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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B05B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 B05B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B05B
管理番号 1188547
審判番号 不服2007-24858  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-10 
確定日 2008-11-27 
事件の表示 平成 9年特許願第301706号「粉末スプレー塗装ブース」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 8月11日出願公開、特開平10-211456〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本願は、平成9年11月4日(パリ条約による優先権主張1996年11月2日、ドイツ)の出願であって、平成18年10月30日付けで拒絶理由が通知され、平成19年5月7日に意見書が提出されたが、同年6月1日付けで拒絶査定がなされ、同年9月10日に同拒絶査定に対する審判請求がなされる共に同年10月10日に手続補正書が提出されて明細書を補正する手続補正がなされたものである。


[2]平成19年10月10日付けの明細書を補正する手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成19年10月10日付けの明細書を補正する手続補正を却下する。

〔理 由〕
1.本件補正の内容
平成19年10月10日付けの手続補正(以下、単に「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、出願当初の)下記の(ロ)に示すものを下記の(イ)に示すものと補正するものである。

(イ)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】 少なくとも1つの自動スプレー装置(14)により物品(12)にスプレー塗装するためのブース室(10)と、塗装すべき物品(12)をブースの上方に延在する搬送装置によってブースの中を通って搬送する際に通ることができる搬送路に対して平行に延在する隙間(58)によって分割されているブース屋根(6)と、物品をブースに出し入れするためのブース壁(4)の中の少なくとも2つの物品通過オリフィス(18、20)と、を備えており、物品通過オリフィス(18、20)の少なくとも1つにおいては、ブース室(10)が、内部でハンドスプレー装置(42)を使用して手で物品(12)をスプレー塗装することができる手動塗装チャンネル(40)によって、物品搬送路に沿ってブースの外側に延長されており、ブース室(10)は、手動塗装チャンネル(40)内に延びる吸引力がブース室(10)内に作り出される吸気接続部(34)を備え、手動塗装チャンネル(40)が、それぞれの物品通過オリフィス(18、20)に隣接するチャンネル後壁(44、72)とチャンネル屋根(46、47)とを有し、このチャンネル屋根(46、47)が、チャンネル屋根隙間(68)によって、物品(12)の搬送路の上方において平行に、2つのチャンネル屋根部(46、47)に分割され、この2つのチャンネル屋根部(46、47)を通って吊り下げ装置(64)が動くことができる粉末スプレー塗装ブースにおいて、
少なくとも2つの物品通過オリフィス(18、20)は、その上端に、屋根隙間(58)の中に達し、そこから搬送装置(22)の物品吊り下げ装置(61)を突出させることができるよう延長されたオリフィス延長部(52)を有し、オリフィス延長部(52)の幅は、底においては物品通過オリフィス(18、20)の幅と同じであり、頂部に向かって徐々に狭くなり、頂部においてはブース屋根隙間(58)と同じ狭い幅であることと、
オリフィス延長部(52)の縁と整列するように、2つのチャンネル屋根部(46、47)が切妻屋根方式で相互に傾斜して配置されていることと、
ブース屋根(6)とほぼ水平になるように、2つのチャンネル屋根部(46、47)が少なくとも物品通過オリフィス(18、20)の上端から上向きに延在しており、その結果、チャンネル屋根隙間(68)はブース屋根隙間(58)とほぼ同じ高さになるが、しかし物品通過オリフィス(18、20)の最上縁よりも常に高くなることを特徴とする粉末スプレー塗装ブース。
【請求項2】 粉末と接触するブース(2)及び手動塗装チャンネル(40)の全ての表面がプラスチックからなることを特徴とする請求項1に記載の粉末スプレー塗装ブース。
【請求項3】 チャンネル後壁が、蝶番によってブース(2)に取り付けられ、必要に応じてそれぞれの物品通過オリフィス(18、20)を閉じることができるブースドア(72)であることを特徴とする請求項1に記載の粉末スプレー塗装ブース。
【請求項4】 チャンネル後壁(42)が取り外しできるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の粉末スプレー塗装ブース。
【請求項5】 ブース壁(4)が、水平断面図に見られるように、円形・円筒形を有していることと、ブース床(8)が下向きに狭くなっている漏斗形であることと、吸気接続部(34)がブース床の上の漏斗形状の最も低い地点に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか記載の粉末スプレー塗装ブース。」

