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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F04D
管理番号 1196669
審判番号 不服2007-21136  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-01 
確定日 2009-04-30 
事件の表示 平成11年特許願第264055号「給水装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月27日出願公開、特開2001- 82375〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年9月17日の出願であって、平成19年6月28日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされた後当審より拒絶理由通知がなされたところ平成21年1月9日付で手続補正書が提出されたものである。
本願請求項1に係る発明は平成21年1月9日付手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。
「受水槽又は水道本管に連通した吸込ヘッダに接続された少なくとも2台のポンプの交互運転又は同時運転により給水を行う給水装置において、前記2台のポンプの吐出口をそれぞれ対面するように配置し、逆止弁を内装したボール型バルブを備えた直線状の吐出集合管にて、前記吐出口それぞれに前記ボール型バルブを接続するように前記吐出口間を接続し、前記吐出集合管の略中央部にT字状に分岐管を設け、該分岐管から需要者側に給水するようにし、前記ボール型バルブには前記逆止弁の弁体の交換をするためのメンテナンス用の孔を設けたことを特徴とする給水装置。」(以下「本願発明」という。)

2.引用刊行物
(1)これに対して、当審の拒絶の理由に引用した特開平9-287573号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、「水道管直結用ブースタポンプ装置」に関し、図面と共に次の事項が記載されている。
・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、水道管に直結され、水道管の水圧を増圧して上層階に供給する水道管直結用ブースタポンプ装置に関する。」
・「【0023】11は吸入合流管に相当するヘッダー、42,42はブースタポンプ、43,43は上記ポンプ42,42を自動運転する可変速誘導モータ、44は吐出合流管、45,45は逆止め弁、46,46は流量スイッチ、47は圧力センサ、48はアキュムレータ、49は制御器、50は仕切り弁を示す。
【0024】そして、ヘッダー11とブースタポンプ42,42の吸込みフランジの間には仕切り弁12,12が設置されているとともに、ヘッダー11と吐出合流管44の間はバイパス管13で連結されており、このバイパス管13にはヘッダー12から吐出合流管44に向けて流れを許す逆止め弁14が取り付けられている。また、吐出合流管44には仕切り弁15,15が設置されている。」
・「【0027】一方、水道管1の圧力が所定圧以上で、しかしながら水道管1の水圧のみでは上層階の末端水栓4まで給水が不可能な場合は、各階層の末端水栓4を開けるとブースタポンプ42,42よりも下流側の水圧が低下し、この圧力を圧力センサ47が検知し、制御器49から誘導モータ43,43へ交互運転または並列同時運転の指令を出し、これらモータ43,43をインバータにより可変速運転し、ブースタポンプ42,42を作動させる。ブースタポンプ42,42が運転すると、水道管1内の水を吸引し、これを加圧して各階層の末端水栓4へ供給する。」
・「【0032】すなわち、61は基台であり、この基台61にはブースタポンプ42,42が並行に配置されており、これらブースタポンプ42,42は可変速誘導モータ43,43に直結されている。これらブースタポンプ42,42は吸込みフランジ62,62が正面に向かって開口されており、これら吸込みフランジ62,62はほぼ同一平面内に位置されている。また、ブースタポンプ42,42はそれぞれの吐出管63,63を介して吐出合流管44に接続されており、この吐出合流管44の吐出側フランジ64も正面に向かって開口されている。
【0033】吐出管63,63には、それぞれ流量スイッチ46,46が取り付けられており、また各吐出管63,63と吐出合流管44の間には逆止め弁45,45および仕切り弁15,15が設けられている。そして、この吐出合流管44には圧力センサ47が取り付けられている。
【0034】上記基台61には、上記誘導モータ43,43間に位置してアキュムレータ48が配置されている。また、基台61の一側に偏った位置に制御盤65が制御盤支持脚66を介して取り付けられており、この制御盤65には前記制御器49が形成されている。」

