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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1183088
審判番号 不服2006-1626  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-26 
確定日 2008-08-14 
事件の表示 平成 9年特許願第 47767号「蛍光表示管の電源回路」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 9月11日出願公開、特開平10-240185〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成9年3月3日の出願であって、平成17年12月20日付け(発送日平成18年1月4日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年1月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成18年1月26日付けの手続補正についての補正却下の決定
1 補正却下の決定の結論
平成18年1月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

2 理由
(1)補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲である、
「【請求項1】所定の電圧をパルス信号に応じてオン/オフし、このパルス制御された出力電圧を蛍光表示管のフィラメントに印加する電力制御回路と、
基本周波数が30?500Hzの範囲でデューティー比が所定値の前記パルス信号を電力制御回路に出力する発振回路と、
電力制御回路の出力と蛍光表示管のフィラメント間に直列に接続された、フィラメントに印加される電力を制限する電力制限回路とを有することを特徴とする蛍光表示管の電源回路。
【請求項2】請求項1記載の蛍光表示管の電源回路において、
前記電力制限回路は、電力制御回路の出力と蛍光表示管のフィラメント間に直列に接続された抵抗であることを特徴とする蛍光表示管の電源回路。
【請求項3】請求項1記載の蛍光表示管の電源回路において、
前記電力制御回路は、コレクタが電源に接続されエミッタが出力となる第1のトランジスタ、一端が第1のトランジスタのベースに接続され他端が前記電源に接続された抵抗、及びアノードが接地されカソードが第1のトランジスタのベースに接続された定電圧ダイオードを有する定電圧回路と、
コレクタが第1のトランジスタのベースに接続されエミッタが接地されベースにパルス信号が入力される第2のトランジスタを有するスイッチング回路とからなるものであることを特徴とする蛍光表示管の電源回路。
【請求項4】所定の電流をパルス信号に応じてオン/オフし、このパルス制御された出力電流を蛍光表示管のフィラメントに印加する電力制御回路と、 基本周波数が30?500Hzの範囲でデューティー比が所定値の前記パルス信号を電力制御回路に出力する発振回路と、
蛍光表示管のフィラメントと並列に接続された、フィラメントに印加される電力を制限する電力制限回路とを有することを特徴とする蛍光表示管の電源回路。
【請求項5】請求項4記載の蛍光表示管の電源回路において、
前記電力制限回路は、蛍光表示管のフィラメントと並列に接続された抵抗であることを特徴とする蛍光表示管の電源回路。
【請求項6】請求項4記載の蛍光表示管の電源回路において、
前記電力制御回路は、一端が電源に接続された第1の抵抗、エミッタが第1の抵抗の他端に接続されコレクタが出力となる第1のトランジスタ、アノードが第1のトランジスタのベースに接続されカソードが前記電源に接続された定電圧ダイオード、及び一端が第1のトランジスタのベースに接続され他端が接地された第2の抵抗を有する定電流回路と、
エミッタが接地されベースにパルス信号が入力される第2のトランジスタ、一端が第2のトランジスタのコレクタに接続された第3の抵抗、及びベースが第3の抵抗の他端に接続されエミッタが前記電源に接続されコレクタが第1のトランジスタのベースに接続された第3のトランジスタを有するスイッチング回路とからなるものであることを特徴とする蛍光表示管の電源回路。
【請求項7】請求項1又は4記載の蛍光表示管の電源回路において、
前記パルス信号のデューティー比は、電力制御回路の出力電圧のデューティー比が12.5?50%の範囲となるように設定されることを特徴とする蛍光表示管の電源回路。」
を、補正後の特許請求の範囲である

