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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B42D 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B42D 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B42D 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B42D 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B42D 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B42D |
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管理番号 | 1197541 |
審判番号 | 不服2006-6286 |
総通号数 | 115 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-04-05 |
確定日 | 2009-05-14 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第119567号「感圧接着性フォーム」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年10月28日出願公開、特開平 9-277754〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成8年4月18日に特許出願されたものであって、拒絶理由通知に応答して平成18年1月16日付けで手続補正がされたが、平成18年2月28日付けで拒絶査定がされ、これを不服として平成18年4月5日付けで審判請求がされるとともに、平成18年4月28日付けで明細書についての手続補正がされたものである。 当審においてこれを審理した結果、平成20年6月16日付けで平成18年4月28日付け手続補正を補正却下するとともに、同日付けで拒絶の理由を通知したところ、請求人は、平成20年8月18日付けで意見書及び明細書についての手続補正書を提出した。 さらに当審においてこれを審理した結果、平成20年9月17日付けで拒絶の理由(最後)を通知したところ、請求人は、平成20年11月21日付けで意見書及び明細書についての手続補正書を提出した。 第2 平成20年11月21日付け明細書についての手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年11月21日付け明細書についての手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正の内容 本件補正における特許請求の範囲についての補正は、 補正前(平成20年8月18日付け手続補正書参照)に 「【請求項1】 剥離可能に対向接着させる感圧接着性フォームにおいて、 対向接着させる基材面上には隠蔽情報となる固定情報が印刷され、 前記基材面上の片方には剥離層が形成され、 前記剥離層が形成された面を含む全面に、接着前は通常の状態では接着せず、少なくとも圧力により接着する感圧接着剤層が形成され、 前記感圧接着剤層を対向接着させた後に剥離するときは前記剥離層により剥離し、前記剥離層および前記感圧接着剤層を透して前記隠蔽情報が光沢感をもって視認できる感圧接着性フォームであって、 前記剥離層はポリビニルアルコール樹脂と長鎖アルキルイソシアネート付加物とによる架橋物で形成され、 前記感圧接着剤層は、スチレン-ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル-ブタジエンゴムラテックス、及びアクリル系樹脂ラテックスの群から選ばれ、ソープフリー乳化重合法によって得た水系エマルジョンとして供給されるラテックスを主成分とし、かつ、ポリスチレン樹脂あるいはアクリル樹脂の何れからなり平均粒子径が0.05?10μmの樹脂粒子からなる充填剤を当該感圧接着剤層の総重量100重量部当たり4重量部以下としたことを特徴とする感圧接着性フォーム。」 とあったものを、 「【請求項1】 剥離可能に対向接着させる感圧接着性フォームにおいて、 対向接着させる基材面上には隠蔽情報となる固定情報が印刷され、 前記基材面上の片方には剥離層が形成され、 前記剥離層が形成された面を含む全面に、接着前は通常の状態では接着せず、少なくとも圧力により接着する感圧接着剤層が形成され、 前記感圧接着剤層を対向接着させた後に剥離するときは前記剥離層により剥離し、前記剥離層および前記感圧接着剤層を透して前記隠蔽情報が光沢感をもって視認できる感圧接着性フォームであって、 前記剥離層はノンシリコン系水分散タイプの剥離剤で形成され、 前記感圧接着剤層は、ソープフリー乳化重合NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)ラテックスとし、 かつ、ポリスチレン樹脂あるいはアクリル樹脂の何れからなり平均粒子径が0.05?10μmの樹脂粒子からなる充填剤を当該感圧接着剤層の総重量100重量部当たり4重量部以下としたことを特徴とする感圧接着性フォーム。」 と補正しようとするものである。 つまり、本件補正は、特許請求の範囲についての以下の補正事項を含む。 〈補正1〉補正前の請求項1における剥離層に関し「ポリビニルアルコール樹脂と長鎖アルキルイソシアネート付加物とによる架橋物で形成され、 」を「ノンシリコン系水分散タイプの剥離剤で形成され、」とする補正。 〈補正2〉補正前の請求項1における感圧接着剤層に関し「感圧接着剤層は、スチレン-ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル-ブタジエンゴムラテックス、及びアクリル系樹脂ラテックスの群から選ばれ、ソープフリー乳化重合法によって得た水系エマルジョンとして供給されるラテックスを主成分とし、」を「感圧接着剤層は、ソープフリー乳化重合NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)ラテックスとし、」とする補正。 2.本件補正の目的 〈補正1について〉 補正前の請求項1における「ポリビニルアルコール樹脂と長鎖アルキルイソシアネート付加物とによる架橋物」は、補正後の請求項1における「ノンシリコン系」の「剥離剤」の1種であるが、補正後の請求項1における「ノンシリコン系」の「剥離剤」には、補正前の請求項1における「ポリビニルアルコール樹脂と長鎖アルキルイソシアネート付加物とによる架橋物」の他に、例えば、本願明細書【0021】に記載の「剥離層インク 中剥離用剥離剤(ノンシリコン系水分散タイプ)(日本触媒(株)製、RP-18W、固形分18%)」のような「ポリエチレンイミン-オクタデシルイソシアネート付加物」(特開平6-99535号公報段落【0050】参照)も含まれる。 そうすると、補正前の請求項1における「ポリビニルアルコール樹脂と長鎖アルキルイソシアネート付加物とによる架橋物」を「ノンシリコン系」の「剥離剤」とする点は、特許請求の範囲を拡張するものといえる。 また補正1は、補正前の請求項1に「水分散タイプの剥離剤」を追加するものであるが、補正前の請求項1における「ポリビニルアルコール樹脂と長鎖アルキルイソシアネート付加物とによる架橋物」が「水分散タイプの剥離剤」として扱いうるか否か不明であり、補正1により「ポリビニルアルコール樹脂と長鎖アルキルイソシアネート付加物とによる架橋物」に「水分散タイプ」という新たな機能が付加されたことになるのであって、概念的に下位のものになるとはいえない。 このように、補正1は補正前の請求項1に係る発明の特定事項を限定するものでないし、補正前の請求項1に係る発明の特定事項のいずれを概念的に下位にするものでもない。 よって補正1は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当しないことは明らかであり、また同条第4項第1号(請求項の削除)、第3号(誤記の訂正)、第4号(明りょうでない記載の釈明)のいずれの目的にも該当しない。 〈補正2について〉 補正2によって,補正前の請求項1において感圧接着剤層の主成分として選択的に記載されているラテックスのうち「スチレン-ブタジエンゴムラテックス」及び「アクリル系樹脂ラテックス」が削除されるとともに、補正前の請求項1における「感圧接着剤層は、アクリロニトリル-ブタジエンゴムラテックスから選ばれ、ソープフリー乳化重合法によって得た水系エマルジョンとして供給されるラテックスを主成分とし」を「感圧接着剤層は、ソープフリー乳化重合NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)ラテックスとし」と補正するものである。このうち、補正前の請求項1における「感圧接着剤層は、アクリロニトリル-ブタジエンゴムラテックスから選ばれ、ソープフリー乳化重合法によって得た水系エマルジョンとして供給されるラテックス」を補正後の請求項1における「感圧接着剤層は、ソープフリー乳化重合NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)ラテックス」とする点については補正前と補正後で実質的に変更はないが、補正前の「を主成分」を削除する点は、特許請求の範囲を拡張するものといえる。 よって補正2は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当しないことは明らかであり、また同条第4項第1号(請求項の削除)、第3号(誤記の訂正)、第4号(明りょうでない記載の釈明)のいずれの目的にも該当しない。 以上のとおり、補正1?補正2を含む本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていない。 3.