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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1188493
審判番号 不服2005-23889  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-12 
確定日 2008-11-27 
事件の表示 平成11年特許願第201904号「レジストパターンの形成方法、薄膜トランジスタの製造方法及び電気光学装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 2月 9日出願公開、特開2001- 36088〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続きの経緯
本願は、平成11年7月15日の出願であって、平成17年11月8日に拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成18年1月10日付けで手続補正がなされ、その後当審において、平成20年1月15日付けで審尋がなされ、それに対して、同年3月18日付けで回答書が提出され、平成20年5月8日付けで、平成18年1月10日付け手続補正が却下され、同年5月21日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内の同年7月25日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2.本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成20年7月25日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載されたとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】 溶融ガラスをスリットからシート状に引き出して形成され、反りやうねりによって表面に高さの差が生じた基板上にレジストパターンを形成する方法であって、
前記基板は、該基板の表面における最大の前記高さの差が、前記スリットから引き出された方向と直交する方向よりも、前記スリットから引き出された方向の方が大きくなっており、
前記基板上にレジストを塗布し、前記基板上で前記スリットから引き出された方向よりもこれと直交する方向に長い幅を有した照射部分をスキャンさせて露光する際に、
前記基板上で前記スリットから引き出された方向とほぼ一致させた方向に前記照射部分をスキャンさせて露光することを特徴とするレジストパターンの形成方法。」

第3.当審での拒絶理由で引用した刊行物に記載の発明
a.特開平7-273000号公報
当審の拒絶理由において引用した、本願出願前に日本国内において頒布された特開平7-273000号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「走査型露光装置」(発明の名称)に関して、図1ないし3とともに以下の事項が記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば液晶パネル等をフォトリソグラフィ工程で製造する場合のように、大面積のパターンを感光基板上に露光する際に使用して好適な走査型露光装置に関し、特に焦点合わせ機構(オートフォーカス機構)を備えた走査型露光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば大型の液晶パネル(液晶表示素子)又は大面積の半導体素子等を高いスループットで製造するために、マスク(フォトマスク又はレチクル等)上のスリット状(長方形状、円弧状等)の照明領域を照明し、その照明領域に対して短辺方向にマスクを走査し、その照明領域と共役な露光領域に対してフォトレジストが塗布されたプレート(ガラスプレート又は半導体ウエハ等)を同期して走査することにより、マスク上のパターンを逐次プレート上に露光する走査型露光装置が注目されている。
「【0021】また、それら複数対の距離検出手段が、その走査方向(X方向)に交差する方向(Y方向)に所定間隔でn対(nは3以上の整数)配設されている場合には、マスク(4)又は感光基板(8)がY方向に(n-1)次関数で表される曲線を逐次X方向に連ねた形の曲面であっても、Y方向のn点の間隔データより、その曲面の形を正確に検出できる。特に、液晶パネルを製造する場合には、プレート(8)としてガラスプレートが使用されるが、ガラスプレートのうねりは位置の3次関数で表される場合が多い。そこで、このような場合には、それら複数対の距離検出手段をY方向に4対設けることにより、その曲面形状を正確に検出できる。」
