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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1206575
審判番号 不服2007-28588  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-18 
確定日 2009-11-04 
事件の表示 特願2002-224340「コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成16年3月4日出願公開、特開2004- 71160〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成14年8月1日の出願であって、平成19年9月12日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年9月18日)、これに対し、同年10月18日に審判請求がなされるとともに、同年11月16日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成19年11月16日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年11月16日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された(以下、「本件補正発明」という。)。

「フレキシブルプリント基板(FPC)又はフレキシブルフラットケーブル(FFC)と着脱自在に嵌合するコネクタであって、該フレキシブルプリント基板又は前記フレキシブルフラットケーブルと接触する接触部、および基板に接続する接続部を有する所要数のコンタクトと、該コンタクトが保持・固定されるとともに前記フレキシブルプリント基板又は前記フレキシブルフラットケーブルが挿入される嵌合口を有するハウジングと、前記フレキシブルプリント基板(FPC)又は前記フレキシブルフラットケーブル(FFC)を前記コンタクトに押圧するスライダーとを備えるコネクタにおいて、
前記コンタクトの前記接触部である第1接触部と接続部との間に弾性部と支点部とを設けるとともに前記第1接触部と前記弾性部と前記支点部と前記接続部とを略クランク形状に配置し、かつ、前記接続部と対向する位置に前記弾性部から延設された押受部を設け、該押受部の先端に突出部を設け、前記スライダーには長手方向に連設した細長形状をした押圧部を設けるとともに、所要数の前記コンタクトの突出部と係合する係止孔を別個独立に設け、前記押圧部が前記コンタクトの接続部と押受部との間で回動自在に前記スライダーを前記ハウジングの嵌合口とは反対側に装着し、前記突出部により、前記スライダー回動時における前記スライダーの中央部の前記フレキシブルプリント基板(FPC)又は前記フレキシブルフラットケーブル(FFC)の挿入方向への膨れを防止することを特徴とするコネクタ。」

上記補正は、「スライダーをハウジングに装着し」とあったところを「スライダーをハウジングの嵌合口とは反対側に装着し」と、スライダーの装着位置について限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に適合するか)否かについて検討する。

(2)刊行物
(2-1)原査定の拒絶の理由(平成19年1月12日付け拒絶理由通知書)に示された、特開平10-208810号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.「本発明は、FPC(フレキシブル・プリンテッド・サーキット)あるいはFFC(フレキシブル・フラット・ケーブル)と基板を接続するコネクタに関し、特に基板の上にコネクタが搭載されたとき、FPCあるいはFFCが基板に対し水平方向にコネクタに差し込まれ、そのときFPCあるいはFFCの接詮部が上面にあるような構成を持つ基板とFPCあるいはFFCを接続するためのコネクタに関する。」(段落【0001】)

イ.「そのために力を受ける絶縁部材を厚くする必要がある。さらに高さも高くなるので小型化も難しい。また、コネクタの接点を下方向に変位させるためにハウジングなどの壁を外側にも設ける必要があり、さらにコネクタ全体が大きくなり小型化が難しい。
最近の装置の小型化に伴い小さな高密度化されたコネクタが必要となっている。本発明は操作性を改善あるいは損なわずに、小型化及び高密度化を実現するコネクタを提供する事にある。」(段落【0008】、【0009】)

ウ.「次に本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の最良の実施の形態である。コネクタ1はほぼH形状を寝かした形をする接触子10を係止し保持している。また、ハウジング20と接触子10の開放した片側には自由に回転する様に取り付けられたレバー30を備えている。接触子10においてレバー30を取り付けた方と反対側の開放部にはFPC(あるいはFFC)40が挿入される。ここで通常FFCは、ベースフィルム43上に接触子10の接触部16と接触するパッド42が形成され、ベースフィルム43のパッド42の反対側には補強板41が接着されている。」(段落【0013】)

エ.「また、ここでは基板50にSMT(サーフェス・マウント・テクノロジー)部が半田付けで基板50の基板パッド51に表面実装されている。この図2(a)については図1で構成してある通りであるが、接触子10は接触子10に設けられた係止部16がコネクタ1のレバー30の操作や取り扱いにおいて十分な保持力を有している。レバー30は回転ビーム11の仮想回転中心18を中心に回転する。このレバー30が基板50に対し大きな角度をもって位置している時は開放状態(FPCとの接触がない)、即ち回転ビームが持ち上がらない状態となる様レバー30の回転部31の肉厚がL1となっている。そしてレバー30を回転させてレバー30が基板50に対し平行になるようにした時(図2(b)の状態)回転ビーム11が持ち上がり、逆に接触ビーム12が下がりFPC40のパッド42と接触部16が接触する様にレバー30の回転部31の肉厚をL2を設定している。ここではレバーの回転部の肉厚の大小関係は、L1<L2となっている。」(段落【0015】)

