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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09B
管理番号 1185229
審判番号 不服2006-755  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-12 
確定日 2008-10-03 
事件の表示 平成 8年特許願第289045号「外国語音声学習方法及びこの方法に用いられる外国語音声学習教材」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 5月 6日出願公開、特開平10-116020〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年10月14日の出願であって、平成17年12月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年1月12日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月13日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

2.平成18年2月13日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成18年2月13日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正により、本件補正前の平成17年11月2日付け手続補正書により補正された請求項1?9が、
「【請求項1】 外国語の言語材料から学習者の右脳が受け入れ易い純音楽的な音声組成構造として西洋楽器のリズム伴奏に伴われた所定の強弱長短のリズム・パターンの目標発声音を抽出し、前記リズム・パターンの目標発声音を左耳で聴取して右脳で認識しつつ、教授者による前記言語材料の正確な目標言語発声音を右耳で聴取して左脳で認識して外国語の言語材料を聴覚的に訓練し又は前記目標言語発声音に倣って前記外国語の目標言語を発声し外国語の発音を訓練して外国語の音声を学習することを特徴とする外国語音声学習方法。
【請求項2】 請求項に記載の外国語音声学習方法であって、前記リズム・パターンの目標発生音は、四分の八拍子のリズムを有する外国語音声学習方法。
【請求項3】 請求項2に記載の外国語音声学習方法であって、前記リズム・パターンの目標発生音は、ボサ・ノヴァのリズムを有する外国語音声学習方法。
【請求項4】 外国語の言語材料から学習者の右脳が受け入れ易い純音楽的な音声組成構造として所定の強弱長短のリズム・パターンを抽出し、前記リズム・パターンを表記文字から読み取りつつ前記音声組成構造を繰り返し発声して前記リズム・パターンを認識し、前記リズム・パターンの認識に基づいて前記言語材料の目標言語を発声することによって前記外国語の発音を訓練して外国語の音声を学習し、前記リズム・パターンは、第1強勢で長く強く発音される『DA』の第1の音節記号と、第2強勢で第1強勢よりも弱く短く発音される『D』の第2の音節記号と、弱強勢で第2強勢よりも弱く短く発音される『d』の第3の音節記号とを組合せて表記されることを特徴とする外国語音声学習方法。
【請求項5】 外国語の言語材料から抽出された学習者の右脳が受け入れ易い純音楽的な音声組成構造として西洋楽器のリズム伴奏に伴われるリズム・パターンの目標発声音と前記言語材料として教授者が正確に発声して得られた目標言語発声音とが記録された記録媒体を含み、前記リズム・パターンの目標発声音は、学習者の左耳で聴取して右脳で認識され、また前記目標言語発声音は、前記学習者の右耳で聴取して左脳で認識されるように、前記リズム・パターンの発声音と前記目標言語発生音とが前記録媒体にステレオ式に記録され、前記リズム・パターンの発声音は、左耳から聴取されるように再生され、前記目標言語発生音は、右耳から聴取されるように再生されることを特徴とする外国語音声学習教材。
【請求項6】 請求項5に記載の外国語音声学習教材であって、前記リズム・パターンの目標発声音は、四分の八拍子のリズムを有する外国語音声学習教材。
【請求項7】 請求項6に記載の外国語音声学習教材であって、前記リズム・パターンの目標発声音は、ボサ・ノヴァのリズムを有する外国語音声学習教材。
【請求項8】 請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の外国語音声学習教材であって、前記外国語の言語材料及び前記リズム・パターンが記載された文書テキストを更に含み、前記リズム・パターンは、第1強勢で長く強く発音される『DA』の第1の音節記号と、第2強勢で第1強勢よりも弱く短く発音される『D』の第2の音節記号と、弱強勢で第2強勢よりも弱く短く発音される『d』の第3の音節記号とを組合せて表示されることを特徴とする外国語音声学習教材。
【請求項9】 外国語の言語材料から抽出された学習者の右脳が受け入れ易い純音楽的な音声組成構造であるリズム・パターンと前記外国語の言語材料とが併記された文書テキストから成り、前記リズム・パターンは、第1強勢で長く強く発音される『DA』の第1の音節記号と、第2強勢で第1強勢よりも弱く短く発音される『D』の第2の音節記号と、弱強勢で第2強勢よりも弱く短く発音される『d』の第3の音節記号とを組合せて表示されていることを特徴とする外国語音声学習教材。」から