「【0023】このとき、図3に示すように、間隔検出手段による感光基板(8)上の計測点(27A?27D)を、それら露光領域に対して走査方向に対して手前側に間隔L_(0)(=N・L、Nは1以上の整数)だけ離して設置した場合には、間隔検出手段による間隔のサンプリングを例えば感光基板(8)が走査方向にL移動する毎に行うようにする。これにより、間隔のサンプリングを行うタイミングでそれら露光領域(29A?29E)の中に間隔計測が行われた露光面が入ると共に、間隔Lの複数列の露光領域(29A?29E)の全てに間隔計測が行われた露光面が入るため、実際の計測データを用いてそれら露光領域(29A?29E)の全面の平均的な面を正確に結像面に合わせ込むことができる。」
「【0025】
【実施例】以下、本発明による走査型露光装置の一実施例につき図面を参照して説明する。本実施例は、それぞれ等倍で正立正像を投影する複数の投影光学系を有する走査型露光装置に本発明を適用したものである。図1は本実施例の走査型露光装置の露光部の構成図であり、この図1において、マスク4が断面コの字型の走査ステージ6の上部ステージ6a上に保持され、マスク4のパターン形成面(実際には下面)上の5個の台形状の照明領域22A?22Eがそれぞれ対応する照明光学系3A?3Eからの露光光により照明されている。照明領域22A?22Eは、走査方向であるX方向に所定間隔で設定された2列に分かれ、1列目に2個の照明領域22A及び22Bが配列され、2列目に3個の照明領域22C?22Eが配列され、且つ走査方向に台形状の照明領域22A?22Eの斜辺部が重なるように配列されている。
【0026】走査ステージ6の下部ステージ6b上に、Zレベリングステージ7を介して被露光基板としてのフォトレジストが塗布されたプレート8が保持され、マスク4とプレート8との間に、等倍で正立正像を投影する5個の投影光学系23A?23Eが、照明領域22A?22Eと同じ配列で固定されている。投影光学系23A?23Eの光軸に平行にZ軸を取り、Z軸に垂直な面内でX軸(走査方向)に垂直な方向にY軸を取る。
【0027】投影光学系23A?23Eを介して照明領域25A?25Eのパターンがそれぞれ、プレート8上の台形状の露光フィールド29A?29E(図3参照)上に等倍の正立正像で露光される。図3に示すように、プレート8上で1列目の露光フィールド29A,29Bと2列目の露光フィールド29C?29Eとは、台形の斜辺部が走査方向(X方向)に重なるように配置されている。従って、例えば領域38Aは前後の露光フィールド29A及び29Cの斜辺部で重複して走査され、領域38Bは前後の露光フィールド29A及び29Dの斜辺部で重複して走査される。これにより、プレート8上の全面で露光エネルギーが均一化される。
【0028】図1に戻り、投影光学系23A?23Eとしては、例えば凹面鏡及び凸面鏡等を組み合わせたミラープロジェクション方式の投影光学系が使用できる。走査ステージ6を駆動してマスク4及びプレート8を一体的にY方向に走査することにより、マスク4上のパターン領域21内のパターンが、プレート8上のショット領域24上に逐次露光される。
【0029】図2は、本実施例の光学系及びステージ系の構成を示し、この図2において、水銀ランプ1からの露光光が楕円鏡2により集光されて光ガイド30の入射端に導かれ、光ガイド30の5個の射出端から射出された露光光が、5個の照明光学系3A?3E(図2では2個の照明光学系3B,3Eのみが図示)を介してマスク4上を照明している。また、走査ステージ6はベース30上に駆動モータ35を介してX方向に駆動できるように載置され、走査ステージ6のX方向の端部に移動鏡31が固定され、移動鏡31及びベース30上に固定されたレーザ干渉計32により走査ステージ6のX方向の位置が常時計測され、計測された位置が主制御系33に供給されている。主制御系33は、走査露光時には、ステージ駆動系34を介して駆動モータ35の動作を制御して、走査ステージ6をX方向に所定速度で駆動する。」
「【0041】次に、本実施例で走査露光方式で露光を行う場合の動作につき説明する。図2において、マスク4及びプレート8は走査ステージ6を介して一体的にX方向に走査される。」
