• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1207239
審判番号 不服2006-20685  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-19 
確定日 2009-11-11 
事件の表示 特願2000-569444「絶縁領域形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 3月16日国際公開、WO00/14797、平成15年 2月25日国内公表、特表2003-507879〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成11年8月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年9月3日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成13年3月5日付けで国内書面及び平成12年9月20日付けの特許協力条約第34条補正の翻訳文が提出され、平成18年6月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月18日付けで手続補正がなされ、その後、当審において、平成20年11月11日付けで審尋がなされたものである。


第2.拒絶理由通知、拒絶査定、及び審判請求書の概要

1.原審における平成17年9月20日付けの拒絶理由通知(以下、「拒絶理由通知」という。)の概要

「 (略)
3.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
(略)
請求項 1?45
理由 3
[備考]
本願発明は、明細書の記載からすれば、トレンチ分離領域の窪みの発生を防止することを課題として、トレンチ形成時のマスクに工夫を加えた上で、トレンチのコーナーをエッチングするか、或いはトレンチ内壁及び基板表面を熱酸化することで、トレンチのコーナーにある酸化膜の厚みを確保することにあるものと認められる。しかしながら、請求項1?45には、コーナーをエッチングすることか或いはトレンチ内壁及び基板表面を熱酸化することが記載されておらず、課題を解決するための手段が記載されていないことから、請求項1?45に係る発明の技術的意義が不明である。よって、本願の請求項1?45に係る発明は不明確である。(実施例1と実施例2と実施例3、4とは別個の発明(解決するための手段が異なるもの)であるから、請求項の記載としては、それぞれ別に記載する必要がある。現在の請求項1の記載のように無理に一つにまとめることのないように留意されたい。)
(略)」

2.原審における平成18年6月12日付けの拒絶査定(以下、「拒絶査定」という。)の概要

「 この出願については、平成17年 9月20日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものである。」

3.平成18年11月17日付けの手続補正書により補正された審判請求書(以下、「審判請求書」という。)の概要

「【請求の理由】
(略)
3.補正の根拠
(略)
(8)請求項15について
旧請求項22に基づくものである。但し、「エッチングの後に、開口内に絶縁領域の少なくとも一部分を構成する」の部分は、当初明細書の段落番号[0035]の記載に基づき開口内であることを明確化したものである。
(略)
(10)請求項18について
「該減少過程は前記横方向側壁の一部をエッチングし、前記横方向側壁の第1部分を変更せずに残し、該第1部分から横方向に平行に離れた横方向側壁の第2部分を形成する過程と」の部分
当初明細書の段落番号[0039]第11行及び図27の記載に基づき旧請求項25を実施例4に対応するものであることを明確化したものである。
(略)
(12)請求項22について
当初明細書の段落番号[0024]?[0030]及び図17?21の記載に基づき旧請求項29を実施例2に対応するものであることを明確化したものである。
(略)
4.本発明が特許されるべき理由
(略)
(4)本件の請求項15の発明は、
(略)
また、今回の補正の遡及効により、本請求項は実施例3に対応しており端部エッチングをすることが明確とされていることから、本請求項の発明の技術的意義は明確であると思料する。よって、上記拒絶理由は解消しているものと思料する。
(略)
(5)本件の請求項18の発明は、
(略)
なお、本請求項の発明は、審査段階における旧請求項25に対応するものであり、これに対して、審査官殿は、前記拒絶理由のとおり、引用文献を挙げられていない。また、今回の補正の遡及効により、本請求項は実施例4に対応しており一部のエッチングをすること及び絶縁材料を形成することが明確とされていることから、本請求項の発明の技術的意義は明確であると思料する。よって、上記拒絶理由は解消しているものと思料する。
(略)
5.むすび
(略)
また、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。よって、原査定を取り消す、この出願の発明はこれを特許すべきものとする、とのご審決を求めるところであり、本日付差出の手続補正書の内容につき再度ご検討の上本願を特許すべき旨速やかに査定下さるようお願いする次第である。」


第3.平成18年10月18日付けの手続補正についての却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成18年10月18日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
平成18年10月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成13年3月5日付けで提出された特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書によって補正された請求項(以下、「補正前の請求項」という。)4ないし6、12ないし14、21、30を削除するとともに、補正前の請求項1ないし3、7ないし11、15ないし20、22ないし29、31ないし45をそれぞれ順次繰り上げて、補正後の請求項1ないし3、4ないし8、9ないし14、15ないし22、23ないし37と補正するものであり、その内、補正前の請求項29及びこれに対応する補正後の請求項22は以下のとおりである。

