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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1201317
審判番号 不服2007-5509  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-02-22 
確定日 2009-07-31 
事件の表示 平成 7年特許願第126271号「真空排気装置、半導体製造装置及び真空処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年12月 3日出願公開、特開平 8-321448〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成7年5月25日の出願であって、平成19年1月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

第2 本願発明について
本願の請求項1ないし21に係る発明は、平成18年10月30日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし21に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、本願の請求項3に係る発明は、以下のとおりである。
「【請求項3】
真空室の内部を排気する排気装置であって、ターボ分子ポンプと該ターボ分子ポンプの排気側に接続された補助ポンプとから構成され、前記ターボ分子ポンプと前記補助ポンプとの間に所定のガスを導入するためのガス導入部を設け、該導入部から所定のガスを導入しながら、前記真空室の内部を排気して、パーティクルが前記真空室へ逆拡散するのを防止した構成としたことを特徴とする真空排気装置。」

第3 引用刊行物及び該引用刊行物記載の発明
刊行物1.特開平1-219367号公報
原審の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物1(特開平1-219367号公報)には、第1図ないし第5図、第9図とともに、「真空排気装置」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
ア 「〔産業上の利用分野〕
本発明は、分子ポンプと油回転ポンプ又は分子ポンプとメカニカルブースタおよび油回転ポンプの組合せを排気ポンプとする真空排気装置に係り、特に被排気側の油汚染を防止するのに好適な真空排気装置に関する。
[従来の技術〕
第9図は実開昭52-96408号公報に記載された分子ポンプとメカニカルブースタおよび油回転ポンプの組合せを排気ポンプとする従来の真空排気装置の一例で示したものである。同図において真空容器1を排気する際、真空容器1の体積が大きいか、又はガス負荷が大きい場合には、本排気ポンプである分子ポンプ2は大型となり十分に低い圧力でしか作動できないので、真空容器1内の圧力を分子ポンプ2が運転できる圧力まで粗引きすることが必要になる。そこで、まず粗引きバルブ3を開きメカニカルブースタ5と油回転ポンプ6にて真空容器1を排気する。真空容器1内の圧力が分子ポンプ2が十分作動する圧力まで低くなつたら粗引きバルブ3を閉じ、分子ポンプ吐出バルブ8を開き、本排気バルブ9を開いて本排気を行なう。排気ポンプの停止時には本排気バルブ9を閉じ、ガスリークバルブ10を開いてノズル11により排気ポンプに使われている油よりも離脱エネルギの小さい気体をリークさせて停止させる。
なお第9図において、12は本排気配管、13は粗引き配管、15は分子ポンプ吐出配管である。
〔発明が解決しようとする課題〕
近年真空排気装置の真空容器1に関しては、排気に用いる排気ポンプの油の逆拡散による真空容器1内の油汚染が問題となつている。特に到達圧力付近で作動している油回転ポンプ6では油の逆拡散が激しく発生している。この油汚染の発生源である油回転ポンプ6の油の逆拡散を低減させれば、真空容器1内の油汚染を低減させることができる。」(第1頁左下欄第19行ないし第2頁左上欄第15行)