「【請求項1】所定の電圧をパルス信号に応じてオン/オフし、このパルス制御された出力電圧を蛍光表示管のフィラメントに印加する電力制御回路と、
基本周波数が30?500Hzの範囲でデューティー比が所定値の前記パルス信号を電力制御回路に出力する発振回路と、
電力制御回路の出力と蛍光表示管のフィラメント間に直列に接続された、フィラメントに印加される電力を制限する電力制限回路とを有し、 前記パルス信号のデューティー比は、前記電力制御回路の出力電圧のデューティー比が12.5?50%の範囲のいずれかの値となるように設定され、 前記電力制御回路は、コレクタが電源に接続されエミッタが出力となる第1のトランジスタ、一端が前記第1のトランジスタのベースに接続され他端が前記電源に接続された抵抗、及びアノードが接地されカソードが前記第1のトランジスタのベースに接続された定電圧ダイオードを有する定電圧回路と、コレクタが前記第1のトランジスタのベースに接続されエミッタが接地されベースに前記パルス信号が入力される第2のトランジスタを有するスイッチング回路とからなるものであることを特徴とする蛍光表示管の電源回路。
【請求項2】請求項1記載の蛍光表示管の電源回路において、
前記電力制限回路は、電力制御回路の出力と蛍光表示管のフィラメント間に直列に接続された抵抗であることを特徴とする蛍光表示管の電源回路。
【請求項3】所定の電流をパルス信号に応じてオン/オフし、このパルス制御された出力電流を蛍光表示管のフィラメントに印加する電力制御回路と、 基本周波数が30?500Hzの範囲でデューティー比が所定値の前記パルス信号を電力制御回路に出力する発振回路と、 蛍光表示管のフィラメントと並列に接続された、フィラメントに印加される電力を制限する電力制限回路とを有し、 前記パルス信号のデューティー比は、前記電力制御回路の出力電圧のデューティー比が12.5?50%の範囲のいずれかの値となるように設定され、 前記電力制御回路は、一端が電源に接続された第1の抵抗、エミッタが前記第1の抵抗の他端に接続されコレクタが出力となる第1のトランジスタ、アノードが前記第1のトランジスタのベースに接続されカソードが前記電源に接続された定電圧ダイオード、及び一端が前記第1のトランジスタのベースに接続され他端が接地された第2の抵抗を有する定電流回路と、エミッタが接地されベースに前記パルス信号が入力される第2のトランジスタ、一端が前記第2のトランジスタのコレクタに接続された第3の抵抗、及びベースが前記第3の抵抗の他端に接続されエミッタが前記電源に接続されコレクタが前記第1のトランジスタのベースに接続された第3のトランジスタを有するスイッチング回路とからなるものであることを特徴とする蛍光表示管の電源回路。
【請求項4】請求項3記載の蛍光表示管の電源回路において、 前記電力制限回路は、蛍光表示管のフィラメントと並列に接続された抵抗であることを特徴とする蛍光表示管の電源回路。」
と補正する補正事項を含むものである。(なお、下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)

(2)本件補正の適否について
本件補正は、補正前の請求項1並びに請求項4をそれぞれ引用する形式で記載された請求項3並びに請求項6に記載した、発明を特定するために必要な事項である「デューティー比が所定値の前記パルス信号」について、「前記パルス信号のデューティー比は、前記電力制御回路の出力電圧のデューティー比が12.5?50%の範囲のいずれかの値となるように設定され、」と限定するものであるから平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後における特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かについて以下に検討する。

(3)引用刊行物
ア 本願出願前に頒布された刊行物である特開平4-145488号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。

(ア-a)「2.特許請求の範囲 次の構成を備えたことを特徴とする蛍光表示管のフィラメント駆動回路。(イ)上記フィラメントへの給電を制御するスイッチング素子。(ロ)上記スイッチング素子の制御端子に周期的にパルスを出力するパルス発生回路。このパルスに応答してスイッチング素子がオンすると、上記フィラメントに電源からの電流が供給される。(ハ)上記スイッチング素子の制御端子とパルス発生回路との間に配置されたハイパスフィルタ。」(特許請求の範囲)

(ア-b)「[産業上の利用分野]本発明は、蛍光表示管のフィラメントを駆動する回路に関する。」(第1頁左下欄第16-18行目)

(ア-c)「発明者はまず、フィラメントと直列にスイッチング素子を接続し、このスイッチング素子をパルス発生回路からのパルスにより動作させて、フィラメント給電を間欠的に行うことを考えた。しかし、このような構成では、パルス発生回路の故障により、その出力がスイッチング素子をオンにするレベルのまま固定されてしまった場合、フィラメントの過熱およびそれに伴う損焼のおそれがあった。」(第2頁左上欄第19行目-同頁右上欄第7行目)

(ア-d)「[作用]パルス発生回路の故障により、その出力がスイッチング素子をオンにするレベルのまま固定されてしまっても、上記パルス発生回路とスイッチング素子の制御端子との間にはハイパスフィルタが配置されているので、スイッチング素子をオフのまま維持することができる。この結果、フィラメントの過熱およびそれに伴う損焼を防止することができる。」(第2頁右上欄20行目-同頁左下欄第8行目)

(ア-e)「上記フィラメント駆動回路3は、第1図に示されるように、バッテリVbからグランドに向かって順に接続されたトランジスタ13(スイッチング素子)と抵抗11とツェナーダイオード12を備えている。抵抗11とツェナーダイオード12により定電圧回路10が構成されている。トランジスタ13はPNP型のものであり、エミッタがバッテリVbに接続され、コレクタが抵抗11に接続されている。ツェナーダイオード12には、上記フィラメントFが並列接続されている。
フィラメント駆動回路3はさらにパルス発生回路15を備えている。このパルス発生回路15の出力段とバッテリVbとの間には、コンデンサ21、2つの抵抗22,23が直列をなして接続されている。これら抵抗22,23間の接続点は上記トランジスタ13のベースに接続されている。コンデンサ21と抵抗22,23はハイパスフィルタ20を構成している。」(第2頁右下欄第3-20行目)

(ア-f)「トランジスタ13のベースとバッテリVbとの間には、カソードをバッテリVbに向けたダイオード24が接続されている。このダイオード24は、上記パルス出力回路15からの出力レベルがローレベルからハイレベルに切り替わった時に、トランジスタ13のベース・エミッタ間に付与されようとする逆バイアスを逃がすためのものである。」(第3頁左上欄第1-8行目)