「【請求項1】 外国語の言語材料から抽出された学習者の右脳が受け入れ易い純音楽的な音声組成構造として西洋楽器のリズム伴奏に伴われて第1強勢で長く強く発音される『DA(ダァ)』と、第2強勢で第1強勢よりも弱く短く発音される『D(ドゥ)』と、弱強勢で第2強勢よりも弱く短く発音される『d(ド)』との組合せを用いて教授者が発声する所定の強弱長短のリズム・パターンの目標発声音を左耳で聴取して右脳で認識しつつ、教授者による前記言語材料の正確な目標言語発声音を右耳で聴取して左脳で認識して外国語の言語材料を聴覚的に訓練し又は前記目標言語発声音に倣って前記外国語の目標言語を発声し外国語の発音を訓練して外国語の音声を学習することを特徴とする外国語音声学習方法。
【請求項2】 請求項に記載の外国語音声学習方法であって、前記教授者が発声するリズム・パターンの目標発生音は、四分の八拍子のリズムを有するボサ・ノヴァのリズムを伴う外国語音声学習方法。
【請求項3】 外国語の言語材料から抽出された学習者の右脳が受け入れ易い純音楽的な音声組成構造として西洋楽器のリズム伴奏に伴われて第1強勢で長く強く発音される『DA(ダァ)』と、第2強勢で第1強勢よりも弱く短く発音される『D(ドゥ)』と、弱強勢で第2強勢よりも弱く短く発音される『d(ド)』との組合せを用いて教授者が発声する所定の強弱長短のリズム・パターンの目標発声音と前記言語材料として教授者が正確に発声して得られた目標言語発声音とが記録された記録媒体を含み、前記教授者が発声するリズム・パターンの目標発声音は、学習者の左耳で聴取して右脳で認識され、また前記目標言語発声音は、前記学習者の右耳で聴取して左脳で認識されるように、前記リズム・パターンの発声音と前記目標言語発生音とが前記録媒体にステレオ式に記録され、前記リズム・パターンの発声音は、左耳から聴取されるように再生され、前記目標言語発生音は、右耳から聴取されるように再生されることを特徴とする外国語音声学習教材。
【請求項4】 請求項3に記載の外国語音声学習教材であって、前記教授者が発声するリズム・パターンの目標発声音は、四分の八拍子のリズムを有するボサ・ノヴァのリズムを伴う外国語音声学習教材。
【請求項5】 請求項3または4に記載の外国語音声学習教材であって、前記外国語の言語材料及び前記リズム・パターンが記載された文書テキストを更に含み、前記リズム・パターンは、第1強勢で長く強く発音される『DA』の第1の音節記号と、第2強勢で第1強勢よりも弱く短く発音される『D』の第2の音節記号と、弱強勢で第2強勢よりも弱く短く発音される『d』の第3の音節記号とを組合せて表示されることを特徴とする外国語音声学習教材。」と補正された。

