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審決分類 審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1192928
審判番号 不服2005-24533  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-20 
確定日 2009-02-16 
事件の表示 特願2001-229588「価格指数に連動した投資成果を目指す投資証券群の選択装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月14日出願公開、特開2003- 44664〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年7月30日の出願であって、平成17年11月15日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年12月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。


2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年12月20日付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「価格指数採用証券、価格指数算出数量、価格及び証券属性データを入力する入力装置と、該入力装置から価格指数採用証券、価格指数算出数量、価格及び証券属性データを入力して時系列な個別証券属性データを記憶するメモリ機能と、前記価格指数算出数量と前記価格指数採用証券の価格を掛けて価格指数採用証券の時価総額と構成比率を算出する演算機能と、前記価格指数採用証券を価格指数に対する時価構成比率で順位をつけ、前記時価構成比率上位の証券群と時価構成比率下位の証券群に分割し、前記時価構成比率上位の証券群を、前記個別証券属性データを基準に大きいか又は等しい時価構成比率上位の証券群Aと前記個別証券属性データを基準に小さい時価構成比率上位の証券群Bに分割する分割機能と、前記時価構成比率上位の証券群Aの全ての証券を採用し、証券別投資比率を前記価格指数採用証券の時価構成比率に決定し、前記時価構成比率上位の証券群Bの全ての証券を採用し、証券別投資比率を数理計画法の2次計画法で決定し、前記時価構成比率下位の証券群Cの最適組入証券を数理計画法の2次計画法で決定し、証券別投資比率を数理計画法の2次計画法で決定する最適化機能と、前記証券群Aの価格指数に対する時価総額の構成比率を決定し、前記証券群Bの価格指数に対する時価総額の構成比率を決定し、前記証券群Cの価格指数に対する時価総額の構成比率を決定し、各証券群A、B、Cに属するそれぞれの証券の時価総額の合計を価格指数採用証券の時価総額で割り算した前記各証券群A、B、Cの価格指数に対する時価総額構成比率で重みを付けた各証券群A、B、Cの証券別投資比率を算出する編制機能と、前記証券別投資比率を表示する表示装置とからなり、前記証券別投資比率に応じて投資証券群を選択して投資することにより、前記投資証券群の騰落率と価格指数の騰落率に差が極めて少ない投資を行うことができることを特徴とする価格指数に連動した投資成果を目指す投資証券群の選択をすることを特徴とする価格指数に連動した投資成果を目指す投資証券群の選択装置。」


3.原査定の拒絶の理由の概要
平成17年8月31日付の拒絶理由通知の「その1」には、以下の点が記載されている。
「この出願の下記の請求項に係る発明は、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。

<<請求項1,2>>
請求項1,2の記載は、それぞれの段階で行われる業務内容を特定するのみであり、技術的事項として特定される記載はない。してみれば、この請求項に記載された事項に基づいて把握される発明は、所謂コンピュータ・システムであるということを示す以上のものではなく、上記各機能手段が実現しようとするソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されているとまではいえないから、当該請求項に記載された事項に基づいて把握される当該請求項に係る発明が、全体として、自然法則を利用した技術的思想の創作であるとは認められない。
すなわち、コンピュータにやらせたいこと(コンピュータ処理の結果)を記載したに過ぎず、当該結果を得るためにどのような処理が行われているのか明確でない。」


4.審判請求人の主張の概要
審判請求人は、審判請求書の請求の理由において、以下の点を主張している。
『本願発明は、「入力装置によって、価格指数採用証券、価格指数算出数量、価格及び証券属性データを入力し、入力装置からメモリ機能に価格指数採用証券、価格指数算出数量、価格及び証券属性データを入力して時系列な個別証券属性データを記憶させ、これらの属性データをパーソナルコンピュータに設定された分割機能、最適化機能、連合機能、編成機能を使用し、これらの機能を用いて、投資成果を目指す証券群を選択する価格指数に連動した投資成果を目指す投資証券群の選択装置」である。』


5.当審の判断
発明の詳細な説明の記載からみて、価格指数に連動した投資成果を目指す投資証券群の選択装置は、演算機能、分割機能、最適化機能、編成機能により情報処理を行っており、実質的にコンピュータであるので、本願発明は、その実施にソフトウエアを必要とする、いわゆるコンピュータ・ソフトウエア関連発明であると認められる。

このコンピュータ・ソフトウエア関連発明においては、「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」場合、当該ソフトウエアは「自然法則を利用した技術的思想の創作」である。ここで、「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」とは、ソフトウエアがコンピュータに読み込まれることにより、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置又はその動作方法が構築されることをいう。

そこで、請求項1の記載において、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置が構築されることが提示されているかどうか、請求項1の記載を便宜上以下のとおり(a)?(h)に分けて検討する。