(ロ)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】 少なくとも1つの自動スプレー装置(14)により物品(12)にスプレー塗装するためのブース室(10)と、塗装すべき物品(12)をブースの上方に延在する搬送装置によってブースの中を通って搬送する際に通ることができる搬送路に対して平行に延在する隙間(58)によって分割されているブース屋根(6)と、屋根隙間(58)の中に達し、そこから搬送装置(22)の物品吊り下げ装置(61)を突出させることができるオリフィス延長部(52)によって延長されている、物品をブースに出し入れするためのブース壁(4)の中の少なくとも2つの物品通過オリフィス(18、20)とを備えており、物品通過オリフィス(18、20)の少なくとも1つにおいては、ブース室(10)が、内部でハンドスプレー装置(42)を使用して手で物品(12)をスプレー塗装することができる手動塗装チャンネル(40)によって、物品搬送路に沿ってブースの外側に延長されており、手動塗装チャンネル(40)が、それぞれの物品通過オリフィス(18、20)に隣接するチャンネル後壁(44、72)とチャンネル屋根(46、47)とを有し、このチャンネル屋根(46、47)が、チャンネル屋根隙間(68)によって、物品(12)の搬送路の上方において平行に、2つのチャンネル屋根部(46、47)に分割され、この2つのチャンネル屋根部(46、47)を通って吊り下げ装置(64)が動くことができる粉末スプレー塗装ブースにおいて、
オリフィス延長部(52)の幅が底においては物品通過オリフィス(18、20)の幅と同じであり、頂部に向かって徐々に狭くなり、頂部においてはブース屋根隙間(58)と同じ狭い幅であることと、オリフィス延長部(52)の縁と整列するように、2つのチャンネル屋根部(46、47)が切妻屋根方式で相互に傾斜して配置されていることと、ブース屋根(6)とほぼ水平になるように、2つのチャンネル屋根部(46、47)が少なくとも物品通過オリフィス(18、20)の上端から上向きに延在しており、その結果、チャンネル屋根隙間(68)はブース屋根隙間(58)とほぼ同じ高さになるが、しかし物品通過オリフィス(18、20)の最上縁よりも常に高くなることを特徴とする粉末スプレー塗装ブース。
【請求項2】 粉末と接触するブース(2)及び手動塗装チャンネル(40)の全ての表面がプラスチックからなることを特徴とする請求項1に記載の粉末スプレー塗装ブース。
【請求項3】 チャンネル後壁が、蝶番によってブース(2)に取り付けられ、必要に応じてそれぞれの物品通過オリフィス(18、20)を閉じることができるブースドア(72)であることを特徴とする請求項1に記載の粉末スプレー塗装ブース。
【請求項4】 チャンネル後壁(42)が取り外しできるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の粉末スプレー塗装ブース。
【請求項5】 ブース壁(4)が、水平断面図に見られるように、円形・円筒形を有していることと、ブース床(8)が下向きに狭くなっている漏斗形であることと、吸気接続部(34)がブース床の上の漏斗形状の最も低い地点に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか記載の粉末スプレー塗装ブース。」

2.本件補正の適否
(1)本件補正により補正される特許請求の範囲の請求項1
請求項1に関する本件補正は、本件補正前の請求項1の発明特定事項にさらに「ブース室(10)は、手動塗装チャンネル(40)内に延びる吸引力がブース室(10)内に作り出される吸気接続部(34)を備え、」及び「少なくとも2つの物品通過オリフィス(18、20)は、その上端に、屋根隙間(58)の中に達し、そこから搬送装置(22)の物品吊り下げ装置(61)を突出させることができるよう延長されたオリフィス延長部(52)を有し、」の点を付加するものであるから、平成14年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、次に、本件補正により補正された請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて検討する。

(2)本件補正により補正される特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正により補正される特許請求の範囲の請求項1において、
(A)「少なくとも2つの物品通過オリフィス(18、20)と、を備えており、物品通過オリフィス(18、20)の少なくとも1つにおいては、ブース室(10)が、…(中略)…手動塗装チャンネル(40)によって、物品搬送路に沿ってブースの外側に延長されており、…(中略)…手動塗装チャンネル(40)が、それぞれの物品通過オリフィス(18、20)に隣接するチャンネル後壁(44、72)とチャンネル屋根(46、47)とを有し、」と
(B)「少なくとも2つの物品通過オリフィス(18、20)は、その上端に、…(中略)…オリフィス延長部(52)を有し、オリフィス延長部(52)の幅は、底においては物品通過オリフィス(18、20)の幅と同じであり、頂部に向かって徐々に狭くなり、頂部においてはブース屋根隙間(58)と同じ狭い幅であることと、オリフィス延長部(52)の縁と整列するように、2つのチャンネル屋根部(46、47)が切妻屋根方式で相互に傾斜して配置されている」
は整合していない。
すなわち、上記(A)の記載によれば、少なくとも2つの「物品通過オリフィス」の内の1つの「物品通過オリフィス」に「手動塗装チャンネル」が延長されている場合が含まれているのに対して、上記(B)の記載によれば、少なくとも2つの「物品通過オリフィス」の「物品通過オリフィス」に「手動塗装チャンネル」が延長されていることになり、その結果として、1つの「物品通過オリフィス」に「手動塗装チャンネル」が延長されている場合が排除されることになるから、上記(A)と(B)は整合していない。