(ア-g)「上述構成において、パルス発生回路15から例えば20KHzでローレベルのパルスが出力されるたびに、バッテリVbからバイパスフィルタ20を経、パルス発生回路15に向かって電流が流れ、抵抗23での電圧降下によりトランジスタ13がバイアスされてオンする。トランジスタ13がオンすると、バッテリVbからの電流が抵抗11を流れ、さらにフィラメントFとツェナーダイオード12に流れる。この際、バッテリVbの電圧が変動しても11を流れる電流およびこれに伴う電圧降下が変動するだけで、ツェナーダイオード12の両端間電圧、換言すればフィラメントFへの印加電圧は一定に保たれる。」(第3頁左上欄第9-同頁右上欄1行目)

(ア-h)「したがって、フィラメントFは、上記ツェナーダイオード12の設定電圧とパルスのデユーティ比に応じて一定の発熱量を維持できる。」 (第3頁右上欄第1-4行目)

(ア-i)「第4図に示す実施例は、パルス発生回路15,ハイパスフイルタ20,ダイオード24を備えている点は第1図,第3図と同じであるが次の点で異なる。第4図の実施例は、2段のトランジスタ13A,13Bを備えている。前段トランジスタ13Aはパルス発生回路15からの出力に応答してオン、オフする。前段トランジスタ13Aのコレクタは後段トランジスタ13Bのベースに接続されている。後段トランジスタ13BはフィラメントFの給電制御として用いられる。後段トランジスタ13Bのエミッタ側にフィラメントFが接続され、後段トランジスタ13Bのコレクタが抵抗100を介してバッテリVbに接続されている。また、抵抗111とツェナーダイオード112からなる定電圧回路110がバッテリVbとグランドとの間に介在され、抵抗111とツェナーダイオード112の接続点がトランジスタ13Bのベースに接続されている。」(第4頁左上欄第4行目-同頁右上欄第1行目)

(ア-j)「さらに、前段トランジスタ13Aのコレクタと後段トランジスタ13Bのベースとの間には高周波カット用のフィルタ120が設けられている。このフィルタ120は、前段トランジスタ13Aのコレクタと後段トランジスタ13Bのベースとの間に接続された抵抗121と、一端が抵抗121と後段トランジスタ13Bのベース間に接続され他端が接地されたコンデンサ122とを有している。」(第4頁右上欄第1-9行目)

(ア-k)「上記実施例の作用を第5図のタイムチャートを参照しながら説明する。パルス発生回路15からローレベルのパルスが出力された時に、これに応答して前段トランジスタ13Aがオフとなり、後段トランジスタ13Bのベースに定電圧回路110のツェナーダイオード112の定電圧が印加される。その結果、後段トランジスタ13BがオンしてフィラメントFにバッテリVbからの電力が供給される。この際、フィラメントFの印加電圧は、ツェナーダイオード112の定電圧から、後段トランジスタ13Bのベース・エミッタ間電圧を差し引いた電圧となり、ほぼ一定に維持できる。したがって、フィラメントFの発熱量も一定である。」(第4頁右上欄第10行目-同頁左下欄第3行目)

(ア-m)「フィラメントFへ印加されるパルス電圧は、フィルタ120により高調波成分がカットされるため、破線で示すような完全な矩形波にならず、実線で示すようになだらかな波形になる。これにより、ラジオ等へのノイズ発生源となるのを防ぐことができる。」 (第4頁左下欄第7-12行目)

(ア-n)「抵抗100はトランジスタ13Bのコレクタ・エミッタ間で負担すべき電圧降下を一部分担する役割を担うが、原理的にはなくてもよい。」(第4頁左下欄第13-15行目)

上記摘記事項(ア-a)ないし(ア-n)より、引用刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認める。
「ツェナーダイオード112の定電圧から、後段トランジスタ13Bのベース・エミッタ間電圧を差し引いた電圧をパルスに応じてオン/オフして蛍光表示管のフィラメントFの給電制御として用いる回路と、
例えば20KHzでローレベルの前記パルスを前段トランジスタ13Aに出力するパルス発生回路15と、
バッテリVbと後段トランジスタ13Bのコレクタ間に直列に接続された抵抗100とを有し、
前記給電制御として用いる回路は、コレクタが抵抗100を介してバッテリVbに接続されエミッタがフィラメントFに接続された後段トランジスタ13Bと、
一端が前記後段トランジスタ13Bのベースに高周波カット用のフィルタ120を介して接続され、他端が前記バッテリVbに接続された抵抗111、及び、アノードが接地され、カソードが前記後段トランジスタ13Bのベースに高周波カット用のフィルタ120を介して前記後段トランジスタ13Bのベースに接続されたツェナーダイオード112を有する定電圧回路110と、
コレクタが前記後段トランジスタ13Bのベースに高周波カット用のフィルタ120を介して接続されエミッタが接地されベースに前記パルスがハイパスフィルタ20を介して入力される前段トランジスタ13Aとからなるものである蛍光表示管のフィラメント駆動回路。」

