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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1196018 |
審判番号 | 不服2006-23185 |
総通号数 | 114 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-10-12 |
確定日 | 2009-04-09 |
事件の表示 | 特願2003-207539「記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 2月12日出願公開、特開2004- 41740〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は平成13年11月27日に出願された特願2001-361507号(国内優先権主張 平成13年2月2日)の一部を特許法44条1項の規定により新たな特許出願とした(国内優先権主張 平成13年2月2日)ものであって、平成18年9月4日付けで拒絶の査定がされた(同日付けで平成18年5月17日付け手続補正が却下された。)ため、これを不服として同年10月12日付けで本件審判請求がされるとともに、同年11月10日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成18年11月10日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正内容 本件補正は特許請求の範囲の補正を含んでおり、請求項数は補正前(平成17年12月16日付け手続補正後)の16から6に減少している。請求人は「旧請求項3?5及び10?16は削除しました。」(平成18年11月10日付け手続補正書(方式)3頁4行)と主張しており、補正後の請求項1?6は補正前の請求項1,2,6?9に対応するものと当審も認める。 請求項1について検討するに、補正前後の記載は次のとおりである。 (補正前請求項1) 「文字、画像、図柄あるいは写真が不可視光に対し透明でかつ目視可能に印刷された領域と、前記印刷された文字、画像、図柄あるいは写真に関連する情報が不可視光を吸収する領域と当該不可視光を反射する領域の組み合わせよりなる二次元コードパターンとして記録された領域とを有し、前記二次元コードパターンが記録された領域上に前記文字、画像、図柄あるいは写真が印刷された領域が重ねて配置され前記二次元コードパターンが視認できないように構成されてなることを特徴とする記録媒体。」 (補正後請求項1) 「カードの一方の面に文字、画像、図柄あるいは写真によってゲームキャラクタおよび関連する文字情報が不可視光に対し透明でかつ目視可能に印刷された領域と、 前記印刷された文字、画像、図柄あるいは写真によって表示される前記ゲームキャラクタに関連する情報がカードの他方の面に不可視光を吸収する領域と当該不可視光を反射する領域の組み合わせよりなる二次元コードパターンとして記録された領域とを有し、 前記他方の面における前記二次元コードパターンが記録された領域上に前記一方の面における前記文字、画像、図柄あるいは写真が印刷された領域が重ねて配置され前記二次元コ-ドパターンが視認できないように構成されており、 前記カードがゲーム装置に設けられたカード配置パネル面に前記他方の面が面するように載置されたときゲーム装置の筐体内部に設置されたイメージセンサによって前記不可視光下で撮像され、前記パネル面における位置に関する情報並びに前記キャラクタの特性を表す情報が検出されることを特徴とするゲーム装置で使用されるカード形状の記録媒体。」(下線部が補正箇所) 2.補正目的の検討 記録媒体が「カード形状」であること、及び「不可視光に対し透明でかつ目視可能に印刷された領域」が「カードの一方の面」であり「不可視光を吸収する領域と当該不可視光を反射する領域の組み合わせよりなる二次元コードパターンとして記録された領域」が「カードの他方の面」であることは、特許請求の範囲の減縮(平成18年法律55号改正前の特許法17条の2第4項2号該当)を目的とするものと認める。 しかし、その余の補正事項は、「記録媒体」を「ゲーム装置で使用される記録媒体」に補正することに関連した補正事項である。 補正前の「記録媒体」が「ゲーム装置で使用される記録媒体」に限られないことは、補正前請求項1の上記記載から明らかであり、「記録媒体」と「ゲーム装置で使用される記録媒体」の「産業上の利用分野」が同一であると認めることはできないし、ゲーム装置での使用に関する課題が追加されている。なお、補正前の請求項1は用途を特定していないから、用途の限定は発明特定事項の限定ではないし、産業上の利用分野の限定も発明特定事項の限定ではない。 