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審決分類 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1200182
審判番号 不服2006-11930  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-09 
確定日 2009-07-09 
事件の表示 特願2000-12146「水素アニール処理方法及びその装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年7月27日出願公開,特開2001-203211〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成12年1月20日の出願であって,平成18年4月27日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年6月9日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同年7月7日付けで手続補正がなされ,その後,当審において,平成20年7月4日付けで審尋がなされ,同年9月5日に回答書が提出されたものである。


第2 平成18年7月7日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年7月7日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
ア 本件補正前の請求項
【請求項1】 反応室と,該反応室に水素ガスを供給する水素ガス導入ラインと,前記反応室に接続された減圧排気ラインと,該減圧排気ラインに設けられ,前記反応室を減圧する為の排気装置と,該排気装置の下流側に不活性ガスを供給し排気ガス中の水素濃度を所定値以下に希釈する排気希釈ラインとを具備し,前記排気装置を駆動させ,前記反応室が減圧された状態で,前記水素ガス導入ラインから水素ガスを前記反応室へ供給しつつ前記排気希釈ラインから前記排気装置の下流側に前記不活性ガスを供給し,排気ガス中の水素濃度を所定値以下に希釈することを特徴とする水素アニール処理方法。
【請求項2】 前記反応室に接続された常圧排気ラインを更に具備し,前記減圧排気ラインと前記常圧排気ラインとを切替えることにより,前記減圧排気ラインから排気する減圧水素アニール処理と前記常圧排気ラインから排気する常圧水素アニール処理とを選択して行う請求項1の水素アニール処理方法。
【請求項3】 前記反応室に接続された常圧排気ラインと,該常圧排気ラインに接続された水素ガス燃焼部と,前記反応室と前記排気装置の下流側とを連絡する連絡ラインとを更に具備し,前記減圧排気ラインと前記常圧排気ラインと前記連絡ラインとを切替えることにより,前記減圧排気ラインから排気する減圧水素アニール処理と前記常圧排気ラインから排気する常圧水素アニール処理と前記連絡ラインから排気する休止状態とを選択して行う請求項1の水素アニール処理方法。
【請求項4】 反応室と,該反応室に水素ガスを供給する水素ガス導入ラインと,前記反応室に接続された減圧排気ラインと,該減圧排気ラインに設けられ,前記反応室を減圧する為の排気装置と,該排気装置の下流側に不活性ガスを供給し,排気ガス中の水素濃度を所定値以下に希釈する排気希釈ラインとを具備することを特徴とする水素アニール処理装置。
【請求項5】 前記反応室に接続された常圧排気ラインと,該常圧排気ラインと前記減圧排気ラインと前記反応室との接続状態を切替える弁を更に具備する請求項4の水素アニール処理装置。
【請求項6】 前記反応室に接続された常圧排気ラインと,該常圧排気ラインに接続された水素ガス燃焼部と,前記反応室と前記排気装置の下流側とを連絡する連絡ラインと,前記常圧排気ラインと前記減圧排気ラインと前記連絡ラインと前記反応室との接続状態を切替える弁を更に具備する請求項4の水素アニール処理装置。
【請求項7】 減圧水素アニール処理に於ける圧力は1?750Torrである請求項4の水素アニール処理装置。
【請求項8】 前記排気装置の下流側に設けられたガス濃度検知器と,前記排気希釈ラインに設けられた流量コントローラを更に具備し,放出される水素濃度が4%以下となる様不活性ガス供給流量を制御する請求項4の水素アニール処理装置。