イ 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平4-145489号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。

(イ-a)「2.特許請求の範囲 次の構成を備えた車両用蛍光表示管のフィラメント駆動回路。(イ)上記フィラメントへの給電を制御するスイッチング素子。(ロ)上記バッテリの電圧の2乗にほぼ逆比例するデューテイ比の駆動パルスを周期的にスイッチング素子に出力する駆動パルス出力回路。この駆動パルスに応答してスイッチング素子がオンした時、上記フィラメントにバッテリからの電力が供給される。」(特許請求の範囲)

(イ-b)「[産業上の利用分野]本発明は、車両用蛍光表示管のフィラメントを駆動する回路に関する。」(第1頁左下欄下から5行目-下から3行目)

(イ-c)「[作用]駆動パルス出力回路から周期的に発生する駆動パルスに応答してスイッチング素子がオンすることにより、フィラメントに電力が供給される。
この回路構成におけるフィラメントの電力消費すなわち発熱量について考察すると、この電力消費はフィラメントへの印加電圧の2乗に比例し、駆動パルスのデューティ比に比例する。また、フィラメントへの印加電圧はバッテリ電圧に比例する。したがって、駆動パルスのデューティ比をバッテリ電圧の2乗にほぼ逆比例させることにより、フィラメントの電力消費をほぼ一定にすることができ、ひいては蛍光表示管の輝度をほぼ一定に維持できる。
上記のように駆動パルスのデューティ比で、フィラメントの発熱量をほぼ一定に制御するため、従来用いられていたフィラメント印加電圧を一定にするためのツェナーダイオードが不要となり、ツェナーダイオードでの発熱による周辺素子への熱ストレスの付与を防止できる。」(第2頁左下欄第14行目-同頁右下欄第13行目)

(イ-d)「[実施例]以下、本発明の一実施例を第1図?第3図に基づいて説明する。第3図には車両に用いられる蛍光表示管1が示されている。蛍光表示管1は、チューブ2内に収容されたフィラメントFとグリッドGとセグメントアノ-ドAとを備えている。フィラメントFは、フィラメント駆動回路3により駆動され、・・・上記フィラメント駆動回路3は、第1図に示されるように、バッテリVbからグランドGDに向かって順に直列接続されたトランジスタ10(スイッチング素子)と抵抗11を備えている。トランジスタ10はPNP型のものであり、エミッタがバッテリVbに接続され、コレクタが抵抗11に接続されている。上記フィラメントFはトランジスタ10,抵抗11と直列をなして接続され、これらよりグランドGD側に配されている。
フィラメント駆動回路3はさらに駆動パルス出力回路20を備えている。この駆動パルス出力回路20は、一定のデユーティ比の原パルスPLを周期的に出力する原パルス発生回路21と、充放電回路22と、コンパレータ23と、スレッショルド電圧発生回路24とを有している。」(第2頁右下欄第14行目-第3頁右上欄第2行目)

(イ-e)「上述構成の作用を、第2図のタイムチャートを参照しながら説明する。原パルス発生回路21から一定周期Tでハイレベルの原パルスPLが出力される。この原パルスPLの高さVccおよびデューティ比Doは一定である。
充放電回路22のコンデンサ22bは、上記原パルスPLに対応して充放電を行う。・・・原パルスPLの時間幅に対応する期間では、コンデンサ22bの充電電圧Veは、原パルスPLの電圧Vccに維持される。」(第3頁左下欄第8行目-同頁右下欄第2行目)

(イ-f)「具体的に述べると、Do=0.25,n=1,k=0.28,Vcc=5V、A=0.21,Rf=12.5Ω、R_(11)=47Ωとした場合、バッテリVbの変動に応じて、フィラメント印加電圧Vf、デューティ比Df、フィラメント印加電圧の実効値Vfm、抵抗11での電力消費Pw’(単位W)は下記表の通り変化する。

Vb 17.9 16 14 12 10 9 8
Vf 3.75 3.36 2.94 2.52 2.10 1.89 1.68
Df 0 0.36 0.49 0.65 0.83 0.94 1
Vfm 0 2.02 2.07 2.02 1.91 1.83 1.68
Pw’ 0 1.22 1.28 1.24 1.10 1.01 0.85

上記表から明らかなように、バッテリ電圧Vbが12V?16Vの範囲で、デューティ比Dfはバッテリ電圧Vbの2乗にほぼ逆比例しており、フィラメント印加電圧の実効値Vfmはほぼ一定である。この印加電圧の実効値Vfmがほぼ一定であることは、フィラメントFの消費電力がほぼ一定であることを意味する。なお、フィラメントFの定格電圧を2Vに設定した場合、バッテリ電圧Vbが9?16Vの範囲で変動しても、印加電圧の実効値Vfmは定格電圧2Vの±10%の範囲に入る。したがって、寛容な基準でみれば、バッテリ電圧Vbが9?16Vの範囲で、デューティ比Dfはバッテリ電圧Vbの2乗にほぼ逆比例し、フィラメントFの消費電力Pwもほぼ一定に維持される。
また、上記表における抵抗11の電力消費PW′は、厳しい基準でみればバッテリ電圧Vbが12?16Vの範囲で、寛容な基準でみれば9?16Vの範囲でほぼ一定であり、しかも小さい。」(第5頁右上欄第2行目-同頁左下欄第14行目)