オ.「次に図2(b)を参照すると、レバー30を回転させ前述の様に回転ビームが持ち上がり接触ビーム12が下がり接触部16とFPC40のパッド42が適切な接圧をもって接続している。ここで分かる様に回転ビーム11と接触ビーム12は支点となる支柱13を中心に変位する。当然のことながら支柱13の幅はこのテコの原理が働く様ある程度幅を細くしておく必要があるが、一方で強度的に操作時に発生する応力に耐えるように設計する。」(段落【0016】)

カ.「回転ビーム11と接触ビーム12の関係については、図2(a),(b)で説明した内容の動作をするように寸法設定をする。即ち、回転ビーム11が変位したときにその変位に対し所定の変位が接触ビーム12に発生するように支柱13の厚さや幅を調節する。」(段落【0019】)

キ.「本発明の低挿抜力コネクタは、コネクタを薄く構成できるという効果がある。そのため基板等の上に高密度な実装が可能になる。その理由は、レバーを回転させる等の手段によりコンタクトをてこの原理により変位させレバーと反対側から差し込まれたFPCまたはFFCを挟み込むことにより接触力を発生させ、コネクタのコンタクトとFPCまたはFFCの接詮部とを接続しているからである。即ち、FPCの挿入側にはレバーなどを構成する必要がないためその分薄く構成できる。また、ハウジングに力が加わらないのでハウジングの強度を高める必要がなくハウジングの肉厚も薄くできる。」(段落【0029】)

ク.【図1】には、複数の接触子10を収容させるとともに、FPCあるいはFFCが挿入される開口を有するハウジング20を備えたコネクタ1が記載されている。

ケ.【図2】には、接触部16とSMT部15との間に支点となる支柱13を設けるとともに、接触部16と支点となる支柱13とSMT部15とを略クランク形状に配置し、かつSMT部15と対向する位置に支点となる支柱13から延設された回転ビーム11を設けた接触子10が示され、回転部31が接触子10のSMT部15と回転ビーム11との間で回動自在となるようにレバー30をハウジング20に取り付けたことが記載されている。

上記記載事項及び図面の記載内容からみて、刊行物1には、次の発明が記載されている。

「フレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)あるいはフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)が差し込まれるコネクタ1であって、FPCあるいはFFCとパッド42を介して接触する接触部16、基板50に表面実装されるSMT部15を有する複数の接触子10と、接触子10が収容されるとともにFPCあるいはFFCが挿入される開口を有するハウジング20と、FPCあるいはFFCのパッド42を接触子10の接触部16と適切な接圧をもって接続させるレバー30とを備えるコネクタ1において、
接触部16とSMT部15との間に支点となる支柱13を設けるとともに、接触部16と支点となる支柱13とSMT部15とを略クランク形状に配置し、かつSMT部15と対向する位置に支点となる支柱13から延設された回転ビーム11を設け、回転部31が接触子10のSMT部15と回転ビーム11との間で回動自在となるようにレバー30をハウジング20の開口とは反対側に取り付けたコネクタ。」

(2-2)同じく、特開2002-42939号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.「ところが、近年、携帯電話やDVD等の用途でコネクタの高さを例えば1mm以下とするようなさらなる低背化が要求されている。低背化のために蓋部材の厚みをさらに薄くすると、蓋部材を閉じたときに、加圧部がフォーク状接触子の間からその開放側へ逃げるようにして撓む傾向にある。その結果、加圧部がフレキシブル基板を弾性片部に押圧する力が弱くなり、導通不良を起こすおそれがある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、低背化を達成でき、しかも蓋部材の撓みを防止してフレキシブル基板に対する確実な導通を達成できるフレキシブル基板用コネクタを提供することを目的とする。」(段落【0003】、【0004】)