独立特許要件について 以上のとおり、本件補正は平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていないものの,全体として同条第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものと仮に認め、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に規定する要件を満たすか否かについて検討する。 (3-1)本願補正発明の認定 本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲【請求項1】に記載された次のとおりのものと認める。 「剥離可能に対向接着させる感圧接着性フォームにおいて、 対向接着させる基材面上には隠蔽情報となる固定情報が印刷され、 前記基材面上の片方には剥離層が形成され、 前記剥離層が形成された面を含む全面に、接着前は通常の状態では接着せず、少なくとも圧力により接着する感圧接着剤層が形成され、 前記感圧接着剤層を対向接着させた後に剥離するときは前記剥離層により剥離し、前記剥離層および前記感圧接着剤層を透して前記隠蔽情報が光沢感をもって視認できる感圧接着性フォームであって、 前記剥離層はノンシリコン系水分散タイプの剥離剤で形成され、 前記感圧接着剤層は、ソープフリー乳化重合NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)ラテックスとし、 かつ、ポリスチレン樹脂あるいはアクリル樹脂の何れからなり平均粒子径が0.05?10μmの樹脂粒子からなる充填剤を当該感圧接着剤層の総重量100重量部当たり4重量部以下としたことを特徴とする感圧接着性フォーム。」 (3-2)引用文献 本願の出願前に頒布された刊行物であって、当審の拒絶の理由に引用された特開平8-11468号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下、〈ア〉?〈カ〉の記載が図示とともにある。 〈ア〉「【請求項1】通常では接着せず、所定の条件が付与されると接着可能となり、接着後剥離可能で、かつ、透明性を有する接着層を有した基体シートを、二つ折り、三つ折り、切り重ね、あるいは別体同志の重ね合わせ等、各種の重ね合わせ態様とされてなる隠蔽情報所持体であって、前記基体シートの重ね合わせ面に、プロセス印刷、ベタ印刷、あるいは地紋印刷等の印刷が施され、さらに、その印刷面上に、前記剥離可能かつ透明な接着層が設けてなると共に、前記接着層上に隠蔽情報が印字されてなることを特徴とする隠蔽情報所持体。 【請求項2】前記剥離可能かつ透明な接着層が、非剥離性接着剤基剤と、その接着剤基剤に対し非親和性を示す微粒子充填剤で組成される接着剤組成物から構成され、かつ、インキまたはトナー受容可能であることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の隠蔽情報所持体の作成方法。 【請求項3】通常では接着せず、所定の条件が付与されると接着可能となり、接着後剥離可能で、かつ、透明性を有する接着層を有した基体シートを二つ折り、三つ折り、切り重ね、あるいは別体同志の重ね合わせ等、各種の重ね合わせ態様とされてなる隠蔽情報所持体の作成方法であって、(1)前記基体シートの重ね合わせ面にプロセス印刷、ベタ印刷、あるいは地紋印刷等の印刷を施す工程と、(2)前記印刷が施された基体シートの印刷面上に、前記剥離可能かつ透明な接着層を設ける工程と、(3)前記接着層面に隠蔽情報を印字する工程と、(4)前記基体シートを重ね合わせして重ね合わせ面同志を対接させ、これに加圧、加熱等の所定の条件を付与して前記剥離可能かつ透明な接着剤を活性化し、前記重ね合わせ面同志を接着させる工程からなることを特徴とする隠蔽情報所持体の作成方法。」 〈イ〉「【0007】【作用】予め、基体シートの重ね合わせ面に、プロセス印刷、ベタ印刷、あるいは地紋印刷等の印刷を施し、印刷が施された後、その印刷面に、剥離可能であって、かつ透明性を有する接着層を設けることで、それらの印刷部が接着層の下部に位置し、接着層の接着機能を何等損なうことなく、かつ、その透明な接着層により、それらの印刷部を当然に視認でき、さらに、その接着層がインキまたはトナー受容可能であって、その接着層上に隠蔽情報が印字できるものである。」 〈ウ〉「【0010】以上、本発明の隠蔽情報所持体を葉書として使用する場合を例として説明したが、その他、各種帳票、通知書、各種カード等に広く適用できるものであり、基体シートの折り込み形態、使用目的に応じて、接着層を表面と裏面の両面側、あるいは片面側の全面または一部に適宜設けても良く、また、接着後の剥離を容易にするために、シートの折り部と反対側の端部で重ね合わせた基体シートに段差が生じるように構成し、指掛かり等を形成しても良いものである。」 〈エ〉「【0011】次に、本発明の隠蔽情報所持体の接着層を構成する接着剤組成物について説明する。本発明に用いられる接着剤組成物には、感圧接着剤組成物、感熱接着剤組成物、および再湿潤接着剤組成物等があり、接着剤基剤としては、それぞれに応じて適当なものが用いられる。これらは通常の接着剤であり、本来は一度接着したならば、再び剥離しないものであるが、この接着剤基剤に、これに非親和性を示す微粒子充填剤を配合することにより、剥離可能の機能を有し、これを塗膜して形成された接着層は、インキまたはトナー受容可能であって、印刷・印字が可能で、通常では接着せず、所定の条件を付与すると接着可能となり、接着後には、施された印字情報を損なわないような剥離可能な機能を有するものである。」 〈オ〉「【0012】前記接着剤基剤としては、塗膜が透明性を有する天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル系粘着剤等、従来用いられている通常の感圧性接着剤で良いが、好ましくは、天然ゴムにスチレンとメタクリル酸メチルとをグラフト共重合させて得られた天然ゴムラテックスが良く、これは、塗膜して形成される接着層が透明性を有するだけでなく、耐ブロッキング性、耐熱性、耐摩耗性等の点で優れているからである。」 〈カ〉「【0013】一方、前記微粒子充填剤としては、接着層が透明性を阻害しないようにする必要性から、粒子形状が規則的に整ったもので、前記接着剤基剤と親和力が小さいものが良く、例えば、各種デンプン系、合成ゼオライト、微球状アクリル樹脂、微球状メタクリル樹脂、微球状ポリエチレン、炭酸カルシウム、カオリン、活性白土、球状アルミナ、ガラス粉末、シラスバルーン等が挙げられ、これらの材料は、単独でも複数組み合わせても良い。しかしながら、従来から、この種の充填剤に使用されているシリカ、酸化チタン、酸化亜鉛等は、その不規則な粒子形状から、接着層に光の乱反射作用を促して透明性を損なうため、添加しないか、添加する場合でも、その添加量を10重量%以下とするのが良い。尚、微粒子充填剤の粒子形状は平均粒子径は1?50μmの範囲が良く、好ましくは10?30μm、さらに好ましくは15?25μmの範囲が好適である。 【0014】前記微粒子充填剤は、感圧接着剤組成物、感熱接着剤組成物、および再湿潤接着剤組成物のいずれにも配合して用いることができるが、その配合割合は、少なすぎると耐ブロッキング性、接着層の剥離可能機能を阻害し、一方、多すぎると透明性と接着力を阻害する。したがって、感圧性および再湿潤性の接着剤基剤では、その接着剤基剤100重量部に対し50?300重量部であり、好ましくは100?250重量部、さらに好ましくは、150?200重量部である。」 〈キ〉摘記〈オ〉「前記接着剤基剤としては、塗膜が透明性を有する天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル系粘着剤等、従来用いられている通常の感圧性接着剤で良いが、」の記載より、上記〈ア〉請求項2の「非剥離性接着剤基剤」は、合成ゴム系粘着剤から選ばれることが把握でき,前記合成ゴム系粘着剤は合成ゴムラテックスであることは明らかであるから、摘記〈ア〉請求項2の「非剥離性接着剤基剤」は、合成ゴム系ラテックス又はアクリル系粘着剤であることが把握できる。 〈ク〉摘記〈カ〉【0014】「感圧性・・・の接着剤基剤では、その接着剤基剤100重量部に対し50?300重量部であり」より、摘記〈ア〉請求項2の「非剥離性接着剤基剤」は、感圧性接着剤層であることが把握できる。 〈ケ〉摘記〈カ〉より、アクリル樹脂からなり平均粒子径が1?50μmの樹脂粒子からなる充填剤を当該感圧接着剤層に含有していることが把握できる。 〈コ〉図1?図3(「2,2’・・プロセス印刷、ベタ印刷、あるいは地紋印刷部」)より、プロセス印刷、ベタ印刷、あるいは地紋印刷部には、所定の絵柄が印刷されていることが看取でき、 また図5より、基材シート面上の全面に、接着剤層が形成されていることが、看取できる。 〈サ〉摘記〈ア〉の「隠蔽情報所持体」は、摘記〈ア〉の「【請求項3】・・・・・(4)前記基体シートを重ね合わせして重ね合わせ面同志を対接させ、これに加圧、加熱等の所定の条件を付与して前記剥離可能かつ透明な接着剤を活性化し、前記重ね合わせ面同志を接着させる工程」及び摘記〈エ〉の「感圧接着剤組成物」より、「剥離可能に対向接着させる感圧接着性フォーム」であることが把握できる。 〈シ〉摘記〈ア〉の「請求項3・・・(4)前記基体シートを重ね合わせして重ね合わせ面同志を対接させ、これに加圧、加熱等の所定の条件を付与して前記剥離可能かつ透明な接着剤を活性化し、前記重ね合わせ面同志を接着させる工程」及び摘記〈エ〉の「感圧接着剤組成物」の記載より、摘記〈ア〉の【請求項3】に係る「通常では接着せず、所定の条件が付与されると接着可能となり、接着後剥離可能で、かつ、透明性を有する接着層」は、「接着前は通常の状態では接着せず、少なくとも圧力により接着する感圧接着剤層」であると把握できる。 〈ス〉摘記〈ア〉の「【請求項1】通常では接着せず、所定の条件が付与されると接着可能となり、接着後剥離可能で、かつ、透明性を有する接着層を有した基体シートを・・・、隠蔽情報所持体であって、前記基体シートの重ね合わせ面に、・・印刷が施され、さらに、その印刷面上に、前記剥離可能かつ透明な接着層」より、摘記〈ア〉の「隠蔽情報所持体」は、感圧接着剤層を対向接着させた後に剥離するときは前記感圧接着剤層を透して基材面上の印刷された情報が視認できる感圧接着性フォームであることが把握できる。 以上より、摘記〈ア〉?摘記〈カ〉の記載を含む引用文献1全体から、次のような発明が記載されていると認めることができる。 