(補正前)
「【請求項29】 絶縁領域形成方法であって、該方法は、
基板上に、下に横たわる該基板の一部分を露出する開口のパターンを有する窒化シリコン層を形成する過程と、
前記基板の中にまで延びる開口を形成するために、下に横たわる基板の露出された一部分をエッチングする過程と、
下に横たわる基板の露出した一部分をエッチングした後、窒化シリコン層の一部分を、該窒化シリコン層の他の部分を前記基板上に残したまま除去するために、前記窒化シリコン層をウェットエッチングする過程と、
前記ウェットエッチングの後、前記基板内の前記開口内に、該開口内の部分が絶縁領域の少なくとも一部分を構成する酸化物を形成する過程と、
からなることを特徴とする絶縁材料形成方法。」
(補正後)
「【請求項22】 絶縁領域形成方法であって、該方法は、
基板上に酸化物層を形成する過程と、
該酸化物層上に窒化シリコン層を形成する過程と、
を有しており、前記窒化シリコン層と前記酸化物層は下に横たわる前記基板、前記窒化シリコン層、及び前記酸化物層の一部を露出させる開口のパターンを有しており、本方法はさらに、
前記下に横たわる基板の露出部分をエッチングし、前記基板内に延び入る開口部を形成する過程を有し、
前記各開口は周囲部を提供し、前記エッチングは該開口の該周囲部の一部を提供する前記酸化物層と前記窒化シリコン層の横方向側壁を形成し、本方法はさらに、
前記下に横たわる基板の前記露出部分のエッチング後に、前記窒化シリコン層をウェットエッチングして該窒化シリコン層の一部を除去し、前記窒化シリコン層の他の部分を前記基板上に残して、前記開口の前記周囲部から外側に前記窒化シリコン層の横方向壁を延長させる過程と、
前記下に横たわる基板の前記露出部分のエッチング後、前記酸化物層の前記横方向壁を前記開口の前記周囲部から外側に延長させ、前記窒化シリコン層をアンダーカットするように前記酸化物層の一部を除去する過程と、
前記ウェットエッチングと前記酸化物層の一部の除去後に、前記基板上に前記窒化シリコン層の前記他の部分を残した状態で、前記基板の前記開口内に絶縁領域の少なくとも一部を形成する酸化物を形成する過程と、
を有していることを特徴とする方法。」

2.補正後の請求項22についての補正事項の整理
補正後の請求項22についての補正は、以下のとおりである。
補正事項a
補正前の請求項29の「基板上に、下に横たわる該基板の一部分を露出する開口のパターンを有する窒化シリコン層を形成する過程と、」を、補正後の請求項22の「基板上に酸化物層を形成する過程と、 該酸化物層上に窒化シリコン層を形成する過程と、を有しており、前記窒化シリコン層と前記酸化物層は下に横たわる前記基板、前記窒化シリコン層、及び前記酸化物層の一部を露出させる開口のパターンを有しており、」と補正すること。
補正事項b
補正前の請求項29の「前記基板の中にまで延びる開口を形成するために、下に横たわる基板の露出された一部分をエッチングする過程と、」を、補正後の請求項22の「本方法はさらに、 前記下に横たわる基板の露出部分をエッチングし、前記基板内に延び入る開口部を形成する過程を有し、 前記各開口は周囲部を提供し、前記エッチングは該開口の該周囲部の一部を提供する前記酸化物層と前記窒化シリコン層の横方向側壁を形成し、」と補正すること。
補正事項c
補正前の請求項29の「下に横たわる基板の露出した一部分をエッチングした後、窒化シリコン層の一部分を、該窒化シリコン層の他の部分を前記基板上に残したまま除去するために、前記窒化シリコン層をウェットエッチングする過程と、」を、補正後の請求項22の「本方法はさらに、 前記下に横たわる基板の前記露出部分のエッチング後に、前記窒化シリコン層をウェットエッチングして該窒化シリコン層の一部を除去し、前記窒化シリコン層の他の部分を前記基板上に残して、前記開口の前記周囲部から外側に前記窒化シリコン層の横方向壁を延長させる過程と、 前記下に横たわる基板の前記露出部分のエッチング後、前記酸化物層の前記横方向壁を前記開口の前記周囲部から外側に延長させ、前記窒化シリコン層をアンダーカットするように前記酸化物層の一部を除去する過程と、」と補正すること。
補正事項d
補正前の請求項29の「前記ウェットエッチングの後、前記基板内の前記開口内に、該開口内の部分が絶縁領域の少なくとも一部分を構成する酸化物を形成する過程と、 からなることを特徴とする絶縁材料形成方法。」を、補正後の請求項22の「前記ウェットエッチングと前記酸化物層の一部の除去後に、前記基板上に前記窒化シリコン層の前記他の部分を残した状態で、前記基板の前記開口内に絶縁領域の少なくとも一部を形成する酸化物を形成する過程と、を有していることを特徴とする方法。」と補正すること。

3.本件補正の目的の適否についての検討
補正事項a及び補正事項cについてそれぞれ検討する。

3-1.補正事項aについて
補正事項aに関して、補正前の請求項29に係る発明は、「・・・窒化シリコン層を形成する過程」を発明特定事項として有しているのに対して、補正後の請求項22に係る発明は、「・・・酸化物層を形成する過程」及び「・・・窒化シリコン層を形成する過程」を発明特定事項として有しており、補正後の請求項22に係る発明の「・・・酸化物層を形成する過程」に対応する発明特定事項は、補正前の請求項29に係る発明には存在しない。また、補正前の請求項29に係る発明では、上記「酸化物層」自体も発明特定事項となっていない。
よって、補正後の請求項22に係る発明の発明特定事項である「基板上に酸化物層を形成する過程」は、補正前の請求項29に係る発明のいずれの発明特定事項を限定するものでもなく、新たな「過程」を発明特定事項として追加するものであるから、補正事項aについての補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。また、当該補正が、同法第17条の2第4項のその余のいずれの号に掲げる事項を目的とするものにも該当しないことは明らかである。