(3)まとめ
以上のように、本願は、明細書の記載に不備があるため、特許法第36条第6項第2号の規定をみたしていないから、本件補正により補正された請求項1に係る発明は、特許出願の際に特許を受けることができないものである。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成14年改正前特許法第17条の2第5項において準用する第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。


[3]本願発明について
1.本願発明の内容
平成19年10月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下、単に「本願発明」という。)は、出願当初の明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、上記[2]の〔理 由〕の1.(ロ)の請求項1に記載されたとおりである。

2.原査定の拒絶の理由に引用された引用例
(1) 独国特許出願公開第19524327号(以下、単に「引用文献」という。)
(A)引用文献記載の事項
引用文献には、次の事項が図面と共に記載されている。なお、ウムラルトuは、uで代用している。
a)"Die Erfindung wird nachstehend an Hand ・・・den Einsatz der Pulverspruheinrichtungen,"(第4頁第6欄第46行?第5頁第7欄第1行)
(仮訳:以下に、好ましい実施の形態においての本発明を、添えられた図面を参照に詳細に説明する。図面では、同一あるいは類似の部分は同一の記号が付けられている。図面の図は以下のものを示す:
図1 本発明による粉体塗装ブースの概略的斜視全体図、
図2 自動作動および自動搬送作動を明確に示すためにパスボックスが開放されている粉体塗装ブースの側面図、
図2a 粉体塗装ブースの上方および/または下方末端部の部分拡大図
図3 複数の異なった実施の形態の自動作動可能な清掃装置を伴った図2に示されたブースの概略断面図、
図4 粉体吹きつけ装置を使用するために、対向した壁領域に複数の異なった大きさの扉を持つブースのさらなる実施の形態の横断図、)
b)"Unter Bezungnahme auf die Fig.1 und 2 ・・・Anordnung der Pulverspruheinrichtungen 4." (第5頁第7欄第26?47行)
(仮訳:図1および2に関して、全体として符号1が付けられている粉体塗装ブースの好ましい実施の形態が示され、これは円形または場合によっては楕円形に形成された断面図を持ち、ほぼ直立配置された円筒形に形成されている。この粉体塗装ブース1は小さな底面積2を持ち、柱状に形成されている。図1内に矢印で示されているように、自動作動では被塗装物は、通過方向Aに粉体塗装ブース1で構成される内部空間を通過、移動する。粉体塗装ブース1の1つの壁または対向する壁に少なくとも1つのスリット3が認められ、スリットを介して少なくとも1つの、例えば塗装ガンの形状の、ブースの内部空間で例えば垂直方向へ重ねられて配置されているところの、吹きつけ部品を持つ粉体吹きつけ装置4が通過する。この粉体吹きつけ装置4は、これ自体は周知であって、粉体吹きつけ装置4が直接一直線上に対向して位置する構成においても粉体塗装を許容する。)
c)"Nach Fig.1 weist ・・・ Pulverspruheinrichtungen 4 vorbeigefuhrt."(第5頁第8欄第1?14行)
(仮訳:図1によれば粉体塗装ブース1の天上面9はスリット状のオリフィス10を備え、これは通過方向Aに伸延している。図2から見ることができるように、自動搬送作動ではこのスリット状のオリフィス10は運送台架11を備え、これに詳細には説明されない、被塗装物が配置されている。運送装置を介して、例えば図2で示されているチェインコンベア12または類似物で自動搬送作動時に、取り付けられた被塗装物と共にこの運送台架11は粉体塗装ブース1の内部空間を通って通過方向Aに経過し、粉体吹きつけ装置4に接して通過ガイドされる。)
d)"Ferner hat die Pulverbeschichtungskabine 1 ・・・ angeordnet sind."(第6頁第9欄第5?11行)
(仮訳:さらに粉体塗装ブース1はここで示された実施の形態では通過方向Aから見て入り口方向と出口方向にパスボックス13を備えている。パスボックス13は好ましくは固定設置された底14とドア状の扉15を備え、この扉は回転可能に粉体塗装ブース1の基本本体に取り付けられている。)
e)"Bei der in Fig.1 ・・・ Klappe 15 gebildet wird."(第6頁第9欄第22?43行)
(仮訳:例えば図1に示された粉体塗装ブース1においては、パスボックス13のドア状の扉15は、パスボックス13から前塗装の場が形成され、ここで被塗装物に手動で前塗装が実施されることができるという状態で示されている。出口側のパスボックス13の実施の形態は、同様のまたは類似の方法で実施されることができ、この結果場合によってはパスボックス13を介して仕上げ塗装の場を提供することができる。このように形成された仕上げ塗装の場または前塗装の場は、選択的に、必要に応じて右または左から到達可能であって、このためにドア状の扉15は相応に開放あるいは閉鎖されることができる。こうして前塗装および/または仕上げ塗装の場の場合に到達可能性が右または左から選択的することができ、それぞれ対向して位置する壁面の1つが対向壁として存在し、この壁は約90度外側へ開かれたドア状の扉15で構成される。)
f)第2図において、「被塗装物通過オリフィスの縁と整列するように、2つのパスボックス屋根がほぼ水平に配置されている」ように描かれている。

