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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C09K
審判 査定不服 発明同一 取り消して特許、登録 C09K
管理番号 1194354
審判番号 不服2006-19130  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-08-31 
確定日 2009-04-01 
事件の表示 平成 7年特許願第325549号「2液型ポリウレタンシーリング剤組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 6月24日出願公開、特開平 9-165569、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成7年12月14日の出願であって、平成18年7月25日付けで拒絶査定がされ、同年8月31日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月2日付けで手続補正がされ、平成20年5月21日付けで審尋がなされ、同年7月1日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成18年10月2日付けの手続補正について
1.補正の内容
平成18年10月2日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1である
「主剤(A)と硬化剤(B)よりなり、該主剤(A)中に、水との反応により1分子当たり2個以上のアミンまたは水酸基を生成する化合物が、該硬化剤(B)中の反応成分の官能基のモル数に対する該化合物中の官能基のモル数の比として3?100モル%の範囲で存在することを特徴とする2液型ポリウレタンシーリング剤組成物。」
を、
「主剤(A)と硬化剤(B)よりなり、該主剤(A)中に、水との反応により1分子当たり2個以上のアミンまたは水酸基を生成する化合物が、該硬化剤(B)中の反応成分の官能基のモル数に対する該化合物中の官能基のモル数の比として3?50モル%の範囲で存在し、前記硬化剤(B)は実質的に水を含有せず、前記硬化剤(B)の反応成分がポリオールであり、コンクリートまたはアルミ板に用いられることを特徴とする建築用2液型ポリウレタンシーリング剤組成物。」
と補正し、かつ、補正前の明細書の段落【0005】、【0021】、【0032】、【0034】、【0035】を補正するものである。

