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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1207909
審判番号 不服2007-17266  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-21 
確定日 2009-12-02 
事件の表示 平成10年特許願第 66891号「薬液用包装袋」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 9月28日出願公開、特開平11-263355〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続の経緯
本願は、平成10年3月17日の出願であって、平成19年5月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年6月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
そして、当審において、平成21年1月21日付けで拒絶理由通知が通知され、これに対して同年3月30日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2. 本願発明
本願の請求項1または2に係る発明は、平成21年3月30日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1または2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1には下記のとおり記載されている。
「薬液投与用チューブと嵌合接続可能な接続部材を有し、ポリプロピレンフィルムをシーラント層とする表裏2枚の合成樹脂フィルムの周縁部を熱融着したレトルト殺菌可能な薬液用包装袋であって、前記接続部材は薄肉部または脆弱部よりなる手で折って開口可能な開口手段を設けて予め封鎖されたチューブ接続部と熱溶着部とを有する合成樹脂成形品よりなり、前記熱溶着部と表裏2枚の合成樹脂フィルムとを水密に熱溶着して包装袋内部に前記チューブ接続部を収納する接続部材収納部を設け、使用時まで前記チューブ接続部の滅菌状態を保つことを可能としたことを特徴とする薬液用包装袋。」(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

3. 引用発明
3-1.これに対して、実願平5-69299号(実開平7-37942号)のCD-ROM(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
(a)「【0012】
本考案は、以下に示すように、様々な形態で実施可能である。
まず、前記フィルムFは、熱可塑性樹脂フィルムや、金属ホイルの表裏両面を熱可塑性樹脂で被覆したものや、金属を蒸着加工したフィルム又は紙等の表裏両面を熱可塑性樹脂で被覆したもの等から構成してよい。
【0013】
次に、前記袋体10は、自立袋、三方シール、四方シール等から成形される容器であってよい。
次に、前記第1の袋状容器の排出口ユニット20は、ポリエチレン、ポリプロピレン等から形成してよい。ただし、中・硬質系のポリエチレン等から形成する場合には、フィルムFと溶着し易いように、軸方向に垂直な断面を偏平形に形成することが好ましい。また、軟質系のポリエチレン等から形成する場合には、軸方向に垂直な断面が偏平形であってもよいし、円形であってもよい。」

(b)「【0016】
次に、前記袋体10の周縁部を切断し易いように、予めフィルムF上に目印となる切断線を設けておくことが好ましい。
【0017】
【作用】
本考案による第1の袋状容器によれば、内容物の詰め替えは以下の要領で行われる。すなわち、第2の内部空間15が第1の内部空間14の上方に位置するような状態で、横断固着部13の中空中間部15側に沿って袋体10を切断除去する。次に、排出口21からキャップ27を取り外す。そして、袋体10の側部を手で持って傾けながら、排出口21から内容物を排出する。」

(c)「【0021】
【実施例】
以下、本考案の4つの実施例について図面に基づいて説明する。なお、実施例の袋状容器は、いずれも自立袋(スタンディング袋)と称されるタイプに属する容器であり、袋体10と、この袋体10に収容される内容物を排出する排出口ユニット20とから構成されている。
(実施例1)
始めに、図1から図3の図面を参照して本考案の実施例1を説明する。図1は、実施例1の袋状容器の正面図である。また、図2と図3は、実施例1の排出口ユニット20の斜視図である。
【0022】
実施例1において、袋体10は、ポリエステル/アルミニウムホイル/ポリアミド/ポリエチレンの構成からなる柔軟な複層フィルムFの周縁部内面を相互に熱溶着させて、略直方体の袋状に形成されている。ここでは、周縁部内面を相互に熱溶着した部分を周縁固着部11と呼ぶ。なお、周縁固着部11は、接着剤などによって接着させることもできる。
【0023】
前記袋体10の底面部18は、空の状態では中に折り込んで平坦にすることができ、一方、内容物充填時及び充填後には、この底面部18を左右に拡げることができるようになっている。そして底面部18は、その拡がりによって袋状容器を自立せしめることができるようになっている。
【0024】
前記袋体10の右上側の角部には、袋体10表面を二分するよう隣り合う周縁固着部11間を横断する横断部12が形成されている。この横断部12の中間部12aを除いた部分のフィルムF内面は、液密に熱溶着されている。この熱溶着される部分を横断固着部13と呼ぶ。なお、横断固着部13は、接着剤などによって接着させることもできる。
【0025】
前記横断固着部13によって二分される袋体10の内部空間は、袋体10の基端側に位置する第1の内部空間が内容物を収容する内容物収容部14にされており、袋体10の先端側に位置する第2の内部空間が中空の中空空間部15にされている。
【0026】
この中空空間部15側に沿って袋体10を切断除去するための目印となる切断線16が、前記フィルムF上に形成されている。
実施例1において、排出口ユニット20は、硬質ポリエチレンで偏平形の筒状に形成される胴部22を有している。この胴部22の基端は、前記内容物収容部14に進入するように形成されている。また、この胴部22の先端には、前記中空空間部15に進入するように形成され、前記内容物収容部14に収容され内容物を排出する排出口21が設けられている。この排出口21には、この排出口21を閉塞するキャップ27が着脱自在に嵌合している。そして、胴部22の外周面は、前記横断部12の中間部12a内周面に離脱不能でかつ液密に熱溶着されている。
【0027】
次に、実施例1の作用について説明する。
まず、内容物の詰め替えは以下の要領で行われる。すなわち、中空空間部15が内容物収容部14の上方に位置するような状態で、切断線16に沿って袋体10の周縁固着部11を切断除去する。
【0028】
次に、排出口21からキャップ27を取り外す。そして、袋体10の側部を手で持って傾けながら、排出口21から内容物を排出する。ここで、内容物を内容物収容部14内に残したまま排出を終える場合は、排出口21にキャップ27を取り付けておくことが好ましい。また、内容物を使いきった場合は、袋体10のフィルムFを折り曲げておくことによって、かさばらずに廃棄することが可能である。」