イ.「51は蓋部材7に埋設された第1の補強部材としての金属製のワイヤであり、ワイヤ51の両端部には一対の第1の係合部としての係止突起Cが設けられている。各係止突起Cは、ハウジング4に固定される第2の補強部材としての金属板からなる対応する補強タブ10の第2の係合部としてのロック溝50に係止されて、蓋部材7の閉じ状態をロックする。ワイヤ51の係止突起Cとロック溝50とでロック機構が構成される。
45は蓋部材7に埋設された第3の補強部材としての金属製のワイヤである。ワイヤ45の両端部には一対の回動支軸Aが設けられている。53,54はそれぞれ対応するワイヤ45,51の中間部47,52の一部55,59を蓋部材7の外部に露出させるために蓋部材7に設けられた開口である。ハウジング4の対向する側板部8,9は、挿抜空間3の両側部を区画している。側板部8,9の前端面には、一対の固定孔11が開口している。(図1では示されていないが、図2及び図2のIII -III 線に沿う断面図である図3を参照。)各固定孔11は蓋部材7の両側方へ突出する一対の回動支軸Aをそれぞれ支持するための補強タブ10を前側から収容して固定するものである。」(段落【0009】、【0010】)

ウ.「図1、図2及び図2のV-V線に沿う断面図である図5を参照して、第2の接触子23は金属部材からなり、ハウジング4の挿脱空間3に後側から挿入されて固定されている。図5を参照して、第2の接触子23は、係止突起付きの固定片部33と、固定片部33の下方に位置する弾性片部35と、主体部36と、リード部37とを備えている。固定片部33は、ハウジング4の上部の固定孔32に後側から挿入されて固定される。弾性片部35は、ハウジング4の下板部16の上面に形成された収容溝34に後側から収容される。主体部36は固定片部33と弾性片部35の後端部を連結する。リード部37は、主体部36から後ろ斜め下方へ延びて基板表面に半田付けされる。」(段落【0015】)

エ.「固定片部33の前端38の最前部には、弾性片部35側へ突出する突起からなるストッパが61が形成され、このストッパ61に隣接して係合凹部62が形成されている。係合凹部62は弾性片部の山形突起41に対向して設けられている。」(段落【0017】)

オ.「蓋部材7の第1の端縁42には、図5に示すように第2の接触子23の前端38を出入りさせるための複数の透孔40が横並びに配置されている。図7において透孔40よりも第1の端縁42側にある部分が加圧部48を構成している。
加圧部48は蓋部材7を閉じ位置に変位させる際、図9に示すように、第2の接触子23の弾性片部35上に配置されたFPC2と固定片部33との間に挟持された状態で、FPC2を弾性片部35に加圧するものである。加圧部48は図10に示す蓋部材7の閉じ状態で弾性片部35の山形突起41に対向する加圧面63を有している。また、蓋部材7の閉じ状態で、加圧面63の背面64が第2の接触子23の固定片部33の係合凹部62に当接することにより、弾性片部35からFPC2を介して加圧部48に与えられる弾性反発力を固定片部33に受けさせるようにしている。
加圧部48は略矩形をなす断面を持っており、その一辺である加圧面63は蓋部材7の閉じ状態で弾性片部35の山形突起41に対向する部分であり、この加圧面63に隣接する一辺である蓋部材7の端面65は蓋部材7の開放状態で弾性片部35の山形突起41に対向する部分である。」(段落【0018】?【0020】)

カ.「本実施の形態では、蓋部材7を閉じるときに固定片部33の係合凹部62に加圧部62を当接させると共にストッパ61により加圧部48の逃げ(第2の接触子23の開放方向への逃げ)を防止する。これにより、加圧部48を山形突起41に位置合わせした状態で、蓋部材7の撓みを防止することができる。したがって、低背化のために蓋部材の肉厚が薄くなって蓋部材7の変形強度が低くなった場合にも、加圧部48によりFPC2を弾性片部35の山形突起41に確実に強く押圧して、FPC2と第2の接触子23との確実な導通を達成できる。蓋部材7がハウジング4から外れることもない。」(段落【0023】)

キ.「また、上記実施の形態では、第1及び第2の接触子22,23を交互に配列するコネクタとしたが、これに限らず、第2の接触子23のみを配置するコネクタとしても良い。」(段落【0026】)