イ 「〔実施例〕
以下、本発明を図面に示す実施例に基いて説明する。
第1図は本発明の第1実施例に係り、第9図に示す従来装置と同一又は同等の部分には同一符号を付して説明する。
真空容器1には、気体を導入するためのリークバルブ21、本排気配管12および粗引き配管13が連結されている。本排気配管12の他端は本排気ポンプである分子ポンプ2に連結されている。本排気配管12の途中には本排気バルブ9が設けらている。分子ポンプ2の吐出口には分子ポンプ吐出配管15が連結されており、この分子ポンプ吐出配管15の途中には分子ポンプ吐出バルブ8が設けられている。分子ポンプ吐出配管15の他端は油回転ポンプ6に連結されている。また粗引き配管13の他端は分子ポンプ吐出バルブ8と油回転ポンプ6との間の分子ポンプ吐出配管15に連結されている。また粗引き配管13の途中には粗引きバルブ3が設けられている。油回転ポンプ6の吐出口には油回転ポンプ吐出配管22が設けらている。
パージガス微小流量供給機構23は、油回転ポンプ6の吸込口側、すなわち上流側、駒の実施例では粗引き配管13が分子ポンプ吐出配管15と連結する点と油回転ポンプ6との間に設けられており、分子ポンプ吐出配管15に連結されたパージガス配管25と、このパージガス配管25に上流側より順次設けられた微小流量オリフイス26およびフイルタ28とから構成されている。」(第2頁右下欄第9行ないし第3頁左上欄第18行)
ウ 「また本排気時には油回転ポンプ6は分子ポンプ2の後段排気をしているが、分子ポンプ2が到達圧力付近となると油回転ポンプ6もその到達圧力付近の圧力で作動することになり油回転ポンプ6に使われている油は分子ポンプ2の吐出側に激しく逆拡散して分子ポンプ2内の吐出側を汚染する。」(第3頁右上欄第17行ないし同頁左下欄第3行)
エ 「上記のような油回転ポンプ6が到達圧力付近で作動するときに発生する逆拡散による油汚染を防止するため、真空容器1の粗引き時、分子ポンプ2の本排気時、粗引き時、再生時には、パージガス微小流量供給機構23により油回転ポンプ6で排気する始めから微量のパージガスを油回転ポンプ6の上流側より流す。本実施例ではパージする気体としてフイルタ28を通して清浄な空気を使用しており、この清浄な空気は微小オリフイス26,パージガス配管25を通つて油回転ポンプ6の上流側へとパージされる。
なおパージするガスは、化学的に安定な不活性ガスが好ましいが、窒素ガス又は油分を含まない清浄な空気などでも十分効果があり、実験の結果では分子量の大きいガス程少ない流量で効果があることが表1に示すように立証されている。」(第3頁左下欄第15行ないし同頁右下欄第10行)
オ 「第5図は本発明の第2実施例に係り、本発明を真空容器1の体積が少ない場合、すなわち、ガス負荷の小さい場合に適用した他の実施例である。この実施例ではガス負荷が小さいため分子ポンプ2が作動できる圧力となる粗引き時間が短いので粗引きは分子ポンプ2も粗引き過程時に運転したまま本排気バルブ9を開き、本排気配管12を通して行なうことができる。そのため本実施例では粗引き配管系を省くことができる装置が簡単になるという特徴がある。」(第4頁左下欄第7行ないし第16行)
カ 上記摘記事項イの「パージガス微小流量供給機構23は、油回転ポンプ6の吸込口側、すなわち上流側、駒の実施例では粗引き配管13が分子ポンプ吐出配管15と連結する点と油回転ポンプ6との間に設けられており」という記載と第5図とを参照すると、パージガス微小流量供給機構23は、分子ポンプ2の吐出側と油回転ポンプ6の上流側との間に設けられていることが、示されている。

以上の記載から、刊行物1には、以下の発明が記載されている。
「真空容器1と、前記真空容器1に連結された分子ポンプ2と、前記分子ポンプ2の吐出側に連結された油回転ポンプ6と、前記分子ポンプ2の吐出側と前記油回転ポンプ6の上流側との間に設けられ、不活性ガス、或いは、窒素ガスをパージガスとして用いるパージガス微小流量供給機構23とを有し、本排気時に前記パージガスを前記油回転ポンプ6の上流側より流して前記油回転ポンプ6の油の逆拡散による前記真空容器1内の油汚染を防止することを特徴とする真空排気装置。」

