ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01H |
---|---|
管理番号 | 1195723 |
審判番号 | 不服2005-15698 |
総通号数 | 114 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-07-20 |
確定日 | 2009-04-08 |
事件の表示 | 特願2002-153127号「ソフトフィーリング操作スイッチ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月7日出願公開、特開2003-317569号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成14年4月18日の出願であって、平成17年6月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月20日に本件審判請求がなされた後、当審において拒絶理由通知がなされ、それに対する手続補正書が平成20年5月28日付けで提出されたものである。 2.本願の発明 本願の各請求項に係る発明は、平成20年5月28日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるが、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、次のとおりである。 【請求項1】 スイッチの操作面の基材上にシリコンを含有しない2液イソシアネート硬化型ウレタン系のインク剤を用いて所定のパターンが印刷され、そのパターン印刷がなされた操作面上に透明または半透明の軟質のポリウレタン系の塗料によるコーティング層が設けられたソフトフィーリング操作スイッチ。 3.引用例等及びその記載事項 当審において拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である実用新案登録第2597582号公報(以下「引用例」という)には、以下のことが記載されている。 なお、下記記載中における下線は、いずれも当審で加入したものである。 [引用例] メンブレンスイッチに関するものである。 (第1頁右欄2行?第2頁左欄8行) 「〔産業上の利用分野〕 本考案はソフトな触感を有し且つ耐擦傷性に優れたメンブレンスイッチに関する。 〔従来の技術〕 従来、電話のダイヤルボタンや、電卓、ワープロ、パソコン等の入力用のキーボード、その他種々のスイッチ等において機械的な操作によるキーボタンを用いた接点を有するものが用いられていた。近年これらのスイッチはキーボタン式スイッチに代わってメンブレンスイッチが広く用いられるようになった。 メンブランスイッチはキーボードスイッチに比較して、表面を僅かに押圧するだけの操作でスイッチ操作が行え、機械的に可動する部分がないので構成が簡単、スイッチ部分が多数ある場合等に一つ一つのスイッチの組立を必要としないために大量生産が可能であり製造コストが低く、更に内部にほこりが入りにくい、肉厚を薄く形成できる等の種々の利点を有している。 従来の上記メンブランスイッチの構成は、基材の上に間隙を設けた導電性層とを設けプラスチック製のシートで表面を保護し、更にプラスチックフィルムの表面に数字、文字、記号等を、キー接点に対応する箇所に印刷層が形成されている。」 (第2頁右欄2行?18行) 「〔実施例〕 以下、本考案の実施例を図面に基づき説明する。 図面は本考案の一実施例を示すもので、第1図及び第2図に示すように、本考案メンブレンスイッチ1は表面側のプラスチックフィルム2の最表面にウレタンアクリレートオリゴマーを含有する電離放射線硬化性樹脂を硬化させてなる表面保護層3を有するものである。 上記のメンブレンスイッチ1は基材4表面に上下に間隔を有する導電性層5a、5bと他の導電性層との間は絶縁材6により形成されている接点部7と、接点部7の表面に形成したプラスチックフィルム2と、該プラスチックフィルム2の表面に接点部7に対応した意匠等を印刷して設けられた印刷層8から構成される。本考案メンブレンスイッチ1はウレタンアクリレートオリゴマーを有する電離放射線硬化型樹脂を硬化させてなる表面保護層3を用いたことにより、耐擦傷性に優れ且つソフトな感触を有する表面を得ることができる。」 ここで、意匠等を印刷して設けられた印刷層8では、「インク剤」を用いているということができる。 また、表面保護層3については透明樹脂であるという記載はないが、意匠等を印刷した印刷層8の表面に被覆して表面保護するものであることから、印刷層8が透けて見えるようにしなければならないので表面保護層3は透明または半透明の樹脂であるということができる。 このことは、本願明細書の段落【0002】で上記引用例に記載された技術を従来技術として紹介しており、そこでは、「・・・基板のプラスチックフィルム表面に数字、記号などのパターンを印刷したうえに、透明な軟質塗料をコーティングしてソフトタッチ感をもたせるようにしたもの・・・」と記載されていることからも表面保護層3は透明樹脂であることが分かる。 そこで、第1,2図とともに上記記載事項及び検討事項を総合すると、引用例には、 「メンブレンスイッチ1の操作面の基材上にインク剤を用いて意匠等が印刷され、その印刷がなされた操作面上に透明の軟質の塗料による表面保護層3が設けられたソフトフィーリングメンブレンスイッチ」 に関する発明(以下「引用発明」という)が記載されているものと認められる。 また、本願の出願前の周知技術として、以下の周知例1?3を挙げることができる。 [周知例1]「プラスチックの実際知識」(第4版) 東洋経済新報社発行(1999年11月26日第8刷) 230頁の表12.8ポリウレタン塗料の分類 タイプ5 表12.8タイプ5のポリウレタン塗料は、2液型でウレタン系でイソシアネート硬化型である。 