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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01G 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01G |
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管理番号 | 1181810 |
審判番号 | 不服2005-24540 |
総通号数 | 105 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-09-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-12-20 |
確定日 | 2008-07-24 |
事件の表示 | 特願2002-194752「車両の質量推定方法および装置、ならびに該方法を用いる勾配推定方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年2月5日出願公開、特開2004-37255〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本件は、平成14年7月3日にされた特許出願につき、平成17年11月16日付けで拒絶査定(同月22日発送)がされたところ、これに対し、同年12月20日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成18年1月19日付けで手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「平成18年1月19日付けの手続補正」又は「本件補正」という。)が提出されたものである。 2 平成18年1月19日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年1月19日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正の内容 平成18年1月19日付けの手続補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載を、補正前の「【請求項1】走行中の車両のホイールトルクを予め求めた平坦路定速走行に必要なホイールトルクで補正したのち、当該補正したホイールトルクと前記車両の加減速度との回帰直線を求め、該回帰直線の傾きから前記車両の質量を推定する車両の質量推定方法。」から、補正後の「【請求項1】走行中の車両のホイールトルクを予め求めた平坦路定速走行に必要なホイールトルクで補正したのち、当該補正したホイールトルクと前記車両の加減速度との回帰直線を求め、該回帰直線の傾きから前記車両の質量を推定する登坂降坂、乗員数・荷物の多寡、牽引時の車両の質量推定方法。」に補正する補正事項を含むものである。 上記補正事項は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項に「登坂降坂、乗員数・荷物の多寡、牽引時の」という記載を加えることで、さらに限定するものであるから、平成18年改正前特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。 (2)引用例及び引用発明 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前の平成12年2月14日に頒布された刊行物である特許第3008111号公報(以下「引用例」という。)には、図面とともに次の記載がある。 ア 「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は請求項1の上位概念の特徴を持つ、推進力により縦方向に動かされる自動車の重量を求める装置にに関する。」(【0001】) イ 「【0003】これらのシステムは、トレーラ又はセミトレーラを持つ貨物自動車において、例えば下り坂走行の際例えばトレーラス又はセミトレーラの後押しによる牽引車のかじ取り動作への不利な影響を防止するために、特に重要である。バスでも、駆動装置、懸架装置及び制動装置の最適化のため、現在の車両全重量を知ることが著しく重要である。なぜならば、バスの各停留所において、車両重量が著しく変化することがあるからである。後部駆動の関節連結バスは、車両後部のコース外れを防止するために、連結範囲における減衰部材の制御又は調整のため、車両重量についての必要なデータを必要とする。」(【0003】) ウ 「【0011】本発明は、車両重量及び車道勾配を求めるために、車両に作用する推進力Z_(TRL)、対応する車両縦加速度b_(Fzg)及び対応する勾配被駆動力Z_(HA)しか必要でないという認識に基いている。初期状況は一般に公知の関係を形成する。 