第4 対比
本願の請求項3に係る発明(以下、「本願発明3」という。)と刊行物1に記載された発明(以下、「刊行物1発明」という。)とを対比する。
刊行物1発明の「真空容器1」、「分子ポンプ2」、「油回転ポンプ6」、「不活性ガス、或いは、窒素ガス」、「パージガス微小流量供給機構23」は、それぞれ、本願発明3の「真空室」、「分子ポンプ」、「補助ポンプ」、「所定のガス」、「ガス導入部」に相当し、また、刊行物1発明は、「真空排気装置」であるので、刊行物1発明の「真空容器1と、前記真空容器1に連結された分子ポンプ2と、前記分子ポンプ2の吐出側に連結された油回転ポンプ6と、前記分子ポンプ2の吐出側と前記油回転ポンプ6の上流側との間に設けられ、不活性ガス、或いは、窒素ガスをパージガスとして用いるパージガス微小流量供給機構23」は、本願発明3の「真空室の内部を排気する排気装置であって、」「分子ポンプと該」「分子ポンプの排気側に接続された補助ポンプとから構成され、前記」「分子ポンプと前記補助ポンプとの間に所定のガスを導入するためのガス導入部を設け」たことに相当する。
すると、本願発明3と刊行物1発明とは、
「真空室の内部を排気する排気装置であって、分子ポンプと該分子ポンプの排気側に接続された補助ポンプとから構成され、前記分子ポンプと前記補助ポンプとの間に所定のガスを導入するためのガス導入部を設けたことを特徴とする真空排気装置。」である点で一致し、以下の点で、一応相違する。

相違点1
本願発明3は、「ターボ分子ポンプ」を備えているのに対して、刊行物1発明は、「分子ポンプ2」を備えている点。
相違点2
本願発明3は、「該導入部から所定のガスを導入しながら、前記真空室の内部を排気して、パーティクルが前記真空室へ逆拡散するのを防止した構成」を備えているのに対して、刊行物1発明は、「本排気時に前記パージガスを前記油回転ポンプ6の上流側より流して前記油回転ポンプ6の油の逆拡散による前記真空容器1内の油汚染を防止する」構成を備えている点。

第5 当審の判断
相違点1について
(a)刊行物1発明の「分子ポンプ」は、本願発明3の「ターボ分子ポンプ」の上位概念であり、「分子ポンプ」には、「ターボ分子ポンプ」が含まれており、また、例えば、以下の周知文献1に記載されているように、真空排気装置において、「ターボ分子ポンプ」を用いることは、周知技術であり、「分子ポンプ」といえば、「ターボ分子ポンプ」が、一般的に使用されている。
よって、相違点1については、本願発明3と刊行物1発明は、実質的には相違していない。
周知文献1.実願昭63-13916号(実開平1-118190号)のマイクロフィルム(原審の拒絶理由通知に引用)(第4図、及び、明細書第2頁第12ないし17行、明細書第3頁第13ないし16行の記載を参照)には、「従来、主として10^(-1)Paより低圧の清浄な高真空領域を得る手段としては、・・・気体輸送式のターボ分子ポンプを用いる手段が実用されている」(明細書第2頁第12ないし17行)こと、「また、第4図の手段は、補助真空ポンプ22から油分子が逆流しない様に該補助真空ポンプ22の前段側にパージガスの導入手段30eを設けたものである。」(明細書第3頁第13ないし16行)ことが、記載されている。
(b)仮に、相違点1が、相違しているとしても、刊行物1発明の「分子ポンプ2」として、上記(a)に記載の周知技術である、「ターボ分子ポンプ」を採用することは、当業者が適宜なし得たことである。