「【0048】更に、図3に示すように、本実施例ではプレート8上で走査方向に垂直なY方向に4個の計測点27A?27Dが設定され、マスク4上にもY方向に4個の計測点が設定されている。これに関して、プレート8が液晶パネル製造用のガラスプレートである場合、そのプレート8の表面のY方向への曲がりは、経験的にほぼ位置の3次関数で表される。そして、Y方向の4点でその表面の位置を計測することにより、その3次関数の4個の係数を決定できるため、本実施例の4個の計測点での計測データを用いることにより、プレート8の曲がりを正確に計測できる。その計測点の個数を増やすことにより、より複雑な曲がりをも正確に計測できるが、計測点を4点とすることにより、比較的低コストで、液晶パネル用のプレートの曲がりをほぼ正確に計測でき、結果としてプレート上の曲がりを考慮した平均的な面を合焦させることができる。」
(下線は、当審において、付したものである。以下、同様。)

そうすると、刊行物1には、以下の発明(以下、「刊行物発明」という)が記載されている。
「フォトレジストが塗布された、うねりによって表面高さの差が生じたガラスプレート上にマスク上のパターンを露光する方法であって、
前記ガラスプレート上にレジストを塗布し、前記ガラスプレート上で露光フィールド29A?29Eを走査させて露光する、
前記ガラスプレート上にマスク上のパターンを露光する方法。」

b.実願平5-33284号(実開平6-25330号)のCD-ROM
当審の拒絶理由において引用した、本願出願前に日本国内において頒布された実願平5-33284号(実開平6-25330号)のCD-ROM(以下、「刊行物2」という。)には、「ガラスを切断する設備」(発明の名称)に関して、図1ないし6とともに以下の事項が記載されている。
「【0003】
一次工程に、すずの浴に溶融ガラスをフロートさせるか、溶融ガラス浴からガラスの薄板を引くか、の何れかにより、溶融ガラスからガラス・リボンを形成する段階が包含される。フロート形成工程においては、例えば米国特許第3,843,346号に開示の如く、溶融ガラスが溶融すず浴に流し込まれ、フロートされてリボンを形成する。フロートガラス・リボンは冷却し始め、その厚さはすず浴にある間に確定される。リボンはその後すず浴から引き上げられてなまし帯域内に搬送され、それがそこで、そのひずみ点より低い温度まで制御自在に冷却される。薄板形成工程においては、米国特許第1,339,229号に開示の如く、溶融ガラスのプールからガラス板が引かれる間にその厚さが確定され、その後それが冷却される。なましの後、リボンは、後続の第二工程のため個々のガラス板に切断される。
【0004】
二次工程には、任意の数の付加的ガラス板工程手順を包含させることができる。例えば、ガラス板をその最終形状に切断するに先立って、大きな板をより小さく、一層容易に取り扱い得る板に切断できる。この最終形状は、デスクトップ、グレージング・ユニット等における如く長方形であっても良く、または特別のグレージング・デザイン若しくは自動車の窓であっても良い。」
「【0024】
図1は、成形室10を出る際のフロートガラス・リボンGを示す。リボンGは、それがフロートガラス・リボンであるため、優れた光学的特性を有し、ガラスを通したゆがみのない透視を必要とする用途に用いることができる。連続的なガラス・リボンGは溶融金属浴12、例えば溶融すず浴、から一連のロール14により、ガス炉床支持台18または付加的なコンベヤ・ロール(図示せず)を包含し得るリボン支持体16上へ、そして徐冷がま(図示せず)内へと移動される。本考案に限らないが、このガス炉床支持台18はなるべくなら、後に論議される理由によりリボン内の熱損失を最小限とするため温度制御された室20内にあって、高温の加圧空気をガス炉床18の上面に圧送して高温のガラスを支える空気のクッションを付与する充気室22を包含することが望ましい。カーテン24は、大気を成形室10内に保持する。加熱ならびに切断作業が生起する室20は一般に、フロートガラスなまし点温度を上回る約582℃?621℃(1080°F?1150°F)の温度範囲内にある。この温度範囲内のフロートガラス工程にあるガラス・リボンは、傷つかずにロール14その他の搬送設備により取り扱われ且つ接触されるに充分なだけ剛性を有し、従ってその光学的特性は依然阻害されない。
【0025】