(イ-g)「上記抵抗11の電力消費すなわち発熱量について詳細に考察すると、下記の(イ),(ロ)の理由により、第8図に示す従来の直流型フィラメント駆動回路に比べて小さくすることができる。イ)抵抗11には常時電流が流れず、駆動パルスに応じて間欠的に電流が流れる。したがって、電流が流れる時間を短くすることができる。口)フィラメントFへの電流供給が駆動パルスに応して間欠的に行われ、その供給時間が短くなるから、フィラメントFの適正な発熱量を維持するためには、フィラメントFの印加電圧を高くする必要がある。この結果、抵抗11で要求される電圧降下は小さくて済む。」(第5頁左下欄第15行目-同頁右下欄第7行目)

(イ-h)「第4図は本発明の他の実施例を示す。この実施例において第1図に対応する構成部材には同符号を付してその詳細な説明を省略する。第4図の駆動パルス出力回路20Aでは、コストを安くするために、コンパレータ23の代わりにNPNトランジスタ25が用いられている。充放電回路22の充電電圧Veはこのトランジスタ25のベース電圧として提供される。スレッショルド電圧発生回路24のスレッショルド電圧Vsは、トランジスタ25のエミッタ電圧として提供される。トランジスタ25のコレクタが、駆動パルスDLのための出力段となる。トランジスタ25では、Ve≧Vs+VBEの時にオンし、コレクタをローレベルにして駆動パルスDPを出力する。但し、VBEはトランジスタ25がオンする時のベース・エミッタ間電圧の閾値である。重要な作用については第1図の実施例と同じであるので省略する。」(第5頁右下欄第8行目-第6頁左上欄第4行目)

ウ 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願平1-26773号(実開平2-117589号)のマイクロフィルム(以下、「引用刊行物3」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。
(ウ-a)「<産業上の利用分野>本考案は蛍光表示管のフィラメント駆動回路に係わり、特にトランスを用いずにフィラメントに交流を印加できるフィラメント駆動回路に関する。」(第1頁下から3行目-第2頁1行目)

(ウ-b)「<作用>発振回路出力により、・・・交互にオン/オフさせ、フィラメントに流れる電流の向きを変えてフィラメントに交流を印加する。」(第6頁第12-17行目)

(ウ-c)「<実施例>第1図は本考案に係わる蛍光表示管のフィラメント駆動回路の回路図である。」(第6頁第18-20行目)

(ウ-d)「蛍光表示管VFDのフィラメントFLは第1、第2のトランジスタQ1,Q2の接続点Aと第3、第4のトランジスタQ3,Q4の接続点B間に配設され、マルチバイブレータMBの発振周期で電流方向が変化するようになっている。さて、マルチバイブレータMBは所定周波数(たとえば100HZ前後)で発振しており、その出力端子T1,T2からパルス信号PS1,PS2を出力する。」(第8頁第10-18行目)

エ 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭52-85852号公報(以下、「引用刊行物4」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。
(エ-a)「特許請求の範囲 1.熱陰極蛍光多桁表示体により時刻表示を行う電子携帯時計において、相補型バイポーラトランジスタインバータにより熱陰極フイラメントを交番電圧駆動することを特徴とする電子携帯時計。
2.上記交番駆動方式において、20Hzよりも高い交番周波数による駆動を行うことを特徴とする電子携帯時計。」(特許請求の範囲)

(エ-b)「さて、このように表示のための電力効率の優れた熱陰極蛍光表示体において、全消費電力の大部分を占めるフイラメントの駆動には、電子携帯時計にもつとも適した駆動方式によるものが必要である。・・・点灯スイッチが操作された時刻表示状態においては・・・フイラメント駆動回路27に分周期の64Hz信号を供給する。インバータ35及び36が64Hzの互に逆相な信号で駆動されるとき、熱陰極蛍光表示体37のフイラメントにはフイラメント電流が流れ、表示可能となる。」(第2頁右上欄第8行目-同頁右下欄第2行目)

(4) 対比
本件補正発明1と刊行物1発明を対比する。
ア 刊行物1発明の「ツェナーダイオード112の定電圧から、後段トランジスタ13Bのベース・エミッタ間電圧を差し引いた電圧」、「蛍光表示管」、「フィラメントF」、「給電制御として用いる回路」、「パルス発生回路15」、「蛍光表示管のフィラメント駆動回路」は、
本件補正発明1の「所定の電圧」、「蛍光表示管」、「フィラメント」、「電力制御回路」、「発振回路」、「蛍光表示管の電源回路」にそれぞれ相当している。