2.特許請求の範囲の補正についての適否
(1)目的要件
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、
ア 主剤(A)中に存在する水との反応により1分子当たり2個以上のアミンまたは水酸基を生成する化合物の量について、該硬化剤(B)中の反応成分の官能基のモル数に対する該化合物中の官能基のモル数の比として、「3?100モル%の範囲」を、「3?50モル%の範囲」に限定し、
イ 硬化剤(B)を「実質的に水を含有せず」、「反応成分がポリオール」のものに限定し、
ウ 2液型ポリウレタンシーリング剤組成物を「コンクリートまたはアルミ板に用いられる」、「建築用」のものに限定するものである。
そうすると、ア、イ、ウの補正は、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)新規事項の追加の有無
また、上記ア、イ、ウの補正が、願書に最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものであるかどうかについて検討する。
ア 「3?50モル%の範囲」について
当初明細書の段落【0021】には、「3?100モル%、さらに5?20モル%、特に7?12モル%であるのが、発泡抑止効果が高く物性への影響がないので好ましい。」と記載され、かつ、段落【0034】の表1には、官能基量が、3モル%、10モル%、50モル%および100モル%の場合が記載されているので、「3?50モル%」の範囲は当初明細書に記載されていたということができる。
イ 硬化剤(B)が、「実質的に水を含有せず」、「反応成分がポリオール」であることについて
当初明細書には、その段落【0006】に、「硬化剤(B)はポリオールを用いる。」と記載されているが、硬化剤(B)が実質的に水を含有しないものであるという具体的な記載はない。
しかしながら、二液型のポリウレタン系接着剤やシーリング剤にあっては、イソシアネート基含有プレポリマーを含有する主剤が、貯蔵安定性のために水を含まないものであることが必要であることは当業者に明らかであるが、硬化後の接着剤やシーリング剤に、イソシアネート基と水との反応により発生した二酸化炭素による空孔が生じないように、硬化剤成分に水が存在しないようにすることも当業者の常識であるところ、当初明細書の段落【0003】に、「本発明の目的は、高温多湿時にも気泡を発生しないウレタンシーリング剤組成物を提供することにある。」ことが記載され、そのメカニズムとして、段落【0030】に、「・・・シーリング剤を必要なコンクリートの溝に充填した後に、コンクリート中の湿気がシーリング剤中に押し出され、シーリング剤中で主剤中のイソシアネートと水が反応して二酸化炭素を発生させ発泡するので、シーリング剤が硬化した後にシーリング剤の界面付近に多数の気泡を生じることがしばしば観察された。しかし、本発明の2液型ポリウレタンシーリング剤組成物は、このような高温多湿の環境にあっても、シーリング剤をコンクリートの溝に充填すると、コンクリートとの界面付近ではコンクリートから発生した水分がイソシアネートと反応する前に、シーリング剤中のアミンまたは水酸基を生成する化合物(ii)が水と反応して、化合物(ii)の環が開環するか、あるいは加水分解してアミンおよび/または水酸基を生成し、さらに、そのアミンや水酸基が主剤(A)中のイソシアネート基と反応して硬化するので、コンクリートの界面に発泡を生じることなく、シーリング剤を硬化させることができる。一方、シーリング剤の内部には、コンクリート中の湿気が届かないので、主剤(A)のウレタンプレポリマー(i)中のNCO基と、硬化剤(B)のポリオール中のOH基とが反応してシーリング剤を硬化させるので、シーリング剤のコンクリートとの界面付近の発泡が抑制され、一方全体のシーリング剤の硬化時間には影響がないので可使時間が短くなることがない。」旨記載されており、本願発明においては、シーリング剤(主剤と硬化剤との組成物)のコンクリートとの界面におけるコンクリート中の湿気とイソシアネートとの反応による二酸化炭素の発生を防止するために、主剤中に化合物(ii)を含有させているのであるから、主剤と混合した時にイソシアネート基との反応により二酸化炭素を発生させる可能性のある水を、硬化剤(B)中に存在させることは本発明の意図していないものと解されるし、さらに、コンクリート中の湿気が届かないシーリング剤の内部においても、主剤(A)のウレタンプレポリマー(i)中のNCO基と硬化剤(B)のポリオール中のOH基とが反応してシーリング剤を硬化させるので、シーリング剤のコンクリートとの界面の発泡が抑制され、全体のシーリング剤のシーリング硬化時間に影響がないのであるから、シーリング剤の内部には水が存在しないこと、すなわち、シーリング剤の他方の成分である硬化剤には水が存在しないことを意味していると解される。
したがって、硬化剤が実質的に水を含有しないということは明細書中に明記されていないが、当初明細書の記載から明らかな事項であると解される。
ウ 2液型ポリウレタンシーリング剤組成物が「コンクリートまたはアルミ板に用いられる」、「建築用」であることについて
当初明細書の段落【0031】には、「本発明の組成物は、建物用シーリング剤、特にコンクリートやアルミ板等の間に用いるシーリング剤として有用である。」と記載されているから、「コンクリートまたはアルミ板に用いられる」、「建築用」であることは当初明細書に記載された事項の範囲内である。

以上のとおり、上記ア?ウの補正は、当初明細書に記載した事項の範囲内においてした補正であるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

(3)独立特許要件
本件補正は、上記「(1)」に示すように特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正後の前記請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。
ところで、原査定の拒絶の理由の概要は、
理由1 本願発明は、特開平7-90242号公報(以下、「引用文献1」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、
理由2 本願発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特願平7-89381号(特開平8-48964号公報)の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をしたものと同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもない、
というものであるので、これについて検討する。

理由1について
引用文献1には、「水または水含有組成物を含む反応成分Bと混合される、少なくとも1種の潜伏性硬化剤といっしょになった末端イソシアネート基をもつプレポリマーを含む基本成分Aを含み、成分Aが少なくとも容量で100%を超過して使われることを特徴とするペースト状の2成分接着剤-あるいはシーラント-ポリウレタン組成物。」(請求項1)(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
本願補正発明と引用発明1とを対比すると、本願補正発明における「水との反応により1分子当たり2個以上のアミンまたは水酸基を生成する化合物」は、潜在性硬化剤、すなわち引用発明1における潜伏性硬化剤であるので、本願補正発明と引用発明1とは、
「潜在性硬化剤が存在する主剤と、他の成分からなる2液型ポリウレタンシーリング剤組成物」
である点で共通するものの、本願補正発明においては、他の成分が「硬化剤であって、実質的に水を含有せず、反応成分がポリオール」であるのに対し、引用発明1においては、「水または水含有組成物を含む」ものである点で、少なくとも相違しており、本願補正発明は高温多湿時にも気泡を発生しないウレタンシーリング剤組成物を提供することを目的としているのに対して、引用発明1の2成分シーラント(シーリング剤)は、ペースト状の2成分シーラントを減じられた圧力で混合するのに効率が良く、通常の手動の適用ガンに連結した場合に容認できる押出量を提供するものであって、発明の目的も相違する。
したがって、本願補正発明が、引用発明1から当業者が容易に発明することができたものということはできない。