図2および図3について説明する。リボンGの幅を横切って延びる加熱器28を支持フレーム26が支えている。加熱器28は、後で論議するように、集中された高温の熱を高温のガラスGに差し向けて、選定された切断線30をその軟化温度範囲まで急速に加熱する。加熱器28は、それが、所要の集中された熱を付与し且つそれを切断線30に沿って差し向け得る限り、商業的に入手可能な数多くの熱源の任意の一つであれば良い。本考案に限らないが、この好適な実施例の場合、加熱器28は、ガラス・リボンGの選定された切断線30に沿い高温の火炎を差し向ける線バーナである。燃料管32と酸素34(採択随意)とが、高温の火炎を生成するに必要な燃焼物をバーナ28に供給する。抵抗式加熱器高周波誘電加熱器、プラズマ・トーチ加熱器、レーザ、または電子ビーム加熱器のような加熱器も用いることができる。バーナ28から、固定した線30に沿って、移動するリボンGの面上に火炎を差し向けるために、リボンGと同じ速度でバーナ28が移動できるように、駆動装置36がフレーム26に設けられる。駆動装置36によるフレーム26の運動を計算機37で制御することもできる。線30を軟化温度範囲まで加熱するに必要な時間の間のリボンGの方向への移動の後、フレーム26はその出発位置に復帰する。駆動装置36は、次の切断線30が加熱器28の下方へ移動するに先立ち、またはそれと同時に、図1に示す如く、加熱器28をその出発位置へ位置変えするに充分な速度で加熱器28を移動させ得ることが必要である。本考案に限らないが、図1、図2、および図3に示す特定の実施例の駆動装置36は、軸42を解して駆動スプロケット40に連結される電動機38を包含することもできる。このスプロケット40は、滑りレール48に取り付けられた滑りカラー46に付けられた歯車ラック44と係合する。支持フレーム26はカラー46から支えられている。支柱50により、滑りレール48と電動機38との支えが得られる。フレーム26を移動させるために、電動機38が駆動スプロケット40を回し、それが今度は歯車ラック44を前後に、即ち図1に見る如く左右に、滑りレール48で画定される経路に沿って移動させる。
【0026】
線バーナ28は切断線30に沿って高温リボンの温度を、望ましくはその軟化温度、即ち傷つけまたは破断することなく残余のリボンからガラスを切断できながらガラスが気化する温度を下回る温度、以上に上昇させる。代表的なソーダ石灰石英フロートガラスについては、軟化温度が一般に約718℃?746℃(1325°F?1375°F)の範囲内にある。要すれば、リボンの厚さ全体が軟化温度まで加熱される速度を増大させるため、その熱の集中点を下側から線30に沿って差し向けるように、ガス炉床支持材18のスロット54内のリボンGの下方に、加熱器28と平行に、第二加熱器52を置くこともできる。下方加熱器52にはまた、頂部および底部加熱器が線30の温度を所望の軟化点まで高め得るほど充分な距離だけリボンGと同じ速度で下方加熱器52が移動できるように、構造用支持材と滑りフレームとが設けられる。本考案の好適の実施例においては、図1、図2、および図3に示す如く、頂部および底部加熱器が用いられ、それらを同時に移動できるように、両者が支持フレーム26に取り付けられている。」
「【0029】
再加熱帯域内の選定された切断線30がその熱軟化温度まで加熱された後、そしてガラス板の残余が依然高い温度にある間に、高温のリボンGは線30に沿いリボン切断装置56で切断される。このリボン切断装置56は、切断線30に沿いガラス板Gを通して単数または複数のブレードを移動させることによって作動する。図1および図2に示す本考案の特定の実施例においては、切断装置56がフレーム26に取り付けられ、リボンGの上方に位置し且つ加熱される線に平行するブレード58と、ブレード58と平行し且つその下方に位置するアンビル部材60とを包含し、それらの間にガラス・リボンGを通過させる。アンビル60は、ガス炉床支持体18のスロット54内に位置する。要すれば、ブレード58および/またはアンビル60の温度を、ガラス板が切断前には冷却されなくてもガラス板がそれらに付着するほど過度に高温ではない程度に各々が充分高温であるように、制御することもできる。
【0030】
ガラス・リボンGを切断するためにフレーム26の前進速度はわずかに低減され、従って予熱される線30は、ブレード58とアンビル60との間に置かれる。切断線がブレード58とアンビル60との間に置かれた場合、フレーム26はその当初の前進速度を回復し、従ってリボンGとアンビル60との間には相対運動が全くない。その後ブレード58が下方へ移動し且つ/またはアンビル60が上方へ移動して予熱された線30に沿いリボンGを切断する。ブレード58および/またはアンビル60は、適宜のいかなる方法、例えば液圧式、空気圧式、若しくは電気式の作動装置(図示せず)で、また、ブレードについてはその自重で、垂直方向に移動させても良い。好適な実施例においては、図4に示す如く、溝62がアンビル60に包含されている。溝62のエッジ64は第二ブレードとして作用し、従って切断は、ガラス板Gを通して溝62内へブレード58を移動させることにより達成される。代替方法として、図5に示す如く、アンビル60は堅い表面66を備えることもでき、ガラス切断は、ブレード58をガラスに侵徹させ、表面66に接触させることにより達成される。ブレード58はガラスGを完全に侵徹しなくても良いことに留意すべきである。ブレード58はガラス板Gの厚さの大部分に侵徹するが、アンビル60に接触する手前で停止して良い。その後ガラス板Gは、リボンがやや冷却した後、単純な折り曲げまたは「折り取り」処置により、残余のガラス・リボンから分離できる。」