3-2.補正事項cについて
補正事項cに関して、補正前の請求項29に係る発明は、「・・・前記窒化シリコン層をウェットエッチングする過程」を発明特定事項として有しているのに対して、補正後の請求項22に係る発明は、「・・・前記窒化シリコン層をウェットエッチングして・・・延長させる過程」及び「・・・前記酸化物層の一部を除去する過程」を発明特定事項として有しており、補正後の請求項22に係る発明の「・・・前記酸化物層の一部を除去する過程」に対応する発明特定事項は、補正前の請求項29に係る発明には存在しない。また、補正前の請求項29に係る発明では、上記「酸化物層」自体も発明特定事項となっていない。
よって、補正後の請求項22に係る発明の発明特定事項である「前記下に横たわる基板の前記露出部分のエッチング後、前記酸化物層の前記横方向壁を前記開口の前記周囲部から外側に延長させ、前記窒化シリコン層をアンダーカットするように前記酸化物層の一部を除去する過程」は、補正前の請求項29に係る発明のいずれの発明特定事項を限定するものでもなく、新たな「過程」を発明特定事項として追加するものであるから、補正事項cについての補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。また、当該補正が、同法第17条の2第4項のその余のいずれの号に掲げる事項を目的とするものにも該当しないことは明らかである。

3-3.補正の目的の適否についてのむすび
したがって、補正事項a及び補正事項cについての補正を含む本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていない。

4.補正の却下の決定についてのむすび
以上検討したとおり、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第4.本願の請求項に係る発明について
平成18年10月18日付けの手続補正は上記「第3.」のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし45に係る発明は、平成13年3月5日付けで提出された平成12年9月20日付け特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書により補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)及び図面の記載からみて、その請求項1ないし45に記載された事項により特定されるものであり、その内の請求項22及び請求項25に係る発明は、以下のとおりのものである。

「【請求項22】 絶縁領域形成方法であって、該方法は、
基板上にマスク層を形成する過程と、
前記マスク層を通って下に横たわる基板の中まで延びる周囲部を画定する開口のパターンを形成する過程であって、前記マスク層は前記周囲部の一部分を画定する横方向壁を有する過程と、
前記開口を形成した後、第1マスク層の横方向壁の一部分を端部エッチングする過程と、
端部エッチングの後、前記開口内に前記基板の中まで延びる絶縁材料であって、前記開口内の絶縁材料が絶縁領域の少なくとも一部分を構成する絶縁材料を形成する過程と、
からなることを特徴とする絶縁領域形成方法。」
「【請求項25】 絶縁領域形成方法であって、該方法は、
基板上にマスク層を形成する過程と、
前記マスク層を通して下に横たわる基板の中まで延びる開口のパターンを形成する過程であって、第1マスク層は前記開口に近い位置にエッジ領域を有し、また前記エッジ領域の間に中央領域を有している、開口のパターンを形成する過程と、
前記開口を下に横たわる基板の中にまで延長した後、前記マスク層の厚さを、前記エッジ領域のところで、該エッジ領域の面取りが行われることなく、前記中央領域に対して前記エッジ領域が薄くなるように減少させる過程と、
前記開口内に前記基板の中にまで延びる絶縁材料であって、絶縁領域の少なくとも一部分を構成する絶縁材料を形成する過程と、
からなることを特徴とする絶縁領域形成方法。」