また、図1及び2には、2台のブースタポンプに接続された吐出管63,63の吐出口が対面するように配置されていること、及び図1、2及び【0032】の「吐出合流管44の吐出側フランジ64も正面に向かって開口されている。」との記載を参照すれば前記吐出管63,63の吐出口間を結ぶ直線状部分を有する吐出合流管44の略中央部にT字状に分岐管を設けた構成が示されているといえる。

したがって、引用刊行物1には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「水道管に直結したヘッダー11に接続された2台のブースタポンプ42,42の交互運転又は並列同時運転により給水を行う水道管直結用ブースタポンプ装置において、前記2台のブースタポンプ42,42に接続された吐出管63,63の吐出口をそれぞれ対面するように配置し、逆止め弁45,45および仕切り弁15,15を介して直線状の吐出合流管44にて、前記吐出口間を接続し、前記吐出合流管44の略中央部にT字状に分岐管を設け、該分岐管から各階層の末端水栓4へ供給するようにした給水装置。」

(2)同じく当審の拒絶の理由に引用した特開平5-118450号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、「復合弁」に関し、図面と共に次の事項が記載されている。
・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、冷却水供給装置などを実施対象に、送水ポンプ,止め弁,逆止弁などを組合わせた配管系統に適用して用いる複合弁に関する。」
・「【0006】
【作用】上記構成の複合弁において、ハンドル操作などによりプラグを閉位置に回わせば、弁が流体通路を閉塞する。一方、プラグを開位置に回した状態では、定方向に流れる流体圧で逆止弁機構の弁体が弁座から後退して流路を開くのに対し、流体が逆流しようとすると逆止弁機構が作動して流路を閉塞する。つまり、一個の弁で止め弁と逆止弁の機能が得られる。したがって、この複合弁を図3の配管系統に適用するれば、使用する弁の数,弁相互間の接続箇所を減らして必要な配管スペースを縮減できる。」
・「【0009】
【発明の効果】本発明の複合弁は、以上説明したように構成されているので、次記の効果を奏する。
(1)弁箱などを共通部品として止め弁と逆止弁の機能を持たせることがきる。
(2)したがって、この複合弁をポンプなどと組合わせて止め弁,逆止弁を必要とする配管系統に適用すれば、弁の使用個数,配管スペースを削減して配管系統の簡略化,並びにコストの低減化が図れる。」

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「水道管に直結」は、前者の「受水槽又は水道本管に連通」に相当し、以下同様に「ヘッダー11」は「吸込ヘッダ」に、「2台のブースタポンプ42,42」は「少なくとも2台のポンプ」に、「並列同時運転」は「同時運転」に、「水道管直結用ブースタポンプ装置」は「給水装置」に、「吐出合流管44」は「吐出集合管」に、「各階層の末端水栓4へ供給」は「需要者側に給水」に、それぞれ相当する。
また、後者の「2台のブースタポンプ42,42に接続された吐出管63,63の吐出口をそれぞれ対面するように配置」と前者の「2台のポンプの吐出口をそれぞれ対面するように配置」とは「2台のポンプの下流に設けた吐出口をそれぞれ対面するように配置」との概念で共通する。

したがって両者は、
[一致点]
「受水槽又は水道本管に連通した吸込ヘッダに接続された少なくとも2台のポンプの交互運転又は同時運転により給水を行う給水装置において、前記2台のポンプの下流に設けた吐出口をそれぞれ対面するように配置し、直線状の吐出集合管にて、前記吐出口間を接続し、前記吐出集合管の略中央部にT字状に分岐管を設け、該分岐管から需要者側に給水するようにした給水装置。」で一致し、
[相違点]
(ア)それぞれ対面するように配置した「2台のポンプの下流に設けた」吐出口が、本願発明では「2台のポンプ」の吐出口であるのに対し、引用発明では「2台のポンプに接続された吐出管63,63」の吐出口である点、
(イ)本願発明が「逆止弁を内装したボール型バルブを備えた」直線状の吐出集合管にて「吐出口それぞれに前記ボール型バルブを接続するように」吐出口間を接続しているのに対して、引用発明では「逆止め弁45,45および仕切り弁15,15を介して」直線状の吐出集合管にて吐出口間を接続している点、及び
(ウ)本願発明が「ボール型バルブには逆止弁の弁体の交換をするためのメンテナンス用の孔を設け」ているのに対し、引用発明ではそのような構成を有していない点
で相違している。