「【0034】
図6は代替の加熱および切断装置を示す。図1と比較すると、この構成には別別の加熱および切断フレームが用いられている。加熱器フレーム68は、リボンGを横切って頂部加熱器70(および、要すれば、ガス炉床支持材18のスロット74内の底部加熱器72)を支持し、ガラス・リボンGの搬送方向に沿って滑動する。リボンGが線30に沿って加熱された後、フレーム68は、リボンGがガス炉床支持材18に沿って移動し続ける間に、その当初の位置に復帰する。予熱された線が切断装置76に到達すると、切断フレーム78がリボンGと一緒にスロット80内で移動し始める。移動する切断フレーム78内に整合されると、リボンGは、既に論議されたそれと同様の方法で切断される。この代替の装置は、加熱フレーム68および切断フレーム78の別々の調整に備えるものである。」

c.特開平10-45420号公報
当審の拒絶理由において引用した、本願出願前に日本国内において頒布された特開平10-45420号公報(以下、「刊行物3」という。)には、「ガラス板の切断方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ガラス板の切断方法に関し、特に高い表面品位が要求される液晶パネル等の各種ディスプレイパネルに用いられるガラス板を切断するのに適した方法に関するものである。」
「【0012】
【実施例】以下、本発明のガラス板の切断方法を実施例に基づいて詳細に説明する。
(実施例)まず成形装置から幅850mm、厚み0.74mmの寸法を有するガラス板(日本電気硝子株式会社製OA-2)を連続的に成形し、このガラス板を引き出しながら、内部が15℃に設定された冷却装置に入れ、1分間かけて冷却装置内を移動させた後、装置外部、すなわち常温下に取り出した。このガラス板の表面を目視で観察したところ、表面全体に均一で薄い水皮膜が形成されていた。
【0013】さらにこのガラス板を移動させながら、その表面の所定箇所に、超硬合金製の回転ホイールを用いて深さ20μのスクライブ線を形成した後、スクライブ線に沿って折り割ることによって、縦400mm、横500mmの寸法を有する液晶パネル用ガラス板を作製した。」

第4.対比
本願発明と刊行物発明について、以下で対比する。
(a)刊行物発明の「ガラスプレート」は、刊行物1の「特に、液晶パネルを製造する場合には、プレート(8)としてガラスプレートが使用されるが、ガラスプレートのうねりは位置の3次関数で表される場合が多い。そこで、このような場合には、それら複数対の距離検出手段をY方向に4対設けることにより、その曲面形状を正確に検出できる。」(【0021】)、「これに関して、プレート8が液晶パネル製造用のガラスプレートである場合、そのプレート8の表面のY方向への曲がりは、経験的にほぼ位置の3次関数で表される。そして、Y方向の4点でその表面の位置を計測することにより、その3次関数の4個の係数を決定できるため、本実施例の4個の計測点での計測データを用いることにより、プレート8の曲がりを正確に計測できる。」(【0048】)との記載から、うねりを有していることは明らかであるから、本願発明の「うねりによって表面に高さの差が生じた基板」に相当する。
(b)刊行物発明の「フォトレジストが塗布された」「ガラスプレート上にマスク上のパターンを露光する方法」は、それぞれ本願発明の「レジストパターンを形成する方法」に相当することは明らかである。
(c)刊行物発明の「露光フィールド29A?29E」は、本願発明の「照射部分」に相当する。また、刊行物発明の「露光フィールド29A?29E」は、長い幅を有することは明らかである。

よって、本願発明と刊行物発明は、
「うねりによって表面に高さの差が生じた基板上にレジストパターンを形成する方法であって、
前記基板上にレジストを塗布し、長い幅を有した照射部分をスキャンさせて露光する際に、
前記基板上で前記照射部分をスキャンさせて露光することを特徴とするレジストパターンの形成方法。」
であることにおいて一致し、次の2点において相違している。
相違点1