第5.本願明細書の記載について
本願明細書には、以下の事項が記載されている。

1.従来の技術に関する記載
「 【0002】 【従来の技術】 近頃の半導体装置応用例では、多数の個別デバイスが、半導体基板の単一小領域上に詰め込まれる。これら個別デバイスの多くは、互いに電気的に絶縁される必要がある。そのような絶縁を達成するための一つの方法は、隣り合ったデバイスの間にトレンチ状絶縁領域を形成することである。そのようなトレンチ状絶縁領域は、通常半導体基板内に形成されまた例えば二酸化シリコン等の絶縁材料で充填された溝(トレンチ)又は窪みからなる。・・・ 【0003】 図1乃至図12を参照しながら、トレンチ構造を形成するための従来の方法を説明する。先ず図1を参照すると、ここには、従来の処理過程の予備段階における半導体ウェーハ片10が示されている。ウェーハ片10は半導体材料層12を有し、その上に酸化層14、窒化物層16、及びパターン化されたフォトレジスト層18が形成されている。・・・ 【0004】 酸化物層14は典型的には二酸化シリコンからなり、また窒化物層16は典型的には窒化シリコンからなる。窒化物層16は通常、約400Åから約920Åの厚さである。 【0005】 図2を参照すると、パターン化されたフォトレジスト層18は、エッチング処理のためのマスク材として使用されている。エッチングは、典型的には、ドライプラズマ条件で且つCH_(2)F_(2)/CF_(4)の化学的性質を利用して実施される。そのようなエッチングは、それらを通して延びる開口20を形成するために、窒化シリコン層16及びパッド酸化物層14の両方を効率よくエッチングする。開口20の周縁部は、窒化物側壁17及び酸化物側壁15によって画定される。エッチングはシリコン基板12に達した時点で終了する。 【0006】 図3を参照すると、2番目のエッチングが、開口20をシリコン基板の中へ延長するように行われる。この2番目のエッチングは一般的には、“トレンチ開始エッチング”と言われるものである。このトレンチ開始エッチングは、典型的には、CF_(4)/HBrを用いた時限ドライプラズマエッチングであり、典型的には、開口20を基板12の中に約500Åと同等又はこれより浅く延ばす。・・・ 【0007】 図4を参照すると、3番目のエッチングが、開口20を基板12内に更に延長し、そして基板12内にトレンチを形成するように実施される。延長された開口20は基板12によって画定される周囲部22を有する。3番目のエッチングは典型的には、全体がHBrからなるエッチング剤が用いられ、また典型的には時限エッチングである。・・・ 【0008】 図5を参照すると、フォトレジスト層18(図4参照)が除去されており、また、第1酸化物層24が開口20内にそしてシリコン基板12によって画定される周囲部22(図4参照)に沿って熱的に成長している。酸化物層24の成長は、窒化物層16の側壁縁17のところに横たわる小さなバーズビーク領域26を形成する。 【0009】 図6を参照すると、高濃度プラズマ酸化物28が、開口20(図5参照)を充填しそして窒化物層16上に横たわるように形成されている。高濃度プラズマ酸化物28は酸化物層24(図5参照)と同化し、開口20(図5参照)内に酸化物プラグ30を形成する。酸化物プラグ30は、開口20内に横方向の最も外側の周囲部33を有する。 【0010】 図7を参照すると、ウェーハ片10は、酸化物プラグ30の上側表面を平らにするために平坦化(例えば、化学・機械研磨法を用いて)される。平坦化工程は、窒化物層16の表面に達した時点で止められる。 【0011】 図8を参照すると、酸化物プラグ30の間のパッド酸化物層14を露出させるために、窒化物層16が除去されている。 【0012】 図9を参照すると、パッド酸化物層(図8参照)が除去されている。パッド酸化物層を除去することにより、酸化物プラグ30の縁部分に窪み32が残される。 【0013】 図10を参照すると、基板12上と酸化物プラグ30間に、犠牲酸化物層34が成長されている。 【0014】 図11を参照すると、犠牲酸化物層34(図10参照)が除去されている。犠牲酸化物層34の形成と除去は、酸化物プラグ30の間の基板の表面を清浄化するために利用される。基板12のそのような表面は、最終的にはトランジスタ装置の活性領域を形成するために利用されるので、表面にほぼ欠陥が無いことが望ましい。犠牲酸化物層34の除去はまた、窪み32の状態を好ましくなく悪化させる。 【0015】 図12を参照すると、二酸化シリコン層36が酸化物プラグ30の間に再成長されており、そしてポリシリコン層38が、酸化物プラグ30及び酸化物層36上に形成されている。ポリシリコン層38は、最終的には、トランジスタゲート領域を含むワード線に形成することができる。プラグ30は従って、トランジスタ装置間のトレンチ状絶縁領域として機能する。窪み32はトランジスタ装置に近接して寄生デバイスを好ましくなく形成することになり、そして最終的にはトランジスタ装置のしきい値電圧を低下させる効果を持つものである。したがって、窪み32の形成を軽減することが望ましい。窪み32はまた次の製造処理過程を妨げるものであり、この意味においても、窪み32の形成は避けるべきである。」

2.本発明の実施例に関する記載
「 【0018】 【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施例を説明する。本発明は、図1乃至図12に示されている従来技術の処理過程に関連して上で説明した窪み32を減少させることができる方法に関するものである。」

2-1.第1実施例に関する記載
「本発明の第1実施例を図13乃至図16を参照して説明する。・・・ 【0021】 図14を参照すると、ウェーハ片10aに対して、例えば図4に関連して上で述べたHBrエッチング等のシリコンエッチングが実施される。そのようなエッチングは、開口40を基板12内まで延長し、また、窒化物層16及び酸化物層14の露出された部分を除去するものである。したがって、エッチングは、第2マスク層の横方向周囲部(側壁17によって画定される)を、第2マスク層の厚さを減少させることなく、開口から外側に向かって移動させる。エッチングの後、開口40は、酸化物層14の下に、段差42(曲面化された角に相当する)を有する。この段差42は、開口40の広い上部部分が開口40の狭い下部部分に接続する領域を画定する。 ・・・」