上記記載事項及び図面の記載内容からみて、刊行物2には、次の発明が記載されている。

「第2の接触子23の固定片部33の前端38最前部に突起からなるストッパ61を形成し、蓋部材7には、第2の接触子23の固定片部のストッパ61と係合する透孔40が横並びに配置され、断面略矩形の加圧部48を設け、ストッパ61により加圧部48の逃げを防止しすることにより、蓋部材7の撓みを防止させたコネクタ。」

(2-3)同じく、特開平11-31561号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.「接触子3は、金属板から打ち抜いて製作されたものであり、上下に対向する一対の接触片3a,3bと、それらを連結する連結部3cとを有している。上側接触片3aは、挿入口5から挿入される偏平電線に圧接される下方へ突出した接触部3a_(1)と、回動部材4の後述の圧接部4bにその周縁が圧接される隅部3a_(2)とを有し、下側接触片3bは、ハウジング2の挿入口5の下側の係止凹部2bに係止される係止部3b1と、前記接触部3a_(1)との間で挿入された偏平電線を挟持する上方へ突出した接触部3b_(2)と、回動部材4の円弧状の回動支持部4cが係合する回動溝部3b_(3)と、回路基板に接続される結線部3b_(4)とを有している。」(段落【0018】)

イ.「次に、図6(b)に示されるように、回動部材4を、時計回りに回動操作し、これによって、回動部材4の圧接部4bが、上側接触片3aの隅部3a2の周縁に圧接し、上側接触片3aを弾性変形させてその接触部3a1を、偏平電線8の上面に押圧させる。
さらに、回動部材4を、時計回りに回動操作することにより、図6(c)に示されるように、回動部材4の圧接部4bが、上側接触片3aの隅部3a2の周縁を一層加圧し、上側接触片3aが弾性変形し、その接触部3a1が偏平電線8の上面にさらに圧接し、上側接触片3aと下側接触片3bとの間で偏平電線8を挟持する。この状態では、回動部材4の圧接部4bが、上側接触片3aの隅部3a2の頂点P2を乗り越えた位置にあり、接触子3の弾性復元力によって結線状態を維持する方向(図6の右方向)への力が作用することになる。
その後、回動部材4を、時計回りにさらに回動操作して図6(d)に示されるように、回動の終点、すなわち、倒れ姿勢になると、接触子3の弾性復元力によって、回動部材4に作用する結線状態を維持する水平方向の力が一層大きくなり、ロック状態となる。
なお、図6(d)のロック状態から偏平電線8を意図的に外す場合には、回動部材4に反時計回りの力を加えればよく、これによって、上述とは逆の動作で回動部材4が回動始点に復帰して図6(a)に示される開放状態とされる。」(段落【0029】?【0032】)

ウ.前記摘記事項ア、イ及び【図4】には、弾性復元する接触子3の接触部3a_(1)と結線部3b_(4)との間に設けた前後に移動可能な連結部3cを設けたことが記載されている。

上記記載事項及び図面の記載内容からみて、刊行物3には、次の発明が記載されている。

「接触部3a_(1)と結線部3b_(4)との間に、弾性復元する連結部3cを設けたコネクタの接触子3。」

(3)対比
本件補正発明と刊行物1に記載された発明を対比する。
刊行物1に記載された発明の「フレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)」は、本件補正発明の「フレキシブルプリント基板(FPC)」に相当し、同様に、「フレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)」は「フレキシブルフラットケーブル(FFC)」に、「コネクタ1」は「コネクタ」に、「接触部16」は「接触部」と「第1接触部」に、「差し込まれ」は「着脱自在に嵌合」に、「基板50」は「基板」に、「SMT部15」は「接続部」に、「接触子10」は「コンタクト」に、「収容」は「保持・固定」に、「開口」は「嵌合口」に、「ハウジング20」は「ハウジング」に、「レバー30」は「スライダー」に、「回転ビーム11」は「押受部」に、にそれぞれ相当する。
そして、刊行物1に記載された発明の「支点となる支柱13」は、支柱13に支点となる部分が存在することを意味する。したがって、刊行物1に記載された発明の「支点」は、本件補正発明の「支点部」に相当する。
また、刊行物1に記載された発明の「回転部31」には、回転ビーム11を持ち上げるために必要な肉厚L2を有する部分が存在することから、本件補正発明の「押圧部」に相当する。