イ 本件補正後の請求項
【請求項1】 反応室と,該反応室に水素ガスを供給する水素ガス導入ラインと,前記反応室に接続された減圧排気ラインと,該減圧排気ラインに設けられ,前記反応室を減圧する為の排気装置と,該排気装置の下流側に不活性ガスを供給し排気ガス中の水素濃度を所定値以下に希釈する排気希釈ラインと,前記反応室に接続された常圧排気ラインと,該常圧排気ラインに接続された水素ガス燃焼部と,前記反応室と前記排気装置の下流側とを連絡する連絡ラインとを具備し,前記減圧排気ラインと前記常圧排気ラインと前記連絡ラインとを切替えることにより,前記排気装置を駆動させ,前記減圧排気ラインから排気することで前記反応室が減圧された状態で,前記水素ガス導入ラインから水素ガスを前記反応室へ供給しつつ前記排気希釈ラインから前記排気装置の下流側に前記不活性ガスを供給し,排気ガス中の水素濃度を所定値以下に希釈する減圧水素アニール処理と前記常圧排気ラインから排気する常圧水素アニール処理と前記連絡ラインから排気する休止状態とを選択して行うことを特徴とする水素アニール処理方法。
【請求項2】 反応室と,該反応室に水素ガスを供給する水素ガス導入ラインと,前記反応室に接続された減圧排気ラインと,該減圧排気ラインに設けられ,前記反応室を減圧する為の排気装置と,該排気装置の下流側に不活性ガスを供給し,排気ガス中の水素濃度を所定値以下に希釈する排気希釈ラインと,前記反応室に接続された常圧排気ラインと,該常圧排気ラインに接続された水素ガス燃焼部と,前記反応室と前記排気装置の下流側とを連絡する連絡ラインと,前記常圧排気ラインと前記減圧排気ラインと前記連絡ラインと前記反応室との接続状態を切替える弁とを具備することを特徴とする水素アニール処理装置。
【請求項3】 前記排気装置の下流側に設けられたガス濃度検知器と,前記排気希釈ラインに設けられた流量コントローラを更に具備し,放出される水素濃度が4%以下となる様不活性ガス供給流量を制御する請求項2の水素アニール処理装置。
ウ 本件補正は,特許請求の範囲と発明の詳細な説明を補正するものであり,そのうち,特許請求の範囲の補正については,以下のとおりである。
補正事項a
補正前の請求項1,2,4,5,7を,削除したこと。
補正事項b
補正前の請求項1を引用する補正前の請求項3を,独立請求項にして,補正後の請求項1に繰り上げ,「【請求項1】 反応室と,該反応室に水素ガスを供給する水素ガス導入ラインと,前記反応室に接続された減圧排気ラインと,該減圧排気ラインに設けられ,前記反応室を減圧する為の排気装置と,該排気装置の下流側に不活性ガスを供給し排気ガス中の水素濃度を所定値以下に希釈する排気希釈ラインと,前記反応室に接続された常圧排気ラインと,該常圧排気ラインに接続された水素ガス燃焼部と,前記反応室と前記排気装置の下流側とを連絡する連絡ラインとを具備し,前記減圧排気ラインと前記常圧排気ラインと前記連絡ラインとを切替えることにより,前記排気装置を駆動させ,前記減圧排気ラインから排気することで前記反応室が減圧された状態で,前記水素ガス導入ラインから水素ガスを前記反応室へ供給しつつ前記排気希釈ラインから前記排気装置の下流側に前記不活性ガスを供給し,排気ガス中の水素濃度を所定値以下に希釈する減圧水素アニール処理と前記常圧排気ラインから排気する常圧水素アニール処理と前記連絡ラインから排気する休止状態とを選択して行うことを特徴とする水素アニール処理方法。」と補正したこと。
補正事項c
補正前の請求項4を引用する補正前の請求項6を,独立請求項にして,補正後の請求項2に繰り上げ,「【請求項2】 反応室と,該反応室に水素ガスを供給する水素ガス導入ラインと,前記反応室に接続された減圧排気ラインと,該減圧排気ラインに設けられ,前記反応室を減圧する為の排気装置と,該排気装置の下流側に不活性ガスを供給し,排気ガス中の水素濃度を所定値以下に希釈する排気希釈ラインと,前記反応室に接続された常圧排気ラインと,該常圧排気ラインに接続された水素ガス燃焼部と,前記反応室と前記排気装置の下流側とを連絡する連絡ラインと,前記常圧排気ラインと前記減圧排気ラインと前記連絡ラインと前記反応室との接続状態を切替える弁とを具備することを特徴とする水素アニール処理装置。」と補正したこと。
補正事項d
補正前の請求項8を,補正後の請求項3に繰り上げ,補正前の請求項8の「請求項4の」を,補正後の請求項3の「請求項2の」と補正したこと。