(a)価格指数採用証券、価格指数算出数量、価格及び証券属性データを入力する入力装置と、
(b)該入力装置から価格指数採用証券、価格指数算出数量、価格及び証券属性データを入力して時系列な個別証券属性データを記憶するメモリ機能と、
(c)前記価格指数算出数量と前記価格指数採用証券の価格を掛けて価格指数採用証券の時価総額と構成比率を算出する演算機能と、
(d)前記価格指数採用証券を価格指数に対する時価構成比率で順位をつけ、前記時価構成比率上位の証券群と時価構成比率下位の証券群に分割し、前記時価構成比率上位の証券群を、前記個別証券属性データを基準に大きいか又は等しい時価構成比率上位の証券群Aと前記個別証券属性データを基準に小さい時価構成比率上位の証券群Bに分割する分割機能と、
(e)前記時価構成比率上位の証券群Aの全ての証券を採用し、証券別投資比率を前記価格指数採用証券の時価構成比率に決定し、前記時価構成比率上位の証券群Bの全ての証券を採用し、証券別投資比率を数理計画法の2次計画法で決定し、前記時価構成比率下位の証券群Cの最適組入証券を数理計画法の2次計画法で決定し、証券別投資比率を数理計画法の2次計画法で決定する最適化機能と、
(f)前記証券群Aの価格指数に対する時価総額の構成比率を決定し、前記証券群Bの価格指数に対する時価総額の構成比率を決定し、前記証券群Cの価格指数に対する時価総額の構成比率を決定し、各証券群A、B、Cに属するそれぞれの証券の時価総額の合計を価格指数採用証券の時価総額で割り算した前記各証券群A、B、Cの価格指数に対する時価総額構成比率で重みを付けた各証券群A、B、Cの証券別投資比率を算出する編制機能と、
(g)前記証券別投資比率を表示する表示装置とからなり、
(h)前記証券別投資比率に応じて投資証券群を選択して投資することにより、前記投資証券群の騰落率と価格指数の騰落率に差が極めて少ない投資を行うことができることを特徴とする価格指数に連動した投資成果を目指す投資証券群の選択をすることを特徴とする価格指数に連動した投資成果を目指す投資証券群の選択装置。

上記(a)の記載について検討すると、上記(a)の記載は、「入力装置」というハードウエア資源の記載はあるものの、価格指数採用証券、価格指数算出数量、価格及び証券属性データの入力元を特定するに留まる。

上記(b)の記載について検討すると、上記(b)の記載は、「メモリ機能」というハードウエア資源の記載はあるものの、単に、時系列な個別証券属性データを記憶する場所を特定するに留まる。

上記(c)の記載について検討すると、上記(c)の記載は、「演算機能」の処理が、「前記価格指数算出数量と前記価格指数採用証券の価格を掛けて価格指数採用証券の時価総額と構成比率を算出する」と記載されているが、価格指数算出数量と価格指数採用証券の価格を掛けるという演算からでは構成比率を算出できるものとは認められず、構成比率をどのような演算処理を行うことにより算出するのか具体的でない。
また、「演算機能」が実行する「価格指数算出数量と前記価格指数採用証券の価格を掛けて価格指数採用証券の時価総額と構成比率を算出する」という処理において、何らハードウエア資源が利用されていないため、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって演算機能が構築されていない。
よって、上記(c)の記載では、演算機能が、ハードウエア資源を利用したソフトウエアによる情報処理によってどのようにして実現されるのかが具体的に提示されているとは認められない。

上記(d)の記載について検討すると、上記(d)の記載は、「分割機能」の処理が「前記価格指数採用証券を価格指数に対する時価構成比率で順位をつけ、前記時価構成比率上位の証券群と時価構成比率下位の証券群に分割し、前記時価構成比率上位の証券群を、前記個別証券属性データを基準に大きいか又は等しい時価構成比率上位の証券群Aと前記個別証券属性データを基準に小さい時価構成比率上位の証券群Bに分割する」と記載されているが、「価格指数に対する時価構成比率」をどのように算出するのか演算処理が具体的に記載されていない。また、時価構成比率上位の証券群、時価構成比率下位の証券群に分割するという機能は特定されているものの、該分割するという機能を実現するための具体的にどのような情報処理を行っているかについては何ら記載されていない。また、時価構成比率上位の証券群を、証券群A、証券群Bに分割する処理も、「個別証券属性データを基準に」との記載からでは、証券のどのような属性データを基準に、どのようなデータと比較して大小を判断して証券群A、証券群Bに分割するのか、情報処理が具体的に記載されていない。
また、「分割機能」が実行する「前記価格指数採用証券を価格指数に対する時価構成比率で順位をつけ、前記時価構成比率上位の証券群と時価構成比率下位の証券群に分割し、前記時価構成比率上位の証券群を、前記個別証券属性データを基準に大きいか又は等しい時価構成比率上位の証券群Aと前記個別証券属性データを基準に小さい時価構成比率上位の証券群Bに分割する」という処理において、何らハードウエア資源が利用されていないため、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって分割機能が構築されていない。
よって、上記(d)の記載では、分割機能が、ハードウエア資源を利用したソフトウエアによる情報処理によってどのようにして実現されるのかが具体的に提示されているとは認められない。