「剥離可能に対向接着させる感圧接着性フォームにおいて、 前記基体シートの重ね合わせ面には、プロセス印刷、ベタ印刷、あるいは地紋印刷により所定の絵柄が印刷がされ、基体シート面上の全面に,接着前は通常の状態では接着せず、少なくとも圧力により接着する感圧接着剤層が形成され、 感圧接着剤層を対向接着させた後に剥離するときは前記感圧接着剤層を透して基体シート面上の印刷された隠蔽情報が視認できる感圧接着性フォームであって、前記感圧接着剤層は、合成ゴム系ラテックス又はアクリル系粘着剤とし、かつアクリル樹脂からなり平均粒子径が1?50μmの樹脂粒子からなる充填剤を当該感圧接着剤層に含有された感圧接着性フォーム」(以下、「引用文献1記載の発明」という。) (3-3)対比 a.引用文献1記載の発明の「基体シート」は、本願補正発明の「基材」に相当する。 b.引用文献1記載の発明の「前記基体シートの重ね合わせ面に、」は、本願補正発明の「対向接着させる基材面上に」に相当する。 c.本願明細書段落【0018】「隠蔽情報3は、感圧接着剤層を形成する前に、通常は基材上に形成しておく、情報である。したがって、隠蔽情報は個別の各フォームで共通の情報、すなわち、固定情報として、例えば、利用明細書の枠線、記号、図形、定型文、絵柄等の固定情報が普通であり、」を参酌するに、引用文献1記載の発明の「プロセス印刷、ベタ印刷、あるいは地紋印刷により所定の絵柄が印刷がされ」は、本願補正発明の「隠蔽情報となる固定情報が印刷され」に相当するものといえる。 d.引用文献1記載の発明と本願補正発明とは、感圧接着剤層は合成ゴム系ラテックスとし、かつアクリル樹脂からなり平均粒子径が1?10μmの樹脂粒子からなる充填剤を当該感圧接着剤層に含有された点で共通する。 してみれば、本願補正発明と引用文献1記載の発明とは、 「剥離可能に対向接着させる感圧接着性フォームにおいて、 対向接着させる基材面上には隠蔽情報となる固定情報が印刷され、前記基材面上に、接着前は通常の状態では接着せず、少なくとも圧力により接着する感圧接着剤層が形成された感圧接着性フォームであって、 前記感圧接着剤層は、合成ゴム系ラテックスとし、かつアクリル樹脂からなり平均粒子径が1?10μmの樹脂粒子からなる充填剤を当該感圧接着剤層に含有された感圧接着性フォーム。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 〈相違点1〉本願補正発明では「前記基材面上の片方には剥離層が形成され、前記剥離層が形成された面を含む全面に、接着前は通常の状態では接着せず、少なくとも圧力により接着する感圧接着剤層が形成され、前記感圧接着剤層を対向接着させた後に剥離するときは前記剥離層により剥離し、前記剥離層はノンシリコン系水分散タイプの剥離剤で形成され、」と特定されているのに対し、引用文献1記載の発明ではそのような特定がなされていない点。 〈相違点2〉本願補正発明では「前記剥離層および前記感圧接着剤層を透して前記隠蔽情報が光沢感をもって視認できる感圧接着性フォーム」と特定されているのに対し、引用文献1記載の発明ではそのような特定がなされていない点。 〈相違点3〉本願補正発明では「前記感圧接着剤層は、ソープフリー乳化重合NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)ラテックスとし、」と特定されているのに対し、引用文献1記載の発明ではそのような特定がなされていない点。 〈相違点4〉本願補正発明では「ポリスチレン樹脂あるいはアクリル樹脂の何れからなり平均粒子径が0.05?10μmの樹脂粒子からなる充填剤を当該感圧接着剤層の総重量100重量部当たり4重量部以下とした」と特定されているのに対し、引用文献1記載の発明ではそのような特定がなされていない点。 (3-4)判断 〈相違点1〉について 本願の出願前に頒布された刊行物であって、当審の拒絶の理由に引用された実願昭63-111558号(実開平2-33076号)(以下,「引用文献2」という。)のマイクロフィルムには、以下、〈セ〉?〈ソ〉の記載が図示とともにある。 〈セ〉「【実用新案登録請求の範囲】 不透明なラベル基材の一面に、周縁部の少なくとも一縁部を除いて剥離処理を施したうえ、通常では接着せず所定の条件が付与されると接着可能となる透視可能な接着剤を塗布したことを特徴とするラベル用紙。」、 〈ソ〉「一方、ラベル紙は、・・・・前記処理面に、一対の対向する縁部を除いてワックス、シリコン等を用いてなる剥離剤8が塗布されたうえ、さらに通常では接着せず所定圧力以上が付与されると接着可能となる透視可能な感圧性接着剤9が全面的に塗布されて構成されている。・・・・・ 本実施例は以上の・・・・・・・折り目ミシン目2でラベル用紙3を、感圧接着剤9が葉書片4の情報表示部分4bに接合するように折り重ねたうえ、前記感圧接着剤9の接着条件である所定以上の圧力を付与すると、前記接着面が接着されることにより、前記情報表示部分4bに表示された隠蔽すべき伝達情報6が前記ラベル用紙3に被覆されて隠蔽された状態となった葉書12が形成される。この状態で葉書12は投函可能となるのであるが、ラベル基材7の一対の対向する縁部の剥離処理が施されていない部分において、前記ラベル基材7は葉書片4に確実に接着され、・・。一方、葉書12を・・第5図に示すように、ラベル基材7を各切り用ミシン目10,11から切り離して剥がすと、隠蔽されていた伝達情報6を感圧接着剤9を通して視認することができる。」(5頁下から2行乃至7頁11行)(下線は当審において付した。) 〈タ〉摘記〈セ〉?摘記〈ソ〉及び第1乃至3図より、隠蔽葉書1は、剥離可能に対向接着させる感圧接着性フォームであることが把握できる。 〈チ〉摘記〈セ〉?摘記〈ソ〉及び第1?3図より、ラベル用紙3と葉書片4とは併せて、隠蔽葉書1の基材に相当するものといえる。 以上より、摘記〈セ〉?摘記〈ソ〉を含む引用文献2全体から、次のような技術事項が記載されていると認めることができる。 「剥離可能に対向接着させる感圧接着性フォームにおいて、 前記基材面上の片方には剥離層が形成され、 前記剥離層が形成された面を含む全面に、接着前は通常の状態では接着せず、少なくとも圧力により接着する感圧接着剤層が形成され、 前記感圧接着剤層を対向接着させた後に剥離するときは前記剥離層により剥離する感圧接着性フォーム」(以下、「引用文献2に記載の技術事項」という。) また本願の出願前に頒布された刊行物である当審の拒絶の理由に引用された特開平6-99535号公報【0010】には,粘着層が合成ゴム系ラテックスからなる塗材を塗工乾燥した塗膜からなり,【0013】には,「・・・ポリビニルアルコールーオクタデシルイソシアネート付加物等を用いることができる。・・・」,同【0050】には、「得られた被覆層2の反対面に、剥離層として市販のポリエチレンイミンーオクタデシルイソシアネート付加物(日本触媒製“RP-18W”)を水で5%に希釈し、グラビアコータで塗工して(乾燥後の塗布量は0.5g/m^(2) であった)剥離シートを得た。」が記載されており, 加えて感圧接着剤層に対し、剥離機能を有する剥離層としてノンシリコン系水分散タイプの剥離剤で形成されている剥離層を用いることは,特開平6-264040号公報,特開平3-50279号公報,特開平3-86777号公報及び特開平3-86776号公報に記載の如く、周知の技術である。 そうすると,合成ゴム系ラテックスからなる感圧接着層に対し、剥離機能を有する剥離層としてノンシリコン系水分散タイプの剥離剤で形成されたものを用いることは、周知の技術事項であるといえる。 してみれば、引用文献1記載の発明において、引用文献2に記載の技術事項より、 基材面上の片方には剥離層を形成するとともに、 引用文献1の【0010】「基体シートの折り込み形態、使用目的に応じて、接着層を表面と裏面の両面側、あるいは片面側の全面または一部に適宜設けても良く、」及び図5、特に、「3・・接着層」及び引用文献2に記載の技術事項より、 前記剥離層が形成された面を含む全面に、接着前は通常の状態では接着せず、少なくとも圧力により接着する感圧接着剤層を形成し、 引用文献1の【0007】「・・その印刷面に、剥離可能であって、・・」及び引用文献2に記載の技術事項より、 前記感圧接着剤層を対向接着させた後に剥離する構成となし、 上記周知の技術事項より、前記剥離層はノンシリコン系水分散タイプの剥離剤で形成されるようになすことは、当業者が容易に想到し得ることである。 したがって、相違点1に係る本願補正発明の特定事項は、引用文献1記載の発明並びに引用文献1?2に記載の技術事項及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得ることである。 〈相違点2〉について 本願の出願前に頒布された刊行物であって、当審の拒絶の理由に引用された実願平2-35704号(実開平3-126668号)のマイクロフィルム(以下,「引用文献3」という。)のマイクロフィルムには、以下、〈ツ〉?〈ト〉の記載が図示とともにある。 〈ツ〉「【実用新案登録請求の範囲】 通信面同士を向い合せて、再剥離可能な状態で貼り合せて一枚の葉書として投函する封緘葉書において、 通信内容を記すベース紙の表面にアンダーコート層を形成するとともにこのアンダーコート層の上に感圧接着層を形成し、該感圧接着層とアンダーコート層との間の接着力を、アンダーコート層とベース紙表面との間の接着力よりも弱く設定したことを特徴とする封緘葉書。」 〈テ〉「<実施例>・・・ 封緘葉書1は、葉書2枚分の大きさのベース紙2の一方の表面に通信内容を、他方の表面には郵便番号記載枠等を印刷等の手段により記載し、上記一方の表面(通信面)には透光性を有するアンダーコート層3を形成し、アンダーコート層3の上に透光性を有する感圧接着層4を重ねて形成してなる。 アンダーコート層3は、感圧接着剤がベース紙2に含浸することを防止する作用の他に防水性、防湿性を発揮するアンダーコート剤(例えば・・・剥離力をコントロールするシリコン樹脂など剥離剤を混合したもの)を塗布したもので、ベース紙2との接着力を強く設定してある。なお、上記したアンダーコート剤を使用すると、ベース紙2とアンダーコート層3との接着力は基本的に強く設定される。 