したがって、請求項1の補正を全体としてみれば、平成18年法律55号改正前の特許法17条の2第4項2号にいう特許請求の範囲の減縮を目的とすると認めることはできず、請求項の削除、誤記の訂正又は明りようでない記載の釈明にも該当しないから、同法17条の2第4項の規定に違反しているから、本件補正は同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。 3.独立特許要件の検討 請求項1に関する補正事項の一部は、特許請求の範囲の減縮を目的としているので、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)の独立特許要件について判断するに、以下に述べる理由により、補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は、平成18年法律55号による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反しており、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。 なお、補正発明は、上記のとおりの本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定されるものである。 (1)記載不備その1 補正発明はあくまでも「ゲーム装置で使用されるカード形状の記録媒体」であり、「前記カードがゲーム装置に設けられたカード配置パネル面に前記他方の面が面するように載置されたときゲーム装置の筐体内部に設置されたイメージセンサによって前記不可視光下で撮像され、前記パネル面における位置に関する情報並びに前記キャラクタの特性を表す情報が検出される」との事項は「記録媒体」を限定するものでなければならないから、不可視光下で撮像するイメージセンサを筐体内部に設置したゲーム装置によりゲームを実行し、カード配置パネル面に他方の面が面するように載置した際に、「前記パネル面における位置に関する情報並びに前記キャラクタの特性を表す情報が検出」可能である旨の限定事項と解するよりないが、「カードの他方の面に不可視光を吸収する領域と当該不可視光を反射する領域の組み合わせよりなる二次元コードパターンとして記録された領域とを有」することは既に限定されており、同限定がある以上、「前記キャラクタの特性を表す情報が検出」可能なことは限定にならない。何らかの限定の趣旨だとすると、どのような限定なのか著しく不明確である。 また、「前記パネル面における位置に関する情報が検出」可能な点については、「位置に関する情報」を検出するための、何らかの特定事項を「記録媒体」が有するのか、それとも、何の特定事項がなくともよいのか不明確である。なぜなら、本願明細書の「次のS13では、基準マーカ位置検出処理を行う。この基準マーカ位置検出処理としては、S13aの輪郭抽出処理とS13bのパターンマッチング処理を行う。図15に示すように、プレイフィールド用シート80の裏面の四隅には、基準マーカ114が印刷されている。」(平成16年2月25日付け手続補正後の段落【0070】)との記載によれば、実施例ではカード裏面に基準マーカが印刷されているが、これは輪郭抽出のためであり、基準マーカがなければ輪郭抽出が不可能というわけではない。すなわち、パネル面における位置に関する情報検出に基準マーカが不可欠と認めることはできないから、基準マーカが裏面(他方の面)に印刷されていることを限定しているのかどうか不明である。基準マーカの存在を限定するのなら、直接その旨限定しなければならない。 したがって、本件補正後の請求項1の記載は著しく不明確であり、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。 (2)記載不備その2 請求項1の記載によれば、カードの一方の面には文字、画像、図柄あるいは写真によってゲームキャラクタおよび関連する文字情報(以下「画像等」という。)が目視可能に印刷され、同面に「不可視光を吸収する領域と当該不可視光を反射する領域の組み合わせよりなる二次元コードパターン」は必ずしも印刷されないにもかかわらず、画像等は「不可視光に対し透明」であるように印刷される。 同一面、とりわけ同一面の同一領域に、目視可能な画像等と「不可視光を吸収する領域と当該不可視光を反射する領域の組み合わせ」を印刷するのならば、画像等を「不可視光に対し透明」であるように印刷することの技術的意義は十分理解できる。 しかし、そうでない場合には、画像等が不可視光に対し透明であっても不透明であっても差し支えなく、発明の詳細な説明を参酌しても、その技術的意義を理解することができない。 そうである以上、発明の詳細な説明は「発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載」(特許法施行規則24条の2)したものと認めることはできないから、平成14年法律24号による改正前の特許法36条4項に規定する要件を満たしていない。 