イ 刊行物1発明の「後段トランジスタ13B」、「前段トランジスタ13A」、「ツェナーダイオード112」、「バッテリVb」は、本件補正発明1の「第1のトランジスタ」、「第2のトランジスタ」、「定電圧ダイオード」、「電源」にそれぞれ相当している。

ウ 刊行物1発明の後段トランジスタ13Bは、オンのときにフィラメントFにバッテリVbからの電力が供給されるようにそのコレクタがバッテリVbに接続されているものであるから((4)の摘記事項(ア-i)及び(ア-k)参照。)、刊行物1発明の「コレクタが抵抗100を介してバッテリVbに接続されエミッタがフィラメントFに接続された後段トランジスタ13B」と、本件補正発明1の「コレクタが電源に接続されエミッタが出力となる第1のトランジスタ」とは、「フィラメントに電源からの電力が供給されるようにコレクタが接続されエミッタが出力となる第1トランジスタ」である点で共通している。

エ 刊行物1発明の抵抗111の一端とツェナーダイオード112のカソードは、他端がバッテリVbに接続された抵抗111とアノードが接地されたツェナーダイオード112とで構成される定電圧回路110の出力を後段トランジスタ13Bのベースに入力するようになされているものであるから((4)の摘記事項(ア-i)参照。)、刊行物1発明の「一端が前記後段トランジスタ13Bのベースに高周波カット用のフィルタ120を介して接続され、他端が前記バッテリVbに接続された抵抗111、及びアノードが接地され、カソードが高周波カット用のフィルタ120を介して前記後段トランジスタ13Bのベースに接続されたツェナーダイオード112を有する定電圧回路110」と、本件補正発明1の「一端が前記第1のトランジスタのベースに接続され他端が前記電源に接続された抵抗、及びアノードが接地されカソードが前記第1のトランジスタのベースに接続された定電圧ダイオードを有する定電圧回路」とは、
「一端が第1のトランジスタのベースに定電圧出力が入力されるように接続され他端が電源に接続された抵抗、及びアノードが接地され、カソードが前記第1のトランジスタのベースに定電圧出力が入力されるように接続された定電圧ダイオードを有する定電圧回路」
である点で共通している。

オ 刊行物1発明の前段トランジスタ13Aのコレクタは、後段トランジスタ13Bのベースに入力する定電圧回路110の出力をオンオフするために前記後段トランジスタ13Bのベースに高周波カット用のフィルタ120を介して接続されているものであるから((4)の摘記事項(ア-i)及び(ア-k)参照。)、刊行物1発明の「コレクタが前記後段トランジスタ13Bのベースに高周波カット用のフィルタ120を介して接続されエミッタが接地されベースに前記パルスがハイパスフィルタ20を介して入力される前段トランジスタ13A」と、本件補正発明1の「コレクタが前記第1のトランジスタのベースに接続されエミッタが接地されベースに前記パルス信号が入力される第2のトランジスタを有するスイッチング回路」とは、
「コレクタが定電圧回路110の出力をオンオフして後段トランジスタ13Bのベースに入力されるように接続され、エミッタが接地され、ベースにパルス信号が入力されるように構成された第2のトランジスタを有するスイッチング回路」
である点で共通している。

すると、本件補正発明1と刊行物1発明とは、次の点で一致し、
[一致点]
「所定の電圧をパルス信号に応じてオン/オフし、このパルス制御された出力電圧を蛍光表示管のフィラメントに印加する電力制御回路と、
前記パルス信号を電力制御回路に出力する発振回路と、
前記電力制御回路は、フィラメントに電源からの電力が供給されるようにコレクタが接続されエミッタが出力となる第1トランジスタ、
一端が第1のトランジスタのベースに定電圧出力が入力されるように接続され他端が電源に接続された抵抗、及び、アノードが接地され、カソードが前記第1のトランジスタのベースに定電圧出力が入力されるように接続された定電圧ダイオードを有する定電圧回路と、
コレクタが定電圧回路110の出力をオンオフして後段トランジスタ13Bのベースに入力されるように接続され、エミッタが接地され、ベースにパルス信号が入力されるように構成された第2のトランジスタを有するスイッチング回路
とからなるものであることを特徴とする蛍光表示管の電源回路。」

次の相違点1ないし3で相違する。
[相違点1]
本件補正発明1には特に規定されていない構成である、「抵抗100」、「ハイパスフィルタ20」、「ダイオード24」、「高周波カット用のフィルタ120」を、刊行物1発明は具備している点。

[相違点2]
「パルス信号」が、本件補正発明1は「基本周波数が30?500Hzの範囲でデューティ比が所定値」であって、「前記パルス信号のデューティー比は、前記電力制御回路の出力電圧のデューティー比が12.5?50%の範囲のいずれかの値となるように設定され」るものであるのに対して、刊行物1発明は、基本周波数が「例えば20KHz」であって、デューティ比については特定されていない点。

