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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07D
管理番号 1182080
審判番号 不服2006-23034  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-10-11 
確定日 2008-07-31 
事件の表示 特願2004- 77271号「金券類の真贋判定方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月29日出願公開、特開2004-213691号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成6年12月6日に出願した特願平6-329856号の一部を平成16年3月17日に新たな特許出願としたものであって、平成18年9月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年10月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年11月9日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

II.平成18年11月9日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年11月9日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「金券類を構成する基材の一部に特定周波数の電磁波に共振する小型で薄型の共振回路を基材の製造時に複数個ランダムに分散させて埋設し、
紙質基材完成後、適宜の大きさに切断して、地紋、文字、数字列の番号を印刷し、
印刷完了後、前記共振回路の位置情報を検知し、得られた位置情報によって決定される数字列と当該金券類の券番号とを組み合わせて作成されたバーコードあるいはOCR文字等を前記金券類の券面の印刷図形に重ねて印刷し、
真贋の判定の際に、前記共振回路の位置情報を検知し、
得られた位置情報によって決定される数字列と前記バーコードあるいはOCR文字等を読取って得られた数字列とを比較する、
ことを特徴とする金券類の真贋判定方法。」(下線部は補正個所を示す)

2.補正の目的
上記補正は、平成18年5月31日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲(以下、「拒絶査定時の特許請求の範囲」という。)の請求項1に記載された発明の「得られた位置情報によって決定される数字列を利用して作成されたバーコードあるいはOCR文字等」を、「得られた位置情報によって決定される数字列と当該金券類の券番号とを組み合わせて作成されたバーコードあるいはOCR文字等」と、願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内で限定するものであって、かつ、補正前の発明と補正後の発明とは、その産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3-1.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平5-181884号公報(以下、「引用例」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「【実施例】以下、実施例に基づいて、この発明を更に詳細に説明する。図1?図3は、請求項2の発明の一実施例である投票券の偽造防止方法のうち、投票券の作製方法を説明する為の図面である。以下、投票券の作製方法から説明する。
先ず、投票券の材料となるロール紙1の裏面に、ロール紙と同一色の磁気インク2をランダムに塗布してゆく。図1は、このようにして磁気インク2が塗布されたロール紙の裏面を示したものである。但し、磁気インクの色はロール紙の地色と同一色であるので、実際には、外見上磁気インクを認識することは出来ない。尚、磁気インクを予め定まった位置に塗布すれば、払戻機での磁気インクの検出が容易になるが、本発明では偽造防止を完全にするためランダムに磁気インクを塗布している。
次に、磁気インクの塗布されたロール紙について、磁気ヘッド3が、磁気インクの塗布されている座標位置を読み取る(図2、図3参照)。この場合、磁気ヘッド3は、予め定まっている範囲内、例えば図3に示すX-Yの範囲内の磁気インクの塗布位置を読み取る。そして、この磁気インクの座標位置は読取回路4を介して発券制御部5に伝えられ、発券制御部5は、読み取られたX-Yの範囲内の前記座標位置に基づいて所定の符号化をして位置データを求める。
以上の処理によって求まった位置データは、本来印刷されるべき投票データ等と共に、印字部6によってロール紙に印字される。そして、印字の終了したロール紙は適宜な処理により切断されて投票券となる。続いて、図4を参照しながら、払戻機における処理を説明する。払戻機では、当たり券と思われる投票券7が搬送されてくると、先ず、磁気ヘッド8によって所定範囲内の磁気インクの塗布状態を読み取る。そして、読み取った磁気インクに関する位置データは、払戻制御部9に加えられる。
一方、投票券7は更に搬送され、文字読み取り部10において、投票データと、投票券の作製時に印刷された位置データとが読み取られる。そして、払戻制御部9は、この位置データを復号化し、その復号化データが前記磁気インクの位置データと一致するか否かを判定する。ここで、搬送されてきた投票券7が、もし偽造券であれば、磁気ヘッド8によって磁気インクが読み取れないか、若しくは、位置データを復号化した結果と読み取った磁気インクの座標位置とが不一致となる。そこで、払戻機は、当該投票券7を偽造券と判定して換金を拒否する。
図5は、上記した払戻機における処理を更に具体的に示すフローチャートである。図5では、図6に示す競輪の車券の真偽判定と的中判定の処理を示しており、以下、図5、図6を参照しつつ説明する。払戻機に挿入された車券は、先ず、磁気ヘッド8によって磁気インクの塗布位置が読み取られ、その座標位置データが記憶される(ステップST(以下STと略す)1、図4参照)。
次に、文字読取部10によって、車券に記載されている「年度・回・日・月日・レース番号・機械番号・追番・各組番・各金額・合計金額」の文字が読み取られる(ST2、図4参照)。また、文字読取部10によって、車券に印刷されている「暗号コード」と、「符号コード(位置データ)」とが読み取られる(ST3)。尚、この暗号コードは、ST2で読み取られた文字データを照合する為のものであり、符号コード(位置データ)は、磁気インクの塗布位置を照合する為のものである。
続いて、いま読み取った暗号コードや符号化コードを解読する(ST4)。そして、ST2で読み取った「年度・回・日」等の文字データに関するチェック値と、暗号により書き込まれていたデータ値とが一致するか否かを比較し(ST5)、さらに、ST1で読み取った磁気インクの座標位置が位置データを復号化した結果と一致するか否かを比較する(ST6)。
ST5、ST6の比較の結果、全てが一致した場合は、ST9に移るが、一つでも一致しない箇所があれば、注意判定とする(ST8)。チェック項目が全て一致すればST9に移り、今度は、当該車券が的中しているか否かを判定する(ST9)。そして、的中していなければ不的中判定とし(ST10)、的中していれば払戻金の表示をする(ST11)。」(【0011】?【0019】段落)