(2)補正の内容についての検討
まず、物の発明である補正前の請求項5?9と、補正後の請求項3?5の対応関係を検討する。
文書テキストの有無から補正後の請求項3が、補正前の請求項8、9に対応しないことは明らかである。補正前の請求項6、7と補正後の請求項4とは、いずれも従属請求項であって、リズム・パターンの目標発声音について限定を加えるものである。そうすると、補正後の請求項3が補正前の請求項5に対応する事は明らかである。
補正後の請求項3に係る補正は、補正前の請求項5における「リズム・パターンの目標発声音」について、「第1強勢で長く強く発音される『DA(ダァ)』と、第2強勢で第1強勢よりも弱く短く発音される『D(ドゥ)』と、弱強勢で第2強勢よりも弱く短く発音される『d(ド)』との組合せを用いて教授者が発声する所定の強弱長短の」ものであることを限定したものである。
したがって、補正後の請求項3に係る補正は、第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項3に係る発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(3)引用刊行物
本願出願前に頒布された刊行物であり、原査定の拒絶の理由に引用された特開平1-170978号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
ア.「外国語を録音した磁気テープを再生することのできる音声再生系統と、前記磁気テープの再生内容に対応するリズムパターンを付加するリズム発生系統とを備え、前記音声再生系統の再生する外国語の高低及び強弱リズムに対応する音響リズムを前記リズム発生系統により同期して付加発生させるようにした外国語学習装置。」(特許請求の範囲)
イ.「従って、この発明は、外国語の聞き取り能力を向上させることのできるリズムをテキストの発音に伴なって発生させるようにした外国語学習装置を提供することを目的とする。」(第2ページ左下欄第6?9行目)
ウ.「磁気テープ1は2つのチャネル2,3を有し、第1のチャネル2には外国語のテキスト朗読など通常の音声信号4を録音してあり、第2のチャネル3には第1のチャネル2の音声信号4に同期して発生させるべきリズムを発生させるためのデータ信号5をそれぞれ録音する。データ信号5はリズムの種類、リズムを発生させる速度、リズムを発生させるタイミングなどに関する情報を含んでいる。このリズムデータ信号5に基づいて発生されるリズムは例えば次の表1に示すようである。」(第2ページ右下欄第10?20行目)
エ.「第2図はこの発明の実施例の他の要部を示すものであり、磁気テープ1を用いて外国語を学習するための学習装置の系統図である。すなわち、磁気テープ1の内容を磁気ヘッド6により読取り、再生アンプ7により再生される。この際、磁気へッド6によりデータ信号5が読取られると、このデータ信号は再生アンプ7を介してデコーダ10に入力される。デコーダ10はデータ信号5の内容を読取り、リズムの種類、リズムを発生させる速度、リズムを発生させるタイミングをリズム発生器11に指令する。リズム発生器11は、これに従い予め記憶させたリズムの種類、リズムを発生させる速度、リズムを発生させるタイミングで所定のリズムを発生させる。すなわち、リズム発生器11は、予め複数のリズムパターンを記憶させておき、デコーダl0の指令信号により、読出すパターン、読出す速度、及び発音のタイミング(ディレー)を決定するものであり、電子楽器の所謂リズム発生器と同様のものを用いることができる。
このようにして、音響増幅器8並びにスピーカ9からテキストの音声信号が発音され、またこれに同期して対応するリズムが音響増幅器12並びにスピーカ13から発音されることとなる。
なお、テープに予めリズムを録音しておくことができるのは勿論のことである。」(第3ページ左下欄第1行目?同ページ右下欄第6行目)
オ.表1より、各英文に対応した「強弱」、「弱強」、「弱強弱」等のリズムパターンが複数あることが把握できる。

エ.及びオ.の記載より、複数のリズムパターンに基づき、磁気テープ1に録音され、スピーカ13から発音されるリズムを、「リズム・パターン音」と称することができる。
引用発明は外国語学習装置に係る発明であるが、外国語の音声を聞き取る学習に用いる教材も認識しうるから、「外国語音声学習教材」が開示されていると認められる。

従って、上記記載及び図面を含む刊行物1全体の記載から、刊行物1には、以下の発明が開示されていると認められる。
「外国語のテキスト朗読など通常の音声信号4を録音した第1のチャネル2と、第1のチャネル2の音声信号4に同期して発生させるべき英文に対応した「強弱」、「弱強」等の複数のリズム・パターン音を録音した第2のチャネルを有する磁気テープ1を用いて、音響増幅器8並びにスピーカ9からテキストの音声信号4が発音され、またこれに同期して対応するリズム・パターン音が音響増幅器12並びにスピーカ13から発音されるようにした外国語音声学習教材。」(以下、「引用発明」という。)

また、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平8-22238号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
カ.「【請求項1】 磁気、電子または光学的記録媒体に英語の朗読教材を記録するとともに、同朗読が保有する4拍子性信号を同朗読に重畳するように、または別の記録媒体に記録し、前記朗読の再生と同期して、4拍子性信号を再生するようにしたことを特徴とする、英語の4拍子性を活用した語学訓練システム。
【請求項2】 英語の朗読教材から取り出した4拍子性信号をシステム内で分析記録し、前記教材と同期させて再生するようにした、請求項1に記載の語学訓練システム。」
キ.「【0011】 【実施例】本発明による語学訓練システムの1実施例を図1に示す。教材は予め英語の模範的朗読と、それを英語の4拍子性に基づいて分析し、QF信号情報を同期的に再生できるように記録媒体1に記録してある。・・・」

