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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65H
管理番号 1187818
審判番号 不服2007-8256  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-22 
確定日 2008-11-13 
事件の表示 平成10年特許願第 6488号「シート状物搬送装置における清掃装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 7月27日出願公開、特開平11-199085号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年1月16日の出願であって、平成19年2月16日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成19年3月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。


2.本願発明について
本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成19年1月15日付け手続補正書により補正された明細書の、特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項2に記載された発明は以下のとおりのものである。
「走行する無端走行体に支持されシート状物を保持するシート状物保持手段を有するシート状物搬送装置において、前記無端走行体および前記走行するシート状物保持手段に対してエアを吹き付けるノズルを設けたことを特徴とするシート状物搬送装置における清掃装置。」(以下請求項2に係る発明を「本願発明」という。)


3.引用発明
(1)これに対して、原審の拒絶査定に引用された特開平7-196220号公報(以下「引用例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

(a)「【請求項1】 枚葉印刷機排紙部のデリバリーチェーンを清掃する自動清掃装置であって、排紙部本体に取付可能な取付フレームと、該取付フレームに固定されたガイド部材と、移動用アクチュエータに連結され前記ガイド部材に沿って前記デリバリーチェーンの移動に同期した所定のタイミングで上下移動するホルダー部材と、該ホルダー部材によって保持され、回転駆動装置に連結されて回転駆動されるとともに、該ホルダー部材の上昇に伴い前記デリバリーチェーンを内側から清掃する作業位置と、該ホルダー部材の下降に伴いチェーングリッパーとの干渉を避ける退避位置とに交互に移動するワイヤーブラシとからなるデリバリーチェーン自動清掃装置。
【請求項2】 前記ワイヤーブラシは、可撓軸により前記回転駆動装置に連結された請求項1記載のデリバリーチェーン自動清掃装置。
【請求項3】 前記取付フレームは、排紙部本体両側のデリバリーフレームに下方から垂直に取り付ける2本の取付部と、両取付部間を連接する連接部とからなり、前記連接部の左右対称位置に2本のガイド部材が固定され、該ガイド部材と、移動用アクチュエータに連結され前記ガイド部材に沿って前記デリバリーチェーンの移動に同期した所定のタイミングで上下移動するホルダー部材と、該ホルダー部材によって保持され、回転駆動装置により回転駆動されるとともに、該ホルダー部材の上昇に伴い前記デリバリーチェーンを内側から清掃する作業位置と、該ホルダー部材の下降に伴いチェーングリッパーとの干渉を避ける退避位置とに交互に移動するワイヤーブラシとが、前記デリバリーフレームの内側にあって前後に回転する2本のデリバリーチェーンに対し一組ずつ配設された請求項1または2記載のデリバリーチェーン自動清掃装置。」 (【請求項1】-【請求項3】)
(b)「【0004】 本発明はこのような問題を解決するものであって、枚葉印刷機排紙部のデリバリーチェーンを自動的に清掃し、油に付着し堆積したスプレーパウダーが刷本上に落下するのを防止できるようにすることを目的とする。」(段落【0004】)
(c)「【0008】
【作用】 本発明のデリバリーチェーン自動清掃装置は取付フレームによって枚葉印刷機の排紙部本体に取り付ける。そして、休憩時間等にデリバリーチェーンを緩動状態で回転させた状態で、ワイヤーブラシを回転駆動しつつ、ホルダー部材を上下に移動させて、その上昇位置においてワイヤーブラシがデリバリーチェーンを内側から清掃するようにし、また、デリバリーチェーンの移動に同期してホルダー部材共々ワイヤーブラシを上下移動させ、チェーングリッパーが廻ってきたときに、これと干渉しない位置に退避させるようにする。」(段落【0008】)
(d)「【0012】 図において、1は枚葉式オフセット印刷機の排紙部であり、1Aおよび1Bは排紙部本体両側のデリバリーフレームである。排紙部1には、左右のデリバリーフレーム1A,1Bに沿って2本のデリバリーチェーン2A,2Bが配設されている。これらデリバリーチェーン2A,2Bは、印刷ユニットの圧胴に接して印刷済の紙(刷本)を受け取る紙取り胴あるいは更に中間胴を経た後の排紙胴の両端に設けられたチェーンスプロケット3A,3Bと、排紙部先端に設けられたチェーンスプロケット4A,4Bとの間に巻き掛けられ、左右のデリバリーフレーム1A,1Bに取り付けられたチェーンガイド(図示せず)に沿って上下および前後方向に同速度で回転移動するものであり、左右のデリバリーチェーン2A,2Bの間には、所定数(例えば7本)のチェーングリッパー5が等ピッチで架け渡されている。チェーングリッパー5は、周知のように複数のくわえ爪5Aを有し、それらくわえ爪5Aはばねにより常時は閉じられていて、印刷ユニットの圧胴とともに回転するカムにより開かれて印刷ユニットの圧胴から刷本を受け取り、所定の排紙位置で先端スプロケット側のカムにより開かれて刷本を放し、パレット6上に積み重ねるよう作動する。図の7は真空車であって、チェーングリッパー5が放す直前まで刷本の後端部を支持する。」(段落【0012】)
(e)「【0016】 この自動清掃装置10は、取付フレーム11の左右取付部11a,11bの上端が左右デリバリーフレーム1A,1Bにボルトで取り付けられる。この取り付けは、ワンタッチ式とすることも可能である。そして、休憩時間等にこの装置10を作動させ、デリバリーチェーン2A,2Bを例えば1分間に2?3周といった緩動回転させながら清掃を行う。その際、モータ17によってワイヤーブラシ15を回わしつつ、エアーシリンダー13により、デリバリーチェーン2A,2Bの移動と同期してホルダー部材14共々ワイヤーブラシ15を上下移動させ、上昇位置で、ワイヤーブラシ15によりデリバリーチェーン2A,2Bを内側から清掃して付着した粉を除去し、チェーングリッパー5が廻ってきたときには、これと干渉しない位置に退避させるよう制御する。」 (段落【0016】)
(f)「【0019】
【発明の効果】 本発明は以上のように構成されているので、デリバリーチェーン表面の油に付着したスプレーパウダーを、簡単な装置により、休憩時間等を利用して自動的に除去することができ、油の混じったパウダーが印刷中に落下して刷本を汚損するのを防止できる。」(段落【0019】)

したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「走行するデリバリーチェーンに支持され刷本を保持するチェーングリッパを有する搬送装置において、前記デリバリーチェーンを清掃するためのワイヤーブラシを設けたことを特徴とするデリバリーチェーン自動清掃装置。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「デリバリーチェーン」はその構造等を考慮すると本願発明の「無端走行体」に相当し、以下「刷本」は「シート状物」、「チェーングリッパ」は「シート状物保持手段」にそれぞれ相当する。そして、本願発明と引用発明とは、「シート状物搬送装置」である点で実質的に両者は同じである。また、本願発明の「ノズル」は清掃手段である点で、引用発明の「ワイヤーブラシ」と同じである。
したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。
<一致点>
「走行する無端走行体に支持されシート状物を保持するシート状物保持手段を有するシート状物搬送装置において、前記無端走行体に対して清掃手段を設けたことを特徴とするシート状物搬送装置における清掃装置。」
<相違点>
本願発明は清掃手段として「無端走行体および前記走行するシート状物保持手段に対してエアを吹き付けるノズル」を設けているのに対し、引用発明は、無端走行体であるデリバリーチェーンを清掃する「ワイヤーブラシ」を設けている点。


5.検討
上記相違点について検討する。
無端走行体を用いた搬送装置の技術分野において、搬送対象等に起因する無端走行体への付着物を清掃するために、エアを吹き付けるノズルからなる清掃装置を設けることは、従来周知の技術手段に過ぎない(実願平1-15866号(実開平2-108925号)のマイクロフィルム(エアノズル23)、実願昭57-102292号(実開昭59-8910号)のマイクロフィルム(エア噴出口15)、実願昭60-118638号(実開昭62-26318号)のマイクロフィルム(エヤーノズル15)、実願昭63-73303号(実開平1-176621号公報)のマイクロフィルム(ノズル15)、特開平8-40534号公報(吹掃ノズル14)等参照)。
また、清掃のために設けたエアを吹き付けるノズルを、清掃対象に向けることは技術常識であり、本願発明の明細書段落【0017】において出願人も「エアノズル20,20a,20bによるエアの噴射の方向を排紙チェーン7のリンク7b、くわえ爪装置の爪竿の両端部、爪9aと爪軸9の交差する部位の周縁部としたが、排紙チェーン7およびくわえ爪装置8の他の部位にエアを噴射するようにしてもよい。」と記載しているように、エアを吹き付けるノズルを「無端走行体」に加えて、「走行するシート状物保持手段」に向けることは、当業者が必要に応じて適宜選択し得る設計的事項にすぎない。
よって、上記周知の技術である清掃のためのエアを吹き付けるノズルを、引用発明に適用する際に、上記技術常識を参酌して、本願発明の相違点に係る構成のようにすることは当業者が容易に想到し得ることである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-25 
結審通知日 2008-09-30 
審決日 2008-10-01 
出願番号 特願平10-6488
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永石 哲也  
特許庁審判長 松縄 正登
特許庁審判官 中西 一友
村山 禎恒
発明の名称 シート状物搬送装置における清掃装置  
代理人 山川 政樹  
代理人 西山 修  
代理人 山川 茂樹  
代理人 紺野 正幸  
代理人 黒川 弘朗  

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