同時に、技術的意義を明らかにしない以上、補正発明が発明の詳細な説明に記載されていると認めることはできず、特許請求の範囲の記載は特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。 (3)引用刊行物の記載事項 本件出願前に頒布された特開平4-295390号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア?オの記載が図示とともにある。 ア.「カード(15)にデータ書込み領域(15A)が設けられ、前記データ書込み領域(15A)の長さ方向がm個に分割され、かつ、該データ書込み領域(15A)の高さ方向が二以上に分割され、前記分割されたデータ書込み領域(15A)に、少なくとも、赤外線を吸収する物質により成るマーク(B1?Bn)が設けられていることを特徴とするゲームカード。」(【請求項1】) イ.「請求項1記載のゲームカードにおいて、前記データ書込み領域(15A)が前記赤外線を透過する隠蔽物質(15B)により表面処理されていることを特徴とするゲームカード。」(【請求項4】) ウ.「テレビの人気キャラクタ等を印刷した遊戯用のゲームカード単体において、数字等のデータをそのままカード表面情報として印刷されている。」(段落【0010】) エ.「当該遊戯用のゲームカードに固有の書込みデータを付加して、カードゲーム機と組み合わせた場合、該ゲーム機を介さずに当該カードに書き込まれたデータ内容を容易に解読できなくする必要がある。」(段落【0011】) オ.「本発明は、かかる従来例の問題点に鑑み創作されたものであり、数字等のカード固有の書込みデータをそのままカード表面情報として設けることなく、その書込みを工夫してカード単体でのデータ解読の難易度を高め、また、カード挿入速度に影響されることなく容易、かつ、再現性良くデータを解読することが可能となるゲームカード及びカードゲーム機の提供を目的とする。」(段落【0012】) (4)引用例1記載の発明の認定 引用例1の記載ウ?オによれば、記載アのゲームカードには、テレビの人気キャラクタ等が印刷されていると認めることができる。 したがって、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。 「テレビの人気キャラクタ等を印刷したゲームカードであって、 赤外線を透過する隠蔽物質により表面処理されたデータ書込み領域が設けられ、前記データ書込み領域に赤外線を吸収する物質により成るマークが設けられているゲームカード。」(以下「引用発明1」という。) (5)補正発明と引用発明の一致点及び相違点の認定 引用発明1の「テレビの人気キャラクタ等」が目視可能に印刷されていることは明らかであるから、「テレビの人気キャラクタ等を印刷」は、補正発明の「文字、画像、図柄あるいは写真によってゲームキャラクタが目視可能に印刷」と異ならない。 引用発明1の「赤外線を吸収する物質により成るマーク」について検討するに、そのマークは「テレビの人気キャラクタ等」に関連する情報ということができ、マーク部分は補正発明の「不可視光を吸収する領域」に相当し、マークの有無は「コードパターン」といえるから、引用発明1の「データ書込み領域」は、「前記印刷された文字、画像、図柄あるいは写真によって表示される前記ゲームキャラクタに関連する情報が不可視光を吸収する領域を有するようにコードパターンとして記録された領域」との限度で、補正発明の「前記印刷された文字、画像、図柄あるいは写真によって表示される前記ゲームキャラクタに関連する情報がカードの他方の面に不可視光を吸収する領域と当該不可視光を反射する領域の組み合わせよりなる二次元コードパターンとして記録された領域」と一致する。 引用発明1の「データ書込み領域」は、「赤外線を透過する隠蔽物質により表面処理され」ているから、マークを視認することはできない。 また、引用発明1には、データ書込み領域にマークが設けられているから、「記録媒体」と称することができ、当然「ゲーム装置で使用されるカード形状の記録媒体」である。 したがって、補正発明と引用発明1の一致点及び相違点は次のとおりである。 〈一致点〉 「カードの面に文字、画像、図柄あるいは写真によってゲームキャラクタが目視可能に印刷された領域と、 前記印刷された文字、画像、図柄あるいは写真によって表示される前記ゲームキャラクタに関連する情報がカードの面に不可視光を吸収する領域を有するようにコードパターンとして記録された領域とを有し、前記コードパターンが視認できないように構成されている、 ゲーム装置で使用されるカード形状の記録媒体。」 〈相違点1〉補正発明では、目視可能に印刷されるものが「文字、画像、図柄あるいは写真によってゲームキャラクタ」だけでなく、「関連する文字情報」であるのに対し、引用発明1では「関連する文字情報」が、「文字、画像、図柄あるいは写真によってゲームキャラクタ」と同一面の同一領域に目視可能に印刷されているかどうか明らかでない点。 