上記(e)の記載について検討すると、上記(e)の記載は、「最適化機能」の処理が「前記時価構成比率上位の証券群Aの全ての証券を採用し、証券別投資比率を前記価格指数採用証券の時価構成比率に決定し、前記時価構成比率上位の証券群Bの全ての証券を採用し、証券別投資比率を数理計画法の2次計画法で決定し、前記時価構成比率下位の証券群Cの最適組入証券を数理計画法の2次計画法で決定し、証券別投資比率を数理計画法の2次計画法で決定する」と記載されているが、「・・・証券を採用し、証券別投資比率を・・・決定し」という記載は、情報処理としてどのような演算内容を特定しているのか不明であり、「証券別投資比率を数理計画法の2次計画法で決定し」、「時価構成比率下位の証券群Cの最適組入証券を数理計画法の2次計画法で決定し」、「証券別投資比率を数理計画法の2次計画法で決定する」との記載も、2次計画法が特定されているに留まり、どのようなデータを用いてどのような演算を行い、どのようなデータを出力するのか、情報処理が具体的に記載されていない。
また、「最適化機能」が実行する「前記時価構成比率上位の証券群Aの全ての証券を採用し、証券別投資比率を前記価格指数採用証券の時価構成比率に決定し、前記時価構成比率上位の証券群Bの全ての証券を採用し、証券別投資比率を数理計画法の2次計画法で決定し、前記時価構成比率下位の証券群Cの最適組入証券を数理計画法の2次計画法で決定し、証券別投資比率を数理計画法の2次計画法で決定する」という処理において、何らハードウエア資源が利用されていないため、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって最適化機能が構築されていない。
よって、上記(e)の記載では、最適化機能が、ハードウエア資源を利用したソフトウエアによる情報処理によってどのようにして実現されるのかが具体的に提示されているとは認められない。

上記(f)の記載について検討すると、上記(f)の記載は、「編制機能」の処理が「前記証券群Aの価格指数に対する時価総額の構成比率を決定し、前記証券群Bの価格指数に対する時価総額の構成比率を決定し、前記証券群Cの価格指数に対する時価総額の構成比率を決定し、各証券群A、B、Cに属するそれぞれの証券の時価総額の合計を価格指数採用証券の時価総額で割り算した前記各証券群A、B、Cの価格指数に対する時価総額構成比率で重みを付けた各証券群A、B、Cの証券別投資比率を算出する」と記載されているが、「各証券群A、B、Cに属するそれぞれの証券の時価総額の合計を価格指数採用証券の時価総額で割り算した前記各証券群A、B、Cの価格指数に対する時価総額構成比率で重みを付けた各証券群A、B、Cの証券別投資比率を算出する」との記載では、どのデータに対して重み付けを行い各証券群A、B、Cの証券別投資比率を算出しているのか、情報処理が具体的に記載されていない。
また、「編制機能」が実行する「前記証券群Aの価格指数に対する時価総額の構成比率を決定し、前記証券群Bの価格指数に対する時価総額の構成比率を決定し、前記証券群Cの価格指数に対する時価総額の構成比率を決定し、各証券群A、B、Cに属するそれぞれの証券の時価総額の合計を価格指数採用証券の時価総額で割り算した前記各証券群A、B、Cの価格指数に対する時価総額構成比率で重みを付けた各証券群A、B、Cの証券別投資比率を算出する」という処理において、何らハードウエア資源が利用されていないため、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって編成機能が構築されていない。
よって、上記(f)の記載では、編制機能が、ハードウエア資源を利用したソフトウエアによる情報処理によってどのようにして実現されるのかが具体的に提示されているとは認められない。

上記(g)の記載について検討すると、上記(g)の記載は、「表示装置」というハードウエア資源の記載はあるものの、単に、証券別投資比率を表示するに留まる。

上記(h)の記載について検討すると、上記(h)の記載は、選択装置の表示結果を利用した投資行為や選択装置の効果を特定するに留まるものである。

そして、請求項1の記載では、全体としてみても、特定された機能を実現するために、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を行っていると把握できる程度に記載されているとは認められない。

以上の検討によれば、請求項1の記載では、ソフトウエアによる情報の演算又は加工がコンピュータが備えるハードウエア資源を用いてどのように実現されるのか、という点に関しては、何ら具体的に記載されておらず、かつ、その情報の演算又は加工の具体的内容が、請求項1の記載から当業者にとって自明であると認められるものではない。

したがって、本願発明は、ソフトウエアとハードウエアとが協働した具体的な手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置が構築されたものということはできないから、「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエアを用いて具体的に実現されている」とはいえず、本願発明は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当しない。


6.まとめ
以上のとおり、本願発明は、特許法第2条第1項でいう「自然法則を利用した技術的思想の創作」には該当しないから、特許法第29条第1項柱書の規定を満たしておらず、特許を受けることができない。
 
審理終結日 2008-12-04 
結審通知日 2008-12-09 
審決日 2008-12-22 
出願番号 特願2001-229588(P2001-229588)
審決分類 P 1 8・ 1- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮下 浩次  
特許庁審判長 赤穂 隆雄
特許庁審判官 小山 和俊
山本 穂積
発明の名称 価格指数に連動した投資成果を目指す投資証券群の選択装置  
代理人 鈴木 和夫  

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