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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1206118
審判番号 不服2008-11148  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-05-01 
確定日 2009-10-29 
事件の表示 特願2000-58533「平版印刷版用包装材及び平版印刷版包装構造」拒絶査定不服審判事件〔平成13年9月11日出願公開、特開2001-247155〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成12年3月3日の出願であって、平成20年3月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年5月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1ないし2に係る発明は、明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】自動給版機構によって給版される平版印刷版の包装に使用され、平版印刷版を包装した状態で少なくとも一部が平版印刷版の塗布膜が形成された画像形成面に接触されて画像形成面を保護する平版印刷版用包装材であって、
前記画像形成面に接触しない非接触部のベック平滑度が3秒以上55秒以下とされていることを特徴とする平版印刷版用包装材。」
(以下、請求項1によって特定される発明を「本願発明」という。)

3 引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-109611号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の記載がある。
「【請求項3】感光性平版印刷版と保護紙とを重ねあわせたものであって、感光性平版印刷版の感光層面と保護紙の接触面との間の静摩擦係数が0.3以上であるとともに、感光性平版印刷版の感光層と反対側の面と保護紙の接触面との静摩擦係数が0.3以上であることを特徴とする感光性平版印刷版包装体。
【請求項4】前記感光層表面と接触する保護紙の接触面の平滑度が5秒以上である請求項1記載の感光性平版印刷版包装体。」
「【0002】【従来の技術】従来、感光性平版印刷版の包装体に関して各種の技術が提案されており、例えば、感光性平版印刷版の切断を容易にするためや感光性平版印刷版の感光層面を傷つきにくくするために、感光性平版印刷版と保護紙を交互に重ねて包装する技術が提案されている。」
「【0004】そこで、摩擦損傷から感光層を保護する…ために、感光性印刷版の間に保護紙と呼ばれる感光層より柔らかな材質のシートを挟み込み、感光性印刷版と保護紙とを交互に重ねて包装するものである。また、保護紙には、…感光性印刷版との密着性は良いが剥離が簡単であること、剥離摩擦帯電が小さいこと等が要求されている。」
「【0091】感光性組成物は、上記各成分を溶解する溶媒に溶かして支持体のアルミニウム板上に塗布乾燥される。」
「【0147】【実施例】[実施例1]……
【0155】(保護紙)漂白クラフトパルプを叩解し、4%の濃度に希釈した紙料に硫酸アルミニウムをpHが5.0になるまで加えた。この紙料から、密度0.75g/cm^(3)、ツヤ面の平滑度60秒、水分5.5%の35g/m^(2)の感光性印刷版材用保護紙を抄紙した。
【0156】感光性平版印刷版の感光層表面と保護紙との静摩擦係数は0.60、感光層と反対側の面(以下、反感光層面という)と保護紙との静摩擦係数は0.64であった。」
「【0161】[実施例6]感光性平版印刷版は、実施例1と同一である。保護紙は、平滑度が10秒である他は実施例1と同一である。感光性平版印刷版の感光層表面と保護紙との静摩擦係数は0.65、反感光層面と保護紙との静摩擦係数は0.66であった。
【0162】[実施例7]感光性平版印刷版は、実施例1と同一である。保護紙は、平滑度が6秒である他は実施例1と同一である。感光性平版印刷版の感光層表面と保護紙との静摩擦係数は0.64、反感光層面と保護紙との静摩擦係数は0.67であった。」
「【0171】[平滑度試験]保護紙を50mm×50mmのシートに切断し、ベック平滑度試験機によって10mlの空気が10cm^(2)の光学的平面仕上げのガラス標準面と紙表面との間を通るのにかかる秒数をストップウォッチで測定した。」
「【0179】以上の結果より、感光層表面と保護紙の接触面との静摩擦係数を0.3以上、反感光層側面と保護紙の接触面との静摩擦係数を0.3以上とすると、搬送ズレが生じないことがわかる。…さらに、感光層表面と接触する感光層接触面の平滑度が5sec以上であると、感光層に傷がつかないことがわかる。」

以上の記載によれば、引用例1には、次の発明が記載されているといえる。
「感光性平版印刷版の包装に使用され、感光性平版印刷版を包装した状態で少なくとも一部が感光性平版印刷版に塗布された感光層面に接触されて感光層面を保護する保護紙であって、
前記感光層面に接触する接触部のベック平滑度が6秒又は10秒とされている感光性平版印刷版用保護紙。」(以下、「引用発明」という。)

