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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A41B
管理番号 1202294
審判番号 不服2007-20070  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-19 
確定日 2009-08-14 
事件の表示 特願2002-286863「紙おむつ」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月22日出願公開、特開2004-121363〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 出願の経緯
本願は、平成14年9月30日の出願で、平成19年6月7日付けでなされた拒絶査定に対し、これを不服として、平成19年7月19日に拒絶査定不服審判が請求されたものであって、平成21年2月6日付けで拒絶理由通知がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年9月13日に補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「一端部に左右一対のファスニングテープを有し、このファスニングテープを当該紙おむつの他端部前面に設けられたフロントターゲットテープに止着することによって身体に装着する紙おむつにおいて、
前記フロントターゲットテープの中央部から左右対称位置に、前記ファスニングテープを止着する際の基準線とサイズ表示とを複数付し、前記フロントターゲットテープを着色して前記サイズ表示を白抜き印刷とするとともに、前記サイズ表示に各々対応させて異なる絵文字を付したことを特徴とする紙おむつ。」

第3 引用文献
平成21年2月6日付け拒絶理由通知で引用された本願出願前に頒布された刊行物である、特開2000-60899号公報(以下、「引用文献1」という。以下同様。)、特開平7-328069号公報(引用文献2)、実願昭61-114413号(実開昭63-19505号)のマイクロフィルム(引用文献3)には、それぞれ以下の事項が図面とともに記載されている。

<引用文献1>
(a)「【0012】使い捨ておむつ1は、透液性トップシート2と、不透液性バックシート3と、これらシート2,3のうちの少なくとも一方の内面に接合された吸液性コア4とで構成され、胴周り方向と交差する長手方向に前胴周り域20と、後胴周り域22と、これら両域20,22間に位置する股下域21とを有する。
【0013】前胴周り域20の外面には、テープファスナ6の止着域5となるターゲットテープ5が接合されている。このテープ5は、前胴周り域20の端縁20aと並行しておむつ1の幅方向へ延びる端縁5aが、おむつ1の長手方向へ延びる側縁5bよりも長い矩形のものである。後胴周り域22の左右両側には、胴周り方向外方へ延出した翼部23があり、翼部23の側縁からは、テープファスナ6が延出している。テープファスナ6をその内面に塗布された粘着材7を介して、ターゲットテープ5に止着すると、胴周り開口8と左右一対の脚周り開口9とが形成される。後胴周り域22と股下域21とには、後胴周り域22の端縁22aと股下域21の側縁とに沿って延びる弾性伸縮部材10,11が、トップシート2とバックシート3との間に介在し、これらシート2,3のうちの少なくとも一方の内面に伸長状態で接合されている。
【0014】ターゲットテープ5は、合成樹脂シートで形成され、おむつ1の幅を二分する中心線Yに関して対称な位置に中心線Yに平行して延び、胴周り方向へ並ぶ複数の直線Aと、中心線Yと交差する方向へ延びて隣接する直線Aどうしの上端と下端とを結ぶ複数の斜線Bとが表示されている。直線Aそれぞれの上端部には、中心線Yから離間する方向へ向って、2cm間隔で大きくなる胴周り寸法Wが表示され、下端部には、中心線Yから離間する方向へ向って、1cm間隔で大きくなる脚周り寸法Lが表示されている。」

以上の記載及び図面の記載を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が、記載されているものと認められる。

(引用発明)
「後胴周り域22に左右一対のテープファスナ6を有し、このテープファスナ6を当該使い捨ておむつ1の前胴周り域20前面に設けられたターゲットテープ5に止着することによって身体に装着する使い捨ておむつ1において、
前記ターゲットテープ5の中心線Yから左右対称位置に、前記テープファスナ6を止着する際の直線Aと胴周り寸法Wとを複数付した、使い捨ておむつ1。」

<引用文献2>
(b)「【0021】他方、紙おむつの不透液性裏面シート1の腹側部分には、前記ファスニングテープ6の止着部6bを止着するための補強テープ10がホットメルト接着剤などにより剥離不能に接着されている。前記補強テープ10には、ファスニングテープ6を止着する際の指標となるように、補強テープの長手方向に所定間隔で目盛り線またはマークが印刷されているとともに、その目盛り線またはマークに対して数値が付されている。前記補強テープ10としては、ファスニングテープ6の付け直しに耐えうる程度の強度が必要であることからプラスチックシートなどが好適に用いられる。ファスニングテープ6と補強テープ10は、フックによる接合が可能なベルクロテープを使用することもある。」
(c)「【0023】また、本発明においては、前記ファスニングテープ6の色を補強テープ10面の色と異ならすか、あるいは濃淡を付ける配色により区別できるようにするとともに、前記補強テープ10面の色を不透液性裏面シート1面の色と異ならすか、あるいは濃淡を付けることにより区別できるようにする。したがって、紙おむつの装着時に、前記ファスニングテープ6をリリーステープ9より剥がし腹側に持ち込んで補強テープ10に止着する際、この補強テープ10面が周囲の色と異なることにより止着可能な領域が明確に区別されるため、間違って不透液性裏面シート1に対して止着するようなミスが極力防止される。」

