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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01K
管理番号 1194911
審判番号 不服2007-7217  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-08 
確定日 2009-03-25 
事件の表示 特願2004-321359「粒状の排泄物処理材及び製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月30日出願公開、特開2005-168493〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成13年1月26日に出願した特願2001-19288号(以下、「分割の原出願」という。)の一部を、特許法第44条第1項の規定により平成16年11月4日に新たな特許出願としたものであって、平成19年1月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。
その後、平成20年9月5日付けで審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年11月22日付けで回答書が提出されたものである。

【2】平成19年3月8日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成19年3月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
[1]補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項2は、以下のように補正された。
「5mm以下の粒度の紙綿廃材、紙タオル廃材、便座シート廃材、寝具用シーツ廃材、マスク廃材、バフ粉、ダンボール屑、新聞紙屑、雑誌屑、チタン紙廃材、パンチ屑、木材屑、鉋屑、木粉、家屋の解体材、新築廃材若しくは不織布屑又はこれらの中の二以上並びに茶殻若しくは焙煎コーヒー豆の抽出残渣又は茶殻及び焙煎コーヒー豆の抽出残渣を含有して粒状に形成されている芯部と、0.35mm以下の粒度の機械パルプ廃材、化学パルプ廃材、セミケミカルパルプ廃材、綿状パルプ廃材、木材パルプ廃材、古紙パルプ廃材、木材屑、鉋屑、木粉、紙粉、衛生用品廃棄物の分級産物のフラッフパルプ、吸水性繊維廃材、吸水性樹脂廃材、吸水性樹脂を含む紙粉、製本時に発生する紙粉、不織布製造時に発生する紙粉、製紙工程において発生する紙粉若しくは衛生材料製造時に発生する紙粉、又はこれらの中の二以上並びに吸水性樹脂及び0.1重量%以上のお茶の乾燥物を含有して前記芯部を被覆する被覆層部とを有して粒状に形成されていることを特徴とする粒状の排泄物処理材。」

上記補正は、芯部の素材の選択肢から「紙ナプキン廃材、アイマスク廃材、座席用ヘッドカバー廃材、枕カバー廃材」を削除し、被覆層部の素材の選択肢から「家屋の解体材、新築廃材、チタン紙廃材、パンチ屑」を削除し、芯部に含有される紙綿廃材等の粒度を5mm以下に限定するとともに、被覆層部に含有される機械パルプ廃材等の粒度を0.35mm以下に限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とする。
そこで、本願の補正後の上記請求項2に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて、以下に検討する。

[2]引用刊行物

刊行物1:特開平10-66466号公報
刊行物2:特開2000-192396号公報

本願出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された上記刊行物1には、図面とともに、以下のことが記載されている。

(1a)
「【請求項1】焙煎コーヒー豆のコーヒー抽出液抽出残渣、前記焙煎コーヒー豆のコーヒー抽出液抽出残渣より少ない量の配合物質及び着色物質を含有する1ミリメートル以上の粒径を有する造粒物と、前記造粒物の表面に付着している着色物質及び接着能を有する配合物質とを包含していることを特徴とする動物の排泄物処理材。
・・・
【請求項3】配合物質が、紙粉、・・・、活性炭入りパルプ廃物、茶殻、・・・、高吸水性樹脂、・・・或はこれら2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1・・・に記載の動物の排泄物処理材。
【請求項4】着色物質が、紙粉、・・・であることを特徴とする請求項1・・・に記載の動物の排泄物処理材。
・・・」(特許請求の範囲)

(1b)
「本発明において、コーヒー抽出液抽出残渣の着色乾燥造粒物に配合される配合物質としては、尿に触れて粉体粒子相互を接着させて、容易に塊を形成して、尿に触れた部分を容易に取り出し易くさせるように、接着機能を有する配合物質を配合するのが好ましい。このような配合物質には、水溶性又は水分散性の配合物質として、茶殻、おから、木屑、紙粉、シリカゲル、製紙用パルプ、製紙スラッジ、活性炭入りパルプ廃物、パルプスラッジ、ポリビニルアルコール(PVA)(ポバール:商品名)、小麦粉、澱粉、コーンスターチ、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸ナトリウム、プルラン、カゼイン又はゼラチンなどがあり、これらは、単独で使用されるか、又はこれら2種以上を混合して配合物質として使用される。・・・」(段落【0012】)