4 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「感光性平版印刷版」及び「感光性平版印刷版に塗布された感光層面」は、それぞれ本願発明の「平版印刷版」及び「平版印刷版の塗布膜が形成された画像形成面」に相当する。
また、本願明細書の段落【0014】に「本発明の包装材は、自動給版機構によって給版される平版印刷版の包装に使用されるものであって、平版印刷版の画像形成面に接触されて画像形成面を保護するものであれば全て含まれる。このような包装材の例としては、合紙や保護用厚紙(当てボール)等を挙げることができるが、これらに限定されない。」と記載されており、この「合紙」は、引用発明の「保護紙」に相当するから、引用発明の「保護紙」は、本願発明の「包装材」に相当する。
引用発明の「感光層面に接触する接触部」と、本願発明の「画像形成面に接触しない非接触部」とは、包装材(保護紙)の面(表面又は裏面)である限りにおいて一致する。
さらに、引用発明のベック平滑度が6秒又は10秒であることは、本願発明のベック平滑度が3秒以上55秒以下とされていることに該当する。
そうすると、両者は、
「平版印刷版の包装に使用され、平版印刷版を包装した状態で少なくとも一部が平版印刷版の塗布膜が形成された画像形成面に接触されて画像形成面を保護する平版印刷版用包装材であって、前記包装材の表面又は裏面のベック平滑度が3秒以上55秒以下とされている平版印刷版用包装材。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<<相違点1>>
本願発明では、平版印刷版が自動給版機構によって給版されるものであるのに対して、引用発明では、そのような特定をしていない点。
<<相違点2>>
ベック平滑度を特定する包装材の面が、本願発明では、画像形成面に接触しない非接触部となる面であるのに対して、引用発明では、画像形成面に接触する接触部となる面である点。

5 相違点の検討
そこで、上記相違点1について検討すると、平版印刷版を自動給版機構によって給版することは、例えば原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭62-1586号公報(以下、「引用例2」という。)に記載されており周知であるから、引用発明の感光性平版印刷版を自動給版機構によって給版することは、当業者が容易に推考し得たことである。
次に、相違点2について検討すると、紙の表裏の平滑度を同程度にすることは、一般的に周知であるから、引用発明の保護紙の表裏の平滑度を同程度にすることにより、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に推考し得たことである。
また、引用例2に「感光性印刷版を複数枚…積層しておき、上から順に自動的に取り出し…処理を施すことを連続して行うことのできる自動製版機の出現を見るようになった。しかしながら…印刷版には自重によって圧力がかかり、印刷版と合紙が真空密着されてしまう状態にあった。」(1頁右下欄10?18行)、「従来の印刷版用合紙にあっては、合紙そのものが平滑であるために、感光性印刷版の裏面に合紙が付着したまま露光部および現像部へ感光性印刷版とともに搬送されることがしばしばあった。」(2頁左上欄17行?右上欄1行)と記載されているから、引用例2には、感光性印刷版の裏面に接触する側の合紙の面(本願発明の「非接触部」に相当する。)を粗面化すると、感光性印刷版の裏面に合紙が付着したまま搬送される問題点を解決できることが示唆されているといえる。さらに、引用例1の段落【0179】に「感光層表面と接触する感光層接触面の平滑度が5sec以上であると、感光層に傷がつかない」と記載されている。そうすると、感光性印刷版の裏面に合紙が付着したまま搬送される問題点を解決するため、感光性印刷版の裏面に接触する側の合紙の面を粗面化するとともに、取扱中に当該面が感光層表面と接触した場合でも傷が生じにくいよう、ベック平滑度を5秒以上とし、相違点2に係る本願発明の構成とすることも、当業者が容易に推考し得たことである。
しかも、本願発明が奏する効果も、引用発明及び引用例2記載の事項から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願発明は、引用発明に基いて、又は、引用発明及び引用例2記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

6 まとめ
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-21 
結審通知日 2009-08-25 
審決日 2009-09-08 
出願番号 特願2000-58533(P2000-58533)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 種子島 貴裕  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 佐野 健治
村山 禎恒
発明の名称 平版印刷版用包装材及び平版印刷版包装構造  
代理人 福田 浩志  
代理人 加藤 和詳  
代理人 西元 勝一  
代理人 中島 淳  

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