〈相違点2〉目視可能に印刷に当たり、補正発明が「不可視光に対し透明」と限定するのに対し、引用発明1にはその限定がない点。 〈相違点3〉補正発明の「コードパターン」は「不可視光を吸収する領域と当該不可視光を反射する領域の組み合わせよりなる二次元コードパターン」であるのに対し、引用発明1では、マークのない部分が「不可視光を反射する」かどうか明らかでなく、「二次元コードパターン」ともいえない点。 〈相違点4〉補正発明では、「目視可能に印刷された領域」と「コードパターンとして記録された領域」がカードの反対面であり、「前記他方の面における前記二次元コードパターンが記録された領域上に前記一方の面における前記文字、画像、図柄あるいは写真が印刷された領域が重ねて配置され」ているのに対し、引用発明1はこのような配置になっていない点。 〈相違点5〉補正発明が「前記カードがゲーム装置に設けられたカード配置パネル面に前記他方の面が面するように載置されたときゲーム装置の筐体内部に設置されたイメージセンサによって前記不可視光下で撮像され、前記パネル面における位置に関する情報並びに前記キャラクタの特性を表す情報が検出される」と限定しているのに対し、引用発明1がかかる限定を有するかどうか明らかでない点。 (6)相違点の判断 〈相違点1について〉 引用例1に明記はないものの、テレビの人気キャラクタ等を目視可能に印刷するに当たり、関連するキャラクタ名称(文字情報)を併せて印刷することは、極めてありきたりのことであるから、引用発明1において、テレビの人気キャラクタ等と同一面に関連する文字情報を併せて印刷することは設計事項というべきであり、その場合、テレビの人気キャラクタ等及び文字情報全体の領域が、新たに「目視可能に印刷された領域」になるだけである。 したがって、相違点1に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。 〈相違点3について〉 引用発明1は、赤外線を吸収する物質により成るマークを設けたものであるから、ゲームとして使用する際には、赤外線による照明を行うことが前提であり、カード自体に関する記載ではないため摘記しなかったが、引用例1には「本発明のゲームカードから成るカード15が当該ゲーム機に挿入されると、まず、該挿入時から透過型赤外線センサから成る検出手段PS1,PS2に至るスライド状態がカード位置出し手段11により規定される。これにより、カード15に設けられた複数のマークB1?Bnが二以上の検出手段PS1,PS2により検出され、該検出手段PS1,PS2から出力される検出信号SP1,SP2に基づいて該カード15の固有の書込みデータDnがデータ解読手段12により解読処理される。」(段落【0031】)との記載がある。透過型赤外線センサを用いるのであれば、マークのない部分は不可視光を透過すると解さねばならないが、検出手段として反射型のものも周知である(赤外線センサではないかもしれないが、商店レジではバーコードを下方から照明し、下方で読み取ることが多く、これは反射型センサを用いるからである。)。反射型センサであれば、マークのない部分は不可視光を反射しなければならない。 また、コードパターンとして、2次元コードパターンは周知(例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-320499(以下「引用例2」という。)に、「最近では、情報量を多くするために、カルラコードに代表される2次元バーコードなどの種々の識別用パターンが用いられている。」(段落【0003】)と記載されている。)であるから、引用発明1のコードパターンを2次元コードパターンとすることには何の困難性もない。 すなわち、相違点3は、コードパターン読み取り手段として反射型を予定し、コードパターンとして周知の2次元コードパターンを採用した結果にすぎず、当業者にとって想到容易である。 〈相違点2及び相違点4について〉 相違点3について述べたように、多くの商店レジではバーコードを下方から照明し、下方で読み取っており、引用発明1のカードを使用するゲーム機において、この周知の構成を採用することには何の困難性もない。その場合、データ書込み領域が形成された面を下側に向けることになり、その状態で上側面を視認することはできない。 他方、目視できる情報とコードパターンをカードの反対面に配することは周知技術(例えば、特開平5-341706号公報参照)であり、この周知技術を採用すれば、データ書込み領域が形成された面を下側に向けた状態で、上側面に印刷された目視できる情報を視認することができるから、「目視可能に印刷された領域」と「コードパターンとして記録された領域」をカードの反対面とすることには何の困難性もない。 