本願発明は、「溶融ガラスをスリットからシート状に引き出して形成され、反りやうねりによって表面に高さの差が生じた基板」上にレジストパターンを形成しているのに対して、刊行物発明は、「うねりによって表面に高さの差が生じたガラスプレート」上にレジストパターンを形成しているものの、ガラスプレートが、溶融ガラスをスリットからシート状に引き出して形成されること、及び反りによっても表面に高さの差が生じている点については明らかでない点。
相違点2
本願発明は、「前記基板は、該基板の表面における最大の前記高さの差が、前記スリットから引き出された方向と直交する方向よりも、前記スリットから引き出された方向の方が大きく」なっているのに対して、刊行物発明は、ガラスプレートの表面における最大の高さの差について、明らかでない点。

相違点3
本願発明は、「前記基板上で前記スリットから引き出された方向よりもこれと直交する方向に長い幅を有した照射部分をスキャンさせて露光」しているのに対して、刊行物発明は、長い幅を有した露光フィールド29A?29Eを走査させて露光しているものの、ガラスプレートを形成する方法に関して明らかでないために、長い幅の方向と「前記スリットから引き出された方向」との関係が明らかでない点。

相違点4
本願発明は、「前記基板上で前記スリットから引き出された方向とほぼ一致させた方向に前記照射部分をスキャンさせて露光」するのに対して、刊行物発明は、露光フィールド29A?29Eを走査させて露光しているものの、ガラスプレートを形成する方法に関して明らかでないために、走査する方向と「前記スリットから引き出された方向」との関係が明らかでない点。

第5.判断
上記相違点について検討する。
相違点1について
刊行物2の「一次工程に、すずの浴に溶融ガラスをフロートさせるか、溶融ガラス浴からガラスの薄板を引くか、の何れかにより、溶融ガラスからガラス・リボンを形成する段階が包含される。」(【0003】)との記載、及び、刊行物3の「まず成形装置から幅850mm、厚み0.74mmの寸法を有するガラス板(日本電気硝子株式会社製OA-2)を連続的に成形し、このガラス板を引き出しながら、内部が15℃に設定された冷却装置に入れ、1分間かけて冷却装置内を移動させた後、装置外部、すなわち常温下に取り出した。」(【0012】)との記載があるように、溶融ガラスを引き出して形成したガラス板は周知のものであって、また、スリットから引き出すことについては、刊行物2、3に明記されていないものの、スリットから引き出して形成すること自体も周知技術にすぎないものであるから、刊行物発明において、ガラスプレートの形成方法として、当該周知技術を採用することは当業者が適宜なし得た程度のものである。また、本願明細書の「【0006】図1に示すように、スリット400から熔融ガラスをシート状に引き出して形成したガラス基板410は、未研磨の状態では、引き出し速度や温度によって板厚が変動することなどが原因で、ガラスの引き出し方向に沿って「反り」や「うねり」を生じており、表面平坦性が失われている。 【0007】図4にミラープロジェクション型の露光機を示す。ミラープロジェクション型の露光機では、マクス上の円弧状スリット(光源による照射部分)を、台形ミラー、凹面鏡及び凸面鏡からなる反射光学系を介して、基板上に円弧状スリット像として結像させるとともに、マクス上の円弧状スリットのスキャン(走査)に対応して、基板上の円弧状スリット像をスキャンさせる。図4に示すミラープロジェクション型の露光機で露光を行う場合、円弧状のスリットの範囲を一括して露光しつつスキャンを行うので、ガラス基板に上述したような「反り」や「うねり」が存在すると、円弧状スリットの範囲内で焦点の合う部分と合わない部分が生じ、微細パターンの形成が困難となる。具体的には、2μm以下の解像力をもつミラープロジェクション露光機は、焦点深度が12μm以下(焦点深度は露光機のカタログや仕様書に明記されているものであり、後に示す計算式からも定まる。)となるので、例えば、低温ポリシリコンTFTの2μmルールの微細化を実現することは従来困難であった。 【0008】先の特開昭60-17420号公報の基板を研磨して平坦化する従来技術は、現在使用されているミラープロジェクション露光法やステッピング露光法に、そのまま適用することはできない。基板の平坦度を上げるには限界があり、特にミラープロジェクション露光法で2μmルールの微細化を実現できるレベルまで平坦度を上げるのは難しい。仮に研磨による平坦化が可能であったとしてもコスト高となり、さらに、研磨治具の「くせ」が別の形で表面に残るので、微細パターン形成の妨げとなるからである。」