2 本件補正の補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無についての検討
以下,補正事項aないしdのうち,補正事項dについて検討する。
補正事項dについての補正は,補正前の請求項8を,補正後の請求項3に繰り上げ,補正前の請求項8の「請求項4の」を,補正後の請求項3の「請求項2の」と補正したものである。
そして,補正後の請求項3が引用する補正後の請求項2は,補正前の請求項4を引用する補正前の請求項6を,独立請求項にしたものであるから,補正後の請求項2を引用する補正後の請求項3は,補正後の請求項2の内容である,補正前の請求項4と補正前の請求項6の内容の他に,補正前の請求項8の内容を有するものである。
しかしながら,補正前の請求項8は,補正前の請求項4を引用するものであり,補正前の請求項6を引用するものではないから,補正後の請求項3は,補正前の請求項8と比べて,補正前の請求項8にはない,補正前の請求項6の内容部分が追加されていることになる。
すると,補正後の請求項3は,補正前の請求項6の内容部分が追加されていることについては,新たな発明特定事項の追加となっており,補正前の請求項8の発明特定事項の限定とはなっていない。
したがって,補正事項dについての補正は,限定的減縮とはなっていないので,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。また,補正事項dについての補正は,請求項の削除,誤記の訂正,拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかである。

3 まとめ
よって,補正事項dについての補正を含む本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明について
平成18年7月7日付けの手続補正は,上記の「第2」のとおり却下されたので,本願の請求項1ないし8に係る発明は,平成17年12月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ,そのうち,本願の請求項4に係る発明は,以下のとおりのものである。
「【請求項4】 反応室と,該反応室に水素ガスを供給する水素ガス導入ラインと,前記反応室に接続された減圧排気ラインと,該減圧排気ラインに設けられ,前記反応室を減圧する為の排気装置と,該排気装置の下流側に不活性ガスを供給し,排気ガス中の水素濃度を所定値以下に希釈する排気希釈ラインとを具備することを特徴とする水素アニール処理装置。」

2 引用刊行物に記載された発明
刊行物1.特開平9-235189号公報
原審の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物1(特開平9-235189号公報)には,図1,図2とともに,「半導体単結晶薄膜の製造方法」(発明の名称)に関して,以下の事項が記載されている。
ア 「【0002】
【従来の技術】例えばシリコン単結晶基板上にシリコン単結晶からなる薄膜を気相成長により形成する場合,図4に示す装置を使用し,図5に示すように前処理工程,気相成長工程の順に操作が行われる。
(1)前処理工程(基板表面のシリコン酸化膜除去工程):透明石英ガラスからなる反応容器11の容器壁1内に,この容器壁1と平行にシリコン単結晶基板2をサセプタ10上に載置し,反応容器11に窒素ガスを供給して容器11内の空気を追い出す。つぎに,窒素ガスを水素ガスで追い出した後さらに水素ガスを供給しながら,容器壁1の上下に設けた輻射加熱装置3により基板2を加熱して前処理に適した温度に所定時間維持する。この場合,基板2から発する輻射光を輻射温度計5で捉え,その強度を計算機6に送って温度に換算し,この測定温度を温度制御器7に送ることにより,輻射加熱装置3に必要な電力を与える。通常,前処理工程では,基板2の温度を気相成長工程における温度より高めに設定・維持し,反応容器11内の圧力を気相成長時と同じ圧力に維持する。
【0003】空気中の酸素によって既に基板表面に形成されていた自然酸化膜,すなわちシリコン酸化膜(または,意図的に形成されたシリコン酸化膜)は,この前処理工程において例えば高温の水素ガスにより還元されて除去される。あらかじめ基板の表面上に形成されたシリコン酸化膜を除去しておくことで,気相成長工程において結晶性の揃ったシリコン単結晶薄膜を形成することができる。」
イ 「【0013】
【実施例】つぎに,本発明の構成および作用効果を図面に示す実施例により説明する。
実施例1
図1は,半導体単結晶薄膜の製造工程および気圧の変化を示すグラフである。図2に示すように透明石英ガラスからなる反応容器11を水平方向に配置し,反応容器11の容器壁1内に,この容器壁1と平行に(すなわち水平方向に)シリコン単結晶基板2をサセプタ10上に載置した。基板2は,ドーパントとしてボロン(B)を6×10^(24)atoms/m^(3) の濃度に含有するものを使用した。
【0014】反応容器11のガス排出側には排気配管が接続され,この排気配管は途中で2本に分岐している。この分岐管のうち1本は,真空排気装置に接続された真空排気管として設けられ,他の1本は常圧排気装置に接続されて常圧排気管となっている。上記真空排気管には,自動操作により開度調節が可能な圧力制御弁が設けられ,上記常圧排気管には自動操作により開度調節が可能な開閉弁が直列に設けられている。
【0015】反応容器11にまず,窒素ガスをガス供給口から供給して反応容器11内の空気を追い出した(N_(2) パージ工程)。このときの排気は,上記常圧排気装置により行った。つぎに,窒素ガスの供給を停止し,上記真空排気装置により反応容器11内の気圧を0.1気圧すなわち76Torr(絶対圧)に減圧しながら,反応容器11内にガス供給口から水素ガスの供給を開始した(H_(2) パージ工程)。気圧の調節は上記圧力制御弁により行った。続いて,水素ガスを供給しながら輻射加熱装置3により,基板2を前処理に適した温度1190℃まで加熱した(昇温工程)。加熱中は上記従来法と同じく,基板2から発する輻射光を輻射温度計5で捉え,その強度を計算機6に送って温度に換算し,この測定温度を温度制御器7に送ることにより,輻射加熱装置3に必要な電力を与えた。
【0016】つぎに,基板2を水素雰囲気中で1190℃に1.5分間維持して基板の主表面のシリコン酸化膜を除去した(前処理工程)後,該前処理工程終了後から気相成長工程開始までの間に,基板2の温度を1100℃に降温させるのと並行して,反応ガス4の供給側に接続された水素タンク8の流量制御弁9を徐々に開けて大量の水素ガスを反応容器11に導入することにより,反応容器11内の気圧を1気圧(絶対圧)まで昇圧させた。水素タンク8には図示しない水素供給管と圧力制御弁が設置され,水素タンク8内の気圧をほぼ1気圧で一定に保つようにしている。これらの操作は1分間かけて行った(パージ工程)。気圧の増加は短時間に行うことが好ましく,5分以内に終了すると効果が大きい。この場合,水素タンク8から大量の水素ガスを導入するかわりに,ガス供給口から供給する水素ガスの流量を急峻に増加させて反応容器11内の気圧を1気圧まで昇圧させてもよい。さらに,排気装置の使用を真空排気装置から常圧排気装置に切り替えることにより昇圧させてもよい。反応容器11内が1気圧まで昇圧した後は,薄膜成長を行う圧力,例えば76Torrまで再度減圧した。」