<引用文献3>
(d)「ウエストサイズ表示部(3)は、第1図に示したようにウエストの数値を表示した目盛(7)としたり、第3図に示したように動物の図柄を表示した目盛(7)としたり、第4図に示したように、S、M、L等のサイズを表示した目盛(7)としたり、その他適当な表示手段を用いて実施することができる。」(第3ページ第12行ないし第18行)
また、図面の第3図に、動物の図柄を目盛(7)として用いる際には、寸法ごとに異なる動物の図柄を用いることが記載されている。

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の、「後胴周り域22」、「テープファスナ6」、「使い捨ておむつ1」、「前胴周り域20」、「ターゲットテープ5」、「中心線Y」、「直線A」、「胴周り寸法W」が、それぞれ本願発明の、「一端部」、「ファスニングテープ」、「紙おむつ」、「他端部」、「フロントターゲットテープ」、「中央部」、「基準線」、「サイズ表示」に相当する。
すると、本願発明と引用発明の両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「一端部に左右一対のファスニングテープを有し、このファスニングテープを当該紙おむつの他端部前面に設けられたフロントターゲットテープに止着することによって身体に装着する紙おむつにおいて、
前記フロントターゲットテープの中央部から左右対称位置に、前記ファスニングテープを止着する際の基準線とサイズ表示とを複数付した、紙おむつ。」
【相違点1】
本願発明では、「前記フロントターゲットテープを着色して前記サイズ表示を白抜き印刷」とされているのに対し、引用発明では、ターゲットテープ5に着色されておらず、また、胴周り寸法Wが白抜き印刷で印刷されていない点。
【相違点2】
本願発明のものは、「前記サイズ表示に各々対応させて異なる絵文字を付した」ものであるのに対し、引用発明では、絵文字が付されていない点。

第5 検討
上記相違点1、2について検討する。
(1)相違点1について
引用文献2に、目盛り線またはマークに対応した数値が付された補強テープ10面の色を、不透液性裏面シート1面と色を異ならすか、あるいは濃淡を付けることが、記載されている。
そして、引用発明の使い捨ておむつ1も、テープファスナ6をターゲットテープ5にミスなく止着させなければならないことは明らかであるから、引用文献2の上記構成を、引用発明に採用し、ターゲットテープ5を着色させることは当業者であれば容易に想到し得たことである。また、胴周り寸法Wの見やすさを考慮して、胴周り寸法Wの色などを好適に選択することは、当業者であれば当然に考慮すべきことであるから、ターゲットテープ5を着色した際に、胴周り寸法Wの色として、見やすい色である白色を選択することは当業者であれば容易になし得たことである。さらに、文字等を印刷する際に、白抜き印刷を採用することは、種々存在する印刷方法から単に当該印刷方法を選択したにすぎず、当業者であれば容易になし得たことである。
また、本願発明の、サイズ表示を白抜き印刷することによる効果も、サイズ表示が見やすくなるという、当業者であれば予想し得る程度の効果にすぎない。

(2)相違点2について
ウエストサイズ表示部に、どのような目盛を設けるかは、使用者(おむつの着用者、介護者など)などに応じて、適宜選択すべきものであり、様々な使用者に対応し得るように、異なる種類の目盛を併せて設けることは、当業者であれば当然になし得ることである。
そして、引用文献3には、寸法ごとに異なる動物の図柄で表示した目盛(7)を設けることが記載されている。
してみれば、引用発明の胴回り寸法Wに加えて、引用文献3に記載された、寸法ごとに異なる動物の図柄を、胴回り寸法Wに対応させて設け、本願発明の上記相違点2の構成とすることは当業者であれば容易に想到し得たことである。
また、サイズ表示に各々対応させて異なる絵文字を付すことによる効果も、両者が相乗的に関係して顕著な効果を生じさせているものでもなく、当業者であれば予想し得る程度のものである。

なお、請求人は、サイズ表示を白抜き印刷することにより、白内障の老人の視認性が向上することを主張しているが、本願の明細書には、「サイズ表示9と蛍光色又は白抜き印刷してあることから、サイズ表示9を目立たせることができるとともに、白抜き印刷は老人に見やすいことから、介護者が老人であった場合にも、適正な装着が可能となる。」と記載されているのみであり、白内障との関係について何ら記載されておらず、上記主張は、明細書の記載に基づくものではない。さらに、請求人は、白内障疑似体験ゴーグルに関するウェブサイト(http://panasonic.co.jp/ud/forum/voice/01/index.html)や、平成19年8月13日に提出された手続補足書に示された実験結果を基に、白抜き印刷と白内障の老人との視認性との間に因果関係があることが明らかである旨主張しているが、上記ウェブサイトにおいては、白抜き印刷と白内障の老人の視認性との因果関係は何ら示されていないとともに、実験結果も、本願出願時に、白抜き印刷と白内障の老人との視認性との間に因果関係があることが技術常識であったことを示すものでもない。したがって、請求人の上記主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-04 
結審通知日 2009-06-09 
審決日 2009-06-23 
出願番号 特願2002-286863(P2002-286863)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A41B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内山 隆史  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 村上 聡
佐野 健治
発明の名称 紙おむつ  
代理人 三好 千明  

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