及び「【0024】実施の形態1 図1に示すように、スリット400から熔融ガラスをシート状に引き出して形成したガラス基板(30cm×30cm)を使用した。このガラス基板における、「反り」、「うねり」の様子を図3に示す。図3からわかるように、ガラス基板の引き出し方向Xに沿って、「反り」、「うねり」が生じている。、X方向に沿った高さZの差は最大約12μm以上ある。この値は、2μmルールの露光機の焦点深度と比較するとけっして無視できない。一方、ガラス基板の引き出し方向Xと直交する方向Yの高さZの差は、焦点深度の範囲内なので無視でき、同方向の「反り」、「うねり」は無視できる。」の記載から、スリットから引き出して形成したガラス基板には、前記ガラス基板の表面における最大の高さの差が、スリットから引き出された方向と直交する方向よりも、前記スリットから引き出された方向の方が大きくなるように、反りやうねりが生じることが示されており、これと同様に、ガラスプレートの形成方法として上記周知技術を採用することに伴い、ガラスプレートの表面には、当然反りやうねりによって表面に高さの差が生じるものである。
したがって、刊行物発明において、上記周知技術を採用することにより、本願発明の如く、「溶融ガラスをスリットからシート状に引き出して形成され、反りやうねりによって表面に高さの差が生じた基板」とすることは当業者が容易になし得たものである。

相違点2について
上記「相違点1について」において検討したとおり、ガラスプレートの形成方法として、溶融ガラスをスリットから引き出して形成する方法を採用することは当業者が容易になし得たものであって、そのように形成したガラスプレートは、その表面における最大の高さの差が、スリットから引き出された方向と直交する方向よりも、スリットから引き出された方向の方が大きくなっているものと認められる。
したがって、刊行物発明において、上記周知技術を採用することにより、本願発明の如く、「前記基板は、該基板の表面における最大の前記高さの差が、前記スリットから引き出された方向と直交する方向よりも、前記スリットから引き出された方向の方が大きく」することは当業者が容易になし得たものである。

相違点3及び相違点4について
刊行物1には、「露光フィールド29Aないし29E」として、台形状のものが開示されており、その形状は、走査方向に対して直交する方向に長い幅を備えたものであることは明らかであり、仮に、刊行物1の台形状について、その幅が走査方向に対して直交する方向に長い幅を有することが明らかでないとしても、刊行物1の「マスク(フォトマスク又はレチクル等)上のスリット状(長方形状、円弧状等)の照明領域を照明し、その照明領域に対して短辺方向にマスクを走査し、その照明領域と共役な露光領域に対してフォトレジストが塗布されたプレート(ガラスプレート又は半導体ウエハ等)を同期して走査することにより、マスク上のパターンを逐次プレート上に露光する走査型露光装置が注目されている。」(【0002】)との記載から明らかなように、スリットの形状として、長方形状、円弧状があること、走査方向はその短辺方向であることが記載されていることから、刊行物発明において、走査方向に対して直交する方向に長い幅を有する露光フィールド29A?29Eを用いることは当業者が適宜なし得た程度のことである。
また、刊行物2の【0003】及び【0004】、【0024】ないし【0026】、【0029】及び【0030】の記載、及び刊行物3の【0012】及び【0013】から、ガラス板を引き出したシート状のガラスから切り出して形成することは周知技術であって、刊行物7の「リボンGの幅を横切って延びる加熱器28を支持フレーム26が支えている。加熱器28は、後で論議するように、集中された高温の熱を高温のガラスGに差し向けて、選定された切断線30をその軟化温度範囲まで急速に加熱する。加熱器28は、それが、所要の集中された熱を付与し且つそれを切断線30に沿って差し向け得る限り、商業的に入手可能な数多くの熱源の任意の一つであれば良い。本考案に限らないが、この好適な実施例の場合、加熱器28は、ガラス・リボンGの選定された切断線30に沿い高温の火炎を差し向ける線バーナである。」(【0025】)、「 再加熱帯域内の選定された切断線30がその熱軟化温度まで加熱された後、そしてガラス板の残余が依然高い温度にある間に、高温のリボンGは線30に沿いリボン切断装置56で切断される。」(【0029】)なる記載及び図1ないし6から、長方形のガラス板の切断方向は、通常、溶融ガラスの引き出し方向に対して垂直であり、刊行物8の「まず成形装置から幅850mm、厚み0.74mmの寸法を有するガラス板(日本電気硝子株式会社製OA-2)を連続的に成形し、このガラス板を引き出しながら、内部が15℃に設定された冷却装置に入れ、1分間かけて冷却装置内を移動させた後、装置外部、すなわち常温下に取り出した。」(【0012】)、「さらにこのガラス板を移動させながら、その表面の所定箇所に、超硬合金製の回転ホイールを用いて深さ20μのスクライブ線を形成した後、スクライブ線に沿って折り割ることによって、縦400mm、横500mmの寸法を有する液晶パネル用ガラス板を作製した。」(【0013】)の記載から、ガラス板の寸法からすると、引き出し方向と引き出し方向に直交する方向に切断方向があることは明らかである。