(1c)
「前記コーヒー抽出液抽出残渣の着色造粒物には、造粒後、更に接着能を有する配合物質、高吸水性樹脂、殺菌作用を有する配合物質又はその他配合物質をまぶすなどして、造粒物の表面に配合物質を付着させ、その後乾燥することにより容易に剥落しないようにするのが好ましい。・・・」(段落【0020】)

(1d)
「例13.含水率55%のコーヒー抽出液抽出残渣32.5kg及び水15kgを、コーヒー抽出液抽出残渣供給用の原料タンク2に入れ、次いで着色物質として、オムツ及びナプキン廃材の紙粉10kgを着色材供給用原料タンク4に入れ、これに次いで、配合物質として、ハイモ株式会社製の高吸水性樹脂ハイモサブ500(登録商標)1.5kg及び安息香酸2.5gを配合物質供給用原料タンク6に入れ、以下、例7の場合と同様に、撹拌装置9に、含水させたコーヒー抽出液抽出残渣、着色物質の紙粉並びに配合物質の高吸水性樹脂ハイモサブ500(登録商標)及び安息香酸を入れて、白色に着色されたコーヒー抽出液抽出残渣配合物を製造し、これを口径6.0mm、プレート厚さ30mmのミートチョッパーに送り、造粒し、小さい円柱状の白色造粒物が形成された。
造粒されたコーヒー抽出液抽出残渣の着色造粒物は、ネツトコンベヤ18によつて、第1噴霧装置19に送られ、第1噴霧ノズル22から、重量比3%のパウダーに近い粉末紙粉が噴霧された(表面の紙粉の付着重量比3?5%)。・・・」(段落【0047】、【0048】)

(1e)
「例14.含水率60%のコーヒー抽出液抽出残渣32.5kg及び水15kgを、コーヒー抽出液抽出残渣供給用の原料タンク2に入れ、次いで着色物質として、オムツ及びナプキン廃材の紙粉10kgを着色材供給用原料タンク4に入れ、これに次いで、配合物質として、ハイモ株式会社製の高吸水性樹脂ハイモサブ500(登録商標)1kg、小麦粉2.5kg及び安息香酸2.5gを配合物質供給用原料タンク6に入れ、以下、例7の場合と同様に、撹拌装置9に、含水させたコーヒー抽出液抽出残渣、着色物質の紙粉並びに配合物質の高吸水性樹脂ハイモサブ500(登録商標)、小麦粉及び安息香酸を入れて、白色に着色されたコーヒー抽出液抽出残渣配合物を製造し、これを口径6.0mm、プレート厚さ30mmのミートチョッパーに送り、造粒し、小さい円柱状の白色造粒物が形成された。
造粒されたコーヒー抽出液抽出残渣の着色造粒物は、ネツトコンベヤ18によつて、第1噴霧装置19に送られ、第1噴霧ノズル22から、重量比3?5%の紙粉が噴霧された(表面の紙粉の付着重量比3?5%)。・・・」(段落【0050】、【0051】)

(1f)
「例16.含水率65%のコーヒー抽出液抽出残渣17.5kg及び水3.6kgを、コーヒー抽出液抽出残渣供給用の原料タンク2に入れ、次いで着色物質として、紙粉5kgを着色材供給用原料タンク4に入れ、これに次いで、配合物質として、ハイモ株式会社製の高吸水性樹脂ハイモサブ500(登録商標)1kgを配合物質供給用原料タンク6に入れ、以下、例7の場合と同様に、撹拌装置9に、含水させたコーヒー抽出液抽出残渣、着色物質の紙粉並びに配合物質の高吸水性樹脂ハイモサブ500(登録商標)を入れて、白色に着色されたコーヒー抽出液抽出残渣配合物を製造し、これを口径6.0mmのミートチョッパーに送り、造粒し、小さい円柱状の白色造粒物が形成された。
造粒されたコーヒー抽出液抽出残渣の着色造粒物は、ネツトコンベヤ18によつて、第1噴霧装置19に送られ、第1噴霧ノズル22から、粒径が0.5mm以下の紙粉が噴霧された。紙粉が噴霧された造粒物は、篩分け装置で余分の付着物が分離され、次いで、ポリビニルアルコールの希釈溶液が噴霧された。ポリビニルアルコール希釈溶液が噴霧された造粒物は、続く第2噴霧装置(図示されていない)に送られ、第2噴霧ノズル(図示されていない)から、粒径が0.3mm以下の紙粉90重量%及びハイモ株式会社製の高吸水性樹脂ハイモサブ500(登録商標)10重量%の混合物が噴霧された。2回目の紙粉が噴霧された造粒物は、篩分け装置で余分の付着物を分離され、次いで、ポリビニルアルコールの希釈溶液が噴霧された。2回目のポリビニルアルコール希釈溶液が噴霧された造粒物は、続く第3噴霧装置(図示されていない)に送られ、第3噴霧ノズル(図示されていない)から、粒径が0.1mm以下の紙粉85重量%、ハイモ株式会社製の高吸水性樹脂ハイモサブ500(登録商標)5重量%及びCMC10重量%の混合物が噴霧された。・・・」(段落【0056】、【0057】)

