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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1201625
審判番号 不服2006-8741  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-02 
確定日 2009-08-05 
事件の表示 平成10年特許願第233085号「水中油型化粧料」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 2月29日出願公開、特開2000- 63234〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年8月19日の出願であって、平成18年3月24日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月2日付で拒絶査定に対する審判請求が請求され、同年5月16日付の手続補正書により手続補正がなされたものである。

2.平成18年5月16日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年5月16日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
平成18年5月16日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1について、
「【請求項1】
次の成分(a)?(c);
(a)次の一般式(1)又は(2)で表されるセラミド
【化1】

【化2】

(b)アクリルアミドと2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の架橋コポリマー
(c)リン脂質
を含有することを特徴とする水中油型化粧料。」を、
「【請求項1】
次の成分(a)?(c);
(a)次の一般式(1)又は(2)で表されるセラミド
【化1】

【化2】


(b)アクリルアミドと2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の架橋コポリマー
(c)リン脂質
を含有することを特徴とする水中油型化粧料(ただし、リポソーム構造を有するものを除く)。」とする補正を含むものである。

上記請求項1についての補正は、水中油型化粧料に関し、「ただし、リポソーム構造を有するものを除く」を付記して、水中油型化粧料の形態を限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(2)引用例の記載の概要
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開昭63-192703号公報(以下、「引用例A」という。)、及び特開平10-182364号公報(以下、「引用例B」という。)には、次の記載がある。

引用例A;
(a-i)「【特許請求の範囲】
1、次の成分(A)及び(B)、
(A)一般式( I )

(式中、R^(1)及びR^(2)は1個以上の水酸基が置換することのある炭素数10?26の直鎖若しくは分岐鎖の飽和若しくは不飽和の炭化水素基を示す)
で表わされるセラミド又はその類似構造物質の一種又は二種以上、
(B)コレステロール、コレステロール脂肪酸エステル、脂肪酸、トリグリセリド、セレブロシド又はリン脂質の一種又は二種以上、
を含有することを特徴とする皮膚外用剤。」(特許請求の範囲の請求項1、1頁左下欄5行?同頁右下欄3行)
(a-ii)「リン脂質には、大別するとグリセリン誘導体であるグリセロリン脂質とセラミド誘導体であるスフィンゴリン脂質があるが、本発明にはその何れに含まれるものも使用できる。」(4頁左上欄2?5行)
(a-iii)「本発明の皮膚外用剤は、その使用形態において、薬用皮膚外用剤と化粧料に大別される。
…化粧料として使用する場合は、必須成分の他に化粧料成分として一般に使用されている油分、保湿剤、紫外線吸収剤、アルコール類、キレート剤、pH調整剤、防腐剤、増粘剤、色素、香料等を任意に組合せて配合することができる。
化粧料としては、種々の形態、例えば水/油、油/水型乳化化粧料、クリーム、化粧乳液、化粧水、油性化粧料、口紅、ファウンデーション、皮膚洗浄剤、ヘアートニック、整髪剤、養毛剤、育毛剤等の皮膚化粧料とすることができる。」(4頁右下欄3行?5頁左上欄7行)

引用例B;
(b-i)実施例2として
-ベンゼン-1,4-[ジ(3-メチリデンカンファー
-10-スルホン酸)] 1gAM
-2-N-オレオイルアミノオクタデカン-1,3-ジオール 1g
-ポリアクリルアミド(SeppicよりSepigel 305) 2gAM
-ジメチコノールとシクロメチコン(ダウコーニングよりQ2-1401)
混合物(重量で13/87) 10g
-保存料、香料 適量
-水 合計で100gとなる量
からなるリンス組成物が記載されている。(【0041】、10頁17?18欄1?11行)

(3)対比、判断
引用例Aの(a-i)に記載の皮膚外用剤(以下、引用例発明という。)の成分(A)の一般式(I)のセラミドは、本願発明の成分(a)の一般式(1)で表されるセラミドと同一の化学式で表されるセラミドを含むものであり、置換基R^(1)及びR^(2)の炭素数は10?26であり、本願発明の置換基R^(1)及びR^(2)の炭素数6?28と重複する。
そこで、本願補正発明と引用例発明を対比すると、両発明は、
「次の成分(A)及び(B)、
(A)一般式( I )