感圧接着層4は、圧力を受けると再剥離可能な状態で接着力を発揮する感圧接着剤(例えば、・・・・天然ゴム系、合成ゴム系など)を塗布したものである。そして、この感圧接着層4とアンダーコート層3との接着力は、ベース紙2とアンダーコート層3との接着力よりも弱く設定してある 。」 (5頁5行乃至6頁11行) 〈ト〉「万一、アンダーコート層の・・・・両感圧接着層が一体化したとしても、各ベース紙を指で挟んで開くと、感圧接着層とアンダーコート層との接着力が、ベース紙とアンダーコート層との接着力よりも弱いので、一方のベース紙のアンダーコート層と感圧接着層との間で剥離が生じ、一体化した接着層は他方のベース紙側に付着したままとなる。したがって、通信内容を記したベース紙は何れも剥離せず、而して、通信面の読み取りに何ら支障を生じない。」(4頁14行乃至5頁4行) (下線は当審において付した。) 〈ナ〉摘記〈ツ〉「通信面同士を向い合せて、再剥離可能な状態で貼り合せて一枚の葉書として投函する封緘葉書」より、摘記〈ツ〉及び摘記〈テ〉の「封緘葉書」は、「剥離可能に対向接着させる感圧接着性フォーム」であることが把握できる。 〈ニ〉摘記〈ツ〉?摘記〈ト〉の「通信内容」は、「情報」といえる。 〈ヌ〉摘記〈テ〉「アンダーコート剤(例えば・・・剥離力をコントロールする・・・など剥離剤を混合したもの)」より、摘記〈ツ〉?摘記〈ト〉の「アンダーコート層」は、「剥離層」といえる。 以上より、摘記〈ツ〉?摘記〈ト〉を含む引用文献3全体から、次のような技術事項が記載されていると認めることができる。 「剥離可能に対向接着させる感圧接着性フォームにおいて、 対向接着させる基材面上には情報が印刷され、 前記基材面上には剥離層が形成され、 前記剥離層が形成された面を含む全面に、接着前は通常の状態では接着せず、少なくとも圧力により接着する感圧接着剤層が形成され、 前記感圧接着剤層を対向接着させた後に剥離するときは前記剥離層により剥離し、前記剥離層および前記感圧接着剤層を透して前記情報が視認できる感圧接着性フォーム」(以下、「引用文献3に記載の技術事項」という。) また本願の出願前に頒布された刊行物であって、当審の拒絶の理由に引用された特開平5-93400号公報(以下、「引用文献4」という。)には、以下、〈ネ〉の記載がある。 〈ネ〉「【0002】 【従来の技術】近年、印刷用塗工紙の片面に印刷した後、この印刷面の上に透明樹脂フィルムを貼り合わせて使用するための、いわゆる樹脂フィルム貼合用塗工紙が製造されるようになった。印刷用塗工紙の印刷面に透明樹脂フィルムを貼り合わせると印刷画面がそのまま透けて見え、かつ樹脂面による光沢感が付加され、」(下線は当審において付した。) 加えて「剥離可能に対向接着させる感圧接着性フォームにおいて、 対向接着させる基材面上には情報が印刷され、 対向接着させる基材面上に、接着前は通常の状態では接着せず、少なくとも圧力により接着する感圧接着剤層が形成され、 前記感圧接着剤層を対向接着させた後に剥離し、前記感圧接着剤層が光沢感を有する感圧接着性フォーム」は、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平8-58272号公報(以下の〈ノ〉及び〈ハ〉)に記載の如く、周知の技術事項といえる。 〈ノ〉「【特許請求の範囲】 【請求項1】 支持体に感圧性接着剤層を設けたシ-トの塗布面どうし、または、該シ-トの塗布面と未塗布面シ-トとを対向させて加圧圧着させることによって瞬時に接着することが出来、この接着面を剥離することによって、再び接着面の情報を見ることができる再剥離性の感圧性機密シ-トにおいて、該塗布面の光沢度が、JIS P8142に定める「紙及び板紙の75度鏡面光沢度試験方法」による測定値で、50%以上であることを特徴とする再剥離性の感圧性機密シ-ト。 ・・・・・・・・ 【請求項4】 支持体に情報を記載した後に、再剥離性の感圧性機密塗布面を設けて加圧圧着させることを特徴とする請求項1及び請求項2記載の再剥離性の感圧性機密シ-ト。 【請求項5】 支持体に設けた再剥離性の感圧性機密塗布面上に情報を記載した後に加圧圧着させることを特徴とする再剥離性の感圧性機密シ-ト。」 〈ハ〉「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、支持体の全面に機密性を得るための塗層を設けた再剥離性の感圧性機密シ-トに関し、更に詳細には塗層の光沢度が高く、美術印刷に適した美麗な塗布面を有する再剥離性の感圧性機密シ-トに関するものである。・・・ 【0008】又、再剥離性の感圧性機密シ-トを葉書として利用する場合、機密情報が外部から判読できないように、通常は地紋印刷などによる方法が行われている・・・・ 【0012】本発明に用いられる感圧性接着剤としては、広い範囲から選択することができる。例えば、ポリウレタン系樹脂、合成ゴム系樹脂、天然ゴム系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、などが挙げられる。中でもガラス転移温度が-65℃?-25℃で、平均粒子径が0.3μm以下のものが好ましい。これらの感圧性接着剤は2種類以上を併用して用いることもでき、主要成分として用いる感圧性接着剤、顔料、粘着付与剤の種類と使用量を調節することによって、目標品質を得ることができる。・・ 【0014】本発明に使用される顔料は、使用する目的が印刷工程におけるインキ吸収やインキの着肉性の向上とブロッキングの防止であり、この主旨に添うものであれば広い範囲から選択することができる。例えば、・・・スチレンアクリル樹脂・・・などの有機顔料も使用することができる。」 (下線は当審において付した。) してみれば、引用文献1記載の発明において、引用文献2?4に記載の技術事項及び周知の技術事項より、剥離層および感圧接着剤層を透して隠蔽情報が光沢感をもって視認できるようになすことは、当業者が容易に想到し得ることである。 したがって、相違点2に係る本願補正発明の特定事項は、引用文献1記載の発明並びに引用文献2?4及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得ることである。 〈相違点3〉について 本願の出願前に頒布された刊行物であって、当審の拒絶の理由に引用された特開平6-65547号公報(以下、「引用文献5」という。)【0011】?【0014】には、コールドシール接着剤層は、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)ラテックスとしたものが、 本願の出願前に頒布された刊行物である当審の拒絶の理由に引用された特開平5-186640号公報(以下、「引用文献6」という。)【0015】?【0018】には、コールドシール接着剤層が、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)ラテックスとしたものが、加えて【0018】?【0021】には,天然ゴムラテックスは耐老化性と機械的安定性が悪いことが, 本願の出願前に頒布された刊行物であって、当審の拒絶の理由に引用された特開平5-186753号公報(以下、「引用文献7」という。)【0009】には、ゴムラテックス系接着剤としてニトリルゴム系ラテックスが、 本願の出願前に頒布された刊行物であって、当審の拒絶の理由に引用された特開平1-292354号公報の3頁右上欄19行乃至左下欄下から4行には、接着剤としてブロッキング性の少ないラテックスとして、アクリロニトリル-ブタジエンラテックスが使用されることが、 本願の出願前に頒布された刊行物であって、当審の拒絶の理由に引用された特開平2-276696号公報の3頁左上欄9行乃至17行及び5頁右上欄3乃至4行には、接着剤の粘着性材料としてNBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)を含む合成ゴム系ラテックス系が使用できることが、 本願の出願前に頒布された刊行物であって、特開平4-59395号公報実施例7には,感圧接着性フォームの感圧粘着剤として、NBRラテックスを用いる旨が、 本願の出願前に頒布された刊行物であって、当審の拒絶の理由に引用された特開平2-286764号公報には、2頁右上欄12-13行には、ゴム系感圧接着剤として、ニトリル-ブタジエンゴムを主成分とする旨が記載されている。 そうすると,感圧接着性フォームの感圧粘着剤として,NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)ラテックスは周知であるといえる。 またソープフリー乳化重合NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)ラテックスは防湿・防水機能を有することは、本願の出願前に頒布された刊行物である当審の拒絶の理由に引用された特開平7-331594号公報【0011】に記載の如く周知であり, 加えてエラストマーとしては、ニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、天然ゴムのうち,耐侯性等の見地からは、ニトリル-ブタジエンゴム(NBR)が好ましいことは本願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-169875号公報【0037】に記載の如く周知である。 してみれば,引用文献1記載の発明において、感圧接着剤層として、耐侯性に優れていることが周知のNBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)ラテックスを選択するとともに,さらに当該NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)ラテックスとして、防湿・防水機能を有することが周知のソープフリー乳化重合NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)ラテックスを用いるようになすことは、当業者が容易に想到し得ることである。 したがって、相違点3に係る本願補正発明の特定事項は、引用文献1記載の発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得ることである。 