(1g)
「例17.含水率60%のコーヒー抽出液抽出残渣15kg及び水1.5kgを、コーヒー抽出液抽出残渣供給用の原料タンク2に入れ、次いで着色物質として、紙粉6kgを着色材供給用原料タンク4に入れ、これに次いで、配合物質として、ハイモ株式会社製の高吸水性樹脂ハイモサブ500(登録商標)1kg、含水率80%の茶殻5kg及び安息香酸10gを配合物質供給用原料タンク6に入れ、以下、例7の場合と同様に、撹拌装置9に、含水させたコーヒー抽出液抽出残渣、着色物質の紙粉並びに配合物質の高吸水性樹脂ハイモサブ500(登録商標)、茶殻及び安息香酸を入れて、白色と斑状に着色されたコーヒー抽出液抽出残渣配合物を製造し、これを口径6.0mmのミートチョッパーに送り、造粒し、小さい円柱状の白色斑状の造粒物が形成された。
造粒されたコーヒー抽出液抽出残渣の着色造粒物は、ネツトコンベヤ18によつて、第1噴霧装置19に送られ、第1噴霧ノズル22から、粒径が0.5mm以下の紙粉が噴霧された。紙粉が噴霧された造粒物は、篩分け装置で余分の付着物が分離され、次いで、水が噴霧された。水が噴霧された造粒物は、続く第2噴霧装置(図示されていない)に送られ、第2噴霧ノズル(図示されていない)から、粒径が0.3mm以下の紙粉90重量%及びハイモ株式会社製の高吸水性樹脂ハイモサブ500(登録商標)10重量%の混合物が噴霧された。2回目の紙粉が噴霧された造粒物は、篩分け装置で余分の付着物を分離され、次いで、水が噴霧された。2回目の水が噴霧された造粒物は、続く第3噴霧装置(図示されていない)に送られ、第3噴霧ノズル(図示されていない)から、粒径が0.1mm以下の紙粉85重量%、ハイモ株式会社製の高吸水性樹脂ハイモサブ500(登録商標)5重量%及びCMC10重量%の混合物が噴霧された。・・・」(段落【0059】、【0060】)

上記記載事項(1a)を参照すると、造粒物の配合物質及び造粒物の表面に付着している配合物質として紙粉更には茶殻を用いることが、上記記載事項(1d)及び(1e)を参照すると、造粒物の着色物質として、紙粉を用いることが記載されている。
また、「粉」とは「個体が砕けて細かくなったもの」であり(「大辞林」(三省堂)参照)、一般的な感覚では「粉」の粒度は明らかに5mm以下である。
さらに、上記記載事項(1f)及び(1g)を参照すると、造粒物の表面に付着している物質として、第2,3噴霧では、0.3mm以下や0.1mm以下の粒度の紙粉並びに高吸水性樹脂を用いることが例示されているから、これら記載事項(1a)ないし(1g)を含む刊行物1全体の記載並びに当業者の技術常識によれば、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。

「5mm以下の粒度の紙粉並びに焙煎コーヒー豆のコーヒー抽出液抽出残渣又は、茶殻及び前記焙煎コーヒー豆のコーヒー抽出液抽出残渣を含有した造粒物と、0.3mm以下や0.1mm以下の粒度の紙粉並びに高吸水性樹脂更には茶殻を含有し前記造粒物の表面に付着している物質とを有して、粒状に形成されている動物の排泄物処理材。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

また、本願出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された上記刊行物2には、図面とともに、以下のことが記載されている。