その場合、「目視可能に印刷された領域」と「前記二次元コードパターンが記録された領域」は反対面上にあるから、これら2つの領域を重ねて配置しても、ずらせて配置しても一向に差し支えなく、2つの領域を重ねて配置することに困難性があるとはいえない。 また、「目視可能に印刷された領域」と「前記二次元コードパターンが記録された領域」が反対面上にあれば、記載不備の項で述べたとおり、目視可能に印刷するに際し、不可視光に対し透明であるように印刷することに技術的意義はない。のみならず、引用発明1では、データ書込み領域を赤外線を透過する隠蔽物質により表面処理しているところ、赤外線を透過する隠蔽物質で印刷することに困難性があるとはいえず、そうすれば「目視可能に印刷された領域」は不可視光に対し透明となる。 以上のとおりであるから、相違点2及び相違点4に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。 〈相違点5について〉 相違点3及び相違点4の想到容易性は前示のとおりであり、これら構成を採用すれば、「前記カードがゲーム装置に設けられたカード配置パネル面に前記他方の面が面するように載置されたときゲーム装置の筐体内部に設置されたイメージセンサによって前記不可視光下で撮像され、前記キャラクタの特性を表す情報が検出される」との構成に至る。 「パネル面における位置に関する情報」については、カードに格別の処理をしなくとも、カードエッジの検出、コードパターン位置の検出等により、同情報を検出することができるから、同情報を検出できることは実質的相違点ではない。 仮に、カードの他方の面に「パネル面における位置に関する情報」を得るための目印が付されているとの限定であると解しても、コードパターン読み取りに当たり、位置検出のための目印を付すことは、本件出願前に頒布された特開2000-82106号公報に示される(「位置合わせバー」と表現されているものが目印に該当)ように周知であり、同周知技術を採用することは容易である。 以上のとおりであるから、相違点5に係る補正発明の構成を採用することも当業者にとって想到容易である。 (7)補正発明の独立特許要件の判断 相違点1?5に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできないから、補正発明は引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 [補正の却下の決定のむすび] 以上の理由により、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本件審判請求についての当審の判断 1.本願発明の認定 平成18年5月17日付け手続補正は原審において、本件補正は当審においてそれぞれ却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年12月16日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定されるものである。同請求項は、「第2[理由]1」において「(補正前請求項1)」として示したが、再掲すると次のとおりである。 「文字、画像、図柄あるいは写真が不可視光に対し透明でかつ目視可能に印刷された領域と、前記印刷された文字、画像、図柄あるいは写真に関連する情報が不可視光を吸収する領域と当該不可視光を反射する領域の組み合わせよりなる二次元コードパターンとして記録された領域とを有し、前記二次元コードパターンが記録された領域上に前記文字、画像、図柄あるいは写真が印刷された領域が重ねて配置され前記二次元コードパターンが視認できないように構成されてなることを特徴とする記録媒体。」 2.引用例2の記載事項 引用例2には、以下のア?キの記載が図示とともにある。 ア.「【従来の技術】各種の情報データをバーコード化して商品に付しておき、そのコード情報を読み取ってコンピュータなどに入力する方法が知られている。通常、バーコードは白色の背景上に黒色のバーを印刷したものである。これは、白色と黒色のバーの反射光の差を利用したものである。」(段落【0002】) イ.「最近では、情報量を多くするために、カルラコードに代表される2次元バーコードなどの種々の識別用パターンが用いられている。例えば、特開平8-96097号公報には、カラーバーコードおよびカラーバーコードリーダーについての技術が開示されており、多くの情報を有せしめる工夫がなされている。」(段落【0003】) ウ.「デザイン性およびセキュリティ性の向上のために、バーコードを透明にしたいとの要望があり、透明赤外吸収バーコード、透明赤外発光バーコード、および透明蛍光バーコードなどの透明バーコードが開発されている。」(段落【0004】) エ.「透明赤外吸収バーコードとは、可視光に対して実質的に透明であり赤外光を吸収する材料を使用したインキなどで印刷したバーコードであり、赤外光を照射したときの赤外吸収剤が印刷されている部分と印刷されていない部分との反射光の差を利用したものである。」