2-2.第3実施例に関する記載
「 【0031】 本発明の第3実施例を、図22乃至図25を参照して説明する。・・・ 【0032】 図22を参照すると、第2実施例の処理方法の予備段階におけるウェーハ片10cが示されている。・・・ 【0033】 図23を参照すると、窒化物層16は、エッジ部分17に近い窒化物層16の一部分の厚さを薄くするために、端部エッチングに付される。端部エッチングは、例えば、アルゴンをフッ素含有化合物(例えば、CH_(2)F_(2))と組合わせて用いるプラズマエッチングを含むものである。アルゴンとフッ素含有ガスの混合物は、フッ素含有ガスを約5%(体積で)と同等又はそれより少なく有することが好ましい。端部エッチングの例示的な圧力条件は、約2mTorrから約20mTorrである。 【0034】 端部エッチングの前か後に、ウェーハ片10cは、窒化物層16のエッジ部分17の下から酸化物層14の一部分を除去するために、HFエッチングに付される。酸化物層14の一部分を除去することにより、シリコン基板12の上側表面の露出した角部61が残ることになる。 【0035】 図24を参照すると、ウェーハ片10cは、開口60内に酸化物層62を形成する酸化過程に付される。熱酸化の前の窒化物層16の端部エッチングは、窒化物層16のエッジ部分の持ち上がりにより、角部61に丸みをもたらす。角部61の丸みは、図5に関連して上で説明した従来技術における如何なる相似的な角部の丸みより顕著である。 【0036】 図6乃至12に示す従来技術の処理過程に相似的な次の処理過程により、絶縁領域64及び該絶縁領域64上に横たわるポリシリコン層66を有する図25の構造が形成される。・・・ 【0037】 図25は、丸みを帯びた角部61が従来技術における窪み32(図12参照)の形成を軽減していることを示している。」

2-3.第4実施例に関する記載
「 【0038】 次に、図26乃至図29を参照しながら、本発明の第4実施例を説明する。・・・ 【0039】 図26を参照すると、第2実施例の処理方法の予備段階におけるウェーハ片10dが示されている。・・・ 【0040】 図27を参照すると、窒化物層16の露出された部分は、この部分の厚さを薄くするために、図18に関連して上で説明した、例えばリン酸エッチングなどの追加的エッチング環境に晒される。具体的には、元々の窒化物層が厚さ“A”(窒化物層のエッチングが行われていない中央領域の厚さ)で、窒化物層のエッチングされた部分(エッジ部分)の厚さが“B”であるなら、“B”は“A”の約半分であることが好ましい。このエッチングは、窒化物層16の最も遠い横方向周囲部(側壁17によって画定される)を、開口70から外側方向に向けては移動させない。 【0041】 図28を参照すると、ウェーハ片10dは、開口70内に酸化物層72を成長させる酸化環境に晒される。窒化物層16の薄くされた領域は、成長する酸化物によって比較的容易に持ち上げられ、その結果、“バーズビーク”が窒化物層16の薄くされた領域の下に形成されることになる。このバーズビークは、図5に関連して上で説明した従来技術の処理過程の間に形成される如何なるバーズビークに対して延び出ているものである。フォトレジスト層18は、ウェーハ片10dを酸化環境に晒す前に除去される。 【0042】 図29を参照すると、ウェーハ片10dは、絶縁領域74及び該絶縁領域74上に横たわるポリシリコン層38を形成するために、図6乃至図12に関連して上で説明した従来技術の処理過程に相似的な次の処理環境に晒される。・・・ 【0043】 図26乃至図29の処理は、上の“従来の技術”の項目で説明した従来技術での窪み32の形成を軽減する(窪み32が無いものとして示されている)。」


第6.当審の判断

1.本願明細書の開示内容の検討
1-1.本願発明の課題について
上記「第5.」の「1.」で摘記したとおり、本願明細書には、従来の技術として、「図9を参照すると、パッド酸化物層(図8参照)が除去されている。パッド酸化物層を除去することにより、酸化物プラグ30の縁部分に窪み32が残される。」(0012段落)、「図11を参照すると、犠牲酸化物層34(図10参照)が除去されている。・・・犠牲酸化物層34の除去はまた、窪み32の状態を好ましくなく悪化させる。」(0014段落)、「窪み32はトランジスタ装置に近接して寄生デバイスを好ましくなく形成することになり、そして最終的にはトランジスタ装置のしきい値電圧を低下させる効果を持つものである。したがって、窪み32の形成を軽減することが望ましい。窪み32はまた次の製造処理過程を妨げるものであり、この意味においても、窪み32の形成は避けるべきである。」(0015段落)と記載されており、「パッド酸化物層を除去する」工程及び「犠牲酸化物層34の除去」工程によって「酸化物プラグ30の縁部分」に形成される「窪み32」が、「トランジスタ装置に近接して寄生デバイスを好ましくなく形成する」、「最終的にはトランジスタ装置のしきい値電圧を低下させる」、「次の製造処理過程を妨げる」等の点で避けるべき対象として認識されていることが明らかである。
また、上記「第5.」の「2.」で摘記したとおり、本願明細書には、「本発明は、図1乃至図12に示されている従来技術の処理過程に関連して上で説明した窪み32を減少させることができる方法に関するものである。」(0018段落)と記載されており、本発明が「従来技術の処理過程」における「窪み32を減少させる」ための方法であることも明らかである。
よって、本願発明の課題が、「酸化物プラグ30の縁部分」に形成される「窪み32を減少させる」ことであることは、本願明細書の記載より明らかである。