相違点2について
(a)刊行物1発明は、「本排気時に前記パージガスを前記油回転ポンプ6の上流側より流して」いるので、「本排気時に」、「油汚染」の原因である「油」は、「パージガス」により押し流されて、「油回転ポンプ6」から排気されるという原理で、「前記油回転ポンプ6の油の逆拡散による前記真空容器1内の油汚染を防止」しているものと認められる。一方、本願の明細書の「【0017】この理由の詳細は現在のところ明らかでないが、次のように考えられる。即ち、ターボ分子ポンプと補助ポンプの間に不活性ガスを導入することにより、ターボ分子ポンプの排気側と補助ポンプの間は、分子流領域から粘性流領域となってターボ分子ポンプで一旦真空室外に排気されたプロセスガス分子はそのまま粘性流によって移動し補助ポンプで排気されるため、逆拡散が起こり難くなるためと考えられる。」の記載を参照すると、本願発明3の「該導入部から所定のガスを導入しながら、前記真空室の内部を排気して、」「前記真空室へ逆拡散するのを防止した構成」においては、「所定のガス」により「パーティクル」が「補助ポンプ」側へ押し流されるものと解される。したがって、刊行物1発明と本願発明3の逆拡散防止の原理は同等であると認められる。
(b)また、刊行物1発明の「油汚染」の「油」は、本願発明3の「パーティクル」に相当する。
(c)よって、上記(a)、(b)の記載によると、刊行物1発明の「本排気時に前記パージガスを前記油回転ポンプ6の上流側より流して前記油回転ポンプ6の油の逆拡散による前記真空容器1内の油汚染を防止する」ことは、本願発明3の「該導入部から所定のガスを導入しながら、前記真空室の内部を排気して、パーティクルが前記真空室へ逆拡散するのを防止した構成」に相当するから、相違点2については、本願発明3と刊行物1発明は、実質的には相違していない。
(d)仮に、上記(b)の記載とは異なり、刊行物1発明の「油汚染」の「油」が、本願発明3の「パーティクル」に相当しないとしても、以下のとおりである。
(d-1)上記(a)に記載のように、刊行物1発明において、「本排気時に」、「油汚染」の原因である「油」が、「パージガス」により押し流される際に、前記油回転ポンプ6の上流側に、油ではない何らかのパーティクルが存在すれば、油と同様に、「パージガス」により押し流されることは、明らかであり、刊行物1発明のように「本排気時に前記パージガスを前記油回転ポンプ6の上流側より流して前記油回転ポンプ6の油の逆拡散による前記真空容器1内の油汚染を防止する」ことにより、本願発明3と同様に、「該導入部から所定のガスを導入しながら、前記真空室の内部を排気して、パーティクルが前記真空室へ逆拡散するのを防止」していることは、明らかであるから、相違点2については、本願発明3と刊行物1発明は、実質的には相違していない。
(d-2)また、上記(a)に記載のように、刊行物1発明において、「本排気時に」、「油汚染」の原因である「油」が、「パージガス」により押し流される際に、前記油回転ポンプ6の上流側に、油ではない何らかのパーティクルが存在すれば、油と同様に、「パージガス」により押し流されることは、明らかであるから、刊行物1発明の「本排気時に前記パージガスを前記油回転ポンプ6の上流側より流して前記油回転ポンプ6の油の逆拡散による前記真空容器1内の油汚染を防止する」際に、油ではない何らかのパーティクルの存在を考慮して、本願発明3の如く、「該導入部から所定のガスを導入しながら、前記真空室の内部を排気して、パーティクルが前記真空室へ逆拡散するのを防止した構成」を備えるようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。

したがって、本願の請求項3に係る発明は、刊行物1に記載された発明であり、仮に、そうでないとしても、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項3に係る発明は、特許法第29条第1項第3号の発明に該当し、また、平成18年8月24日付けの拒絶理由通知の理由2.で示したとおり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明についての検討をするまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-28 
結審通知日 2009-06-03 
審決日 2009-06-17 
出願番号 特願平7-126271
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 113- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北島 健次  
特許庁審判長 橋本 武
特許庁審判官 小野田 誠
河合 章
発明の名称 真空排気装置、半導体製造装置及び真空処理方法  
代理人 福森 久夫  

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