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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61N
管理番号 1180074
審判番号 不服2006-6393  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-06 
確定日 2008-06-26 
事件の表示 平成11年特許願第 8545号「首用低周波治療器」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 7月25日出願公開、特開2000-202035号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年1月14日の出願であって、平成18年3月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年4月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年5月8日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成18年5月8日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年5月8日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「首形状に沿うための弾性を有するC字状をした支持枠の両先端部にそれぞれ首の前方の両側を押さえるための首押さえ部をC字状の円弧の延長線方向に伸縮自在に設け、C字状をした支持枠の配設位置を、C字状をした支持枠を上記首の前方の両側を押さえるための首押さえ部が前となるように位置させた状態でC字状の支持枠の中心を通る左右の線よりも後方の両側に首の後方の両側に密着して低周波電流を流して患部を治療する一対の導子部を一定の間隔を隔てて配置してあることを特徴とする首用低周波治療器。」と補正された。

(2)補正の目的の適否
上記補正は、平成17年10月24日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲(以下、「拒絶査定時の特許請求の範囲」という。)の請求項1に記載された発明の「首押さえ部」について、「首の前方の両側を押さえるための」とし、「一対の導子部」について「首の後方の両側に密着」すると、願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内で限定するものであって、かつ、補正前の発明と補正後の発明とは、その産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3)独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反しないか)について以下に検討する。

ア.引用例
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物である、特開平8-173551号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「従来の低周波パルス発生器に接続する導子としては、図1に示すような導子が用いられている。すなわち接続プラグ(1)とリード線(2a)(2b)を介して、一対の平面状電極子(3a)(3b)を接続した構成であって、使用にあたっては両電極子(3a)及び(3b)を施療する患部間に適当な間隔をおいて当接するか、あるいは一方の電極子(3a)又は(3b)を患部上に当接し、他方の電極子(3b)又は(3a)を患部とは離れた体の一部(首、手首等)上に当接し通電施療するものである。しかしながら上述した従来の導子の構成では、頭皮を施療するにあたっては以下のような問題があった。」(2ページ2欄46行?3ページ3欄7行)
(イ)「この発明は前記課題を解決し、目的を達成するために電気パルス発生器に接続するための接続プラグと,該接続プラグとリード線を介して、該リード線の末端に接続する電極体において、該電極体を基板の面上に複数の電極ピンを各先端が頭皮面の形状に整合した湾曲面上に当接するように整列させて突設し、且つ該電極ピンを所定の電極ピンどうし2つに分類し、該分類した電極ピンを互いに異極どうし接続して、各導通状態で該リード線に接続した構成にするものである。」(3ページ3欄33?42行)
(ウ)「図12は本発明の他の実施例を示したものである。剛性をもったアーチ状竿(18)を、電極体(4)の上部に形成した中空孔(14)に挿通させ、該アーチ状竿(18)の両端に押さえ板(19)(19)を設け、両耳にヘッドホーンのように挟持したものである。この構成であれば片手で電極体(4)を施療中保持しないでもよく、電極体(4)の位置をアーチ状竿(18)面上を左右に摺動させたり、またアーチ状竿(18)を押さえ板(19)(19)を支点に頭皮面上を前後に回動させたりして、任意の頭皮の施療部分で電極体(4)を固定することができる。」(5ページ7欄38?49行)
(エ)図12には、アーチ状竿(18)がほぼ半円形であり、そのほぼ中央に電極体(4)が位置していることが図示されている。

上記記載事項(ウ)における、「該アーチ状竿(18)の両端に押さえ板(19)(19)を設け、両耳にヘッドホーンのように挟持したものである。」の記載から、剛性をもったアーチ状竿(18)は、弾性を有するものと理解できる。

したがって、上記記載事項(ア)ないし(ウ)及び図示内容(エ)から、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「複数の電極ピンを各先端が頭皮面の形状に整合した湾曲面上に当接するように整列させて突設し、且つ該電極ピンを所定の電極ピンどうし2つに分類し、該分類した電極ピンを互いに異極どうし接続して、各導通状態で該リード線に接続した構成の電極体(4)に形成した中空孔(14)に、弾性を有するほぼ半円形のアーチ状竿(18)を、電極体(4)がアーチ状竿(18)のほぼ中央に位置するように挿通させ、該アーチ状竿(18)の両端に設けた押さえ板(19)(19)により、両耳にヘッドホーンのように挟持させる、低周波パルス発生器を用いた、頭皮の通電施療装置」

同じく、原査定の拒絶の理由に引用した刊行物である、登録実用新案第3037036号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
(オ)「・・・本考案の治療器用導子体は、上記のような問題点を解決すると共に、使用性を良好にすることを目的として成されたものであり、伸縮自在性且つ弾性を有する略U字状アーム部材の両端に、一対の導子を、互いに対向する並列状に連結して構成することを特徴とするものである。」(3ページ段落【0004】)
(カ)「・・・まず、本考案の治療器用導子体においては、伸縮自在性且つ弾性を有する略U字状アーム部材の両端に、一対の導子を対向するよう並列状に連結しているため、そのアーム部材の伸縮自在性及び弾性力により、人体の頸部、肩部、上腕部、腹部、大腿部、膝部、腓部等のあらゆる部位に一対の導子を挟持状に容易に装着することができ、又それを離脱する場合についても容易に行なえる。」(3ページ段落【0005】)