(B)引用文献記載の発明
したがって、引用文献には、次の発明(以下、単に「引用文献記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。
「少なくとも1つの粉体吹きつけ装置4により被塗装物にスプレー塗装するための粉体塗装ブース1と、被塗装物を粉体塗装ブース1の上方に延在するチェインコンベア12によって粉体塗装ブース1の中を通って搬送する際に通ることができる搬送路に対して平行に延在するスリット状のオリフィス10によって分割されている天上面9と、被塗装物を粉体塗装ブース1に出し入れするためのブース壁の中の2つの被塗装物通過オリフィスと、を備えており、被塗装物通過オリフィスにおいては、粉体塗装ブース1が、内部で手動で被塗装物をスプレー塗装することができるパスボックス13によって、被塗装物搬送路に沿って粉体塗装ブース1の外側に延長されており、パスボックス13が、それぞれの被塗装物通過オリフィスに隣接するドア状の扉15とパスボックス屋根とを有し、このパスボックス屋根が、パスボックス屋根隙間によって、被塗装物の搬送路の上方において平行に、2つのパスボックス屋根部に分割され、この2つのパスボックス屋根部を通って運送台架11が動くことができる粉体塗装ブースにおいて、
被塗装物通過オリフィスの上方の縁と整列するように、2つのパスボックス屋根がほぼ水平に配置されていることと、天上面9より低くくなるように、2つのパスボックス屋根が被塗装物通過オリフィスの上端に延在しており、その結果、パスボックス屋根隙間はオリフィス10より低くなる粉体塗装ブース。」