1-2.第3実施例について
上記「第5.」の「2-2.」で摘記したとおり、本願明細書には、第3実施例に関して、「図23を参照すると、窒化物層16は、エッジ部分17に近い窒化物層16の一部分の厚さを薄くするために、端部エッチングに付される。」(0033段落)、「図24を参照すると、ウェーハ片10cは、開口60内に酸化物層62を形成する酸化過程に付される。熱酸化の前の窒化物層16の端部エッチングは、窒化物層16のエッジ部分の持ち上がりにより、角部61に丸みをもたらす。角部61の丸みは、図5に関連して上で説明した従来技術における如何なる相似的な角部の丸みより顕著である。」(0035段落)、「図25は、丸みを帯びた角部61が従来技術における窪み32(図12参照)の形成を軽減していることを示している。」(0037段落)と記載されている。
よって、第3実施例は、「エッジ部分17に近い窒化物層16の一部分の厚さを薄くするために、端部エッチング」を行って、「開口60内に酸化物層62を形成する酸化過程」の際に「窒化物層16のエッジ部分の持ち上がりにより、角部61に」「従来技術における如何なる相似的な角部の丸みより顕著な」「丸みをもたらす」構成とすることにより、「従来技術における窪み32(図12参照)の形成を軽減」という課題の解決を実現するものである。

1-3.第4実施例について
上記「第5.」の「2-3.」で摘記したとおり、本願明細書には、第4実施例に関して、「図27を参照すると、窒化物層16の露出された部分は、この部分の厚さを薄くするために、図18に関連して上で説明した、例えばリン酸エッチングなどの追加的エッチング環境に晒される。具体的には、元々の窒化物層が厚さ“A”(窒化物層のエッチングが行われていない中央領域の厚さ)で、窒化物層のエッチングされた部分(エッジ部分)の厚さが“B”であるなら、“B”は“A”の約半分であることが好ましい。」(0040段落)、「図28を参照すると、ウェーハ片10dは、開口70内に酸化物層72を成長させる酸化環境に晒される。窒化物層16の薄くされた領域は、成長する酸化物によって比較的容易に持ち上げられ、その結果、“バーズビーク”が窒化物層16の薄くされた領域の下に形成されることになる。このバーズビークは、図5に関連して上で説明した従来技術の処理過程の間に形成される如何なるバーズビークに対して延び出ているものである。」(0041段落)、「図26乃至図29の処理は、上の“従来の技術”の項目で説明した従来技術での窪み32の形成を軽減する(窪み32が無いものとして示されている)。」(0043段落)と記載されている。
よって、第4実施例は、「窒化物層16の露出された部分は、この部分の厚さを薄くするために、」「例えばリン酸エッチングなどの追加的エッチング」を行って、「開口70内に酸化物層72を成長させる酸化環境に晒される」際に「窒化物層16の薄くされた領域」(「エッジ部分」)「は、成長する酸化物によって比較的容易に持ち上げられ、」「従来技術の処理過程の間に形成される如何なるバーズビークに対して延び出ている」「“バーズビーク”が窒化物層16の薄くされた領域の下に形成される」構成とすることにより、「従来技術での窪み32の形成を軽減」という課題の解決を実現するものである。

1-4.本願発明のまとめ
上記「1-1.」で検討したとおり、本願発明の課題は、「酸化物プラグ30の縁部分」に形成される「窪み32を減少させる」ことであることは、本願明細書の記載より明らかである。
また、上記「1-2.」及び「1-3.」で検討したとおり、本願発明の課題を解決するための手段として、第3実施例及び第4実施例では、「端部エッチング」(第3実施例)、「例えばリン酸エッチングなどの追加的エッチング」(第4実施例)等のエッチングにより、窒化物層のエッジ部分の厚さを薄くしておき、後の開口内に酸化物層を形成する酸化過程で窒化物層のエッジ部分を持ち上げることにより、「角部61の丸み」(第3実施例)、「バーズビーク」(第4実施例)等の厚い酸化物を従来技術よりも大きくしたことを利用する発明が開示されているものと認められる。
ここで、第3実施例及び第4実施例の発明についてさらに検討すると、エッチングにより窒化物層のエッジ部分の厚さを薄くすることが、その後の開口内に酸化物層を形成する酸化過程で窒化物層のエッジ部分が持ち上がりやすくなることと密接に関連していることは、明らかである。すなわち、エッチングにより窒化物層のエッジ部分の厚さを薄くする過程は、後に酸化過程を伴うことによってはじめて技術的意義を有し、課題を解決できるものであり、逆にいえば、窒化物層のエッジ部分の厚さを薄くするだけで後に酸化過程を伴わない場合については、技術的意義が不明である。そして、第3実施例及び第4実施例以外の、本願明細書の全記載を参照しても、窒化物層のエッジ部分の厚さを薄くするだけで後に酸化過程を伴わない場合に対して、技術的意義が認められるような記載はない。

