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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1180674 |
審判番号 | 不服2006-4784 |
総通号数 | 104 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-08-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-03-15 |
確定日 | 2008-07-09 |
事件の表示 | 特願2002-369135号「医療用処置器具の挿入ポート」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月15日出願公開、特開2004-195037号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は、平成14年12月20日の出願であって、原審において、平成18年1月7日付け手続補正が却下され、平成18年2月9日付けで拒絶査定がなされたところ、同査定を不服として、平成18年3月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成18年4月7日付けで明細書及び特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。 II.平成18年4月7日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年4月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。(下線は、補正箇所を示す。) 「内視鏡や処置器具の出入り口となる、挿入ポートにおいて、体表側に位置するプレート状の面を有する外套管と、 柔軟で屈曲自在な可撓性樹脂により形成する筒状のポート周面と、 前記ポート周面の近端部に設ける、該ポート周面より硬質な可撓性樹脂より形成する器具保持部と、 前記ポート周面の遠端部に設ける、前記外套管のプレート状の上面内部への装着手段により構成することを特徴とする医療用処置器具の挿入ポート。」 2.補正の目的、特許請求の範囲の拡張、変更及び新規事項の追加の有無 本件補正は、本件補正前の平成17年9月13日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、発明を特定するために必要な事項である、「プレート状の面への装着手段」に、「上面内部」との限定を付加して、「プレート状の上面内部への装着手段」とするものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そして、本件補正は、新規事項を追加するものではなく、特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。 3.独立特許要件 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)、以下に検討する。 3-1.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、特開昭64-32835号公報(以下、「引用例」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。 a.「処置具挿入用のスリットを穿設された弾性栓体からなり、内視鏡の処置具挿入口に取り付けられて、平生は同挿入口を閉塞する内視鏡用鉗子栓において、 使用処置具を挿通する貫通孔を有する軟性体と、その外周を被覆し上面に上記貫通孔に対応するスリットを有すると共に、底部に内視鏡の処置具挿入口への取付部を有する硬性体とで構成したことを特徴とする内視鏡用鉗子栓。」(第1頁左下欄第5?13行) b.「[従来の技術] 内視鏡を通じて体腔内に導入した空気、洗浄水等が鉗子等の処置具の挿通用チャンネルを通って外部に漏れることを防止すると共に、体腔内液等の吸引に際して処置具挿通用チャンネルを通って外気が流入するのを阻止するために、内視鏡の操作部本体に形成した、上記チャンネルに連通する処置具挿入口と、該挿入口に挿入した鉗子等の処置具との間の隙間を閉塞するために上記挿入口に鉗子栓が取り付けられている。」(第1頁右下欄第1?10行) c.「本発明の第1実施例を示す第1図において、鉗子栓1は・・・外周を被覆する硬質エラストマからなる硬性体4とで構成されている。上記硬性体4の上面壁の中央部には球面状の凹部4aが形成され、その中央部に穿設されたスリット5が上記貫通孔2の中央に対応して設けられている。また、硬性体4の底部には、内視鏡操作部本体6の処置具挿入口7に固定された鉗子栓取付用口金8に固定される取付部9が形成されていて、鉗子栓1はこの取付部9により挿入口7を平生は閉塞するように取り付けられる。」(第2頁左下欄第7?19行) d.「第2図に示すように、鉗子栓1および挿入口7を介して処置具挿通用チャンネルに挿入されていた処置具10を斜めに引き抜いた場合、硬性体4はその硬度により大きくは伸縮しないから、軟性体3の大きな圧縮によって、硬性体4の上面は、処置具10の引き抜き方向に対し、はぼ直角の位置まで傾動する。つまり、処置具10を斜めに引き抜いても、スリット5を引き裂く力が加わらないので、スリット5の耐久性が増大し、処置具挿入ロ7を気密に閉塞する機能が劣化しにくくなる。」(第2頁右下欄第8?18行) そして、第1図には、筒状の周面を有する鉗子栓1が図示され、第2図には、硬性体4の周面が波打って傾き、硬性体4の上面は、処置具10に対してほぼ直角の位置にある状態が図示されている。 ここで、引用例に記載される「鉗子栓」は、体腔に処置具を挿入するためのものであり、その出入り口となることを前提として記載されており(b.d.参照)、鉗子栓1の硬性体4の底部に形成した取付部9に対応して、内視鏡操作部本体6には、鉗子栓取付用口金8が設けられている(c.参照)。 また、硬性体4は、その周面が筒状であり(第1図参照)、エラストマすなわち弾性のある可撓性樹脂でできているので(c.参照)、柔軟で屈曲自在であるといえ、「第2図に示すように、・・・処置具10を斜めに引き抜いた場合、硬性体4はその硬度により大きくは伸縮しないから、・・・硬性体4の上面は、処置具10の引き抜き方向に対し、はぼ直角の位置まで傾動する。」と記載され(d.参照)、また、第2図にも、周面変形時に硬性体4の上面が変形し難いことが示されていることから、硬性体4の上面は、その周面より相対的に硬いことが把握される。 これら記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理するすると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という)が実質的に記載されている。 