(2a)
「・・・本発明は、コーヒー液抽出残留廃液又はコーヒー液抽出残渣の浸出液を含有する衛生用紙を使用する衛生シーツ、特に、、紙おむつ、生理用紙、化粧用紙等の衛生用紙及び該衛生用紙を使用する紙おむつ、寝具用補助シーツ、紙おむつ、動物用紙おむつ、生理用ナプキン、動物用生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド、失禁パツド及び動物用シーツなどの衛生用品に使用できる衛生シーツ並びにその製造方法に関する。・・・
さらに、本発明は、人又は動物用の衛生用品に使用される衛生シーツに関し、特に、プラスチック廃材、紙廃材、例えば紙おむつ廃材、尿パッド廃材、生理用ナプキン廃材、動物用紙おむつ廃材又は動物用シーツ廃材或いはそれら廃材の粉砕物を利用した衛生用品、即ち寝具用補助シーツ、紙おむつ、動物用紙おむつ、生理用ナプキン、動物用生理用ナプキン、乳パッド、汗パッド、失禁パツド及び動物用シーツに使用できる衛生シーツに関する。・・・」(段落【0001】、【0002】)

(2b)
「また、本発明においては、検査不良の紙おむつ及び紙おむつ裁断屑等の紙おむつ廃材を、吸水性層部に使用される。紙おむつ廃材は、綿状パルプ即ち紙粉及び高吸水性樹脂分を、例えば約70重量%含有しているので、かなりの吸水性及び保水性を有するが、不透水性膜等にプラスチック材料及びゴム材料が5乃至15重量%ほど使用されているので、その分吸水性及び保水性が低下する。しかし、プラスチック材料やゴム材料は、5mm以下の粒度、好ましくは3mm以下の粒度に粉砕された粉砕物では、水の保水性を有するので、衛生シーツの吸水性層部に使用できることが分かった。しかも、プラスチック材料やゴム材料の吸水性層部への配合は、焼却処理する場合に、プラスチック材料及びゴム材料の発熱量が大きいので、紙おむつ廃材の粉砕物を、吸水性層部に配合した衛生シーツの場合は、使用後の濡れた状態においても、衛生シーツを燃焼できる発熱量を有することが分かった。」(段落【0021】)

(2c)
「・・・緑濃菌、連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、レジオネラ菌、ポツリヌス菌等の細菌の増殖を避けるために、衛生シーツの不織布層部の下面に接する吸水性の第一紙層部を構成する吸水紙として使用される少なくとも一枚の薄葉紙は、・・・コーヒー液抽出残留廃液の乾燥物若しくは前記コーヒー液抽出残渣の浸出液の乾燥物又はこれら乾燥物の混合物に、茶抽出残留廃液の乾燥物若しくは茶殻の浸出液の乾燥物又はこれら乾燥物の混合物が配合されている配合物を含むものとされる。」(段落【0022】)

(2d)
「・・・お茶抽出残留廃液は、茶殻に含有されており、お茶の抽出後、該茶殻から滲出し又は該茶殻の濾過過程で分離される。茶殻には、一般に、こののようにお茶の抽出残留廃液が含有されており、このお茶抽出残留廃液を、水分含有率で60パーセント以上、好ましくは70パーセント以上、さらに好ましくは80重量%以上含有する茶殻を、該茶殻に対し10倍以下、好ましくは5倍以下の重量の常温水又は常温より高い温度の加熱水で浸出すると、得られる浸出液には、お茶の抽出残留廃液を溶解含有すると共に、前記茶殻に未抽出の成分を溶解含有する。・・・」(段落【0026】)

(2e)
「また、本発明は、衛生シーツは、吸水性の第一紙層部に、前記コーヒー液抽出残留廃液の乾燥物及び/又は抽出残渣の浸出液の乾燥物の他に、お茶の抽出残留廃液の乾燥物、茶殻についての浸出液の乾燥物を含有させるので、これらの二以上の乾燥物の作用により、・・・吸水性に優れ、且つ細菌の増殖が抑えられ、廃棄処理されていた抽出残留廃液や同じく廃棄処理されているコーヒー抽出残渣及び茶殻や衛生用品等の廃物を、回収して活用するものであり、・・・」(段落【0035】)