〈相違点4〉について 本願明細書段落【0016】「従って、本発明では感圧接着剤層の主剤として上記ラテックスを用いるが、充填剤を添加したとしても、感圧接着剤層の透明性等をさほど要求しない用途では、剥離層で剥離すれば良いのであるから、感圧接着剤層の総重量100重量部当たり、多くても50重量部、好ましくは30重量部含有させれば充分である。この場合の含有量は感圧接着剤層上にNIP印字適性、ブロッキング防止等の点から適宜選択する。また、感圧接着剤層の透明性が望まれる用途では、透明性の点から充填剤の含有量は、感圧接着剤層の総重量100重量部当たり、せいぜい4重量部含有させれば十分であり、ラテックス次第では充填剤を添加しなくても良い。このように充填剤の添加は、ブロッキング防止、(感圧接着剤層露出面への)印刷適性向上等の為である。 もしも、充填剤を添加する際は、透明性が望まれる用途では、ポリスチレン、アクリル樹脂等による平均粒子径が0.05?10μm程度の樹脂粒子が透明性 、光沢感等の点から好ましい。」を参照すれば、前記ブロッキング防止及び(感圧接着剤層露出面への)印刷適性向上より前記透明性を優先すべく,本願補正発明の特定事項である「ポリスチレン樹脂あるいはアクリル樹脂の何れからなり平均粒子径が0.05?10μmの樹脂粒子からなる充填剤を当該感圧接着剤層の総重量100重量部当たり4重量部以下とした」構成を採用したものと解される。 引用文献5には、以下、〈ヒ〉の記載がある。 〈ヒ〉「【0011】また、この発明に用いる接着剤組成物としては、接着剤ベースと充填剤とを主成分とする接着剤組成物を用いる。なお、上記「主成分とする」とは、全体が主成分のみからなる場合も含める趣旨である。そして、上記接着剤組成物のなかでも特に、最近、本発明者らが、図6に示す3つ折りタイプのはがきの接着用に開発した特殊なコールドシール接着剤組成物を用いると、非常に優れた特性の接着剤塗工シートを得ることができる。 【0012】上記特殊なコールドシール接着剤組成物とは、接着剤ベースXとして、ゴムラテックスと保護コロイド系アクリル共重合エマルジョンとを混合したものか、これに代えてアクリル変性ゴムラテックスを用い、この接着剤ベースX100重量部(以下「部」と略す)に対し、充填剤Yを5?90部配合したものである。なお、上記接着剤ベースXにおいて、上記ゴムラテックスと、保護コロイド系アクリル共重合エマルジョンと、アクリル変性ゴムラテックスとを併用しても差し支えはない。 【0013】「上記ゴムラテックスとしては・・・アクリロニトリル-ブタジエンゴムエマルジョン等が挙げられ,・・・・ 【0014】また、上記保護コロイド系アクリル共重合エマルジョンとは、アクリル酸エステルモノマーと他のモノマー成分とを、保護コロイドを用いて共重合しエマルジョン化したものである。なお、上記保護コロイド系アクリル共重合エマルジョンは、モノマー組成を調整してその最低造膜温度(MFT)が90℃以上となるように設定すると、塗膜表面が乾燥時に造膜不良を起こしてフィルム化するようなことがなく、好適である。 ・・・・・・・ 【0017】また、上記充填剤Yとしては、・・・・・スチレンビーズ,メタクリル酸メチルビーズ等の樹脂ビーズ等があげられ、なかでも、平均粒径1?10μmのものを用いることが好適である。これらは、単独で用いてもよいが、硬度の異なるものを組み合わせることにより、接着界面の凹凸状態や塗工表面状態を適宜に変化させることができる。」 引用文献6には、以下、〈フ〉の記載がある。 〈フ〉「【0015】 【発明の具体的説明】以下、本発明に係るコールドシール剤組成物ついて具体的に説明する。本発明に係るコールドシール剤組成物は、ゴムラテックスと、特定の重合体粒子と、特定の無機粒子とを特定の割合で含有してなる。 【0016】ゴムラテックス 本発明では、ゴムラテックスとしては、天然ゴムラテックス、合成ゴムラテックス、あるいは天然ゴムラテックスと合成ゴムラテックスとの混合物が用いられる。 【0017】上記天然ゴムラテックスとしては、通常使用されている非グラフト天然ゴムラテックスで良く、また天然ゴムラテックスにメチルメタクリレート(MMA)などのアルキル(メタ)アクリレートをグラフトしたラテックス[以下、アルキル(メタ)アクリレートグラフト天然ゴムラテックスと記す]も含まれる。 【0018】また、上記合成ゴムラテックスとしては、SBRラテックス、NBRラテックス、MBRラテックス、ネオプレンラテックスなどが挙げられる。本発明においては、上記のゴムラテックスのうち、自着性を具備する非グラフト天然ゴムラテックス、アルキル(メタ)アクリレートグラフト天然ゴムラテックスが好適である。アルキル(メタ)アクリレートグラフト天然ゴムラテックスの中でも、特にメチルメタクリレートグラフト天然ゴムラテックスが好ましい。 【0019】天然ゴムラテックスは、耐老化性と機械安定性が悪く、特に空気酸化に対する耐老化性に劣るが、天然ゴムラテックスの耐老化性は、天然ゴムラテックスに数種類の老化防止剤を添加することにより大幅に改善することができる。さらに良い方法としては、アルキル(メタ)アクリレートグラフト天然ゴムラテックスに老化防止剤を添加する方法があり、この方法によれば、耐老化性についてほぼ満足できる性能を発揮させることができる。いずれにしても、本発明では、老化防止剤を用いることが望ましい。 【0020】また、天然ゴムラテックスは、塗工時に高せん断力がかかるとラテックス粒子同士が凝集して破壊が起こり、いわゆるガムアップとなり塗工不良となる問題が生じる。このような天然ゴムラテックスの機械安定性は、水溶性高分子物質を添加することによって改善することができる。しかしながら、水溶性高分子の添加は、天然ゴムラテックスの自着強度を弱めることになるので、最小限度に留めることが望ましい。 ・・・・・・ 【0024】重合体粒子 本発明で用いられる重合体粒子としては、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアミド等の重合体(単独重合体、共重合体)からなる粒子が挙げられる。 【0025】上記重合体粒子には、上記重合体の中空物等も含まれる。本発明においては、特に耐ブロッキング性と接着性とのバランスを考えるとポリスチレン系の微粉末が良い。また、トナーとの密着性を上げるためにもポリスチレンは好適である。ポリスチレン系の微粉末としては、ポリスチレン単体の微粉末、さらにはスチレン- (メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン- ビニルカルボン酸共重合体、スチレン- (メタ)アクリル酸エステル- ビニルカルボン酸共重合体などのスチレン系共重合体の微粉末が使用可能である。 【0026】上記のような重合体粒子は、たとえばスチレン等のモノマーを、有機過酸化物系触媒を使用してポリビニルアルコール、ヒドロキシセルロース等の水溶性高分子分散剤の存在下で懸濁重合を行なうことによって容易に得られる。得られた重合体粒子は水系ディスパージョンのまま使用することもできるし、乾燥後の微粉末状態でも使用することも可能である。 【0027】本発明で用いられる重合体粒子の平均粒子径は、1?20μm、好ましくは5?12μm前後の範囲である。本発明において、平均粒子径が上記のような範囲にある重合体粒子を用いると、コールドシール剤の乾燥皮膜の脱落(粉落ち)を防止することが可能であり、また、耐ブロッキング性と接着性とのバランスに優れている。 【0028】本発明においては、重合体粒子は、耐ブロッキング性、接着力、粉落ち防止および塗布量を考慮すると、ゴムラテックスのゴム成分100重量部に対して10?300重量部、好ましくは50?150重量部の量で用いることが望ましい。」 引用文献7には、以下、〈ヘ〉?〈ホ〉の記載がある。 〈ヘ〉「【0009】本発明に用いる接着成分は、ゴムラテックス系接着剤およびロジン系粘着付与剤の混合物からなる。ゴムラテックス系接着剤は熱による軟化が小さく、耐熱性が良好である。ゴムラテックス系接着剤としては、天然ゴム系ラテックス、変性天然ゴム系ラテックス、ポリイソプレンラテックス、スチレン/ブタジエンゴム系ラテックス、ニトリルゴム系ラテックス、クロロプレンゴム系ラテックス、ポリウレタンゴム系ラテックス等が好適に使用される。アクリル系、酢酸ビニル系、塩化ビニル系接着剤は耐熱性が悪いため、好ましくない。 ・・・・・・・・ 【0016】有機および/または無機微粉末は、保管時等に積載による圧力がかかってもシート同士が接着してしまわぬよう、耐ブロッキング性を付与するために使用する。有機および/または無機微粉末は好ましくは吸油性微粒子より大きなものであり、粒径1?30μm、より好ましくは3?20μmのものを使用する。粒径が1μm未満であるときは、ブロッキング防止効果が不充分となり、また粒径が30μmを越えると、感圧接着性を低下させるだけでなく、プリンタードラムの表面を破損させる場合がある。この有機および/または無機微粉末としては、・・・・樹脂ビーズ等が好適に使用される。特に好ましくは精製デンプン、コーンスターチである。 【0017】本発明の感圧接着剤中、有機および/または無機微粉末は好ましくは固形分比5?40%、より好ましくは固形分比10?30%含有する。この含有量が固形分比5%未満の場合はブロッキング性が不良となり、保管時に接着シートどうしの融着が発生する。また、固形分比40%を越える場合には、十分な接着性を得ることができなくなる。 【0018】上記に記載したものの他に本発明の感圧接着剤は好ましくは消泡剤を含有する。消泡剤としては、鉱物油系消泡剤が好適に用いられる。またこの他にも、塗布適性上の必要に応じて増粘剤を使用したり、水分の添加により固形分濃度を調整することは適宜実施して差し支えない。」 〈ホ〉「【0025】実施例4 感熱接着剤Dの作成 成分 ・・・・M-100(松本油脂製薬社製) (アクリル樹脂ビーズ、平均粒径6μm)・・」 〈ラ〉摘記〈ホ〉「・・(アクリル樹脂ビーズ、平均粒径6μm)・・」より、感圧接着剤として平均粒径6μmのアクリル樹脂ビーズを含有させたものが把握できる。 本願の出願前に頒布された刊行物であって、当審の拒絶の理由に引用された特開平7-40683号公報(以下、「引用文献8」という。)には、以下、〈リ〉の記載がある。 〈リ〉「【0011】微粒状物質 微粒状物質は、・・・アクリルビーズ、・・・等が挙げられ、その粒径は、10mμm?30μm、好ましくは0.5μm?10μmの範囲にあるものが好適である。