上記記載から、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「投票券の作製においては、投票券の材料となるロール紙1の裏面に、ロール紙と同一色の磁気インク2をランダムに塗布し、次に、磁気インクの塗布されたロール紙について、磁気ヘッド3で、磁気インクの塗布されている座標位置を予め定まっている範囲内において読み取り、磁気インクの座標位置に基づいて所定の符号化をして位置データを求め、本来印刷されるべき「年度・回・日・月日・レース番号・機械番号・追番・各組番・各金額・合計金額」等の投票データ等と共に、「符号コード(位置データ)」を印字部6によってロール紙に印字し、印字の終了したロール紙は適宜な処理により切断されて投票券とし、そして払戻機での判定では、磁気ヘッド8によって所定範囲内の磁気インクの塗布状態を読み取り、読み取った磁気インクに関する位置データと、文字読み取り部10において、投票データと共に読み取られて復号化された位置データとの一致・不一致を払戻制御部で判定する偽造券の判定方法。」

3-2.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、後者における「投票券」は、的中すれば換金できるものであるから、「金券類」といえるものである。そして、後者の「ロール紙」、「符号コード(位置データ)」は、その機能ないし構造からみて、前者の「紙質基材」、「得られた位置情報によって決定される数字列」にそれぞれ相当し、後者の「投票データ」は、「年度・回・日・月日・レース番号・機械番号・追番・各組番・各金額・合計金額」等を含むところ、例えば、「追番」は通し番号を意味するから、「投票データ」のうちの「追番」等は、後者の「金券類の券番号」に実質的に相当する。
また、後者の、「位置データ」を「投票データ等と共に、印字部6によってロール紙に印字」することは、前者の、「得られた位置情報によって決定される数字列と当該金券類の券番号とを組み合わせて」「印刷」することに相当する。
そして、後者の「磁気ヘッドで、(ロール紙の)磁気インクの塗布されている座標位置を予め定まっている範囲内において読み取」ることと、前者の、「基材の一部に」「埋設」された「共振回路の位置情報を検知」することとは、「紙質基材の少なくとも一部に配置された被検出体の位置情報を検知する」という機能において共通しており、後者の「磁気インク」は、検知手段である磁気ヘッドに検出される「被検出体」である点で、前者の、検知される「共振回路」と共通している。
また、両者は、「紙質基材」に、「得られた位置情報によって決定される数字列」以外のデータをも読み取り対象として印刷し、さらに、「紙質基材」を切断することによって金券類を作成する点でも共通している。

そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「金券類を構成する基材の少なくとも一部に被検出体を複数個ランダムに分散させて設け、
紙質基材完成後、検知器から得られた位置情報によって決定される数字列と、金券類の券番号等を組み合わせて印刷し、また、適宜の大きさに切断して、金券類を作成し、
真贋の判定の際に、前記被検出体の位置情報を検知し、
得られた位置情報によって決定される数字列と前記印刷されたものを読取って得られた数字列とを比較する、
金券類の真贋判定方法。」

