は、アルマナックデータに基づきGPS衛星によって送信されるGPS信号の受信を開始し、前記判別の結果、前記補助情報を受け取ることができない状態である場合は、直ちに前記GPS信号の受信を開始するGPS端末。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
アルマナックデータを含む補助情報を、本願補正発明では「受信」を行って受け取り、さらに、前記補助情報を受け取ることができる状態である場合は「前記アルマナックデータに基づきGPS衛星によって送信されるGPS信号の受信を開始し」ているのに対して、引用発明では「PCカード30が接続」して「読み出」すことにより受け取り、さらに、前記PCカード30が接続されていれば「メモリ部18の内容よりPCカード30のRAM37の内容の方が新しい場合には前記全衛星の概略軌道情報を読み出してメモリ部18の内容を更新し、メモリ部18に格納されている前記全衛星の概略軌道情報を用いてGPS衛星の信号の受信処理を行」っている点。

[相違点2]
アルマナックデータを含む補助情報を受け取ることができる状態であるか否かを、本願補正発明では「受信を試行」することで判別しているのに対して、引用発明では「PCカード30が接続されているか否かを判別」することで判別している点。

(4)判断
以下、上記相違点について検討する。

[相違点1]について
PCカードを介さずに、受信を行うことで情報を受け取ることは周知の技術であり(例えば、特開平8-170983号公報(【0022】?【0023】等)、特開昭61-200484号公報(2頁右上欄第17?19行、3頁左上欄2?4行等)を参照)、また、受信を行うことで受け取った、FM放送局50からFM多重により送信される、GPS衛星から送信される信号のGPS航法メッセージ中にある全衛星の概略軌道情報は、新しいものであることは明らかであり、メモリ部18に格納されている全衛星の概略軌道情報は、受信を行うことで受け取った全衛星の概略軌道情報となることを考慮すると、前記周知の技術を引用発明に適用して、本願補正発明のごとく構成することは、当業者が容易になし得たものである。

[相違点2]について
情報を受け取ることができる状態であるか否かを受信を試行することで判別することは周知の技術であり(例えば、特開平7-244148号公報(【0029】等)、特開平9-322084号公報(【0018】等)を参照)、かかる周知の技術を引用発明に適用して、本願補正発明のごとく構成することは、当業者が容易になし得たものである。

そして、本願補正発明の奏する効果も引用例の記載及び周知の技術から当業者が容易に予測し得る範囲のものにすぎない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)補正却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 本願発明
平成18年4月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?11に係る発明は、平成17年3月24日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】GPS衛星によって送信されるGPS信号を地上において基地局が受信すると、少なくとも、前記基地局が受信したGPS信号の航法メッセージ中にあるアルマナックデータを含む補助情報を送信局が電波信号によって所定エリアに送信し、電源が投入されると、前記送信局によって送信される前記補助情報を受信した上で、GPS衛星によって送信されるGPS信号の受信を開始し、前記補助情報の受信が不能である場合は、直ちにGPS衛星によって送信されるGPS信号の受信を開始することを特徴とするGPS端末。」

4 引用例
引用例には、図面とともに上記「2」の「(2)」において摘記した事項が記載されており、引用例には、同「(2)」において認定したとおりの引用発明が記載されているものと認められる。

5 対比・判断
本願発明は、上記「2」において検討した本願補正発明の発明特定事項のうち、「送信局」及び、「補助情報」と「GPS信号の受信」との関係について限定を省き、基地局について明記しているものであるが、送信局が送信する補助情報を得るための手段が存在していることは明らかであるから(例えば、上記特開平8-170983号公報の「基準局10」等を参照)、該手段を、基地局として明記することは格別なものではなく、本願補正発明が、引用発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項2?11に係る発明について判断を示すまでもなく、本願は、拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-10 
結審通知日 2008-04-15 
審決日 2008-05-07 
出願番号 特願2001-20191(P2001-20191)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01S)
P 1 8・ 121- Z (G01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山下 雅人  
特許庁審判長 杉野 裕幸
特許庁審判官 岡田 卓弥
上原 徹
発明の名称 GPS端末  
代理人 佐藤 強  

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