また、針状物質と共に添加することにより、微粒状物質の添加量を少なくすることができると共に微粒状物質の粉落ちを防止することができる。」 本願の出願前に頒布された刊行物であって、当審の拒絶の理由に引用された特開平8-62882号公報(以下、「引用文献9」という。)には、以下、〈ル〉の記載がある。 〈ル〉「【0005】本発明における画像受理層とは、無機及び/または有機粒子をバインダ-に分散させたものである。・・・・使用される無機、有機粒子として、・・・架橋ポリスチレン粒子、架橋アクリル粒子等が挙げられる。平均粒子径は、0.2?10μmの範囲が好ましい。」(下線は当審において付した。) 〈レ〉樹脂マトリックスに,ポリスチレン樹脂あるいはアクリル樹脂の何れからなり平均粒子径が0.005μm以上の樹脂粒子からなる充填剤を含有させた樹脂層の総重量100重量部当たり当該充填剤を1重量部以上とした樹脂層は耐ブロッキング性を有することは,例えば、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平7-323510号公報【請求項1】及び【請求項3】並びに【0012】?【0013】に記載の如く、周知の技術事項である。 してみれば、引用文献1に記載の発明において,ブロッキング防止(耐ブロキング性)及び(感圧接着剤層露出面への)印刷適性向上より透明性を優先すべく, 引用文献5摘記〈ヒ〉【0017】、引用文献6摘記〈フ〉【0025】及び同摘記〈フ〉【0027】、引用文献7摘記〈ヘ〉【0016】と同摘記〈ホ〉【0025】、引用文献8摘記〈リ〉【0011】、引用文献9摘記〈ル〉【0005】及び周知の技術事項〈レ〉より、ポリスチレン樹脂あるいはアクリル樹脂の何れからなり平均粒子径が0.05?10μmの樹脂粒子からなる充填剤を用いるようになすことは,当業者が容易に想到し得ることである。 また引用文献5摘記〈ヒ〉【0012】「・・・充填剤Yを5?・・部・・」(下線は当審において付した)及び引用文献7摘記〈ヘ〉【【0017】「好ましくは固形分比5?・・% 」(下線は当審において付した)には、感圧接着剤層の総重量100重量部当たり5重量部以上充填剤を含有させる旨が記載されてはいるが、 樹脂マトリックスに,ポリスチレン樹脂あるいはアクリル樹脂の何れからなり平均粒子径が0.005μm以上の樹脂粒子からなる充填剤を含有させた樹脂層の総重量100重量部当たり当該充填剤を1重量部以上とした樹脂層は耐ブロッキング性を有することは、周知の技術事項〈レ〉であるから、前記充填剤を当該感圧接着剤層の総重量100重量部当たり4重量部以下としても、耐ブロッキング性は、前記5重量部に比べ弱まるものの、保持されるであろうことは当業者が容易に予測する程度のことであるから、ブロッキング防止(耐ブロキング性)及び(感圧接着剤層露出面への)印刷適性向上より透明性を優先すべく,予め実験により,前記充填剤を当該感圧接着剤層の総重量100重量部当たり4重量部以下に最適化して用いるようになすことは,当業者が容易に想到し得ることである。 したがって、相違点4に係る本願補正発明の特定事項は、引用文献1記載の発明並びに引用文献4?9に記載の技術事項及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得る程度のことである。 〈まとめ〉 このように、相違点1?4に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用文献1記載の発明並びに引用文献1?9に記載の技術事項及び周知の技術事項に基づいて当業者が想到容易な事項であり、これらの発明特定事項を採用したことによる本願補正発明の効果も当業者が容易に予測し得る程度のものである。 したがって、本願補正発明は、引用文献1記載の発明並びに引用文献1?9に記載の技術事項及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4.本件補正についてのむすび 本件補正は、前記「第2 2.」に記載のとおり,平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項に規定に違反するとともに、前記「第2 3.」に記載のとおり,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するのであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 本願発明の認定 平成20年11月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明は、平成20年8月18日付けで補正された特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 剥離可能に対向接着させる感圧接着性フォームにおいて、 対向接着させる基材面上には隠蔽情報となる固定情報が印刷され、 前記基材面上の片方には剥離層が形成され、 前記剥離層が形成された面を含む全面に、接着前は通常の状態では接着せず、少なくとも 圧力により接着する感圧接着剤層が形成され、 前記感圧接着剤層を対向接着させた後に剥離するときは前記剥離層により剥離し、前記剥離層および前記感圧接着剤層を透して前記隠蔽情報が光沢感をもって視認できる感圧接着性フォームであって、 前記剥離層はポリビニルアルコール樹脂と長鎖アルキルイソシアネート付加物とによる架橋物で形成され、 前記感圧接着剤層は、スチレン-ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル-ブタジエンゴムラテックス、及びアクリル系樹脂ラテックスの群から選ばれ、ソープフリー乳化重合法によって得た水系エマルジョンとして供給されるラテックスを主成分とし、かつ、 ポリスチレン樹脂あるいはアクリル樹脂の何れからなり平均粒子径が0.05?10μmの樹脂粒子からなる充填剤を当該感圧接着剤層の総重量100重量部当たり4重量部以下としたことを特徴とする感圧接着性フォーム。」(以下、「本願発明」という。) 1.特許法第36条第6項第2号違反 (1)請求項1の「ポリビニルアルコール樹脂と長鎖アルキルイソシアネート付加物とによる架橋物」について、 (ァ)請求項1の「長鎖アルキルイソシアネート付加物」について、従来例との比較において以下のiの点で、その構成が不明である。 i.請求項1の「長鎖アルキルイソシアネート付加物」が、ポリビニルアルコール樹脂のアルコール基の一部に長鎖アルキルイソシアネートが付加し、該ポリビニルアルコールのアルコール基が残存する長鎖アルキルイソシアネート付加物であるとすると、請求項1の「ポリビニルアルコール樹脂と長鎖アルキルイソシアネート付加物とによる架橋物」とは、ポリビニルアルコール樹脂のアルコール基と当該長鎖アルキルイソシアネート付加物のポリビニルアルコール樹脂由来の残存アルコール基とに架橋剤である多官能性イソシアネートが付加し形成された架橋物であるものと推認される。 しかしながら、ポリビニルアルコール樹脂に対する長鎖アルキルイソシアネート付加物の従来例に相当する文献;特公昭29-7333号公報の6頁左欄7乃至8行「5炭素原子以上を含むアルキル基」、特公昭57-15782号公報の3欄25-26行「5個以上の炭素数からなるアルキル基」及び特開昭62-81476号公報の特許請求の範囲「Rは炭素数が8以上の炭化水素基」にもあるように、前記「長鎖アルキル」基は少なくともその具体的な炭素数が特定されなければ、特定できないものである。 また前記「長鎖アルキル」基の具体的化学構造[ノルマル型(直鎖型)の長鎖アルキル基のみに限定されるのか、それとも分岐型の長鎖アルキル基も含むのか等]も不明である。 したがって、本願請求項1の「長鎖アルキル」基の構成は特定できない。 (ィ)請求項1の「ポリビニルアルコール樹脂と長鎖アルキルイソシアネート付加物とによる架橋物」は、以下のii乃至 iiiの点で、その構成が不明である。 ii.「長鎖アルキルイソシアネート付加物」とは、長鎖アルキルイソシアネートが如何なる化合物に付加して形成された付加物であるのか、その構成が特定できない。 iii.ポリビニルアルコール樹脂と長鎖アルキルイソシアネート付加物とにより具体的に如何なる工程を経て架橋物が形成されたのか、その構成が不明であり、請求項1の「ポリビニルアルコール樹脂と長鎖アルキルイソシアネート付加物とによる架橋物」は、その構成が特定できない。 (2)請求項1の「アクリル系樹脂ラテックス・・から選ばれ、ソープフリー乳化重合法によって得た水系エマルジョンとして供給されるラテックス」について、 (ァ)請求項1の「アクリル系樹脂ラテックス」ついて、以下のiv乃至vの点で、その構成が不明である。 iv.「アクリル系」について、「アクリル系」に関する具体的「モノマー」が、例えば「アクリル酸」及び「メタクリル酸」等からなる「アクリル酸系モノマー」か、或いは「アクリル酸エチル」及び「メタクリル酸エチル」等からなる「アクリレート」及び「メタクリレート」などの「アクリル酸のエステル系モノマー」か、その構成が特定できない。 v.「アクリル系樹脂ラテックス」について、アクリル系モノマーのみでは、ラテックス特性は生じ得ないことから、前記アクリル系樹脂にラテックス特性を付与すべく、前記アクリル系樹脂ラテックスの原料としてアクリル系モノマー以外に、如何なるモノマーを用いるのか、その構成が特定できない。 (ィ)「アクリル系樹脂エマルジョンのソープフリー乳化重合法」については、以下のviの点で、その構成が不明である。 vi.アクリル系樹脂エマルジョンのソープフリー乳化重合法については、当審の拒絶の理由に引用された特開昭59-98186号公報の2頁左下欄に記載の如く、各種重合方法が存在するが、本願アクリル系樹脂ラテックス係るソープフリー乳化重合法では、具体的に如何なるソープフリー乳化重合法を用いたのか、その構成が特定できない。 よって,本願請求項1の記載は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 以上のとおり,本願請求項1の記載は,特許法第36条第6項第2号に規定により,特許を受けることができない。 2.特許法第29条第第2項違反 2-1.