(4)対比
補正発明と引用発明とを対比する。
a.引用発明の「磁気テープ1」は本願発明の「記録媒体」に相当する。
b.引用発明の「リズム・パターン音」は、純音楽的な音声組成構造であるといえるから、引用発明の「英文に対応する『強弱』、『弱強』等の複数のリズム・パターン音」と、補正発明の「外国語の言語材料から抽出された学習者の右脳が受け入れ易い純音楽的な音声組成構造として西洋楽器のリズム伴奏に伴われて第1強勢で長く強く発音される『DA(ダァ)』と、第2強勢で第1強勢よりも弱く短く発音される『D(ドゥ)』と、弱強勢で第2強勢よりも弱く短く発音される『d(ド)』との組合せを用いて教授者が発声する所定の強弱長短のリズム・パターンの目標発声音」とは、「純音楽的な音声組成構造としての外国語の言語材料に対応した所定の強弱のリズム・パターン音」である点で共通する。
c.引用発明の「通常の音声信号4」は、外国語のテキスト朗読などであるから、補正発明の「言語材料として教授者が正確に発声して得られた目標言語発声音」といえる。
d.引用発明においても、通常の音声信号4は第1のチャネル2に、リズム・パターン音を第2のチャネルに録音されているから、通常の音声信号4と、リズム・パターン音とは磁気テープ1にステレオ式に記録されているといえる。また、引用発明において、「音響増幅器8並びにスピーカ9からテキストの音声信号4が発音され、またこれに同期して対応するリズムが音響増幅器12並びにスピーカ13から発音されるようにした」から、引用発明と補正発明は、「リズム・パターン音と目標言語発声音が別々に再生される」点で共通する。

したがって、補正発明と引用発明を比較すると、
「純音楽的な音声組成構造としての外国語の言語材料に対応した所定の強弱のリズム・パターン音と言語材料として教授者が正確に発声して得られた目標言語発声音とが記録された記録媒体を含み、リズム・パターンの発声音と目標言語発生音とが記録媒体にステレオ式に記録され、リズム・パターン音と目標言語発声音が別々に再生される外国語音声学習教材。」の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]純音楽的な音声組成構造としての外国語の言語材料に対応した所定の強弱のリズム・パターン音について、補正発明においては、「外国語の言語材料から抽出された」と特定されているのに対し、引用発明では、上記特定を有していない点。
[相違点2]純音楽的な音声組成構造としての外国語の言語材料に対応した所定の強弱のリズム・パターン音について、補正発明においては、「西洋楽器のリズム伴奏に伴われて」、「第1強勢で長く強く発音される『DA(ダァ)』と、第2強勢で第1強勢よりも弱く短く発音される『D(ドゥ)』と、弱強勢で第2強勢よりも弱く短く発音される『d(ド)』との組合せを用いて教授者が発声する所定の強弱長短のリズム・パターンの目標発声音」であることが特定されているのに対し、引用発明では、上記特定を有していない点。
[相違点3]純音楽的な音声組成構造としての外国語の言語材料に対応した所定の強弱のリズム・パターン音について、補正発明においては、「学習者の右脳が受け入れ易い」と特定され、リズム・パターン音と目標言語発声が別々に再生される点について、補正発明においては、「教授者が発声するリズム・パターンの目標発声音は、学習者の左耳で聴取して右脳で認識され、また目標言語発声音は、前記学習者の右耳で聴取して左脳で認識されるように」、「リズム・パターンの発声音は、左耳から聴取されるように再生され、目標言語発生音は、右耳から聴取されるように再生される」のに対し、引用発明では、上記特定を有していない点。