そうすると、露光する際に、その走査方向とガラス板を形成する際の引き出し方向との関係は、スリットから引き出す方向に走査するか、或いは、スリットから引き出す方向にほぼ直交する方向に走査するかの2方向のいずれかが選択可能となるから、刊行物発明において、露光する際に、スリットから引き出す方向にほぼ直交する方向に走査することは当業者が適宜なし得た程度のことである。
したがって、刊行物発明において、本願発明の如く、「前記基板上で前記スリットから引き出された方向よりもこれと直交する方向に長い幅を有した照射部分をスキャンさせて露光」すること、及び「前記基板上で前記スリットから引き出された方向とほぼ一致させた方向に前記照射部分をスキャンさせて露光」することは当業者が容易になし得たものである。

なお、請求人は、平成20年7月25日付け意見書において、「刊行物1、刊行物2、刊行物3、刊行物4、刊行物5、刊行物6、刊行物7、及び刊行物8のいずれも、本願発明のように反りやうねりが生じた基板の状態を把握したうえでどの方向にフォーカスする照射部分をスキャンさせて露光するのが精度良く微細化パターンを形成するうえで効果的なのかを考慮して、基板表面の高さの差(高低差のばらつき)が小さい方向に照射部分を設定して精度よく焦点を合わせ、基板表面の高さの差(高低差のばらつき)が大きい方向(スリットから引き出された方向)に逐次スキャンして露光するものは何等見当たらないものである。従って、以上のことから明らかなように、本願発明は、刊行物1、刊行物2、刊行物3、刊行物4、刊行物5、刊行物6、刊行物7、及び刊行物8のいずれとも構成及び作用効果において相違するものであり、また、これらの各刊行物を組み合わせたとしても本願発明の作用及び効果は得られないものであり、本願発明を容易に想到し得るものではない。」と主張している。しかしながら、既に検討したように、刊行物1ないし3に記載された発明に基づいて、本願発明のように構成することは、当業者が容易になし得たものであって、このような場合に進歩性が認められるためには、作用効果が、そのような構成を有する発明において、予測あるいは発見することの困難なものであり,かつ,当該構成のものとして予測あるいは発見される効果と比較して,よほど顕著なものでなければならないが、刊行物1の【0021】及び【0023】、【0048】には、そもそもガラスプレートの表面のうねりに対して焦点を合わせる作業を行う旨が示されており、しかも、露光を行って、所望のフォトレジストパターンを形成するという点で何ら相違するところはなく、露光する際に、パターンのぼやけ等がないように精度良く露光することは当業者にとって当然に達成すべき目的であって、2とおりある走査方向に対していずれにおいて露光精度があがるかは、試してみれば容易にわかることにすぎない。そうすると、請求人が主張する作用効果は、予測あるいは発見することの困難なものであり、かつ、当該構成のものとして予測あるいは発見される効果と比較して,顕著なものであるものとは認められない。よって、請求人の主張を採用することはできない。

したがって、本願発明は、刊行物1ないし3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6.むすび
以上のとおりであるから、本願は、請求項2ないし6に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-26 
結審通知日 2008-09-30 
審決日 2008-10-16 
出願番号 特願平11-201904
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松田 成正  
特許庁審判長 河合 章
特許庁審判官 井原 純
近藤 幸浩
発明の名称 レジストパターンの形成方法、薄膜トランジスタの製造方法及び電気光学装置  
代理人 上柳 雅誉  
代理人 須澤 修  

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