[相違点3]
本件補正発明1には、「フィラメントに印加される電力を制限する電力制限回路」が設けられているのに対して、刊行物1発明には、この構成が設けられていない点。

(5)判断
上記相違点について検討する。
ア 相違点1について
(a)上記(4)の摘記事項(ア-n)によれば、「抵抗100」は「原理的にはなくてもよい」ものとされているから、当業者が適宜削除できたものである。
(b)上記(4)の摘記事項(ア-c)ないし(ア-e)によれば、「ハイパスフィルタ20」は、パルス発生回路の故障によるフィラメントの過熱・損焼を防止する目的で設けられているものであるから、当該目的の有無に応じて削除することは当業者が容易に想到できたことである。
(c)上記(4)の摘記事項(ア-f)によれば、「ダイオード24」は、パルス出力回路15の出力レベルがローレベルからハイレベルに切り替わった時に、トランジスタ13のベース・エミッタ間に付与されようとする逆バイアスを逃がすために設けられているものであって、このような瞬時の過渡期について対策するかどうかは当業者が適宜選択することであるから、「ダイオード24」を削除することも当業者が容易に想到できたことである。
(d)そうすると、刊行物1発明の「抵抗100」、「ハイパスフィルタ20」、「ダイオード24」及び「高周波カット用のフィルタ120」を削除することは当業者が容易に想到できたことであるから、刊行物1発明の上記相違点1に係る構成を本件補正発明1の上記相違点1に係る如く構成することは当業者が容易に想到できたことである。

イ 相違点2について
蛍光表示管のフィラメントを交流駆動する際に用いられる周波数は回路の応答特性等に応じて任意に設計できるものであって、「基本周波数が30?500Hzの範囲」内の周波数であるところの、「例えば100Hz」並びに「64Hz」を用いることが、上記刊行物3並びに刊行物4に記載されている。そして、上記基本周波数に対する蛍光表示管内部の部材の振動によるうなり音の発生の可能性は、当該蛍光管内部の部材の材質や構造等で変化するものであることが明らかであるから、上記基本周波数についての「30?500Hz」との数値範囲の限定に格段の臨界的意義があるともいえない。
よって、刊行物1発明の「パルス信号」を、「基本周波数が30?500Hzの範囲」とすることは刊行物3並びに刊行物4に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到できたことである。
また、上記(4)の摘記事項(ア-h)によれば、刊行物1発明においてパルス信号のデユーティ比は「一定の発熱量を維持できる」ように所定値とするものであることが明らかである。そして、上記刊行物2には「バッテリ電圧Vb」の「12V?16V」の範囲の変動に応じて、「デューティ比Df」を「0.65?0.36」と制御することによってフィラメントFの消費電力Pw’をほぼ一定に保つことが記載されているように、デューティ比を50%の前後で選択することは当業者が普通におこなうことであって、単に消費電力を少なくするという目的のためにデューティ比が50%よりも小さい範囲を採用することも当業者が適宜なし得ることに過ぎない。また、「12.5%?50%の範囲」との数値限定に格段の臨界的意義があるともいえない。
よって、刊行物1発明の「パルス信号」を、「パルス信号のデューティ比は、前記電力制御回路の出力電圧のデューティ比が12.5%?50%の範囲のいずれかの範囲の値となるように設定され」るものとすることは当業者が刊行物2に記載された発明に基づいて容易に想到できたことである。

ウ 相違点3について
蛍光表示管のフィラメントと該蛍光表示管に電力を供給する出力との間に直列に抵抗を接続してフィラメントに対して供給される電流を設定することは周知技術(以下、「周知技術A」という。例えば、特開平4-214588号公報(段落【0020】、図4)、特開平7-239672号公報(段落【0008】-【0009】、図1)参照。)であるから、刊行物1発明において、電力制御回路の出力と蛍光表示管のフィラメント間に直列に接続された抵抗を設けることは当業者が上記周知技術Aに基づいて容易に想到できることであって、当該フィラメントに直列に接続された抵抗が「フィラメントに印加される電力を制限する電力制限回路」としての機能を有することは当業者にとって自明なことである。

カ 本件補正発明1が奏する作用効果について
本件補正発明1が奏する作用効果についても、刊行物1発明、刊行物2ないし刊行物4に記載された発明及び周知技術Aに基づいて当業者が予測可能な範囲のものである。
したがって、本件補正発明1は、刊行物1発明、刊行物2ないし刊行物4に記載された発明及び周知技術Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
平成18年1月26日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成17年11月1日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1係る発明(以下、「本願第1発明」という。)は、上記「第2」の「2」の「(1)」の本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。