そして、両者は次の点で相違する。
(相違点1)
本願補正発明においては、「被検出体」が「特定周波数の電磁波に共振する小型で薄型の共振回路」であり、基材の製造時に、その一部に埋設しているのに対し、引用発明においては、「被検出体」が「磁気インク」であって、基材の裏面に塗布されている点。
(相違点2)
本願補正発明においては、紙質基材完成後、適宜の大きさに切断してから、「文字等」を印刷しているのに対し、引用発明においては、印字してから切断している点。
(相違点3)
本願補正発明においては、得られた位置情報によって決定される数字列と当該金券類の券番号とを組み合わせて作成されたバーコードあるいはOCR文字等を前記金券類の券面の印刷図形に重ねて印刷」しているのに対し、引用発明においては、得られた位置情報によって決定される数字列と、金券番号等を組み合わせたものを前記金券類の券面の印刷図形に重ねて印刷しているのか明らかでない点。

3-3.相違点の判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
金券類の真贋判定において、判定のための信号を金券類から得るための被検出体を、金券類に配置された小型で薄型の共振回路とすることは、例えば、原査定の拒絶の理由に引用した特開平5-101249号公報(【0007】?【0008】段落参照)、あるいは実願平4-28131号(実開平5-83867号)のCD-ROM等に示すように周知の技術手段であり、共振回路を金券類の製造時に内蔵、即ち埋設することも、上記特開平5-101249号公報(【0010】段落参照)に示すように周知である。しかも、引用発明も、「所定範囲内の磁気インクの塗布状態を読み取」るものであることから、被検出体を金券類の一部の所定範囲に配設することが示唆されているといえるから、引用発明に上記周知の技術手段を適用して、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
(相違点2について)
金券類の作成において、印刷と基材の切断のどちらを先にするかは、当業者が適宜選択し得た設計事項にすぎない。
(相違点3について)
金券類に予め、地紋等の印刷図形を印刷しておくことは常套手段であり(例えば、引用例にも、【0023】段落などに、投票データの印刷される前のロール紙に地紋を印刷しておくことについての言及がある。)、これに重ねて後から券番号等を印刷することは、当業者が適宜なし得た設計的事項にすぎない。
また、本願補正発明における「得られた位置情報によって決定される数字列と当該金券類の券番号とを組み合わせて作成されたバーコードあるいはOCR文字等」は、「バーコードあるいはOCR文字等」とあるように、その表示形態は(OCR)読み取り可能なものであれば、バーコードあるいはOCR文字に限定されるものではなく、また、その表示内容も、単に「得られた位置情報によって決定される数字列と当該金券類の券番号」を組み合わせたものにすぎないから、この点は、実質的に、引用発明の「位置データ」を「投票データ等と共に」組み合わせたものと相違しない。

そして、本願補正発明による効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-4.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、拒絶査定時の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「金券類を構成する基材の一部に特定周波数の電磁波に共振する小型で薄型の共振回路を基材の製造時に複数個ランダムに分散させて埋設し、
紙質基材完成後、適宜の大きさに切断して、地紋、文字、数字列の番号を印刷し、
印刷完了後、前記共振回路の位置情報を検知し、得られた位置情報によって決定される数字列を利用して作成されたバーコードあるいはOCR文字等を前記金券類の券面の印刷図形に重ねて印刷し、
真贋の判定の際に、前記共振回路の位置情報を検知し、
得られた位置情報によって決定される数字列と前記バーコードあるいはOCR文字等を読取って得られた数字列とを比較する、
ことを特徴とする金券類の真贋判定方法。」

IV.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記II.3-1に記載したとおりである。

V.対比・判断
本願発明は、前記II.1の本願補正発明における「得られた位置情報によって決定される数字列を利用して作成されたバーコードあるいはOCR文字等」についての、「得られた位置情報によって決定される「数字列と当該金券類の券番号とを組み合わせて作成された」という限定を省略したものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに、他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記II.3-3に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-30 
結審通知日 2008-06-03 
審決日 2008-06-16 
出願番号 特願2004-77271(P2004-77271)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨江 耕太郎  
特許庁審判長 山崎 豊
特許庁審判官 仲村 靖
蓮井 雅之
発明の名称 金券類の真贋判定方法  
代理人 金山 聡  

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