したがって、上記両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「フレキシブルプリント基板(FPC)又はフレキシブルフラットケーブル(FFC)と着脱自在に嵌合するコネクタであって、フレキシブルプリント基板又はフレキシブルフラットケーブルと接触する接触部、および基板に接続する接続部を有する所要数のコンタクトと、コンタクトが保持・固定されるとともにフレキシブルプリント基板又はフレキシブルフラットケーブルが挿入される嵌合口を有するハウジングと、フレキシブルプリント基板(FPC)又はフレキシブルフラットケーブル(FFC)をコンタクトに押圧するスライダーとを備えるコネクタにおいて、
コンタクトの接触部である第1接触部と接続部との間に支点部を有する部材を設けるとともに第1接触部と支点部を有する部材とを略クランク形状に配置し、かつ、接続部と対向する位置に支持部から延設された押受部を設け、押圧部がコンタクトの接続部と押受部との間で回動自在にスライダーをハウジングの嵌合口とは反対側に装着したコネクタ。」

[相違点1]
本件補正発明では、押受部の先端に突出部を設け、スライダーには、所要数のコンタクトの突出部と係合する係止孔を別個独立に設けるとともに、長手方向に連設した細長形状をした押圧部を設け、突出部により、スライダー回動時におけるスライダーの中央部のFPC又はFFCの挿入方向への膨れを防止しているのに対し、刊行物1に記載された発明では、この発明特定事項を備えていない点。

[相違点2]
支点を有する部材が、本件補正発明では、弾性部であるのに対し、刊行物1に記載された発明では、弾性部であるか否か不明である点。

(4)当審の判断
以下、上記相違点について検討する。
まず、上記相違点1について検討する。
刊行物1に記載された発明のコネクタは、スライダーが係止孔を有しない板状となっている。

そして、係止孔を有しない板状のスライダーを用いた場合に、端子数が多くなりスライダーの幅方向長さが長くなると、スライダーの強度をアップするためにスライダーを厚く強度のあるものとする必要があり、これがコネクタの低背位化を図る際の技術的課題となるが、この課題自体は、本願出願前周知の課題である(例えば、特開2001-307805号公報、特開2001-357918号公報参照のこと)。

してみると、刊行物1に記載された発明も、レバーを用いているため、レバーを厚く強度のあるものとする必要があり低背位化を図る必要があるという周知の課題を有するものである。

次に、本件補正発明と刊行物2に記載された発明を対比する。
刊行物2に記載された発明の「第2の接触子23」は、本願補正発明の「コンタクト」に相当し、同様に、
「固定片部33」は「押受部」に、
「ストッパ61」は「突出部」に、
「蓋部材7」は「スライダー」に、
「透孔40」は「係止孔」に、
「横並びに配置」は「別個独立」に、
「断面略矩形」は「細長形状」に、
「加圧部48」は「押圧部」に、それぞれ相当する。
また、前記「2.[理由](2)(2-2)キ」に摘記されているように、刊行物2に記載された発明のコネクタは、ハウジングに第2の接触子23のみを配置しても良く、その場合、「加圧部48」は、長手方向に連接されることとなる。
さらに、刊行物2に記載された発明の「蓋部材7の撓みを防止させ」ることは、蓋部材7が両側面に設けた係止突起Cによりハウジング4に固定されている(前記(2.[理由](2)(2-2)イ)ため、蓋部材7の撓みはその中央部に発生しやすいことから、本件補正発明の「スライダー回動時におけるスライダーの中央部の膨れを防止」することと同義である。

したがって、刊行物2には、次の発明が記載されていると言い換えることができる。
「コンタクトの押受部の先端に突出部を設け、スライダーには、コンタクトの突出部と係合する係止孔を別個独立に設け、長手方向に連設した細長形状をした押圧部を設け、突出部により、スライダー回動時におけるスライダーの中央部の膨れを防止したコネクタ。」

また、刊行物2に記載された発明は、「低背化を達成でき、しかも蓋部材の撓みを防止してフレキシブル基板に対する確実な導通を達成できるフレキシブル基板用コネクタを提供することを目的とする。」(前記「2.[理由](2)(2-2)ア」参照のこと。)ものである。
さらに、刊行物1及び2に記載された発明は、いずれもコンタクトを有するコネクタという同一の技術分野に属する発明である。
したがって、刊行物1に記載された発明が有する低背位化を図るという周知の課題を解決するために、刊行物1に記載された発明の押受部とスライダーに、低背化を達成した刊行物2に記載された発明を適用することは、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、刊行物1に記載された発明に、刊行物2に記載された発明を適用したものが、コンタクトに設けた突出部により、スライダー回動時におけるスライダー中央部のFPC又はFFCの挿入方向への膨れを防止するようにするという効果を奏することは明らかである。