Z_(TRLi)=m_(Fzg)*b_(Fzgi)+Z_(HA) ここで推進力Z_(TRL)は、車両に作用する駆動力又は制動力Z_(T)からころがり抵抗Z_(R)及び空気抵抗Z_(L)差引いて形成される。 Z_(TRL)=Z_(T)-Z_(R)-Z_(L) 車両の推進力Z_(TRL)は、例えば機関トルクが測定された特性曲線図の形でペダル位置、回転数等のような特定の機関パラメータに応じて記憶されている場合、例えば機関トルク、変速機変速比、車軸変速比及び車輪半径から求めることができる。現在普通の多数の機関制御装置では、機関トルクは車両において既に利用可能である。車両縦加速度は、単位時間に進んだ距離を時間について2回微分することによって、例えば車輪半径に関連して車輪回転数を介して計算される。このために必要な値は、例えばロツク防止システム又は駆動滑り調整システムから供給され、従って多くの現在の車両において利用可能である。 【0012】添字iを持つ項は、順次に検出されて時系列に記憶される値である。順次に続く時点t_(i)の時間間隔Δtにおいて時系列のためこれらの値が検出されるのであるが、この時間間隔Δtが充分小さいと、車両重量m_(Fzg)及び勾配被駆動力Z_(HA)は、この時間間隔Δtにおいて一定とみなすことができる。 【0013】請求項2によれば、時系列の順次に続く値の数Nを利用して、回帰計算方法により方程式 【数7】 S_(bz)-S_(z)*S_(b)/N m_(Fzg)=??????????? S_(bb)-S_(b)*S_(b)/N に従って、車両重量に関連する信号m_(Fzg)を発生することができる。この方程式において次の和の項が使用される。 【数8】 N S_(b)=Σb_(Fzgi) i=1 【数9】 N S_(z)=ΣZ_(TRLi) i=1 【数10】 N S_(bb)=Σb_(Fzgi)*b_(Fzgi) i=1 【数11】 N S_(bz)=Σb_(Fzgi)*Z_(TRLi) i=1 」(【0011】?【0013】) したがって、上記摘記事項ア?ウによれば、引用例には「バスに作用する駆動力又は制動力Z_(T)をころがり抵抗Z_(R)及び空気抵抗Z_(L)を差引いたのち、差引いて形成したバスの推進力Z_(TRLi)とバスの縦加速度b_(Fzgi)を利用した回帰計算方法により前記バスの重量m_(Fzg)を求めるバスの各停留所において、車両重量が著しく変化するバスの重量を求める方法。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 (3)対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「バス」は、本願補正発明の「車両」に相当する。 イ 引用発明の「バスに作用する駆動力又は制動力Z_(T)」と、本願補正発明の「走行中の車両のホイールトルク」とは、「走行中の車両に作用する力学量」である点で共通している。 ウ 平坦路定速走行に必要な駆動力がころがり抵抗Z_(R)及び空気抵抗Z_(L)の和と等しい(上記摘記事項ウ記載の2つの式において、Z_(HA)=0(平坦路)、b_(Fzgi)=0(定速)とおくと、Z_(T)=Z_(R)+Z_(L)となる)ことを考慮すると、引用発明の「ころがり抵抗Z_(R)及び空気抵抗Z_(L)」と、本願補正発明の「平坦路定速走行に必要なホイールトルク」とは、「平坦路定速走行に必要な力学量」である点で共通している。 エ 引用発明の「差引いた」は、本願補正発明の「補正した」に相当する。 オ 引用発明の「差引いて形成したバスの推進力Z_(TRLi)」と、本願補正発明の「補正したホイールトルク」とは、「補正した走行中の車両に作用する力学量」である点で共通し、引用発明の「縦加速度b_(Fzgi)」、「重量m_(Fzg)」、「求める」は、本願補正発明の「加減速度」、「質量」、「推定する」にそれぞれ相当し、上記摘記事項ウ記載の式Z_(TRLi)=m_(Fzg)*b_(Fzgi)+Z_(HA)から「Z_(TRLi)」と「b_(Fzgi)」を変数とする直線の傾きが「m_(Fzg)」であることを考慮すると、引用発明の「差引いて形成したバスの推進力Z_(TRLi)とバスの縦加速度b_(Fzgi)を利用した回帰計算方法により前記バスの重量m_(Fzg)を求める」と、本願補正発明の「当該補正したホイールトルクと前記車両の加減速度との回帰直線を求め、該回帰直線の傾きから前記車両の質量を推定する」とは、「補正した走行中の車両に作用する力学量と前記車両の加減速度との回帰直線の傾きから前記車両の質量を推定する」点で共通している。 カ 引用発明の「バスの各停留所において、車両重量が著しく変化するバスの重量を求める方法」は、バスの各停留所において、車両重量が著しく変化することが乗員数の多寡によるものであることを考慮すると、本願補正発明の「登坂降坂、乗員数・荷物の多寡、牽引時の車両の質量推定方法」に相当する。 