なお、印刷用インク剤と塗料の間に明確な区別はない。 [周知例2] 特開2000?38435号公報 塗料、接着剤、印刷インキ、磁気記録媒体、コーティング剤等に用いられるウレトンイミン基含有低粘度ポリイソシアネート硬化剤に関するもので、 実施例1【0046】で得たポリイソシアネート硬化剤P-1を用いた応用実施例1【0053】には、 「アクリル樹脂と酸化チタンと混合溶剤を配合し、これと同量のガラスビーズを加えてペイントシェーカーにて1時間ミキシングし、ガラスビーズを除去して二液硬化塗料の主剤を調製した。次にP-1を先ほど調製した主剤と混合して全固形分=40%の塗料を調製し、これを鋼板に約50μmになるように塗布した。塗布後、20℃、湿度60%で1週間養生した後、各種塗膜物性評価を行った。結果を表2に示す。 主剤配合比 アクリル樹脂:アクリディックA-801(水酸基含有、固形分=50%、大日本インキ化学工業製) アクリル樹脂とP-1の配合比:水酸基とイソシアネート基が当量 樹脂分(=アクリル樹脂+P-1)/酸化チタン=20/13(重量比) 混合溶剤:酢酸ブチル/酢酸エチル/トルエン/PMA=1/1/1/1(重量比) PMA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」 と記載され、 着色剤は酸化チタンだけでシリコンを含有せず、2液型でウレタン系でイソシアネート硬化型のインク剤が示されている。 [周知例3] 特開平11?255928号公報 触感がソフトで柔軟で、押し荷重の増加が少なく、耐摩耗性を兼ね備えた優れた被覆層付きキーパッド(【要約】【課題】)に関するものであって、【図1】【図2】には、 文字、記号の印刷層2と塗装したウレタン系被覆層3 を有する押し釦スイッチが示されている。 【0007】には、 「本発明に用いられるウレタン系被覆層の素材となる塗料やインキについては、その分子構造や製法などを特定するものではない。被覆層を形成する過程でウレタン結合を生成するもの、素材中にウレタン結合を含有するポリウレタン、湿気硬化型の1液型のポリウレタンなどが使用できる。被覆層を形成する過程でウレタン結合を生成するものとしては、ポリオール化合物とイソシアネート化合物からなる2成分系の塗料やインキを硬化して得られるウレタン系被覆層が好ましい。」と記載され、 パターン印刷がなされたスイッチの操作面上にポリウレタン系の塗料を設けた点が示されている。 4.発明の対比及び相違点の検討 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「メンブレンスイッチ1」、「 意匠等」及び「表面保護層3」は、それぞれ、本願発明の「スイッチ又は操作スイッチ」、「所定のパターン」及び「コーティング層」に相当するものであるから、両者は、 「スイッチの操作面の基材上にインク剤を用いて所定のパターンが印刷され、そのパターン印刷がなされた操作面上に透明の軟質の塗料によるコーティング層が設けられたソフトフィーリング操作スイッチ」 である点で一致し、以下の点で相違しているものと認められる。 <相違点1> 所定のパターンを印刷するにあたり、本願発明では、シリコンを含有しない2液イソシアネート硬化型ウレタン系のインク剤を用いて印刷しているのに対して、引用発明では、どのようなインク剤を用いて印刷しているのか不明である点 <相違点2> コーティング層の塗料に関し、本願発明では、ポリウレタン系の塗料であるのに対し、引用発明では、ポリウレタン系の塗料であるか否か不明である点 これらの相違点について検討する。 <相違点1>について インク剤として、2液イソシアネート硬化型ウレタン系の材料は、周知例1に示されているようにインク剤の典型である。 また、シリコンを含有しないのが通常のインク剤(顔料を含めて)であり、2液イソシアネート硬化型ウレタン系での一例を示せば周知例2の如くであるから、引用発明の場合においてもインク剤にシリコンを含有しない2液イソシアネート硬化型ウレタン系のインク剤を用いて本願発明でいう上記相違点1の構成とすることは、当業者にとって格別困難なことではない。 <相違点2>について ポリウレタン系の塗料も周知例1に示されているように極く普通の塗料であること、また、パターン印刷がなされたスイッチの操作面上に透明または半透明(図面を参照すると被覆層が透明または半透明でないと文字・記号の印刷層が透けて見えないため)のウレタン系の被覆層を設けたものは、周知例3に示したように、当該技術分野においては普通に採用されている技術であるから、このような技術を用いて本願発明でいう上記相違点2の構成とすることも当業者が容易に想到し得ることである。 そして、上記相違点1,2を併せ備える本願発明が奏する作用効果について検討しても、引用発明及び上記各周知例に記載の技術事項から当業者が予測可能なことであって、格別なものではない。 したがって、本願発明は、引用発明及び上記各周知例に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 5.むすび 以上によれば、本願発明(請求項1に係る発明)は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-01-23 |
結審通知日 | 2009-02-03 |
審決日 | 2009-02-16 |
出願番号 | 特願2002-153127(P2002-153127) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01H)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 仁科 雅弘 |
特許庁審判長 |
藤井 俊明 |
特許庁審判官 |
植前 津子 柴沼 雅樹 |
発明の名称 | ソフトフィーリング操作スイッチ |
代理人 | 鳥井 清 |
代理人 | 鳥井 清 |