引用文献 本願の出願前に頒布された刊行物であって、平成20年9月17日付け拒絶の理由(最後)に引用された上記引用文献1及びその記載事項は、前記「第2 3.(3-2)」に記載のとおりである。 してみれば、摘記〈ア〉?摘記〈カ〉の記載を含む引用文献1全体から、次のような発明が記載されていると認めることができる。 「通常では接着せず、所定の条件が付与されると接着可能となり、接着後剥離可能で、かつ、透明性を有する接着層を有した基体シートを、二つ折りの重ね合わせ等、各種の重ね合わせ態様とされてなる隠蔽情報所持体であって、前記基体シートの重ね合わせ面に、プロセス印刷、ベタ印刷、あるいは地紋印刷等の印刷が施され、さらに、その印刷面上に、前記剥離可能かつ透明な接着層が設けてなると共に、前記接着層上に隠蔽情報が印字されてなる隠蔽情報所持体であって、前記剥離可能かつ透明な接着層が、合成ゴム系ラテックス及びアクリル系樹脂の群から選ばれる非剥離性接着剤基剤を主成分とし、かつアクリル樹脂からなり平均粒子径が1?50μmの樹脂粒子からなる充填剤を当該感圧接着剤層に含有された隠蔽情報所持体」(以下、「引用発明」という。) 2-2.対比 a’.引用発明の「基体シート」は、本願発明の「基材」に相当する。 b’.引用発明の「隠蔽情報所持体」は、摘記〈ア〉の「請求項3・・・(4)前記基体シートを重ね合わせして重ね合わせ面同志を対接させ、これに加圧、加熱等の所定の条件を付与して前記剥離可能かつ透明な接着剤を活性化し、前記重ね合わせ面同志を接着させる工程」及び摘記〈エ〉の「感圧接着剤組成物」の記載より、本願発明の「剥離可能に対向接着させる感圧接着性フォーム」に相当する。 c’.引用発明の「前記基体シートの重ね合わせ面に、」は、本願発明の「対向接着させる基材面上には」に相当する。 d’.摘記〈ア〉の「請求項3・・・(4)前記基体シートを重ね合わせして重ね合わせ面同志を対接させ、これに加圧、加熱等の所定の条件を付与して前記剥離可能かつ透明な接着剤を活性化し、前記重ね合わせ面同志を接着させる工程」及び摘記〈エ〉の「感圧接着剤組成物」の記載より、引用発明の「通常では接着せず、所定の条件が付与されると接着可能となり、接着後剥離可能で、かつ、透明性を有する接着層」は、本願発明の「接着前は通常の状態では接着せず、少なくとも圧力により接着する感圧接着剤層」に相当することは明らかである。 e’.引用発明の「基体シートの重ね合わせ面」上と本願発明「対向接着させる基材面上」には、特定の印刷がされている点で一致する。 f’.引用発明と本願発明とは合成ゴムラテックス及びアクリル樹脂の群から選ばれるものを主成分とし、かつアクリル樹脂からなり平均粒子径が1?10μmの樹脂粒子からなる充填剤を当該感圧接着剤層に含有された点で共通する。 してみれば、本願発明と引用発明とは、 「剥離可能に対向接着させる感圧接着性フォームにおいて、 対向接着させる基材面上には特定の印刷がされ、前記基材面上に、接着前は通常の状態では接着せず、少なくとも圧力により接着する感圧接着剤層が形成された感圧接着性フォームであって、 前記感圧接着剤層は、合成ゴム系ラテックス又はアクリル系樹脂とし、かつアクリル樹脂からなり平均粒子径が1?10μmの樹脂粒子からなる充填剤を当該感圧接着剤層に含有された感圧接着性フォーム。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 〈相違点1’〉本願発明では「対向接着させる基材面上には隠蔽情報となる固定情報が印刷され」と特定されているのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。 〈相違点2’〉本願発明では「前記基材面上の片方には剥離層が形成され、前記剥離層が形成された面を含む全面に、接着前は通常の状態では接着せず、少なくとも圧力により接着する感圧接着剤層が形成され、前記感圧接着剤層を対向接着させた後に剥離するときは前記剥離層により剥離し、前記剥離層および前記感圧接着剤層を透して前記隠蔽情報が光沢感をもって視認できる感圧接着性フォームであって、 前記剥離層はポリビニルアルコール樹脂と長鎖アルキルイソシアネート付加物とによる架橋物で形成され、」と特定されているのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。 〈相違点3’〉本願発明では「前記感圧接着剤層は、スチレン-ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル-ブタジエンゴムラテックス、及びアクリル系樹脂ラテックスの群から選ばれ、ソープフリー乳化重合法によって得た水系エマルジョンとして供給されるラテックスを主成分とし」と特定されているのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。 〈相違点4’〉本願発明では「ポリスチレン樹脂あるいはアクリル樹脂の何れからなり平均粒子径が0.05?10μmの樹脂粒子からなる充填剤を当該感圧接着剤層の総重量100重量部当たり4重量部以下とした」と特定されているのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。 2-3.判断 〈相違点4’〉について 本願発明の〈相違点4’〉に係る特定事項は、前記本願補正発明の〈相違点4〉に係る特定事項と同一であり、前記「第2 3.(3-4)〈相違点4〉について」に記載のとおり、引用発明並びに引用文献4?9及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得ることである。 したがって、相違点4’に係る本願発明の特定事項は、引用発明並びに引用文献4?9及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得ることである。 〈相違点1’〉について 平成20年9月17日付け拒絶の理由(最後)に引用された特開平7-323682号公報の【0010】、図2及び図5「5・・隠蔽情報」の記載を参照するに、同特開平7-323682号公報【0007】には、「剥離可能に対向接着させる感圧接着性フォームにおいて、対向接着させる基材面上には隠蔽情報となる情報が印刷され、」の構成が記載されていることが把握できる。 また、引用文献3【実用新案登録請求の範囲】には、以下注1を参照するに、「剥離可能に対向接着させる感圧接着性フォームにおいて、対向接着させる基材面上には隠蔽情報となる情報が印刷され、」の構成が記載されていることが把握できる。 [審決注1: 引用文献3「また、・・・通信内容の秘密性保持という特徴はあるので親展用葉書としても使用される。」(2頁3乃至6行)、 同「<実施例>・・・ 封緘葉書1は、葉書2枚分の大きさのベース紙2の一方の表面に通信内容を、他方の表面・・・・記載し、上記一方の表面(通信面)には透光性を有するアンダーコート層3を形成し、アンダーコート層3の上に透光性を有する感圧接着層4を重ねて形成してなる。 アンダーコート層3は、・・・・アンダーコート剤(・・・剥離力をコントロールするシリコン樹脂など剥離剤を混合したもの)を塗布したもので、ベース紙2との接着力を強く設定してある。なお、上記したアンダーコート剤を使用すると、ベース紙2とアンダーコート層3との接着力は基本的に強く設定される。 感圧接着層4は、圧力を受けると再剥離可能な状態で接着力を発揮する感圧接着剤(例えば、・・・・天然ゴム系、合成ゴム系など)を塗布したものである。そして、この感圧接着層4とアンダーコート層3との接着力は、ベース紙2とアンダーコート層3との接着力よりも弱く設定してある 。」(5頁5行乃至6頁11行)及び同図2乃至図3] 以上より、「剥離可能に対向接着させる感圧接着性フォームにおいて、対向接着させる基材面上には隠蔽情報となる情報が印刷され、」の構成は、上記特開平7-323682号公報及び引用文献3に記載の如く、周知の技術事項であるといえる。 また、感圧接着性フォームにおいて、固定情報を印字することは、実願昭63-114552号(実開平2-36475号)のマイクロフィルム2頁下から9乃至10行「固定通知情報」、特開平7-314955号公報【0011】「固定情報」、特開平8-39970号公報【請求項1】「固定通知情報」に記載の如く、周知の技術事項である。 したがって、引用発明において、対向接着させる基材面上には隠蔽情報となる固定情報が印刷された構成となすことは、当業者が容易に想到し得ることである。 〈相違点2’〉について 〈相違点2’〉を以下〈相違点A〉と〈相違点B〉とに分けて検討する。 〈相違点A〉本願発明では「前記基材面上の片方には剥離層が形成され、前記剥離層が形成された面を含む全面に、接着前は通常の状態では接着せず、少なくとも圧力により接着する感圧接着剤層が形成され、前記感圧接着剤層を対向接着させた後に剥離するときは前記剥離層により剥離し、前記剥離層はポリビニルアルコール樹脂と長鎖アルキルイソシアネート付加物とによる架橋物で形成され、」と特定されているのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。 〈相違点B〉本願発明では「前記剥離層および前記感圧接着剤層を透して前記隠蔽情報が光沢感をもって視認できる感圧接着性フォームであって、」と特定されているのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。 〈相違点A〉について 引用文献2に記載の技術事項は、前記「第2 3.(3-4)」に記載のとおりである。 また特開平6-99535号公報【0010】には、粘着層が合成ゴムラテックス又はアクリル樹脂エマルジョンの水性型からなる塗材を塗工乾燥した塗膜からなることが、同【0013】「・・・ポリビニルアルコールーオクタデシルイソシアネート付加物等を用いることができるが、これらに限定されない。・・・」(下線は当審において付した。)及び同【0056】には、剥離層がポリビニルアルコールーオクタデシルイソシアネート付加物等で形成され、当該剥離層をグラビアコータで塗工し形成されることが、(なお、前記「ポリビニルアルコールーオクタデシルイソシアネート付加物」は「ポリビニルアルコール-オクタデシルイソシアネート付加物」の誤記と解した。) 