2.本願の請求項に係る発明の検討
2-1.請求項22について
本願の請求項22に係る発明は、上記「第4.」に記載したとおりの、
「絶縁領域形成方法であって、該方法は、
基板上にマスク層を形成する過程と、
前記マスク層を通って下に横たわる基板の中まで延びる周囲部を画定する開口のパターンを形成する過程であって、前記マスク層は前記周囲部の一部分を画定する横方向壁を有する過程と、
前記開口を形成した後、第1マスク層の横方向壁の一部分を端部エッチングする過程と、
端部エッチングの後、前記開口内に前記基板の中まで延びる絶縁材料であって、前記開口内の絶縁材料が絶縁領域の少なくとも一部分を構成する絶縁材料を形成する過程と、
からなることを特徴とする絶縁領域形成方法。」
である。
請求項22は、「前記開口を形成した後、第1マスク層の横方向壁の一部分を端部エッチングする過程」を有していることから、第3実施例(「端部エッチング」との用語は第3実施例においてのみ用いられている)に対応するものであるが、その後の工程としては、「端部エッチングの後、前記開口内に前記基板の中まで延びる絶縁材料であって、前記開口内の絶縁材料が絶縁領域の少なくとも一部分を構成する絶縁材料を形成する過程」と記載されているのみであり、酸化を行うことは特定されていない。そして、「前記開口内に前記基板の中まで延びる絶縁材料であって、前記開口内の絶縁材料が絶縁領域の少なくとも一部分を構成する絶縁材料を形成する」という記載のみでは、必ずしも酸化を行うことを意味せず、絶縁材料を堆積すること、窒化を行うこと等、様々な場合が含まれ得る。
よって、本願の請求項22に係る発明は、「前記開口を形成した後、第1マスク層の横方向壁の一部分を端部エッチングする過程」という、窒化物層のエッジ部分の厚さを薄くする過程を有しているものの、その後の開口内に酸化物層を形成する酸化過程を伴わない場合を含んでいるから、上記「1-4.」で検討したとおり、技術的意義が不明である。

2-2.請求項25について
本願の請求項25に係る発明は、上記「第4.」に記載したとおりの、
「絶縁領域形成方法であって、該方法は、
基板上にマスク層を形成する過程と、
前記マスク層を通して下に横たわる基板の中まで延びる開口のパターンを形成する過程であって、第1マスク層は前記開口に近い位置にエッジ領域を有し、また前記エッジ領域の間に中央領域を有している、開口のパターンを形成する過程と、
前記開口を下に横たわる基板の中にまで延長した後、前記マスク層の厚さを、前記エッジ領域のところで、該エッジ領域の面取りが行われることなく、前記中央領域に対して前記エッジ領域が薄くなるように減少させる過程と、
前記開口内に前記基板の中にまで延びる絶縁材料であって、絶縁領域の少なくとも一部分を構成する絶縁材料を形成する過程と、
からなることを特徴とする絶縁領域形成方法。」
である。
請求項25は、「前記マスク層の厚さを、前記エッジ領域のところで、該エッジ領域の面取りが行われることなく、前記中央領域に対して前記エッジ領域が薄くなるように減少させる過程」を有していることから、第4実施例に対応するものであるが、その後の工程としては、「前記開口内に前記基板の中にまで延びる絶縁材料であって、絶縁領域の少なくとも一部分を構成する絶縁材料を形成する過程」と記載されているのみであり、酸化を行うことは特定されていない。そして、「前記開口内に前記基板の中にまで延びる絶縁材料であって、絶縁領域の少なくとも一部分を構成する絶縁材料を形成する」という記載のみでは、必ずしも酸化を行うことを意味せず、絶縁材料を堆積すること、窒化を行うこと等、様々な場合が含まれ得る。
よって、本願の請求項25に係る発明は、「前記マスク層の厚さを、前記エッジ領域のところで、該エッジ領域の面取りが行われることなく、前記中央領域に対して前記エッジ領域が薄くなるように減少させる過程」という、窒化物層のエッジ部分の厚さを薄くする過程を有しているものの、その後の開口内に酸化物層を形成する酸化過程を伴わない場合を含んでいるから、上記「1-4.」で検討したとおり、技術的意義が不明である。

3.拒絶理由通知についての検討
3-1.拒絶理由通知の指摘内容の整理
原審における拒絶理由通知において、本願の請求項1ないし45は、以下の理由により、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないと指摘している。

「本願発明は、明細書の記載からすれば、トレンチ分離領域の窪みの発生を防止することを課題として、トレンチ形成時のマスクに工夫を加えた上で、トレンチのコーナーをエッチングするか、或いはトレンチ内壁及び基板表面を熱酸化することで、トレンチのコーナーにある酸化膜の厚みを確保することにあるものと認められる。しかしながら、請求項1?45には、コーナーをエッチングすることか或いはトレンチ内壁及び基板表面を熱酸化することが記載されておらず、課題を解決するための手段が記載されていないことから、請求項1?45に係る発明の技術的意義が不明である。よって、本願の請求項1?45に係る発明は不明確である。」

ここで、拒絶理由通知では、「トレンチのコーナーをエッチングするか、或いはトレンチ内壁及び基板表面を熱酸化すること」、「コーナーをエッチングすることか或いはトレンチ内壁及び基板表面を熱酸化すること」と択一的に指摘しているが、少なくとも第3実施例及び第4実施例に対応する請求項に対しては、「トレンチ内壁及び基板表面を熱酸化すること」が適用されることは明らかであるから、第3実施例及び第4実施例に対応する請求項に対する拒絶理由通知の指摘内容は、以下のとおりである。

「本願発明は、明細書の記載からすれば、トレンチ分離領域の窪みの発生を防止することを課題として、トレンチ形成時のマスクに工夫を加えた上で、トレンチ内壁及び基板表面を熱酸化することで、トレンチのコーナーにある酸化膜の厚みを確保することにあるものと認められる。しかしながら、請求項には、トレンチ内壁及び基板表面を熱酸化することが記載されておらず、課題を解決するための手段が記載されていないことから、請求項に係る発明の技術的意義が不明である。よって、本願の請求項に係る発明は不明確である。」