(2)対比
本願補正発明と引用文献記載の発明を対比すると、引用文献記載の発明における「粉体吹きつけ装置4」、「被塗装物」、「粉体塗装ブース1」、「チェインコンベア12」、「スリット状のオリフィス10」、「天上面9」、「被塗装物通過オリフィス」、「手動で被塗装物をスプレー塗装する」、「パスボックス13」、「ドア状の扉15」、「パスボックス屋根」、「パスボックス屋根隙間」、「パスボックス屋根部」、「運送台架11」及び「粉体塗装ブース」が、本願補正発明における「自動スプレー装置」、「物品」、「ブース室」、「搬送装置」、「屋根隙間」、「ブース屋根」、「物品通過オリフィス」、「ハンドスプレー装置を使用して手で物品をスプレー塗装する」、「手動塗装チャンネル」、「チャンネル後壁」、「チャンネル屋根」、「チャンネル屋根隙間」、「チャンネル屋根部」、「吊り下げ装置」及び「粉末スプレー塗装ブース」にそれぞれ相当するものと認められる。
したがって、本願補正発明と引用文献記載の発明は、
「少なくとも1つの自動スプレー装置により物品にスプレー塗装するためのブース室と、塗装すべき物品をブースの上方に延在する搬送装置によってブースの中を通って搬送する際に通ることができる搬送路に対して平行に延在する隙間によって分割されているブース屋根と、物品をブースに出し入れするためのブース壁の中の少なくとも2つの物品通過オリフィスと、を備えており、物品通過オリフィスの少なくとも1つにおいては、ブース室が、内部でハンドスプレー装置を使用して手で物品をスプレー塗装することができる手動塗装チャンネルによって、物品搬送路に沿ってブースの外側に延長されており、手動塗装チャンネルが、それぞれの物品通過オリフィスに隣接するチャンネル後壁とチャンネル屋根とを有し、このチャンネル屋根が、チャンネル屋根隙間によって、物品の搬送路の上方において平行に、2つのチャンネル屋根部に分割され、この2つのチャンネル屋根部を通って吊り下げ装置が動くことができる粉末スプレー塗装ブース。」
である点で一致し、次の〔相違点〕でのみ相違している。
〔相違点〕
本願発明においては、「オリフィス延長部の幅が底においては物品通過オリフィスの幅と同じであり、頂部に向かって徐々に狭くなり、頂部においてはブース屋根隙間と同じ狭い幅であることと、オリフィス延長部の縁と整列するように、2つのチャンネル屋根部が切妻屋根方式で相互に傾斜して配置されていることと、ブース屋根とほぼ水平になるように、2つのチャンネル屋根部が少なくとも物品通過オリフィスの上端から上向きに延在しており、その結果、チャンネル屋根隙間はブース屋根隙間とほぼ同じ高さになるが、しかし物品通過オリフィスの最上縁よりも常に高くなる」のに対して、引用文献記載の発明においては、「被塗装物通過オリフィスの縁と整列するように、2つのパスボックス屋根がほぼ水平に配置されていることと、天上面9より低くくなるように、2つのパスボックス屋根が被塗装物通過オリフィスの上端に延在しており、その結果、パスボックス屋根隙間はオリフィス10より低くな」っており、また、このようにすることにより、本願発明における「オリフィス延長部」に相当するものが備えられていない点。

(4)判断
上記〔相違点〕について以下に検討する。
まず、スプレー塗装ブースにおいて、「2つのチャンネル屋根部が切妻屋根方式で相互に傾斜して配置されている」点は、原査定の拒絶の理由に引用した米国特許第4220432号明細書に記載されているし、周知の技術でもある(以下、「周知技術」という。例えば、特開昭54-016547号公報、特公昭63-62265号公報、実願昭60-173097号(実開昭62-79571号)のマイクロフィルム参照。)。
ここで、この周知技術を引用文献記載の発明における「被塗装物通過オリフィスの上方の縁と整列するように」されていた「2つのパスボックス屋根部」に適用すれば、「2つのパスボックス屋根部」が「切妻屋根方式で相互に傾斜して配置」されることになり、さらに、「2つのパスボックス屋根部」の下方の「ブース壁」の部分を「被塗装物通過オリフィス」に連続するようにしてやれば、自ずと「幅が底においては被塗装物通過オリフィスの幅と同じであり、頂部に向かって徐々に狭くなり、頂部においてはオリフィス10と同じ狭い幅である」開口部分が形成されると共に、「切妻屋根方式で相互に傾斜して配置」された「2つのパスボックス屋根部」が当該「開口部分」の縁と整列するようになり、同時に、当該「開口部分」が「被塗装物通過オリフィスの最上縁よりも常に高くなる」ようにすること、すなわち、結果的に、本願発明における「オリフィス延長部」に相当する当該「開口部分」を備えるようにすることは、当業者が容易に想到することができたものである。なお、「切妻屋根方式で相互に傾斜して配置」された「2つのパスボックス屋根部」の高さを「天上面9」に対してどのように設定するかは、当業者が適宜選択可能な設計事項にすぎないものであり、しかも、「天上面9」とほぼ水平になるように、かつ、「パスボックス屋根隙間」を「天上面9」とほぼ同じ高さにすることは最も自然である。
してみれば、引用文献記載の発明に上記周知技術を適用することにより、本願発明を得る程度のことは、当業者が容易に想到することができたものである。
また、本願発明を全体として検討しても、本願発明が引用文献及び上記周知技術から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-04 
結審通知日 2008-06-10 
審決日 2008-06-24 
出願番号 特願平9-301706
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B05B)
P 1 8・ 537- Z (B05B)
P 1 8・ 121- Z (B05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神谷 径  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 石井 孝明
小谷 一郎
発明の名称 粉末スプレー塗装ブース  
復代理人 渡邊 誠  
復代理人 鈴木 博子  
復代理人 井野 砂里  
代理人 中村 稔  
代理人 宍戸 嘉一  
復代理人 弟子丸 健  
代理人 大塚 文昭  
代理人 小川 信夫  

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