第4 刊行物AないしCに記載された発明
原査定の拒絶の理由に「刊行物A」ないし「刊行物C」として引用された上記刊行物2ないし4を以下において、「刊行物A」ないし「刊行物C」という。
A 刊行物A(特開平4-145489号公報)
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物Aには、図面とともに上記「第2 2 (4) イ」の摘記事項(イ-a)ないし(イ-h)の記載がある。
そして、 上記摘記事項(イ-a)ないし(イ-h)より、刊行物Aには、次の発明(以下、「刊行物A発明」という。)が記載されていると認める。
「バッテリ電圧Vbを原パルスPLに応じてオン/オフして、車両用蛍光表示管のフィラメントFへ給電する回路と、
一定周期Tでデューティー比Doは一定である前記原パルスPLを前記給電する回路に出力する原パルス発生回路21と、
前記給電する回路の出力と蛍光表示管のフィラメントF間に直列に接続される抵抗11であって、バッテリ電圧Vbをその抵抗値R11とフィラメントFの抵抗値Rfで分圧した電圧Vfを前記フィラメントFに印加する抵抗11を有する車両用蛍光表示管のフィラメント駆動回路。」

B 刊行物B(実願平1-26773号(実開平2-117589号)のマイクロフィルム)
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物Bには、図面とともに上記「第2 2 (4) ウ」の摘記事項(ウ-a)ないし(ウ-d)の記載がある。

C 刊行物C(特開昭52-85852号公報)
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物Bには、図面とともに上記「第2 2 (4) エ」の摘記事項(エ-a)ないし(エ-b)の記載がある。

第5 対比
本願第1発明と刊行物A発明とを対比する。
ア 刊行物A発明の、「バッテリ電圧Vb」、「原パルスPL」、「車両用蛍光表示管のフィラメントF」、「給電する回路」、「車両用蛍光表示管のフィラメント駆動回路」は、本願第1発明の、「所定の電圧」、「パルス信号」、「蛍光表示管のフィラメント」、「電力制御回路」、「蛍光表示管の電源回路」にそれぞれ相当している。
イ 刊行物A発明の、「デューティー比Doは一定」、「原パルス発生回路21」は、本願第1発明の、「デューティ比が所定値」、「発振回路」にそれぞれ相当している。

すると、本願第1発明と刊行物A発明とは、次の点で一致し、
[一致点]
「所定の電圧をパルス信号に応じてオン/オフし、このパルス制御された出力電圧を蛍光表示管のフィラメントに印加する電力制御回路と、デューティー比が所定値の前記パルス信号を電力制御回路に出力する発振回路と、を有する蛍光表示管の電源回路。」

次の相違点A,Bで相違している。
[相違点A]
「パルス信号」が、本願第1発明は「基本周波数が30?500Hz」であるのに対して、刊行物A発明は「一定周期T」である点。
[相違点B]
本願第1発明は、「電力制御回路の出力と蛍光表示管のフィラメント間に直列に接続された、フィラメントに印加される電力を制限する電力制限回路」を備えるのに対して、刊行物A発明にはそのような構成がない点。

第6 判断
上記相違点A,Bについて検討する。
ア 相違点Aについて
蛍光表示管のフィラメントを交流駆動する際に用いられる周波数は回路の応答特性等に応じて任意に設計できるものであって、「基本周波数が30?500Hzの範囲」内の周波数であるところの、「例えば100Hz」並びに「64Hz」を用いることが、上記刊行物B並びに刊行物Cに記載されている。そして、上記基本周波数に対する蛍光表示管内部の部材の振動によるうなり音の発生の可能性は、当該蛍光管内部の部材の材質や構造等で変化するものであることが明らかであるから、上記基本周波数についての「30?500Hz」との数値範囲の限定に格段の臨界的意義があるともいえない。
よって、刊行物A発明の「パルス信号」を、「基本周波数が30?500Hzの範囲」とすることは刊行物B並びに刊行物Cに記載された発明に基づいて当業者が容易に想到できたことである。

イ 相違点Bについて
刊行物A発明の「抵抗11」は、電力制御回路の出力と蛍光表示管のフィラメント間に直列に接続されたものであって、「バッテリ電圧Vbをその抵抗値R11とフィラメントFの抵抗値Rfで分圧した電圧Vfを前記フィラメントFに印加する」ことからすれば、フィラメントに印加される電力を制限する電力制限回路としての機能を有することは当業者にとって明らかであっるから、上記相違点Bは実質的な相違点とはいえない。

ウ 本願第1発明が奏する作用効果について
本願第1発明が奏する作用効果についても、刊行物A発明及び刊行物Bないし刊行物Cに記載された発明に基づいて当業者が予測可能な範囲のものである。

したがって、本願第1発明は、刊行物A発明及び刊行物Bないし刊行物Cに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物A発明及び刊行物Bないし刊行物Cに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
そして、請求項1に係る発明が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項2ないし7に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-02 
結審通知日 2008-06-10 
審決日 2008-06-25 
出願番号 特願平9-47767
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西島 篤宏  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 山下 雅人
山田 昭次
発明の名称 蛍光表示管の電源回路  
代理人 山川 茂樹  
代理人 紺野 正幸  
代理人 山川 政樹  
代理人 西山 修  
代理人 黒川 弘朗  

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