次に、上記相違点2について検討する。
本件補正発明と刊行物3に記載された発明を対比する。
刊行物3に記載された発明の「接触部3a_(1)」は、本件補正発明の「第1接触部」に相当し、同様に「結線部3b_(4)」は「接続部」に、「接触子3」は「コンタクト」に、それぞれ相当する。
また、刊行物3に記載された発明の「連結部3c」は、「接触子3は、金属板を打ち抜いて製作されたものであり」(前記「2.[理由](2)(2-3)ア」)と「接触子3の弾性復元力によって結線状態を維持する」(前記「2.[理由](2)(2-3)イ」)との記載から、金属板からなり弾性復元力を有するものであるから、接触子3の一部分を構成する「連結部3c」も、金属板からなり弾性復元力を有するものであることは明らかである。したがって、刊行物3に記載された発明の「連結部3c」は、本件補正発明の「弾性部」に相当する。

したがって、刊行物3には、次の発明が記載されていると言い換えることができる。
「第1接触部と接続部との間に、弾性部を設けたコネクタのコンタクト。」

そして、刊行物1に記載された発明と刊行物3に記載された発明とは、いずれも、コンタクトを有するコネクタという同一の技術分野に属する発明であるから、刊行物1に記載された発明の第1接触部と接続部の間に設けた支点部を有する部材を、刊行物3に記載された発明に倣って弾性部とすることは、当業者が容易になし得たものである。

また、本件補正発明の奏する効果は、刊行物1乃至3に記載された発明から当業者が予測できた範囲内のものである。

よって、本件補正発明は、刊行物1乃至3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、
平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成平成19年11月16日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年3月23日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「フレキシブルプリント基板(FPC)又はフレキシブルフラットケーブル(FFC)と着脱自在に嵌合するコネクタであって、該フレキシブルプリント基板又は前記フレキシブルフラットケーブルと接触する接触部、および基板に接続する接続部を有する所要数のコンタクトと、該コンタクトが保持・固定されるとともに前記フレキシブルプリント基板又は前記フレキシブルフラットケーブルが挿入される嵌合口を有するハウジングと、前記フレキシブルプリント基板(FPC)又は前記フレキシブルフラットケーブル(FFC)を前記コンタクトに押圧するスライダーとを備えるコネクタにおいて、
前記コンタクトの前記接触部である第1接触部と接続部との間に弾性部と支点部とを設けるとともに前記第1接触部と前記弾性部と前記支点部と前記接続部とを略クランク形状に配置し、かつ、前記接続部と対向する位置に前記弾性部から延設された押受部を設け、該押受部の先端に突出部を設け、前記スライダーには長手方向に連設した細長形状をした押圧部を設けるとともに、所要数の前記コンタクトの突出部と係合する係止孔を別個独立に設け、前記押圧部が前記コンタクトの接続部と押受部との間で回動自在に前記スライダーを前記ハウジングに装着し、前記突出部により、前記スライダー回動時における前記スライダーの中央部の前記フレキシブルプリント基板(FPC)又は前記フレキシブルフラットケーブル(FFC)の挿入方向への膨れを防止することを特徴とするコネクタ。」

(2)刊行物
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物、及び、その記載事項は、前記「2.[理由](2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比する。
本願発明は、前記「2.[理由]」で検討した本件補正発明において、「前記スライダーを前記ハウジングの嵌合口とは反対側に装着し」とあったところを「前記スライダーを前記ハウジングに装着し」と、スライダーの装着位置についての限定を解除するものに相当する。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の要件を付加したものに相当する本件補正発明が前記「2.[理由](4)」に記載したとおり、刊行物1乃至3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1乃至3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1乃至3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-11 
結審通知日 2008-11-18 
審決日 2008-12-01 
出願番号 特願2002-224340(P2002-224340)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01R)
P 1 8・ 575- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中川 真一  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 佐野 遵
長崎 洋一
発明の名称 コネクタ  
代理人 藤谷 史朗  
代理人 杉村 憲司  
代理人 杉村 興作  
代理人 澤田 達也  
代理人 来間 清志  
代理人 徳永 博  
代理人 高梨 玲子  

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