理由2について
先願明細書には、
「モレキュラーシーブのようなイオン交換作用を有する固体成分を含まない二成分接着剤、シール剤またはコーティング組成物であって、ここで、前記組成物は、別個に包装された成分Aおよび成分Dを含み、それが互いに分離されているときには貯蔵可能であるが、成分Aと成分Dとの接触時に組成物の硬化が起こる組成物であって、
成分Aは、成分Aが成分Dの少なくとも1種の要素および/または水と接触するとすぐに成分Aを架橋させる反応性基を有する少なくとも1種の要素を含み、そして、
成分Dは成分Bまたは成分Cのいずれかであり、ここで、
成分Bは成分Aを架橋させる要素を含み、そして、更に、反応性基を有する少なくとも1種の要素であって、水と接触するとすぐに、または、可能には成分A中に含まれた要素と接触するとすぐに成分Bを架橋させる要素を含み、そして、
成分Cは固体と成分Aを架橋する要素との混合物であり、ここで、この要素は、揮発性であるが、但し、もし成分A中の反応性基がイソシアネート基であり、且つ、成分Aを架橋させる成分Cの揮発性要素が水であるならば、この成分Cの固体はイオン性基を有する水に希釈性のポリマーであり、そして、この場合、成分Aは、更に、成分A中のイソシアネート基のための硬化剤または潜伏性硬化剤を含まない、
ことを特徴とする組成物。」(特許請求の範囲の請求項1)の発明が記載されている。
しかしながら、先願明細書には、成分Bが実質的に水を含有せず、反応成分がポリオールであること、シール剤がコンクリートまたはアルミ板に用いられ、建物用であることについては何等記載がない。
したがって、本願補正発明が先願明細書に記載された発明と同一であるということはできない。

3.発明の詳細な説明の補正についての適否
明細書の段落【0005】、【0021】、【0032】、【0034】、【0035】についての補正は、いずれも、特許請求の範囲が補正されたことに伴い、特許請求の範囲の記載内容と整合させるためになされたものであるところ、特許請求の範囲についての補正は新規事項を追加するものでないことは、上記したとおりであるから、これと整合させる発明の詳細な説明の補正も、新規事項を追加するものではない。
したがって、発明の詳細な説明の補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

4.まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は適法になされたものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
上記したように、本件補正は適法なものであるので、本願の請求項1に係る発明は、平成18年10月2日付けの手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項1の発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2 1.」に記載されたとおりの以下のものである。
「主剤(A)と硬化剤(B)よりなり、該主剤(A)中に、水との反応により1分子当たり2個以上のアミンまたは水酸基を生成する化合物が、該硬化剤(B)中の反応成分の官能基のモル数に対する該化合物中の官能基のモル数の比として3?50モル%の範囲で存在し、前記硬化剤(B)は実質的に水を含有せず、前記硬化剤(B)の反応成分がポリオールであり、コンクリートまたはアルミ板に用いられることを特徴とする建築用2液型ポリウレタンシーリング剤組成物。」

2.原査定の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、上記「第2 2.(3)」に示したように、
理由1 本願発明は、特開平7-90242号公報に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、
理由2 本願発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特願平7-89381号(特開平8-48964号公報)の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をしたものと同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもない、
というものである。

3.当審の判断
上記理由1、理由2に理由がないことは、上記「第2 2.(3)」に示したとおりである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、先願明細書に記載された発明と同一でもない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2009-03-12 
出願番号 特願平7-325549
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C09K)
P 1 8・ 161- WY (C09K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 橋本 栄和  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 坂崎 恵美子
鈴木 紀子
発明の名称 2液型ポリウレタンシーリング剤組成物  
代理人 渡辺 望稔  
代理人 三和 晴子  

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