イ.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「アーチ状竿(18)」、「電極ピン」「押さえ板(19)(19)」は、その機能ないし構造からみて、それぞれ前者の「支持枠」、「導子部」、「押さえ部」に相当するものであり、後者の「低周波パルス発生器を用いた、頭皮の通電施療装置」は、「低周波治療器」といえるものである。
そして、後者の「電極ピン」は、2つに分類し、該分類した電極ピンを互いに異極どうし接続しているから、2つに分類された電極ピンの組により一対の「導子部」を形成しており、それらは、当然のこととして一定の間隔を隔てて配置してある。
また、「電極ピン」の集合体である「電極体(4)」は、アーチ状竿(18)のほぼ中央に位置するから、ほぼ半円形のアーチ状竿(18)の中心を通る左右の線よりもアーチ状竿(18)の開口部の反対側にあるといえる。つまり、後者の電極体(4)の一対の「導子部」は、支持枠の中心を通る左右の線よりも、開口からみて「後方」に配置してあるという点で、前者の一対の導子部の配置と共通している。
また、「ほぼ半円形状」と「C字状」とは、「略円弧状」である点で共通する。
したがって、両者は、
「弾性を有する略円弧状をした支持枠の両先端部にそれぞれ押さえ部を設け、略円弧状をした支持枠の配設位置を、略円弧状をした支持枠を押さえ部が前となるように位置させた状態で略円弧状の支持枠の中心を通る左右の線よりも後方に低周波電流を流して患部を治療する一対の導子部を一定の間隔を隔てて配置してある低周波治療器。」
である点で一致しており、次の点で相違する。

相違点:本願補正発明においては、支持枠の形状が、首形状に沿うための「C字状」であり、押さえ部が「首の前方の両側を押さえるため」「C字状の円弧の延長線方向に伸縮自在に設け」られており、「一対の導子部」が「首の後方の両側に密着」しているのに対し、引用発明においては、支持枠の形状が、「ほぼ半円形」であり、押さえ部が支持枠の両端に設けられ、両耳部即ち体の一部を挟持するものではあるが伸縮自在であるか否か不明であり、「一対の導子部」が「頭皮」に密着するものである点。

ウ.当審の判断
上記相違点について検討すると、引用例2の上記記載事項(カ)からも明らかなように、電気的な治療器を頸部等の体の種々の部位に適用することは周知であって普通に行われているから、引用発明の低周波治療器を人体の頸部に適用することは当業者が容易に想到し得ることである。
そして、低周波治療器を人体の頸部に適用する際に、一対の導子部を首の後方の両側に密着させる構成とすることも周知であり普通に行われていることであるから、そのような構成とすることも当業者が容易に想到し得ることである。
更に、人体に治療器を装着するに際し、体形に適合するよう、「押さえ部」を支持枠の延長線方向に伸縮自在に設けることは、引用例2の上記記載事項(オ)にも示され、また、ヘッドフォン等において普通に用いられている手段であるから、引用発明において、支持枠の端部の延長線方向に押さえ部を伸縮自在にし、かつ、首形状に沿うように支持枠の形状をC字状にして、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項による効果も当業者が予測し得る範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用例2記載のもの並びに周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、拒絶査定時の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「首形状に沿うための弾性を有するC字状をした支持枠の両先端部にそれぞれ首押さえ部をC字状の円弧の延長線方向に伸縮自在に設け、C字状をした支持枠の配設位置を、C字状をした支持枠を首押さえ部が前となるように位置させた状態でC字状の支持枠の中心を通る左右の線よりも後方の両側に低周波電流を流して患部を治療する一対の導子部を一定の間隔を隔てて配置してあることを特徴とする首用低周波治療器。」

4.引用例
原査定の拒絶の理由に引用した引用例及びその記載事項は、上記「2.(3)ア.」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は、本願補正発明における「首押さえ部」についての、「首の前方の両側を押さえるための」という限定、及び「一対の導子部」についての「首の後方の両側に密着」するとの限定を省略するものである。
そして、本願発明の構成を全て含み、更に上記限定を付加する本願補正発明が、上記「2.(3)ウ.」に記載したとおり、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び引用例2記載のもの並びに周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-25 
結審通知日 2008-04-30 
審決日 2008-05-13 
出願番号 特願平11-8545
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61N)
P 1 8・ 121- Z (A61N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 誠二郎  
特許庁審判長 山崎 豊
特許庁審判官 仲村 靖
増沢 誠一
発明の名称 首用低周波治療器  
代理人 西川 惠清  
代理人 森 厚夫  

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