したがって、上記ア?カの考察から、両者は、 [一致点] 「走行中の車両に作用する力学量を平坦路定速走行に必要な力学量を補正したのち、補正した走行中の車両に作用する力学量と前記車両の加減速度との回帰直線の傾きから前記車両の質量を推定する登坂降坂、乗員数・荷物の多寡、牽引時の車両の質量推定方法。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 平坦路定速走行に必要な力学量が、本願補正発明では、「予め求めた」ものであるのに対して、引用発明では、そのような特定がなされていない点。 [相違点2] 「走行中の車両に作用する力学量」、「平坦路定速走行に必要な力学量」、「補正した走行中の車両に作用する力学量」が、本願補正発明では、それぞれ「ホイールトルク」、「平坦路定速走行に必要なホイールトルク」、「補正したホイールトルク」であるのに対して、引用発明では、それぞれ「駆動力又は制動力Z_(T)」、「ころがり抵抗Z_(R)及び空気抵抗Z_(L)」、「差引いて形成したバスの推進力Z_(TRLi)」である点。 [相違点3] 回帰直線の傾きを得るのに、本願補正発明では、回帰直線を求めているのに対して、引用発明では、傾きのみを求めている点。 (4)判断 以下、上記相違点について検討する。 [相違点1]について 平坦路定速走行に必要な力学量を予め求めておくことは周知の技術であり(例えば、特開平4-171239号公報(3頁右上欄20行?左下欄3行等)、特開2000-104614号公報(【0039】等)を参照)、かかる周知の技術を引用発明に適用して、本願補正発明のごとく構成することは、当業者が容易になし得たものである。 [相違点2]について 力に車輪径を掛けたものがトルクとなることは力学上明らかであり、トルクによる式を用いて車両の質量推定することも周知の技術であるから(例えば、特開平9-242862号公報(【0043】等)を参照)、かかる周知の技術を引用発明に適用して、本願補正発明のごとく構成することは、当業者が容易になし得たものである。 [相違点3]について 回帰直線を求め、回帰直線の傾きを得ることは周知の技術であり(例えば、特開2001-171504号公報(【0079】等)を参照)、かかる周知の技術を引用発明に適用して、本願補正発明のごとく構成することは、当業者が容易になし得たものである。 そして、本願補正発明の奏する効果も引用例の記載及び周知の技術から当業者が容易に予測し得る範囲のものにすぎない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (5)補正却下の決定のむすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3 本願発明 平成18年1月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?8に係る発明は、願書に最初に添付した明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】走行中の車両のホイールトルクを予め求めた平坦路定速走行に必要なホイールトルクで補正したのち、当該補正したホイールトルクと前記車両の加減速度との回帰直線を求め、該回帰直線の傾きから前記車両の質量を推定する車両の質量推定方法。」 4 引用例 引用例には、図面とともに上記「2」の「(2)」において摘記した事項が記載されており、引用例には、同「(2)」において認定したとおりの引用発明が記載されているものと認められる。 5 対比・判断 本願発明は、上記「2」において検討した本願補正発明の発明特定事項のうち、「登坂降坂、乗員数・荷物の多寡、牽引時の」という限定を省いたものであり、本願補正発明が、引用発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 6 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項2?8に係る発明について判断を示すまでもなく、本願は、拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-05-21 |
結審通知日 | 2008-05-27 |
審決日 | 2008-06-09 |
出願番号 | 特願2002-194752(P2002-194752) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G01G)
P 1 8・ 121- Z (G01G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 森 雅之 |
特許庁審判長 |
杉野 裕幸 |
特許庁審判官 |
岡田 卓弥 上原 徹 |
発明の名称 | 車両の質量推定方法および装置、ならびに該方法を用いる勾配推定方法および装置 |
代理人 | 朝日奈 宗太 |