特公昭57-15782号公報には、特に、1欄25乃至31行,同欄37行乃至2欄3行、3欄24行乃至27行及び4欄3乃至5欄12行において、ポリアクリル酸エステルやスチレンブタジエンゴムなどを主成分とする粘着剤に対し、剥離剤として、ポリビニルアルコールと5個以上の炭素数からなるアルキル基を有するモノイソシアネートとの反応物であるポリビニルアルキルカルバメートを多官能性イソシアネートで架橋させてなる架橋物を用いる旨が、 特開昭62-81476号公報には、特に、4頁左下欄、同右下欄「・・・多価イソシアネートなどによる・・・変性処理・・」において、剥離剤として、ポリビニルアルコールと8個以上の炭素数からなるアルキル基を有するモノイソシアネートとの反応物であるポリビニルアルキルカルバメートを多価イソシアネートで架橋させてなる架橋物を用いる旨が、記載されている。 そうすると、上記記載より、スチレンブタジエンゴムを含む合成ゴムラテックス又はアクリル樹脂エマルジョンを主成分とする感圧接着層に対し、剥離機能を有する剥離層として、ポリビニルアルコール樹脂と長鎖アルキルイソシアネート付加物とによる架橋物で形成されたものを用いることは、周知の技術事項であるといえる。 してみれば、引用発明において、引用文献2に記載の技術事項より、 基材面上の片方には剥離層を形成するとともに、 引用文献1の【0010】「基体シートの折り込み形態、使用目的に応じて、接着層を表面と裏面の両面側、あるいは片面側の全面または一部に適宜設けても良く、」及び図5、特に、「3・・接着層」及び引用文献2に記載の技術事項より、 前記剥離層が形成された面を含む全面に、接着前は通常の状態では接着せず、少なくとも圧力により接着する感圧接着剤層を形成し、 引用文献1の【0007】「・・その印刷面に、剥離可能であって、・・」及び引用文献2に記載の技術事項より、 前記感圧接着剤層を対向接着させた後に剥離する構成となし、 さらに上記周知の技術事項より、 前記剥離層としてポリビニルアルコール樹脂と長鎖アルキルイソシアネート付加物とによる架橋物で形成されるようになすことは、当業者が容易に想到し得ることである。 したがって、相違点Aに係る本願発明の特定事項は、引用発明並びに引用文献1?2に記載の技術事項及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得ることである。 〈相違点B〉について 本願発明の〈相違点B〉に係る特定事項は、前記本願補正発明の〈相違点2〉に係る特定事項と同一であり、前記「第2 3.(3-4)〈相違点2〉について」に記載のとおり、引用発明並びに引用文献2?4及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得ることである。 したがって、相違点Bに係る本願発明の特定事項は、引用発明並びに引用文献2?4び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得ることである。 〈まとめ〉 このように、相違点Aと相違点Bとからなる相違点2’に係る本願発明の特定事項は、引用発明並びに引用文献1?4及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得ることである。 〈相違点3’〉について 引用文献5摘記〈ヒ〉【0012】?【0014】には、感圧接着剤層は、スチレン-ブタジエンゴムラテックス及びアクリロニトリル-ブタジエンゴムラテックスの群から選ばれたエマルジョンとして供給されるラテックスを主成分とするものが、 引用文献6摘記〈フ〉【0015】?【0018】には、感圧接着剤層は、スチレン-ブタジエンゴムラテックス及びアクリロニトリル-ブタジエンゴムラテックスの群から選ばれたエマルジョンとして供給されるラテックスを主成分とする旨が、加えて同摘記〈フ〉【0018】?【0020】には,天然ゴムラテックスは耐老化性と機械的安定性が悪い旨が, 引用文献7摘記〈ヘ〉【0009】には、「本発明に用いる接着成分は、ゴムラテックス系接着剤・・・・ゴムラテックス系接着剤としては、・・スチレン/ブタジエンゴム系ラテックス、ニトリルゴム系ラテックス・・」より、感圧接着剤層がスチレン/ブタジエンゴム系、ニトリルゴム系ラテックスを主成分とする旨が、引用文献7段落【0024】「・・(SBR系エマルジョン型粘着剤)・・」より、感圧接着剤層がスチレン/ブタジエンゴム系ラテックスエマルジョンを主成分とする旨が、 本願の出願前に頒布された刊行物である特開平1-292354号公報の3頁右上欄19行乃至左下欄下から4行には、接着剤としてブロッキング性の少ないエマルジョン及びラテックスとして、アクリルエマルジョン、スチレン-ブタジエンラテックス、アクリロニトリル-ブタジエンラテックスを用いる旨が、 本願の出願前に頒布された刊行物である特開平2-276696号公報の3頁左上欄9行乃至17行及び5頁右上欄3乃至4行には、感圧接着剤の粘着性材料として知られるエマルジョン系としては、アクリル樹脂とゴムラテックス系が使用できる旨が、 本願の出願前に頒布された刊行物である特開平8-48956号公報【0022】、【0049】及び【0055】「・・・天然ゴムラテックス(水系エマルジョン)・・」には、メールフォーム用の感圧粘着剤として、水系エマルジョンからなるゴムラテックスを用いる旨が、 本願の出願前に頒布された刊行物である特開平7-331594号公報【0011】には、ソープフリー乳化重合SBRラテックス及びソープフリー乳化重合NBRラテックスは防湿・防水を有することが、 本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭59-98186号公報の2頁右下欄2乃至10行には、ソープフリー乳化重合法によって得たアクリル樹脂エマルジョンが、同2頁右下欄5乃至12行には、ソープイン乳化重合法によって得たアクリル樹脂エマルジョンは、乳化剤の影響により、密着性が劣る旨が、 本願の出願前に頒布された刊行物である特開平7-290867号公報には、特に【0008】メールフォームに用いる感圧接着剤として、樹脂分としてSBR(スチレンブタジエンゴム)を、揮発分として水を用いる旨が、 本願の出願前に頒布された刊行物である特開平2-286764号公報には、2頁右上欄乃至2頁左下欄9行には、ゴム系感圧接着剤として、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴムを主成分とし、アクリル系感圧接着剤として、エマルジョン型がある旨が、3頁右下欄には、アクリル系樹脂を乳化重合法により合成する旨が、11頁左下欄9-10行には、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体などのラテックスが記載されている。 そうすると,感圧接着剤としてスチレン-ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル-ブタジエンゴムラテックス及びアクリル系樹脂ラテックスの群から選ばれものを主成分として用いることは、周知の技術事項である。 またソープフリー乳化重合SBR(スチレン-ブタジエンゴム)ラテックス又はソープフリー乳化重合NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)ラテックスは防湿・防水機能を有することは、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平7-331594号公報【0011】に記載の如く、周知の技術事項であり、 さらにソープフリー乳化重合法によって得たアクリル樹脂エマルジョンは、ソープイン乳化重合法によって得たアクリル樹脂エマルジョンに比べ、乳化剤による影響が少なく、密着性が優れていることは,上記特開昭59-98186号公報(2頁右下欄5乃至12行)に記載の如く、周知の技術事項である。 してみれば、引用発明において、引用文献6摘記〈フ〉【0018】?【0020】及び周知の技術事項より,感圧接着剤層として、スチレン-ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル-ブタジエンゴムラテックス、及びアクリル系樹脂ラテックスの群から選ばれ、ソープフリー乳化重合法によって得た水系エマルジョンとして供給されるラテックスを主成分とし用いるようになすことは、当業者が容易に想到し得ることである。 したがって、相違点3’に係る本願発明の特定事項は、引用発明並びに引用文献6及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得ることである。 〈まとめ〉 このように、相違点1’?4’に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明並びに引用文献1?9及び周知の技術事項に基づいて、当業者が想到容易な事項であり,これらの発明特定事項を採用したことによる本願発明の効果も当業者が容易に予測し得る程度のものである。 2-4.むすび 以上のとおり,本願発明は、引用発明並びに引用文献1?9及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 3.むすび 以上のとおり,本願請求項1の記載及び本願発明は,特許法第36条第6項第2号及び特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。 したがって,本願は拒絶を免れない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-03-13 |
結審通知日 | 2009-03-17 |
審決日 | 2009-03-30 |
出願番号 | 特願平8-119567 |
審決分類 |
P
1
8・
574-
WZ
(B42D)
P 1 8・ 575- WZ (B42D) P 1 8・ 537- WZ (B42D) P 1 8・ 573- WZ (B42D) P 1 8・ 121- WZ (B42D) P 1 8・ 572- WZ (B42D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 武田 悟 |
特許庁審判長 |
酒井 進 |
特許庁審判官 |
坂田 誠 菅野 芳男 |
発明の名称 | 感圧接着性フォーム |
代理人 | 金山 聡 |