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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A61M
管理番号 1180278
審判番号 不服2006-3322  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-23 
確定日 2008-06-23 
事件の表示 平成 8年特許願第 80733号「超音波振動子を装着した注射器」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 9月16日出願公開、特開平 9-239031号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成8年3月9日の出願であって、平成18年1月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

II.平成18年2月23日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年2月23日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。

[理由]
本件補正は、補正事項として、特許請求の範囲を、次のように補正することを含むものである。
「注射器本体の先端に注射針を装着し、前記注射器本体にロッドを挿入し、該ロッドを押すことにより、前記注射器本体内の液体を前記注射針より注入するように構成した注射器であって、該注射器の一部に超音波振動子を固定し、該超音波振動子に交流電源より交流出力を印加して、前記超音波振動子で発生した超音波を前記注射針に伝達することを特徴とする超音波振動子を装着した注射器。」

本件補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項であるリング状超音波振動子について、「注射針を中心孔に密接して挿入固定したリング状」との限定を削除したものであるので、本件補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的としたものとは認められない。
また、超音波振動子の固定について、「該注射器の一部に超音波振動子を固定し」として、注射器の一部であればどこでも良いとする補正をおこなったが、本件補正についても、特許請求の範囲の限定的減縮を目的としたものとは認められない。
そして、本件補正は、請求項の削除、誤記の訂正、あるいは明りょうでない記載の釈明の、いずれを目的としたものとも認められない。
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に適合しないので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下する。

III.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という)は、拒絶査定時の明細書の、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「注射器本体の先端に注射針を装着し、前記注射器本体に挿入したロッドによって前記注射針より前記注射器本体内の液体を注入するように構成した注射器と、前記注射針を中心孔に密接して挿入固定したリング状超音波振動子と、該リング状超音波振動子に交流出力を印加する交流電源とからなることを特徴とする超音波振動子を装着した注射器。」

IV.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開昭61-37170号公報(以下、「引用例」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。
a.「注射針に超音波振動を与え乍ら人体又は植物等の被注射体に差し込むことを特徴とする注射針の差し込み方法。」(特許請求の範囲)
b.「その際に、超音波振動子5の振幅を拡大する振幅拡大用ホーン7の先端を、振動子の端子11,12を超音波発振機に接続して矢印方向10に振動数fおよび振幅aで超音波振動させ、そのホーン先端を保持具8をもって注射針に接触させながら注射する。この操作によって注射針3は矢印9の方向にホーンの振動数fおよび振幅aに近い値をもって超音波曲げ振動する。」(第2ページ左上欄16行?右上欄3行)
c.「第3図は第3実施例である。振幅拡大用ホーンの中心軸6を注射針3に対して傾斜角θを与えて押しあてている。注射針3は振動数f,振幅a_(1)で矢印13の方向に縦振動し、さらに矢印14の方向に振動数f,振幅a_(2)で曲げ振動する。曲げ振動効果は前述したところであるが、f,a_(1)の縦振動によつて主分力方向の振動切削機構によつてパルス切削力波形が作用して注射針3の差し込み力がさらに激減する。」(第2ページ右下欄7行?15行)
d.「なお図示の各実施例では電わい超音波振動子を示して説明したが、磁わい振動子を用いることもでき、さらには空気式超音波振動駆動装置を用いることもできる。また、針を直接超小型の超音波振動素子で駆動することもできる。」(第3ページ左上欄17行?右上欄1行)
そして、図3には、注射筒2の先端に注射針を装着し、注射筒2に挿入したピストン1によって注射針3より注射筒2内の液体を注入するように構成した注射器が図示されている。
また、b.に超音波振動子が「超音波発振機」に接続して超音波振動させられることが記載されていることから、注射器は、超音波振動子に交流出力を印加する交流電源を備えていることは明らかといえる。

これら記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。
「注射筒2の先端に注射針を装着し、注射筒2に挿入したピストン1によって注射針3より注射筒2内の液体を注入するように構成した注射器と、注射針3を直接駆動する超小型の超音波振動素子と、超音波振動素子に交流出力を印加する交流電流とからなる超音波振動素子を装着した注射器。」

V.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明の「注射筒2」は、本願発明の「注射器本体」に相当し、以下同様に、「ピストン1」は「ロッド」に、「注射針3」は「注射針」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「注射針3を直接駆動する超小型の超音波振動素子」と、本願発明の「注射針を中心孔に密接して挿入固定したリング状超音波振動子」とは、注射針に超音波を印加する「超音波振動子」という概念で共通している。

そこで、本願発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「注射器本体の先端に注射針を装着し、前記注射器本体に挿入したロッドによって前記注射針より前記注射器本体内の液体を注入するように構成した注射器と、超音波振動子と、超音波振動子に交流出力を印加する交流電源とからなる超音波振動子を装着した注射器。」

そして、両者は次の相違点で相違する(対応する引用例記載の用語を( )内に示す)。
(相違点)
超音波振動子について、本願発明は、注射針を中心孔に密接して挿入固定したリング状超音波振動子であるのに対し、引用発明の注射針を直接駆動する超音波振動子(超音波振動素子)は、その具体的な構成が不明である点。

上記相違点について検討する。
引用発明における超音波振動素子は、具体的な形状は明確ではないものの、注射針3を直接駆動するものである。
一方、超音波振動子において、中心に流体通路を持つリング状超音波振動子は、特開昭61-265136号公報(第7図等参照)、特開平5-95957号公報(段落【0016】、図1等参照)、実願平4-10538号(実開平5-62225号)のCD-ROM(段落【0005】、図1参照)に記載されているように周知技術といえる。
したがって、流体通路である注射針に周知技術を適用して、注射針をリング状超音波振動子中心孔に密接して挿入固定することは適宜なし得ることといえる。

そして、本願補正発明による効果も、引用発明、及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-07 
結審通知日 2008-04-15 
審決日 2008-04-30 
出願番号 特願平8-80733
審決分類 P 1 8・ 572- Z (A61M)
P 1 8・ 121- Z (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 誠二郎  
特許庁審判長 山崎 豊
特許庁審判官 蓮井 雅之
北村 英隆
発明の名称 超音波振動子を装着した注射器  
代理人 鈴木 和夫  

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