(段落【0005】) オ.「上記の蛍光画像形成層Fは、紫外線を照射されるとことにより、識別用パターン状の蛍光画像を形成することができる。識別用パターンの様式としては、例えばバーコード、カルラコード、エリアコードなどを用いることができる。第1の蛍光画像形成層Fa は第1の識別用パターンを、第2の蛍光画像形成層Fb は第2の識別用パターンを形成することができる。これにより、識別用パターンの有する情報量を従来よりも増やすことが可能となる。」(段落【0031】) カ.「蛍光画像として形成した画像の可視光の下での視認をより困難にするために、蛍光画像形成領域に下地印刷として可視のインクによるカモフラージュパターンや地紋を印刷することも好ましく行われる。カモフラージュパターンとしてはできるだけランダムなパターンであることが好ましく、その色はできるだけ蛍光体の発光する蛍光の色に影響を与えない薄い色が好ましい。」(段落【0061】) キ.「図3は本実施例において作成したクレジットカード10aである。基体上にクレジットカード名や会員名などのほかに、可視光下では透明であるために視認しがたく、紫外線を照射することにより図4に示すバーコード状の蛍光画像が形成される蛍光発光バーコード領域Aが形成されている。」(段落【0081】) 3.引用例2記載の発明の認定 引用例2記載オの「カルラコード」は記載イによれば「2次元バーコード」であるから、識別用パターン状の蛍光画像を「2次元バーコード」とし、蛍光画像形成領域に下地印刷として可視のインクによるカモフラージュパターンや地紋を印刷するとともに、基体上にクレジットカード名や会員名を形成したクレジットカードが引用例2には記載されており、それは次のようなものである。 「2次元バーコードの蛍光画像と、同蛍光画像領域に下地印刷として可視のインクによるカモフラージュパターンや地紋を印刷し、クレジットカード名や会員名を形成したクレジットカード。」(以下「引用発明2」という。) 4.本願発明と引用発明2との一致点及び相違点の認定 引用発明2の「クレジットカード名や会員名」は、本願発明の「文字、画像、図柄あるいは写真」に相当し、これらが「目視可能に印刷され」ていることは明らかであるから、引用発明2は「文字、画像、図柄あるいは写真が目視可能に印刷された領域」を有する。 引用発明2は「クレジットカード」である(「記録媒体」ともいえる。)から、「2次元バーコードの蛍光画像」が「クレジットカード名や会員名」に「関連する情報」であることは明らかであり、紫外線(本願発明の「不可視光」に相当)を吸収する領域(吸収しなければ蛍光を発しない。)とそれ以外の領域の組み合わせからなる「二次元コードパターン」ということができ、そのような「二次元コードパターンとして記録された領域」を有することは、本願発明と引用発明2の一致点である。 したがって、本願発明と引用発明2の一致点及び相違点は次のとおりである。 〈一致点〉 「文字、画像、図柄あるいは写真が目視可能に印刷された領域と、前記印刷された文字、画像、図柄あるいは写真に関連する情報が不可視光を吸収する領域とそれ以外の領域の組み合わせよりなる二次元コードパターンとして記録された領域とを有する記録媒体。」 〈相違点1〉本願発明では、「文字、画像、図柄あるいは写真が不可視光に対し透明」に印刷されているのに対し、引用発明2では不可視光に対し透明かどうか明らかでない点。 〈相違点2〉「二次元コードパターン」に関する「不可視光を吸収する以外の領域」につき、本願発明が「不可視光を反射する領域」としているのに対し、引用発明2のそれが不可視光を反射するとはいえない点。 〈相違点3〉本願発明が「前記二次元コードパターンが記録された領域上に前記文字、画像、図柄あるいは写真が印刷された領域が重ねて配置され前記二次元コードパターンが視認できないように構成」としているのに対し、引用発明2はそのような構成を有さない点。 5.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断 (1)相違点2について 引用例2の記載ウには、従来技術として「デザイン性およびセキュリティ性の向上のために、バーコードを透明にしたいとの要望」にこたえるものとして、「透明赤外吸収バーコード」、「透明赤外発光バーコード」及び「透明蛍光バーコード」が並記されており、引用発明2はこのうち「透明蛍光バーコード」を採用したものである。 しかし、バーコードを透明にする手法としては、上記のとおり「透明赤外吸収バーコード」も記載されており、引用発明2の「蛍光画像」を透明赤外吸収画像に変更することを妨げる理由は見あたらない。そして、このような変更をした場合には、記載エに「赤外光を照射したときの赤外吸収剤が印刷されている部分と印刷されていない部分との反射光の差を利用したものである。」にあるとおり、赤外光(上記の変更をした場合には、本願発明の「不可視光」に相当するものは、「紫外線」から「赤外光」に変更される。)