以上の記載から,刊行物1には,半導体単結晶薄膜の製造の前処理に用いる装置として,以下の発明が記載されている。
「反応容器11と,前記反応容器11内にガス供給口から水素ガスを供給する手段と,前記反応容器11のガス排出側に接続され,真空排気装置に接続された真空排気管とを具備することを特徴とする水素雰囲気中で基板の主表面のシリコン酸化膜を除去する装置。」

刊行物2.特開平10-79354号公報
原審の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物2(特開平10-79354号公報)には,「熱処理炉のガス排出方法およびガス排出装置」(発明の名称)に関して,以下の事項が記載されている。
ア 「【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】例えば半導体ウェハに不純物の拡散を行う拡散炉等の熱処理炉において,アニーリングに際して雰囲気ガスやCVD用ガスとして使用される水素ガス等は,爆発性を有する可燃ガスであることから,使用後にそのまま炉外に排出することはできない。
【0003】そこで,そのような爆発性を有する可燃ガスを,排気中の濃度が一定値以下になるように窒素ガス等の不活性ガスにより希釈した後に炉外に排出することが行われている。しかし,この方法では熱処理中は常に可燃ガスを希釈する必要があるため,大量の不活性ガスが消費されることになり,無視できないランニングコストが付加される。」

3 対比
本願の請求項4に係る発明(以下,「本願発明4」という。)と刊行物1に記載された発明(以下,「刊行物1発明」という。)とを対比する。
(a)刊行物1発明の「反応容器11」は,本願発明4の「反応室」に相当する。
(b)刊行物1発明の「前記反応容器11内にガス供給口から水素ガスを供給する手段」において,刊行物1発明の「前記反応容器11内にガス供給口から水素ガスを供給する」ことは,本願発明4の「該反応室に水素ガスを供給する」ことに相当するので,刊行物1発明の「前記反応容器11内にガス供給口から水素ガスを供給する手段」は,本願発明4の「該反応室に水素ガスを供給する水素ガス導入ライン」に相当する。
(c)刊行物1発明の「前記反応容器11のガス排出側に接続され,真空排気装置に接続された真空排気管」における,刊行物1発明の「前記反応容器11のガス排出側に接続され」「た真空排気管」は,本願発明4の「前記反応室に接続された減圧排気ライン」に相当する。
(d)刊行物1発明の「前記反応容器11のガス排出側に接続され,真空排気装置に接続された真空排気管」における,刊行物1発明の「真空排気装置」は,本願発明4の「該減圧排気ラインに設けられ,前記反応室を減圧する為の排気装置」に相当する。
(e)刊行物1発明の「水素雰囲気中で基板の主表面のシリコン酸化膜を除去する装置」において,「水素雰囲気中で基板の主表面のシリコン酸化膜を除去する」ことは,刊行物1の摘記事項アに「空気中の酸素によって既に基板表面に形成されていた自然酸化膜,すなわちシリコン酸化膜(または,意図的に形成されたシリコン酸化膜)は,この前処理工程において例えば高温の水素ガスにより還元されて除去される。」(段落【0003】)と記載されているように,水素アニール処理のことであることは明らかであるから,刊行物1発明の「水素雰囲気中で基板の主表面のシリコン酸化膜を除去する装置」は,本願発明4の「水素アニール処理装置」に相当する。