「処置具10の出入り口となる、鉗子栓1において、鉗子栓取付用口金8を設けた内視鏡操作部本体6と、 柔軟で屈曲自在な可撓性樹脂により形成する筒状の硬性体4の周面と、 前記周面の上部に設ける、該周面より硬質な可撓性樹脂より形成する硬性体4の上面と、 前記硬性体4の周面の底部に設ける、前記内視鏡操作部本体6の鉗子栓取付用口金8への取付部9により構成する処置具10を挿入する内視鏡用鉗子栓。」 3-2.対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「処置具10」は、その機能からみて、本願補正発明の「処置器具」に相当し、その処置器具を体腔に挿入する機能からみて、引用発明の「鉗子栓」は、本願補正発明の「挿入ポート」に相当する。 また、引用発明の「硬性体4」は、その上面は、周面に比して硬く、処置具挿入用のスリット5が設けられることより、「硬性体4の上面」は、「器具保持部」に相当し、引用発明の相対的に柔軟な「硬性体4の周面」は、本願補正発明の「ポート周面」に相当している。 さらに、引用発明の硬性体4の「上面」及び周面の「底部」と本願補正発明のポート周面の「近端部」及び「遠端部」とは、それぞれが示す部位に差異はなく、引用発明の「取付部9」は、その取り付ける対象に差異があるとしても、本願補正発明のポート周面の遠端部に相当する硬性体4の周面の底部に設けられており、しかも、引用発明の「取付部9」は、取り付けのための構成である点では、本願補正発明の「装着手段」に対応する「装着のための手段」である点で共通している。 また、引用発明の「内視鏡操作部本体6」は、「鉗子栓1」を介して鉗子等の処置具を体腔内に導く部分であり、本願補正発明の「外套管」とは、処置器具等を体内に導く「被装着物」である点で共通し、引用発明の「鉗子栓取付用口金8」と本願補正発明の「外套管のプレート状の上面内部」とは、挿入ポートを装着するための装着位置である点では共通している。 そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。 (一致点) 「内視鏡や処置器具の出入り口となる、挿入ポートにおいて、処置器具等を体内に導く被装着物と、 柔軟で屈曲自在な可撓性樹脂により形成する筒状のポート周面と、 前記ポート周面の近端部に設ける、該ポート周面より硬質な可撓性樹脂より形成する器具保持部と、 前記ポート周面の遠端部に設ける、被装着物の装着位置に装着する手段により構成する医療用処置器具の挿入ポート。」 そして、両者は次の相違点で相違する。 (相違点) 本願補正発明は、体表側に位置するプレート状の面を有する外套管を処置器具等を体腔内に導く被装着物とするものであり、装着の手段は、装着位置を前記外套管のプレート状の上面内部とする装着手段を有するものであるのに対して、引用発明は、処置器具等を体腔に導く被装着物は、内視鏡操作部本体6であり、装着の手段は、装着位置を鉗子栓取付用口金8とする取付部9である点。 3-3.相違点の判断 上記相違点について検討する。 処置器具等を体腔内に導くために、体表側に位置するプレート状の面を有する外套管に対してポートを接続することは、周知技術(参考例 特開平10-108868号公報(【図3】、【図4】)、特開2000-166931号公報(【図3】)、特表平2000-501978号公報(【図9】))であり、引用発明の処置器具を体腔内に導く被装着物としての内視鏡本体に換えて、体表側に位置するプレート状の面を有する外套管を採用する点は、単なる慣用される対象物の置換以上の事項とは認められない。 さらに、外套管の体表側に位置するプレート状の部分は、その内外ともに装着に使用される通常の位置である(上記参考例参照)。 そして、引用発明は、鉗子栓取付用口金8を設けて、位置を特定して取り付けられるものであり、それに対応して取付部9を設けるものであるから、周知の外套管に取り付けるにあたり、設計者はその取り付け位置を指定すべきところ、外套管のプレート状の上面内部を装着位置とすることは、当業者が、その設計にあたり、周知技術に基づいて容易に選定し得た事項と認められるので、外套管のプレート状の上面内部への装着手段を採用する点は、格別の事項とは認められない。 そこで、引用発明に、周知技術を適用して、相違点に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願補正発明による効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3-4.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 III.本願発明 本件補正は、上記のとおり却下され、原審において、平成18年1月7日付け手続補正が却下されているので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という)は、平成17年9月13日付け手続補正書(同補正書は、平成17年10月6日付け手続補正書により補正されている。)により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「内視鏡や処置器具の出入り口となる、挿入ポートにおいて、体表側に位置するプレート状の面を有する外套管と、 柔軟で屈曲自在な可撓性樹脂により形成する筒状のポート周面と、 前記ポート周面の近端部に設ける、該ポート周面より硬質な可撓性樹脂より形成する器具保持部と、 前記ポート周面の遠端部に設ける、前記外套管のプレート状の面への装着手段により構成することを特徴とする医療用処置器具の挿入ポート。」 IV.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記II.3-1.に記載したとおりである。 V.対比・判断 本願発明は、前記II.1.の本願補正発明の「プレート状の上面内部への装着手段」との限定事項から、「上面内部」との限定を省き、「プレート状の面への装着手段」と特定されるものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記II.3-3.に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 VI.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-05-13 |
結審通知日 | 2008-05-15 |
審決日 | 2008-05-27 |
出願番号 | 特願2002-369135(P2002-369135) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 内藤 真徳、石川 太郎 |
特許庁審判長 |
山崎 豊 |
特許庁審判官 |
八木 誠 阿部 寛 |
発明の名称 | 医療用処置器具の挿入ポート |