(式中、R^(1)及びR^(2)は1個以上の水酸基が置換することのある炭素数10?26の直鎖若しくは分岐鎖の飽和若しくは不飽和の炭化水素基を示す)
で表わされるセラミド
(B)リン脂質
を含有することを特徴とする皮膚外用剤」
である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
1.本願補正発明では、皮膚外用剤の形態が水中油型化粧料であるのに対し、引用例発明では皮膚外用剤の形態について特定されていない点
2.本願補正発明では、形態を、「ただし、リポソーム構造を有するものを除く」と特定しているのに対し、引用例発明では、形態を特定していない点
3.本願補正発明では、「アクリルアミドと2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の架橋コポリマー」を含有するのに対し、引用例発明では、この成分を含有することが特定されていない点

そこで、これらの相違点について検討する。

<相違点1>について
引用例Aには、「本発明の皮膚外用剤は、その使用形態において、薬用皮膚外用剤と化粧料に大別される。化粧料としては、種々の形態、例えば油/水型乳化化粧料とすることができる。」(a-iii)と記載されている。
してみれば、引用例発明において、皮膚外用剤の形態を水中油型化粧料とすることは当業者であれば容易になし得ることである。

<相違点2>について
リポソームを形成させるためには、高圧ホモジネーションにより調製するなど、組成や製造方法が特定のものに限定されるが、引用例A(第5頁右上欄6?9行)には「本発明皮膚外用剤は、このような作用を有する成分(A)と成分(B)の混合物を含有するものであるため、肌あれに対して優れた改善及び予防効果を発揮することができる。」と記載されているように引用例発明が特段リポソームの形態をとるものと解することはできない。
そうすると、相違点2は実質的な相違点ではない。

<相違点3>について
増粘剤・ゲル化剤をエマルションの経時安定性を良くするために配合することは本願の出願前に周知の技術事項(例えば、特開平8-40825号公報の【0028】参照)であり、引用例Aにおいても、「化粧料として使用する場合は、必須成分の他に化粧料成分として一般に使用されている増粘剤を組合せて配合することができる。」(a-iii)と記載されている。
そして、アクリルアミドと2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の架橋コポリマーはセピゲル305(SEPPIC社製)として商品化もされており、エマルジョン形態の化粧料に配合することができる増粘剤・ゲル化剤であって、本願出願前に周知のもの(例えば、特開平8-40825号公報[【0001】、【0028】、【0029】]、特開平9-12425号公報[【0100】、【0111】、【0116】]、特開平10-101521号公報[【0047】、【0048】、【0065】]、及び特開平10-175813号公報[【0032】?【0034】、【0055】参照)である。
そして、引用例Bにおいては、引用例発明における一般式(1)におけるR^(1)が炭素数17の直鎖の不飽和の炭化水素基、及びR^(2)が炭素数15の直鎖の飽和炭化水素基のセラミドである、2-N-オレオイルアミノオクタデカン-1,3-ジオールを含有するリンス組成物の処方にもセピゲル305が使用されている(b-i)のであるから、この増粘剤はセラミド成分を含む皮膚外用剤にも配合可能であることは明らかである。
したがって、引用例発明の皮膚外用剤に増粘剤としてセピゲル305を配合することは当業者であれば容易になし得ることである。

また、本願補正発明の効果にしても当業者が予測し得る範囲内のものである。

よって、本願補正発明は、引用例発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成18年5月16日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年4月11日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであると認める。
「【請求項1】
次の成分(a)?(c);
(a)次の一般式(1)又は(2)で表されるセラミド
【化1】

【化2】

(b)アクリルアミドと2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の架橋コポリマー
(c)リン脂質
を含有することを特徴とする水中油型化粧料。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物およびその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比、判断
本願発明は、「水中油型化粧料」に関し、「前記2.(3)」で検討した本願補正発明における、「ただし、リポソーム構造を有するものを除く」という特定がないものであって、本願補正発明を包含するものといえる。
そうすると、本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、引用例発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明を包含する本願発明も、同様の理由により、引用例発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-25 
結審通知日 2009-06-02 
審決日 2009-06-16 
出願番号 特願平10-233085
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福井 美穂天野 貴子  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 星野 紹英
弘實 謙二
発明の名称 水中油型化粧料  
代理人 特許業務法人小野国際特許事務所  
代理人 小野 信夫  

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