すると,本願発明4と刊行物1発明とは,
「反応室と,該反応室に水素ガスを供給する水素ガス導入ラインと,前記反応室に接続された減圧排気ラインと,該減圧排気ラインに設けられ,前記反応室を減圧する為の排気装置とを具備することを特徴とする水素アニール処理装置。」の点で一致し,以下の点で相違する。

相違点
本願発明4は,「該排気装置の下流側に不活性ガスを供給し,排気ガス中の水素濃度を所定値以下に希釈する排気希釈ライン」を具備するのに対して,刊行物1発明は,本願発明4の「該排気装置の下流側に不活性ガスを供給し,排気ガス中の水素濃度を所定値以下に希釈する排気希釈ライン」を具備していない点。

4 当審の判断
以下において,相違点について検討する。
(a)刊行物2の摘記事項アには,「例えば半導体ウェハに不純物の拡散を行う拡散炉等の熱処理炉において,アニーリングに際して雰囲気ガスやCVD用ガスとして使用される水素ガス等は,爆発性を有する可燃ガスであることから,使用後にそのまま炉外に排出することはできない」(段落【0002】)こと,「爆発性を有する可燃ガスを,排気中の濃度が一定値以下になるように窒素ガス等の不活性ガスにより希釈した後に炉外に排出することが行われている。」(段落【0003】)ことが,従来の技術として記載されている。
(b)そして,上記の(a)に記載の「爆発性を有する可燃ガス」である「水素ガス」を,「排気中の濃度が一定値以下になるように窒素ガス等の不活性ガスにより希釈」することは,本願発明4の「不活性ガスを供給し,排気ガス中の水素濃度を所定値以下に希釈する」ことに相当し,かつ,本願発明4の「不活性ガスを供給し,排気ガス中の水素濃度を所定値以下に希釈する排気希釈ライン」に相当する。
(c)また,上記の(a)に記載の「爆発性を有する可燃ガス」である「水素ガス」を,「排気中の濃度が一定値以下になるように窒素ガス等の不活性ガスにより希釈」することは,「アニーリングに際して雰囲気ガスやCVD用ガスとして使用される水素ガス」(段落【0002】)の排気を炉外に排出するまでの,いずれの場所で行うこともできるものと認められるとともに,刊行物2には,「窒素ガス等の不活性ガスにより希釈した後に炉外に排出する」(段落【0003】)と記載されており,「窒素ガス等の不活性ガスにより希釈した後」で,「炉外に排出する」までの間に,特別な装置,例えば,刊行物1に記載の「真空排気装置」等を設けるとは記載されていないことから,刊行物2には,上記の(a)に記載の「爆発性を有する可燃ガス」である「水素ガス」を,「排気中の濃度が一定値以下になるように窒素ガス等の不活性ガスにより希釈」することが,熱処理炉を拡散炉等として使用するときの減圧雰囲気中で行われるものではなく,「炉外に排出する」手前の常圧,又は常圧に近い雰囲気中で行われるものであることが,示唆されている。
(d)すると,刊行物1発明及び刊行物2の従来の技術は共に水素アニールに関するものであるから,刊行物1発明において,常圧,又は常圧に近い雰囲気であると認められる「真空排気装置」の下流側に,刊行物2に従来の技術として記載の,「爆発性を有する可燃ガス」である「水素ガス」を「排気中の濃度が一定値以下になるように窒素ガス等の不活性ガスにより希釈」することを適用して,本願発明4のごとく,「該排気装置の下流側に不活性ガスを供給し,排気ガス中の水素濃度を所定値以下に希釈する排気希釈ライン」を具備するようになすことは,当業者が適宜なし得た程度のことと認められる。

したがって,本願の請求項4に係る発明は,刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上のとおり,本願の請求項4に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので,本願の他の請求項に係る発明についての検討をするまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-30 
結審通知日 2009-05-12 
審決日 2009-05-25 
出願番号 特願2000-12146(P2000-12146)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H01L)
P 1 8・ 574- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 571- Z (H01L)
P 1 8・ 573- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 萩原 周治  
特許庁審判長 河合 章
特許庁審判官 安田 雅彦
廣瀬 文雄
発明の名称 水素アニール処理方法及びその装置  
代理人 三好 祥二  

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