4.相違点に対する判断
相違点(ア)について
本願発明において、「2台のポンプの吐出口をそれぞれ対面するように配置」したことの技術的意義は本願明細書の【0008】の記載からみて、小型コンパクトな構造にすることにあるものと認められるところ、配管を介することなくポンプを直結して小型コンパクトな構造にすることは周知技術(例.特開平5-231366号公報【0019】「真空ポンプの吸込口を直接連結し、両真空ポンプを一体化するから、接続配管は不要となりその分装置がコンパクトとなる。」との記載参照。)である。
小型コンパクト化は周知の課題といえるから、引用発明においてもこの課題のもとに上記周知技術を採用して吐出管を省略し、2台のポンプを吐出集合管に直接連結することは当業者が容易になし得たことと認められる。
そして、2台のポンプを吐出集合管に直接連結すれば「2台のポンプの吐出口をそれぞれ対面するように配置」した構成となるものと認められる。
したがって、引用発明において小型コンパクト化のために上記周知技術を採用して吐出管を介することなく2台のポンプを吐出合流管に直接連結することで相違点(ア)に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことと認められる。

相違点(イ)について
引用刊行物2には、送水ポンプ、止め弁、逆止弁を組み合わせた配管系統に、逆止弁を内装したボール型バルブ(止め弁の内部に逆止弁機構を組み込んで一体化した複合弁)を用いる発明が記載されている。
引用刊行物2に記載された発明は、送水ポンプ、止め弁、逆止弁を組み合わせた配管系統に関する点で引用発明と共通の分野に属し、引用発明と同様の弁機能を有するものであり、また、一体化すれば小型コンパクト化できるということは自明の事項であるから、引用発明において、小型コンパクト化のために「逆止め弁45と仕切り弁15」を別々に設けることに換えて引用刊行物2に記載された発明の逆止弁を内装したボール型バルブの構造を適用して吐出口それぞれに前記ボール型バルブを接続するようにすることで相違点(イ)に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことと認められる。

相違点(ウ)について
一般に、装置を分解することなく部品のメンテナンスを行うために、必要な箇所にメンテナンス用の孔を設けることは周知技術(例.特開平8-232837号公報【0005】「点検窓を開くことによって吐出弁室を全部位を点検することができる。例えば、吐出弁室の上面に点検窓を設けたときには、これを開くことによって吐出弁およびその弁座を点検あるいは修理することができる。このとき、圧送管の吐出弁室への開口部も点検することができ、圧送管部分を分解する必要はない。」との記載参照。)である。
点検、修理は引用発明のポンプ装置も必要とする一般的課題であり、引用発明において逆止弁を内装したボール型バルブの構造を適用した場合にも、必要な箇所にメンテナンス用の孔を設けることは当業者が適宜設計し得る事項と認められる。
したがって、相違点(ウ)は格別のものではない。

また、本願発明の全体構成により奏される効果は、引用発明、引用刊行物2に記載された発明及び上記周知技術から予測し得る程度のものと認められる。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用発明、引用刊行物2に記載された発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-27 
結審通知日 2009-03-03 
審決日 2009-03-16 
出願番号 特願平11-264055
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F04D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 種子 浩明  
特許庁審判長 田良島 潔
特許庁審判官 仁木 浩
米山 毅
発明の名称 給水装置  
代理人 小杉 良二  
代理人 廣澤 哲也  
代理人 渡邉 勇  

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