吸収領域以外の領域は、赤外光反射領域となる。 すなわち、相違点1に係る本願発明の構成は、「蛍光画像」を透明赤外吸収画像に変更することにより自然に至る構成であり、当業者にとって想到容易である。 (2)相違点1及び相違点3について 引用例2の記載エに従い、「可視光に対して実質的に透明であり赤外光を吸収する材料を使用したインキなどで印刷した」「二次元コードパターン」(相違点1に係る本願発明の構成)を採用した場合、そのインクは「可視光に対して実質的に透明」だから、「クレジットカード名や会員名」を視認する障害にはならない(引用発明2の場合には、紫外線が照射されることにより、肉眼で二次元コードパターンを視認できるから、障害になる。)。 また、「可視光に対して実質的に透明であり赤外光を吸収する材料」とは逆に、赤外光に対して実質的に透明(本願発明の「不可視光に対し透明」に相当)であり可視光を吸収する材料も周知である。そのことは、原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-266763号公報の「情報隠蔽層4としては、赤外線センサーで読み取り可能な程度の赤外線を透過すると共に、肉眼で記録像の識別が不可能な程度に可視光線を遮光するもの」(段落【0032】)との記載、本件出願前に頒布された登録実用新案第3013001号公報の「赤外線反射材料の基材上に、順次に、コ-ド化される識別デ-タと、文字又は図形とを、それぞれ赤外線を吸収する透明インキと赤外線を透過する有色インキとを用いて、印刷したことを特徴とするものである。」(【要約】の【構成】欄)との記載、及び引用例1の「赤外線を透過する隠蔽物質(15B)により表面処理」(【請求項4】)との記載によって裏付けられる。とりわけ、登録実用新案第3013001号公報には、目視情報としての「文字又は図形」(【図1】の「プリペイドカード」との文字)と識別デ-タを同一領域に重ねて配置することが記載されている。 引用発明2では、カモフラージュパターンや地紋を「二次元コードパターン」に重ねて配置しており、「二次元コードパターン」が視認できる(紫外線照射による)状態で、カモフラージュパターンや地紋であればこれらを視認する必要はなく、重ねて配置するものとしては、クレジットカード名や会員名よりもカモフラージュパターンや地紋が適切であるが、「蛍光画像」を透明赤外吸収画像に変更した場合には、常に「二次元コードパターン」を視認できないのだから、それと重ねて配置するものの制限はなくなり、何を重ねて配置しても、重ねて配置したものの視認性は低下しない。重ねて配置した場合に低下する可能性があるのは、「二次元コードパターン」の検出性であるが、それと重ねて配置するものを上記周知の赤外光に対して実質的に透明であり可視光を吸収する材料で構成すれば、そのおそれもない。 そうであれば、引用発明2を出発点として、目視可能な情報である「文字、画像、図柄あるいは写真」(クレジットカードに「クレジットカード名や会員名」だけでなく、画像、図柄あるいは写真」を印刷することは例をあげるまでもなく周知である。)印刷領域を「二次元コードパターンが記録された領域上に」重ねて配置すること、並びにそのようにしても視認性及び検出性が低下しないように、二次元コードパターンを可視光に対して実質的に透明であり赤外光を吸収する材料を使用したインキなどで印刷するとともに、文字、画像、図柄あるいは写真を不可視光に対し透明に印刷(相違点1に係る本願発明の構成)し、二次元コードパターンが記録された領域上に文字、画像、図柄あるいは写真が印刷された領域が重ねて配置され二次元コードパターンが視認できないように構成(相違点3に係る本願発明の構成)することは当業者にとって想到容易である。 (3)本願発明の進歩性に判断 相違点1?3に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。 したがって、本願発明は引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-02-04 |
結審通知日 | 2009-02-10 |
審決日 | 2009-02-23 |
出願番号 | 特願2003-207539(P2003-207539) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(A63F)
P 1 8・ 536- Z (A63F) P 1 8・ 572- Z (A63F) P 1 8・ 121- Z (A63F) P 1 8・ 575- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松川 直樹 |
特許庁審判長 |
津田 俊明 |
特許庁審判官 |
伊藤 陽 有家 秀郎 |
発明の名称 | 記録媒体 |
代理人 | 伊東 忠彦 |