以上の記載(a)?(c)及び図面の記載から、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
「排出口ユニット20を有し、熱可塑性樹脂フィルムをシーラント層とする表裏2枚の合成樹脂フィルムの周縁部を熱融着した袋状容器であって、前記排出口ユニットはキャップ27及び排出口21と胴部22とを有する合成樹脂よりなり、前記胴部22と表裏2枚の合成樹脂フィルムとを液密に熱溶着して包装袋内部に前記キャップ27及び排出口21を収納する第2の内部空間15を設け、詰め替え時に切断線16に沿って袋体の周縁固着部を切断除去する袋状容器。」

3-2.特開平10-53251号公報(以下、「刊行物2」という。)には次の記載がある。
(d)「【請求項1】容器に対して取り付けられるキャップ本体と、該キャップ本体に対して着脱自在に被着可能なカバーキャップと、を備え、前記キャップ本体には第1チューブが嵌合される第1チューブ嵌合部を有する第1ノズルが設けられ、一方、前記カバーキャップには、第2チューブが嵌合される第2チューブ嵌合部と、前記第1ノズル先端が液密に嵌合するノズル嵌合部を有する第2ノズルが設けられ、第1チューブを使用する場合には、カバーキャップを外してキャップ本体の第1ノズルの第1チューブ嵌合部に第1チューブを嵌合し、第2チューブを使用する場合には、キャップ本体にカバーキャップを装着し、該カバーキャップの第2ノズルの第2チューブ嵌合部に第2チューブを嵌合することを特徴とするチューブ接続用キャップ。
【請求項2】第1ノズルの先端部は、第1ノズルに対して折り取り可能に一体成形される先端閉塞部によって閉塞されていることを特徴とする請求項1に記載のチューブ接続用キャップ。」

(e)「【0022】パウチ2は、図3に示すように四角形状のシート21,21を重ねて周縁部をヒートシールにて一体接合された長方形状の袋体であり、一方の短辺部に吊り下げ用の穴22が設けられ、他方の短辺部側の角部には、短辺部と長辺部の延長線を2辺とする切り欠かれた三角形状のスペースSが設けられ、積載時のスペース効率を高めるべく、この三角形状のスペースS内にパウチ用スパウト1が装着されている。」

(f)「【0025】第1ノズル32の基部33側の端部はパウチ2内に臨んで開口しており、第1チューブ嵌合部34先端は、第1ノズル32に対して折り取り可能に一体成形される先端閉塞部としての閉塞ピン38によって閉塞されている。この閉塞ピン38は、第1ノズル32を貫通する吐出孔39の孔径とほぼ等しく、第1ノズル32の先端部内端縁に薄肉部38aを介して連結されている。第1ノズル32の先端部32aと閉塞ピン38との境界部には第1ノズル32の肉厚分の段差が設けられている。」

(g)「【0036】次いで、図4(d)に示すように、カバーキャップ4に、その閉塞ピン38との嵌合部を支点にして倒す方向に力を加えることにより、てこ作用によって、閉塞ピン38付け根位置の薄肉部38aを破断して閉塞ピン38を折る。このようにすれば、開封用の特別の治具を必要とせず、開封作業を容易に行うことができる。」