3-2.請求項22に対する拒絶理由通知の検討
請求項22に係る発明について検討すると、上記「2-1.」で検討したとおり、「前記開口を形成した後、第1マスク層の横方向壁の一部分を端部エッチングする過程」を有しており第3実施例に対応するが、上記「2-1.」で検討したとおり、その後の開口内に酸化物層を形成する酸化過程を伴わない場合を含んでおり、技術的意義が不明である。
よって、拒絶理由通知において、請求項22にはトレンチ内壁及び基板表面を熱酸化することが記載されておらず、課題を解決するための手段が記載されていないから、発明の技術的意義が不明であり、本願の請求項22に係る発明は不明確であると指摘した点は、依然として解消していない。

3-3.請求項25に対する拒絶理由通知の検討
請求項25に係る発明について検討すると、上記「2-2.」で検討したとおり、「前記マスク層の厚さを、前記エッジ領域のところで、該エッジ領域の面取りが行われることなく、前記中央領域に対して前記エッジ領域が薄くなるように減少させる過程」を有しており第4実施例に対応するが、上記「2-2.」で検討したとおり、その後の開口内に酸化物層を形成する酸化過程を伴わない場合を含んでおり、技術的意義が不明である。
よって、拒絶理由通知において、請求項25にはトレンチ内壁及び基板表面を熱酸化することが記載されておらず、課題を解決するための手段が記載されていないから、発明の技術的意義が不明であり、本願の請求項25に係る発明は不明確であると指摘した点は、依然として解消していない。

3-4.審判請求書の検討
審判請求人は、審判請求書の請求の理由の「4.本発明が特許されるべき理由」において、補正後の請求項15(補正前の請求項22に対応)に対して「また、今回の補正の遡及効により、本請求項は実施例3に対応しており端部エッチングをすることが明確とされていることから、本請求項の発明の技術的意義は明確であると思料する。よって、上記拒絶理由は解消しているものと思料する。」、補正後の請求項18(補正前の請求項25に対応)に対して「また、今回の補正の遡及効により、本請求項は実施例4に対応しており一部のエッチングをすること及び絶縁材料を形成することが明確とされていることから、本請求項の発明の技術的意義は明確であると思料する。よって、上記拒絶理由は解消しているものと思料する。」とそれぞれ主張し、「5.むすび」において、「この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。」と主張している。
しかしながら、上記「1-4.」で検討したとおり、本願の第3実施例及び第4実施例は、エッチングにより窒化物層のエッジ部分の厚さを薄くする過程だけでなく、後に酸化過程を伴うことによってはじめて技術的意義を有し、課題を解決できるものである。また、上記「2-1.」及び「2-2.」で検討したとおり、「・・・絶縁材料を形成する」という記載のみでは、必ずしも酸化を行うことを意味せず、絶縁材料を堆積すること、窒化を行うこと等、様々な場合が含まれ得る。よって、仮に「端部エッチングをすることが明確とされている」または「一部のエッチングをすること及び絶縁材料を形成することが明確とされている」としても、それのみでは発明の技術的意義が明確とならないことは明らかである。
また、拒絶理由通知において指摘した「トレンチのコーナーをエッチングする」とは、窒化物層のコーナーをエッチングすることを意味しているわけではなく、本願明細書の第1実施例について「図14を参照すると、ウェーハ片10aに対して、例えば図4に関連して上で述べたHBrエッチング等のシリコンエッチングが実施される。・・・エッチングの後、開口40は、酸化物層14の下に、段差42(曲面化された角に相当する)を有する。この段差42は、開口40の広い上部部分が開口40の狭い下部部分に接続する領域を画定する。」(0021段落)と記載されているような、シリコン基板に形成されたトレンチのコーナーをエッチングすることを意味するものである。これは、本願明細書において、「図3を参照すると、2番目のエッチングが、開口20をシリコン基板の中へ延長するように行われる。この2番目のエッチングは一般的には、“トレンチ開始エッチング”と言われるものである。このトレンチ開始エッチングは、典型的には、CF_(4)/HBrを用いた時限ドライプラズマエッチングであり、典型的には、開口20を基板12の中に約500Åと同等又はこれより浅く延ばす。」(0006段落)と記載されているように、シリコン基板をエッチングする段階になってから「トレンチ開始エッチング」と認識されていることからも明らかである。
よって、審判請求書における審判請求人の主張は、採用することができない。

4.当審の判断についてのまとめ
したがって、本願の請求項22及び請求項25の記載は、発明の技術的意義が不明であって、特許を受けようとする発明が明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


第7.むすび
以上検討したとおり、本願の請求項22及び請求項25の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、他の請求項についての検討を行うまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-19 
結審通知日 2009-06-23 
審決日 2009-06-26 
出願番号 特願2000-569444(P2000-569444)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H01L)
P 1 8・ 537- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井原 純  
特許庁審判長 河合 章
特許庁審判官 廣瀬 文雄
安田 雅彦
発明の名称 絶縁領域形成方法  
代理人 廣江 武典  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