(5)判断
[相違点1]について検討する。
刊行物2には、語学訓練システムにおいて、朗読教材と同期させて再生する4拍子性信号が、英語の朗読教材から取り出したものである点が記載されている。リズム・パターン音を目標言語発生音とより正確に対応したものとすることが望ましいから、引用発明記載のリズム・パターン音を、「外国語の言語材料から抽出された」ものとし、相違点1にかかる構成を採用することは、当業者が容易に想到しうる程度のことである。
[相違点2]について検討する。
リズムを学習する際に、リズムを認識するために、リズムだけでなく、リズム伴奏に伴った音の長さに応じた発声(例えば「タンタタ、タンタタ」)を行うことは、例えば呉暁著、「ソルフェージュからピアノへ-4・5歳児の指導-」、株式会社音楽之友社、1987年7月、p.29に示されるように一般的に行われている事項である。音の長短のみならず、強弱も含め、発声をどのような音で行うかは、当業者が適宜決定する事項である。また、学習にあたって、教授者が目標となる発声を示すことは一般的であるから、発声を教授者が発声するものとし、その発声を「目標発声音」と称して差し支えない。また、リズム伴奏を西洋楽器で行うかどうかも、当業者が適宜決定する事項であるから、刊行物1に記載された外国語音声学習教材のリズムパターン音を「西洋楽器のリズム伴奏に伴われて」、「第1強勢で長く強く発音される『DA(ダァ)』と、第2強勢で第1強勢よりも弱く短く発音される『D(ドゥ)』と、弱強勢で第2強勢よりも弱く短く発音される『d(ド)』との組合せを用いて教授者が発声する所定の強弱長短のリズム・パターンの目標発声音」とする、相違点2にかかる構成を採用することは、当業者が容易に想到しうる程度のことである。
[相違点3]について検討する。
左脳は言語を司り、右脳は音楽を司ること、左耳からの情報は右脳に入り、右耳からの情報は左脳に入るから、左耳からリズムを、右耳から言語を入れれば語学学習の効果が向上することは、例えば特開平2-196272号公報(第2ページ左下欄第5?15行目参照)に記載されているように、語学教材において周知である。
したがって、刊行物1に記載された外国語音声学習教材において、「外国語の言語材料に対応した所定の強弱のリズム・パターン音」を「学習者の左耳で聴取して右脳で認識され」るように、「左耳から聴取されるように再生」し、「言語材料として教授者が正確に発声して得られた目標言語発声音」を「学習者の右耳で聴取して左脳で認識されるように」、「右耳から聴取されるように再生される」、相違点3にかかる構成を採用することは、当業者が容易に想到しうる程度のことである。
また、リズムは純音楽的な音声組成構造であるから、上記の周知文献の記載に基づけば、学習者の右脳が受け入れ易いものであるといえる。
そして、補正発明の作用効果も、刊行物1、2記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、補正発明は、本願出願前に頒布された刊行物1、2記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6)補正却下の決定についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項5に係る発明は、平成17年11月2日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲【請求項5】に記載された事項によって特定された次のとおりのものと認める。

「外国語の言語材料から抽出された学習者の右脳が受け入れ易い純音楽的な音声組成構造として西洋楽器のリズム伴奏に伴われるリズム・パターンの目標発声音と前記言語材料として教授者が正確に発声して得られた目標言語発声音とが記録された記録媒体を含み、前記リズム・パターンの目標発声音は、学習者の左耳で聴取して右脳で認識され、また前記目標言語発声音は、前記学習者の右耳で聴取して左脳で認識されるように、前記リズム・パターンの発声音と前記目標言語発生音とが前記録媒体にステレオ式に記録され、前記リズム・パターンの発声音は、左耳から聴取されるように再生され、前記目標言語発生音は、右耳から聴取されるように再生されることを特徴とする外国語音声学習教材。」(以下、「本願発明」という。)

(2)進歩性について
本願発明は、補正発明から、「リズム・パターンの目標発声音」についての限定事項である「第1強勢で長く強く発音される『DA(ダァ)』と、第2強勢で第1強勢よりも弱く短く発音される『D(ドゥ)』と、弱強勢で第2強勢よりも弱く短く発音される『d(ド)』との組合せを用いて教授者が発声する所定の強弱長短の」との限定を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに前記の限定を行ったものに相当する補正発明が、前記2.における「(5)判断」に記載したとおり、刊行物1、2記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1、2記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物1、2記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願のその余の請求項について検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-28 
結審通知日 2008-08-05 
審決日 2008-08-20 
出願番号 特願平8-289045
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G09B)
P 1 8・ 121- Z (G09B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安久 司郎  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 長島 和子
七字 ひろみ
発明の名称 外国語音声学習方法及びこの方法に用いられる外国語音声学習教材  
代理人 菊池 徹  
代理人 菊池 新一  

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