(2f)
「・・・前記吸水性の第一紙層部に、焙煎コーヒー豆のコーヒー液抽出残渣についての浸出液の乾燥物、或いは焙煎コーヒー豆のコーヒー液抽出残渣についての滲出液又は浸出液の乾燥物及び茶殻についての滲出液又は浸出液の乾燥物が含まれているので、従来の紙おむつ、動物用シーツと比して、・・・尿や体臭による汚臭を抑制することができ、例えば、愛玩用の動物用として、休養時、就寝時又は排泄時に使用して、周囲を良好な衛生状態に保っことができる。
本発明においては、焙煎コーヒー豆のコーヒー液抽出残渣についての浸出液及び/又は茶殻の浸出液を使用して、衛生シーツの使用時の細菌の増殖を抑制するので、大量の焙煎コーヒー豆のコーヒー液抽出残渣についての浸出液及び/又は茶殻の浸出液を使用することとなり、従来、活性汚泥処理等により処理されていた廃液を有効に利用でき、・・・」(段落【0078】、【0079】)

[3]対比
本件補正発明と刊行物1記載の発明とを比較すると、刊行物1記載の発明の「造粒物」、「0.3mm以下や0.1mm以下」、「高吸水性樹脂」、「造粒物の表面に付着している物質」、「粒状に形成されている動物の排泄物処理材」は、それぞれ、本件補正発明の「粒状に形成されている芯部」、「0.35mm以下」、「吸水性樹脂」、「芯部を被覆する被覆層部」、「粒状に形成されている粒状の排泄物処理材」に相当し、刊行物1記載の発明の「紙粉」と、本件補正発明の「紙綿廃材、紙タオル廃材、便座シート廃材、寝具用シーツ廃材、マスク廃材、バフ粉、ダンボール屑、新聞紙屑、雑誌屑、チタン紙廃材、パンチ屑、木材屑、鉋屑、木粉、家屋の解体材、新築廃材若しくは不織布屑又はこれらの中の二以上の混合物」とは、「有機質の廃棄物」で共通している。

そうすると、両者は、
「5mm以下の粒度の有機質の廃棄物並びに焙煎コーヒー豆の抽出残渣又は茶殻及び焙煎コーヒー豆の抽出残渣を含有して粒状に形成されている芯部と、0.35mm以下の粒度の紙粉並びに吸水性樹脂を含有して前記芯部を被覆する被覆層部とを有して粒状に形成されている粒状の排泄物処理材。」
の点で一致し、次の点で相違している。

<相違点1>
有機質の廃棄物が、本件補正発明では、紙綿廃材、紙タオル廃材、便座シート廃材、寝具用シーツ廃材、マスク廃材、バフ粉、ダンボール屑、新聞紙屑、雑誌屑、チタン紙廃材、パンチ屑、木材屑、鉋屑、木粉、家屋の解体材、新築廃材若しくは不織布屑又はこれらの中の二以上の混合物であるのに対して、刊行物1記載の発明では、紙粉である点。
<相違点2>
被覆層が、本件補正発明では、0.1重量%以上のお茶の乾燥物を含有しているのに対して、刊行物1記載の発明では、茶殻を含有させる場合もあるが、お茶の乾燥物を含有しているとの限定はない点。

[4]判断
上記各相違点について検討する。
<相違点1について>
上記記載事項(1d)及び(1e)を参照すると、刊行物1には、「紙粉」としてオムツ及びナプキン廃材からなるものが示されている。
一方、本願の分割の原出願の明細書中には、有機質の廃棄物として、紙綿廃材、紙タオル廃材、便座シート廃材、寝具用シーツ廃材、マスク廃材、バフ粉、ダンボール屑、新聞紙屑、雑誌屑、チタン紙廃材、パンチ屑、木材屑、鉋屑、木粉、家屋の解体材、新築廃材若しくは不織布屑又はこれらの中の二以上の混合物とオムツ及びナプキン廃材とは並記して列記されており、本件補正発明の廃棄物に限定した点に格別の技術的意義はない。そして、上記記載事項(b)を参照すると、刊行物1には、造粒物の配合物質として紙粉のほかに、木屑等も使用することが示されており、有機質の廃棄物として、紙粉として周知の紙綿廃材、紙タオル廃材、ダンボール屑、新聞屑、雑誌屑等、又は木屑である木材屑、鉋屑等を選択することは、設計的事項にすぎない。