以上の記載(d)?(g)及び図面の記載から、刊行物2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「薄肉部を破断して折り取り可能に一体成形される先端閉塞部を有するチューブ接続用キャップを取り付けた袋体」

4. 対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「胴部22」、「液密」、「第2の内部空間15」及び「袋状容器」は、それぞれ、本願発明の「熱溶着部」、「水密」、「接続部材収納部」及び「包装袋」に相当する。
そして、引用発明1の「排出口ユニット20」と、本願発明の「薬液投与用チューブと嵌合接続可能な接続部材」は、包装袋の内容物を排出するための部材であるという限りにおいて相当するから、引用発明1の「キャップ27」及び「排出口21」も、包装袋の内容物を排出するための開口可能な開口手段であるという限りにおいて、本願発明の「開口可能な開口手段」に相当する。
また、引用発明1の包装袋を形成するフィルムは熱可塑性樹脂フィルムであり、熱可塑性の樹脂であるという限りにおいて、本願発明のポリプロピレンフィルムに相当する。
以上のことから、本願発明と引用発明1とは、
「包装袋の内容物を排出するための部材を有し、熱可塑性樹脂フィルムをシーラント層とする表裏2枚の合成樹脂フィルムの周縁部を熱融着した包装袋であって、前記部材は開口可能な開口手段と熱溶着部とを有する合成樹脂成形品よりなり、前記熱溶着部と表裏2枚の合成樹脂フィルムとを水密に熱溶着して包装袋内部に前記部材を収納する収納部を設けたことを特徴とする包装袋。」
である点で一致しており、以下の点で相違する。

・相違点1
本願発明は、薬液用包装袋であり、使用時まで前記チューブ接続部の滅菌状態を保つことを可能としたものであるのに対し、引用発明1は、液体用の袋状容器であり、詰め替え時に切断線16に沿って袋体の周縁固着部を切断除去するものである点。

・相違点2
本願発明は、ポリプロピレンフィルムをシーラント層とするレトルト殺菌可能な包装袋であるのに対し、引用発明1は、熱可塑性樹脂フィルムをシーラント層とする包装袋で、レトルト殺菌可能か否か不明な点。

・相違点3
本願発明は、包装袋の内容物を排出するための部材が、薬液投与用チューブと嵌合接続可能な接続部材であり、該接続部材が「薄肉部または脆弱部よりなる手で折って開口可能な開口手段を設けて予め封鎖されたチューブ接続部」を有する合成樹脂成形品であるのに対して、引用発明1の排出口ユニットは、開口手段として排出口にキャップを用いたものであり、成形品であるか不明な点。

(2)判断
上記相違点1ないし3について検討する。
・相違点1について
合成樹脂フィルムを熱融着して形成した包装袋の用途を、薬液用とすることは従来周知の技術手段にすぎない(例えば特開平6-39019号公報参照)。
そして、使用時まで包装袋の排出部の密封状態を保つことにより、排出部の汚染防止を図ることができることは、包装袋の技術分野において技術常識であることにかんがみれば(必要であれば、登録実用新案第3036057号公報、実願昭54-25064号(実開昭55-127043号)のマイクロフィルム参照)、本願発明の使用時まで滅菌状態を保つことを可能とした点は、当業者が容易に想到できたことである。
よって、この周知技術を引用発明1に適用して、本願発明の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

・相違点2について
収納する内容物や用途に応じて袋の材質を最適な材料に設計することは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎず、ポリプロピレンフィルムをシーラント層として表裏2枚の合成樹脂フィルムの周縁部を熱溶着したレトルト殺菌可能な包装袋は従来周知である(例えば特開平3-110143号公報、特開平8-58786号公報参照)。
よって、この周知技術を引用発明1に適用して、本願発明の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

・相違点3について
薄肉部を破断して折り取り可能に一体成形される先端閉塞部を有するチューブ接続用キャップは引用発明2に開示されており、そして、折る手段として「手」を直接用いるか、折るための道具を介するかは、当業者が必要に応じて適宜選択する設計的事項にすぎない(例えば手で折る例として、特開平6-190055号公報参照)。
よって、引用発明2の開口手段を引用発明1に適用して、本願発明の相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

しかも、本願発明の効果も、引用発明1、引用発明2及び上記周知技術から当業者が容易に予測し得たものであり、格別顕著なものとはいえない。
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-17 
結審通知日 2009-09-29 
審決日 2009-10-13 
出願番号 特願平10-66891
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 裕一渡邊 真  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 村山 禎恒
熊倉 強
発明の名称 薬液用包装袋  
代理人 樋口 榮四郎  
代理人 田中 宏  

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