<相違点2について>
本件補正発明の「お茶の乾燥物」とは、本願明細書によれば、「茶葉から抽出されたお茶の乾燥物、茶殻から抽出されたお茶の乾燥物若しくは茶殻に含有される残留廃液の乾燥物又はこれら乾燥物の二種以上の混合物又は以上に記載のお茶についての濃縮液の乾燥物」(本願明細書の段落【0018】参照。)であるところ、刊行物1記載の発明は被覆部に茶殻を含有させてもよいものであり、上記記載事項(2d)を参照すると、刊行物2には、茶殻には、一般に、お茶の抽出残留廃液が含有されており、茶殻を乾燥させたものはお茶の乾燥物を含むことになるから、刊行物1記載の発明には、被覆部にお茶の乾燥物を含有したものも含まれているといえる。
また、上記記載事項(1c)を参照すると、刊行物1には、被覆層に殺菌作用を有する配合物質を含有させることが記載されており、上記記載事項(2e)及び(2f)を参照すると、刊行物2には、お茶の抽出残留廃液の乾燥物、茶殻についての浸出液の乾燥物をコーヒー抽出残渣と併用すると、細菌の増殖が抑えられ、尿や体臭による汚臭を抑制することができることが記載されている。そうすると、刊行物1記載の発明はコーヒー抽出残渣を含むものであるから、さらにお茶の乾燥物を含有させると細菌の増殖が抑えられ、尿や体臭による汚臭を抑制できることは容易に予測でき、刊行物1記載の発明において、上記効果を発現させるのに必要な量のお茶の乾燥物を被覆層に含有させるようにすることは、当業者が容易に想到しうることである。また、当該成分の含有量を0.1重量%以上とすることに臨界的意義は認められず、どの位の量含有させるかは、実験により効果の発現される量を測定して適宜決めうることにすぎない。

そして、本件補正発明の効果も、刊行物1記載の発明及び刊行物2に記載の技術事項から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものということができない。

したがって、本件補正発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

[5]むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

【3】本願発明について
平成19年3月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし12に係る発明は、平成18年6月26日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項2に係る発明は次のとおりである。
「紙ナプキン廃材、紙綿廃材、紙タオル廃材、便座シート廃材、寝具用シーツ廃材、マスク廃材、アイマスク廃材、座席用ヘッドカバー廃材、枕カバー廃材、バフ粉、ダンボール屑、新聞紙屑、雑誌屑、チタン紙廃材、パンチ屑、木材屑、鉋屑、木粉、家屋の解体材、新築廃材若しくは不織布屑又はこれらの中の二以上並びに茶殻若しくは焙煎コーヒー豆の抽出残渣又は茶殻及び焙煎コーヒー豆の抽出残渣を含有して粒状に形成されている芯部と、機械パルプ廃材、化学パルプ廃材、セミケミカルパルプ廃材、綿状パルプ廃材、木材パルプ廃材、古紙パルプ廃材、木材屑、鉋屑、木粉、家屋の解体材、新築廃材、紙粉、チタン紙廃材、パンチ屑、衛生用品廃棄物の分級産物のフラッフパルプ、吸水性繊維廃材、吸水性樹脂廃材、吸水性樹脂を含む紙粉、製本時に発生する紙粉、不織布製造時に発生する紙粉、製紙工程において発生する紙粉若しくは衛生材料製造時に発生する紙粉、又はこれらの中の二以上並びに吸水性樹脂及び0.1重量%以上のお茶の乾燥物を含有して前記芯部を被覆する被覆層部とを有して粒状に形成されていることを特徴とする粒状の排泄物処理材。」
(以下、請求項2記載の発明を「本願発明」という。)

[1]引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1及び2の記載事項は、前記【2】[2]に記載したとおりである。

[2]対比・判断
本願発明は、前記「【2】」で検討した本件補正発明に、芯部の素材の選択肢として「紙ナプキン廃材、アイマスク廃材、座席用ヘッドカバー廃材、枕カバー廃材」を追加し、被覆層部の素材の選択肢として「家屋の解体材、新築廃材、チタン紙廃材、パンチ屑」を追加し、さらに芯部に含有される紙綿廃材等の粒度を5mm以下にするという限定事項及び被覆層部に含有される機械パルプ廃材等の粒度を0.35mm以下にするという限定事項を省略したものである。
してみると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「【2】[4]判断」に記載したとおり、刊行物1記載の発明及び刊行物2に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、刊行物1記載の発明及び刊行物2に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

[3]むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-15 
結審通知日 2009-01-20 
審決日 2009-02-02 
出願番号 特願2004-321359(P2004-321359)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A01K)
P 1 8・ 121- Z (A01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂田 誠  
特許庁審判長 石川 好文
特許庁審判官 山口 由木
関根 裕
発明の名称 粒状の排泄物処理材及び製造方法  
代理人 中里 浩一  
代理人 川崎 仁  
代理人 滝口 昌司  

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